【取材にご協力いただいた方】
・artience株式会社 インキュベーションセンター 所長 髙橋 隼人様
・東洋インキ株式会社 マーケティング本部事業企画部第2課 帯川 武史様
・トーヨーケム株式会社 企画・デジタル推進室 佐藤 翔矢様

「最近、上司のニュース共有がやけに鋭いなと思ったんですよ。まさかAnewsを使っていたなんて(笑)」
そう語るのは、artienceグループの1社でDX推進を担う佐藤さん。
「感性に響く価値を創りだし、心豊かな未来に挑む」をブランドプロミスに掲げ、多様な事業領域で技術革新を推進するartienceグループ。市場環境が大きく変化する中、新規事業の創出は喫緊の課題であり、グループ全体での情報感度向上と連携強化が求められていた。
こうした背景のもと、インキュベーションセンターが中心となってAnewsを導入。今ではグループ各社の垣根を越えて活用されるまでに浸透している。
本記事では、導入を推進されたインキュベーションセンターの髙橋隼人様、グループ企業内の情報共有を担うハブとして活躍されている東洋インキ株式会社の帯川武史様、トーヨーケム株式会社の佐藤翔矢様に、Anewsの活用方法や社内浸透のプロセスについてお話を伺った。
新規事業を生み出すには、“テーマ創出”より“風土醸成”が必要だった

「インキュベーションセンターは、2023年1月に立ち上げました。印刷インキなどの既存市場の縮小を受けて、既存事業の延長ではなく、新しい価値を生み出す専任組織としてスタートしたんです」
そう語るのは、髙橋さん。メンバーは当初わずか3人。何をやるかも決まっていなかったという。
「まずは人に会って話を聞きました。他社の取り組みも調べる中で、“風土がないと何も生まれない”と感じたんです。マインドセットや日常的な情報接触が本当に重要で、それが事業づくりの土台になると確信しました。」
印象に残っているのは、「今ある知識のうち5年後も使えるのは15%」という言葉だった。
「情報がすぐ古くなる時代に、どう日々の感度を保つか。それが課題でした。そんな中で出会ったのが“セレンディピティ”という考え方。偶然の発見は、普段から情報に触れていないと起きない。Anewsを導入したのは、それが理由です」あわせて、社内提案制度やオープンイノベーションも展開。情報の流れを生む仕掛けづくりも進めている。
「Anewsは、“情報を自分から取りに行く”状態をつくる起点になっています。そこから偶然の発見が生まれ、風土が少しずつ育っている実感があります」
「まずは共感してくれた10名から」草の根的な広がり
とはいえ、ツール導入だけで風土は変わらない。髙橋さんは、まず社内の共感者を探し回った。「無理にやってもらっても意味がない。共感してくれる人と、まずは10人で始めようと思ったんです」
各社・各部門に点在する少数精鋭のトライアルチーム。その1人が、マーケティング本部の帯川さんだ。

「情報収集って孤独な作業なんですよ。特に海外の展示会レポートなどは、誰にも頼れない。でもAnewsを使うと、キーワードに合った情報だけを効率よく受け取れるし、自分と同じテーマに関心がある人が“見える”んです。あ、自分だけじゃなかったんだって」
また帯川さんは、印刷関連の海外展示会に参加できなかった際、Anewsを活用して“行ったつもりレポート”を作成したという。
「現地に行けなかった分、Anewsをはじめ複数の情報源で調査し、リアルなレポートに仕上げました。当時、社内外向けに2パターン作成したのですが、読んだ人からは“あれ?現地行ったんだっけ?”と聞かれるほど(笑)。翻訳機能もあるし、英語が苦手でも問題なく活用できました」
これについて髙橋さんは、次のように語る。
「いろんな人の話を聞く中で、価値を感じるポイントが人それぞれ多岐にわたっているんだな、というのがだんだん分かってきました。特に“自分の専門領域について、国内ならある程度タイムリーに情報収集できるけど、海外となると難しい”という声はよく出ます。だからこそ、海外情報に価値を感じる人も多い。そうやって使い方が多様化しているのは、むしろ良い傾向ですね」
一方で、途中からユーザーとして加わったのが佐藤さんだ。最初はトライアルに参加していなかったが、全社的に拡大されたタイミングでAnewsに触れ、その可能性を実感したという。

