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研究開発起点の新規事業開発。今すぐ取り組むべきこととは?

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昨今の目まぐるしい市場動勢を鑑み、研究開発から新規事業を起こすことは企業にとってこれまで以上に重要な課題とされるところである。実際に、近年の研究開発投資においても新規事業に関する分野での投資が増加している。

しかし新規事業開発の成功は並大抵のことではなく、実際の事業化までには道のりが長く困難も多い。また、これまでの企業の従来の開発スタイルとは異なるアプローチが必要となるため、社内でのノウハウの不足も課題としてあげられるだろう。

この記事では、研究開発が起点の新規事業開発において、これまで以上に重点を置いて取り組むべきポイントについて解説する。新規事業開発の知識を洗い直し、認識をブラッシュアップさせるための一助としていただきたい。

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 変わりゆく研究開発のミッション

研究開発部門であるR&Dは近年ますますその重要性を増している。企業の研究開発投資の額においても、日本能率協会の2020年度の調査において「横ばい」が半数、「増加」が約35%と、不況の中でも期待が高いことがうかがえる。

参照:一般社団法人日本能率協会『CTO Survey 2020「日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査」報告書』
https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/etc_2020-cto.pdf

研究開発投資の増加の要因には、デジタル化の進展、またそれに伴う製品のコモディティ化、そして製品のライフサイクルの短期化がある。ますます競争が激化する中、企業が持続的に発展するためには従来型のキャッチアップ型のみでは戦えなくなってきているのだ。

消費者のニーズの「モノ」の消費から「コト」の消費への移行もまた、企業存続のために新規事業を立ち上げる契機のひとつとなっている。R&D部門においては、そういった世相の流れをくんだ製品開発、ひいては一層の事業貢献が求められている。これまで通りの既存技術のブラッシュアップのみではなく、経営・事業戦略を踏まえた上での創造的な取り組みをしていく必要があるのだ。

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 「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」とは?

研究開発から製品化に至るプロセスには4つのフェーズがある。それぞれ研究、開発、製品化、事業化のフェーズで、各フェーズ移行の際にはそれぞれ「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」と呼ばれる乗り越えなければならない3つの困難が立ちはだかると言われている。

「魔の川」は、研究段階から製品開発段階へとフェーズ移行する際の関門である。自社技術などの研究成果を生かした製品開発をしようにも、市場のニーズに適応できない、新製品として具体化できないなどの困難さを表している。製品開発の壁を乗り越えるためには、技術シーズと顧客ニーズを結びつけ、具体的に構想するノウハウが必要である。

「死の谷」は、開発から事業化に繋げる困難さを指す。研究開発から製品開発に至ることができたとしても、発売・サービスを開始するには資材などの調達方法、生産ラインや流通手段の整備・確保がマストであり、またそれには巨額のコストが必要になる。この段階で頓挫すると開発段階でストップするよりも経済的損失が大きくなる。この障壁を乗り越えるためには、資金・人材などの経営資源の適切な調達が必要になる。また、小規模から事業を始めることで少しずつ安定化を目指していくことも対応策として考えられる。

「ダーウィンの海」は、製品の市場投入から産業としての確立に繋げる困難さを表している。製品を市場投入できたとしてもそこで終わりではなく、既存の製品との競争や売上、顧客の評価など数多くの指標のもとで戦って勝ち残らなければならない。淘汰されず、市場へ定着することの難しさをダーウィンの進化論になぞらえている。事業化を成功させるには競合製品との差別化、また自社製品の付加価値をより高くすることが必要となってくる。

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 新規事業はゼロイチが当たり前?

新規事業というと、無から有を生み出すような途方もない作業だと思うことがあるのではないだろうか。また、そのためには新たなスキルセットが求められていると感じる方も多いのではないだろうか。しかし実際の新規事業開発は、全く何も無いところから突然アイデアが湧いて出て、革新的なテーマが創出されるといったものではない。「知と知の掛け合わせ」がなによりも重要で、これまでの経験や知識をもとに、他業種や現在の市場動向、顧客ニーズなどといった視点や分野の違う別種の知を組み合わせ、根拠があってこそたどり着くものである。

それはこれまでやってきた研究・業務と全く別物ということはなく、新規事業開発は今までの研究開発業務の延長線上にある。これまでの向き合い方や自身の今すでに持っている技術や知識に、どのように新しい情報をプラスしていくのか、または掛け合わせていくのかが重要なのである。

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 新規事業を進めるために必要なことは?

