2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
数々の新規事業を生み出し続けているリクルートでは、新規事業を生み出すための型があり、多くの社員が型に沿って、新たなアイデアを生み出し続けている。リクルートで社内新規事業開発制度「Ring」の事務局長として、同社の事業開発スキームを支えた岩本氏にその秘訣を聞いた。
(当記事は2020年2月19日に開催されたビジネスカンファレンス「CNET Japan Live 2020」での講演内容を基に内容をアップデートしています。)
そもそも新規事業のタネをどう見つけるのだろうか?
やりたいことやプロダクトありきではなく、世の中の『不』に着目することから始まるという。世の中の『不』とは、社会や組織が抱えている課題のことで、解決されたときにどんな価値が見いだされるのかという観点で深掘りしていくことで発見が可能になる。
『不』に着目するのはなぜかというと「リクルートが掲げる社会への貢献として、使命である」からだ。ビジネスとしても、人は本当に困っていることを解決できるとわかるとお金を払う。つまり課題の解決と支払われる対価によって儲けが出るか=事業として成り立つかを考え、そのバランスが取れるまで仮説検証を繰り返すことで新規事業のタネを育てていくのだ。
新型コロナウイルス禍でさまざまな『不』が新たに生じている今こそ、新規事業のタネ=課題があちこちにあることは容易に想像がつくだろう。では、目を付けた『不』をどう事業に昇華させていけば良いのだろうか。
リクルートでは、「見立てる」、「仕立てる」、「動かす」という3つのプロセスで事業開発を進めている。
「見立てる」:構造で捉え俯瞰して見る力。分析的に捉え、問題を特定する力
「仕立てる」:筋の良い仮説を立て、プロセスを作り込むこと。
「動かす」:ビジョンを打ち出し、人を理解・統率すること。
「見立てる」、「仕立てる」は、比較的少人数で行えるが、ビジネスを大きくスケールさせるためには、複数の人を巻き込んでいくことが重要になる。特に、初期段階で「見立てる」、「仕立てる」の仮説検証を何度も繰り返すことでアイデアを事業化できるレベルにまで昇華させていく。
そして、「見立てる」、「仕立てる」を効果的に進めるために必要となる3つの視点があるという。自社を取り巻くマーケット全体を俯瞰する鳥の目、マーケットの流れを捉える魚の目、そしてユーザーやマーケットをミクロな視点で分析する虫の目である。
このように3つの視点と3つのプロセスによって、具体化した『不』に対する解決策のアイデアをより強固なものにしていく。その過程の中で、ほかの人に相談し、お互いの意味解釈をぶつけ合っていく。この過程を経ることで、独りよがりなアイデアやすでにあるものとの重複を避けることができ、より深いインサイトを導き出すことができる。
個人が着目した『不』から始まったアイデアが、チームや組織の共通の解釈=集合知となることで、新たな価値創造につながっているという。実際にリクルートでは多くのイノベーションがおき、新たなサービスが生まれ展開されている。
参考:リクルートの新規事業提案制度を通過した事業の一例
https://ring.recruit.co.jp/#product
これまでの世の中では、前述した取り組み方で新しい事業の創出ができていた。しかし、デジタルディスラプションによって業界地図がドラスティックに塗り替えられ、新型コロナウイルスのように突発的で、社会全体に大きな影響を及ぼす不測の事態への対応を迫られる現在は、その変化のスピードに耐えられなくなっている。
また、日々溢れる情報から必要な情報を見つけることも、もはや人力では処理しきれない世界になっています。そこで必要になってくることは、最新のテクノロジーによって3つの視点を拡張し、第4の視点、AIの目を活用することが重要だ。
AIを活用することで、それぞれの視点に変化が生まれる。
鳥の目は、業界や業種、規模の大小を超えて、マーケット全体を俯瞰できるだけでなく、未知なる動き(兆し)すらもAIが検知し捕捉できるようになります。
魚の目は、さまざまな文脈やバラバラにおかれていた情報を、意味で構造化し見えないトレンドを捉えられるように。
そして、虫の目は、個人の行動や嗜好データも含めての分析が可能になります。
つまり、AIの目とは、以下の3つに集約される。
・環境を俯瞰し、未知なる脅威やビジネスの機会となる兆しを発見すること
・膨大な情報量を処理、文脈や意味を構造化し見えていないトレンドまで発見すること
・細部に宿る情報と事象を分析し、隠れたパターンや洞察を導くこと
AIの目が3つの目を拡張することで、人力では不可能な変化を捉え、新たな『不』の発掘を導き、「仕立てる」「動かす」というプロセスへ進むための精度とスピードを上げることが可能になり、新規事業の創出を実現していく。
新型コロナウイルスの影響は、バブル崩壊時と同程度、もしくはそれ以上とも言われている。各企業が業績を下方修正し、緊縮財政にシフトしていく中で、新たな新規事業を生み出すことがナンセンスな時期なのかもしれない。
一方で、日本企業はこれまでイノベーションを起こすことができず、国際的には苦戦を強いられてきた背景もある。危機を機会と捉え、世の中の『不』に着目していくことも必要になるのではないか。