「僕はAnewsを契約したタイミングで、まず“毎日見る習慣をつけないといけない”と思ったんですね。最初にやったのが、チームの担当テーマごとにオンラインの情報共有ルームを立てて、関係者を全員招待すること。Anewsで見つけた記事をそこに貼って、意見交換のきっかけにしました。コメントがつけば議論が始まるし、なければそのまま流すだけ。必要な人に、必要な情報が届く感覚です。今では朝イチで15〜20分Anewsを見て、複数のルームにどんどん記事を投げ込んでいます」
「このニュース、見た?」がつなぐ社内ネットワーク
佐藤さんのようなハブ的存在が情報共有を続けることで、チーム内外のコミュニケーションが活性化していった。「情報を人に届ける前提で読むと、自分の視点も洗練されていく。社内に“このテーマに関心がある人”が見えるようになるのは、とても価値があります」
帯川さんも、未契約のグループにAnewsの記事をメールで共有していたという。
「“皆さんご存知かと思いますが”と書いて送ると、だいたい誰も知らない(笑)。何度もそうした場面があって、“誰か一人でも契約してくれたらいいのに”と思っていました」
情報を起点に“共通の地図”ができていく
現在、Anewsのユーザー数は100名を超えた。「この人も、同じ記事にマークしてたんだ」。そんな小さな気づきが、部門を越えた“共通の関心”を生む。
この広がりの背景には、髙橋さんの粘り強い推進と、佐藤さんや帯川さんのような共感者たちの存在がある。とはいえ、髙橋さんは「ようやく1合目」と話す。
「正直、ここまでも険しい道のりでした。でも、各社・各部門に共感者が育ってきたことで、ようやく風土変革の“芽”が出てきたかなと感じています。大事なのは、この動きを一過性にしないこと。だからこそ、これからが本当の勝負です」

情報が“未来”を変える——それぞれの視点と、これからの挑戦
髙橋さんは語る。「偶発性って、自分で仕掛けていかないと生まれない。そのために、広く情報を集め続ける“習慣”こそが、イノベーションの土壌になると思うんです」
佐藤さんもまた、「専門分野だけに閉じていた情報源から脱して、世の中のニーズを知るために、Anewsのように“情報が届く”環境は本当に助かる」と振り返る。帯川さんにとっても、「業界トレンドを自らかき集め、プレゼンスを高めること」が情報収集の原動力だという。
こうした価値観を持つ人材が育つことで、情報活用は「個人の習慣」から「組織の風土」へと変わっていく。
今後について、髙橋さんはこう語る。「最初に感じたのは、“自分で探しに行かなくても、さまざまな角度から取捨選択された情報が届く”という状態の価値です。そうすると、一人ひとりが複数の視点を自然に持てるようになる。そういう人が増えれば、会社の視野も広がるはずだと感じました」
実際、拠点や部門が異なる技術者同士がつながるのは簡単ではない。社内チャットツールも使ってはみたが、話題が尽きて続かないことも多かったという。
「でもニュースって毎日更新されるし、共通の“きっかけ”になりやすい。自然な会話の起点として、Anewsが“つながりの場”になるといいなと思っています」
5年後に、“情報感度の高い会社”と呼ばれるために
「この文化をあと5年かけて根づかせたい。それができれば、社内の会話の質も変わり、組織も変わっていくはずです」
Anewsを“ニュース配信ツール”ではなく、“風土づくりの起爆剤”として使いこなすartienceグループ。 情報が「偶然の出会い」を生み出し、それがやがて新しい価値になる──。そんな未来に向けて、一歩ずつ前進している。
※記事内容および、ご所属等は取材当時のものです。