新規事業開発は起業と似た部分があり、いち起業家の視点で新規事業開発に向き合うことで、研究開発が製品化、事業化する確率は格段に上がっていくだろう。なぜならば実際に事業化するには経営側とのビジョンの一致が必要不可欠だからである。最初から同じ目的意識を持って研究開発に当たることができれば、ぶれずに新規事業開発を進めていくことができるだろう。

また、新しい知識をインプットする上でも、どうすれば利益が出るのかという経営的視点は着目する部分を変え、今後の知の掛け合わせに対し好影響を与えるはずだ。より効率的に研究開発を進めるためにも、どのようなポイントを押さえるべきか解説する。

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 事業化プロセスを理解する

研究開発をしていく上で、実際にどのような流れで製品化に至るのかといった事業化プロセスを理解することは重要である。プロセスを理解し、ゴールを意識して研究することは新規事業開発の成功確率を上げることにもつながる。

事業化プロセスの表

事業化プロセスは市場調査フェーズ、企画(創出)フェーズ、事業推進(スケール化)フェーズと3つの工程に分かれる。リサーチ・分析を踏まえて企画をし、実際の製品開発へと進んでいく工程である。市場調査フェーズにおいては、ミッション・ビジョンの共有から始まり、課題やニーズの調査を行なっていく。その後、企画段階でより詳細にターゲットや競合の調査、ペルソナ設定などを行なって具体化していき、製品開発へと事業推進フェーズへとコマを進めていく。

現在の段階はどこなのか、どのように進めるべきなのかといった現段階についての理解もさることながら、全体像を常に把握しておくことが大切だ。また、次段階を予測して動くことは効率化にもつながる。

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 技術を起点とした用途開発

新規価値の提案力の強化と、新たな事業への転換のためには、自身がこれまで担当してきた自社の技術や知識など、自社アセットの棚卸を行うことが重要だ。用途開発をする上で、そもそも自社はどのようなところに強みがあるのかや、自社の技術はどのような業界であれば活用ができるのか、またどのような課題に対応することができるかなど、その内容を再度確認して深く理解しておく必要がある。

また、自社の強みとなるコア技術はコスト面や人材の面からも最大限生かすべきものであり、既にある自社技術をさまざまな視点から検討、また抽象化することによって新規価値創出のきっかけとなる可能性がある。自社アセットの棚卸の際には、競合他社との比較も同時に行うことも必要だ。これは客観的視点を持って自社技術を検討することにつながるためである。

 用途開発のコツは抽象化

用途開発において、抽象化はとても重要な概念である。抽象化とは、物事を大きな視点で俯瞰的に捉え、物事・事象の特徴をピックアップして共通項をまとめ、理解しやすく再構築することで全体の本質を捉えることだ。コア技術やその機能を抽象化して類推することは新事業開発や製品開発に対し、有効なアプローチである。つまり、自社の技術やアセットの具体的な事象をきちんと抽象化し、特徴や強みを言語化して本質を理解することで、自社技術を他分野に移行させた場合や、現行とは異なる方法で生かす道があるかどうかというような仮説検討が可能になるのだ。

例えば富士フイルムの化粧品業界への参入は、コア技術及びその機能の抽象化に基づく類推によって新規価値が創出された好例と言える。

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 未来を起点とした未来予測

未来を起点とした未来予測も大事な視点である。将来の不確実性に備え、今後持続的な成長を図るためには、5〜10年先を見据えて事業創出を行っていく必要がある。なぜなら、今新規事業開発をスタートさせたとして、10年後もその事業を継続、発展させるためには、10年先の社会や市場についても想定しておかねばならないからである。未来予測をするためには、未来に対する必要不可欠な情報を集め、描いた未来を事業開発につなげていくことが重要である。

また、未来について考える場合、未来年表などを参考にし、技術に関することだけではなく、政治、経済、社会、環境などといった広範囲な領域に関わる情報も同時に集めることが肝要である。複数の要素の上に未来は成り立つため、多方面の知識、情報によってより鮮明な未来予測が可能になるだろう。

参照:博報堂生活総合研究所 未来年表https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/search_year.php?year=2032

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 新規事業創出のために、いま何をすべきなのか

新規事業創出のためには、未来の姿から逆算して考えていく視点が必要であり、また自社技術の抽象化を通して、顧客の課題やニーズと技術・機能を結びつけていくことも重要だ。自社アセットの棚卸による深い理解、そこから導き出される抽象化、そして抽象化からの類推を進めることで、新たな顧客層や用途展開先の発見など、研究開発部門の新規事業・新製品の開発というミッションの達成へと近づくことができるのだ。

未来予測や新規事業創出のための知の掛け合わせを生むためには、多くの知の引き出しが必要となり、偏りのない多角的で良質なインプットが引き出しを充実させてくれるだろう。まずはさまざまな情報に触れることが、よりよい新事業創出のための第一歩だと言える。

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