2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
2024年はAIや電気自動車、宇宙産業など、さまざまな分野で半導体の需要が高まることから、「復活の年」といわれている。こと日本にとっては、半導体工場の建設ラッシュの年であり、TSMCの子会社であるJASMがソニーなどと共同で建設した第一工場の開所式が2024年2月に執り行われ、話題となったことは記憶に新しい。
本記事では、半導体業界を担う代表的な国内外メーカー・会社を4つの企業群に分けて解説していきたい。
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目次
半導体とは、銅やアルミニウムなど電気を良く通す金属「導体」と、電気をほとんど通さないゴムなど「絶縁体」の中間の性質をもつ材料を指す。よく用いられるものとしては、シリコンやセレン、ゲルマニウムなどがある。
トランジスタや集積回路(IC)などを代表とする半導体の製造プロセスは非常に多い。近年は半導体の微細化・3D化などが進み、そのプロセスは1000を超えるといわれている。
これほどの工程数をもつことから、「材料メーカー」「製造メーカー」「製造装置メーカー」「半導体商社」の4つの企業群がそれぞれ密に連携し、半導体の開発や供給を支えている。
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半導体の起源は、およそ150年前まで遡る。これまで先人たちが築いてきた知恵や技術の変遷を振り返っていこう。
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1874年にドイツの物理学者のカール・フェルディナント・ブラウン氏が、半導体の基礎となる鉱石の整流作用を発見したのが最初とされている。その後、1939年にベル研究所のラッセル・オール氏によってゲルマニウムを用いたダイオードが発明。さらに、1947年に同研究所の物理学者ジョン・バーディーン氏とウォルター・ブラッテン氏が点接触型トランジスタを、その翌年には同研究所のウィリアム・ショックレー氏が接合型トランジスタを発明したことで、半導体の需要が高まっていく。
1956年には、技術革新の功績を称え、ジョン・バーディーン氏、ウォルター・ブラッテン氏、ウィリアム・ショックレー氏にノーベル物理学賞が授与された。
1959年にアメリカのテキサス・インスツルメンツ社のジャック・キルビー氏、フェアチャイルドセミコンダクター社とインテル社の共同創業者であるロバート・ノイス氏が、集積回路(IC)を発明。集積回路(IC)は多くの電気製品に使用されるようになり、各社の開発競争へと発展した。
日本は1980年代後半には、「日の丸半導体」ともてはやされるほど、半導体市場で圧倒的なシェアをもっていた。総務省の調査によれば、半導体市場では世界シェア1位で50.3%と、2位のアメリカの36.8%と大きく差をつけていた。
しかしながら、1990年以降は勢いを落とし、以後、韓国やアメリカなどにその座を許してしまう。2019年には世界シェア10%にまで落ち込んでいる。
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アメリカのGartnerが発表した調査レポートによると、2023年の半導体売上高世界ランキングの首位はIntelだった。2位はサムスン電子、3位はQualcomm(クアルコム)と続く。NVIDIA(エヌビディア)は前年比50%以上の売上増で、TOP5に名乗りを上げた。なお、日本企業はTOP10には含まれていない。
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ここからは、半導体メーカー各社について4つの企業群にカテゴライズし、その概要と特徴をそれぞれ解説していきたい。
半導体装置メーカーとは、半導体を製造するために必要な装置を開発・販売する企業群のことを指す。冒頭述べたように半導体は製造工程が非常に多く、各工程に特化した装置が必要不可欠だ。
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オランダに本社をおくリソグラフィ装置の開発・販売・保守を行っている会社だ。そのなかでも、特に「EUV露光」を強みとし、EUV装置の製造では圧倒的な世界シェアを誇る。
ディスコは、1937年広島・呉で創業した日本の会社。主力技術は後工程における装置開発・販売だ。「ダイシングソー」で約70〜80%、シリコンウェーハの表裏面を研削・研磨する「グラインダ」と「ポリッシング(鏡面研磨)装置」が約60〜70%の世界シェアを保有している。
洗浄分野で非常に大きな強みをもつ半導体製造装置メーカー。枚葉式洗浄装置は33%、バッチ式洗浄装置が48%、スピンスクラバーが53%と3つの分野で世界シェア首位だ。
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ウェーハやフォトレジスト、モールド樹脂など、半導体の製造工程で必要になる材料を提供する企業群を指す。なお、SEMIの調査では2023年の半導体材料の世界市場規模は667億米ドルと発表している。過去最高額を記録した2022年から減少したものの、依然として規模は大きい。
レゾナックは、2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の統合によって生まれた。半導体材料メーカーのなかでも、シリコンウェーハを扱うメーカーを除くと、世界TOPのシェアを誇る。特に、後工程の主要材料に強く、銅張積層板、高純度ガス、ダイボンディング材料など、10以上の材料で世界TOPシェアをもっている。
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1999年に住友金属工業と三菱マテリアルが共同設立したシリコンウェーハの素材開発を行う専業メーカー。実質、シリコンウェーハは信越化学工業とSUMCOの2社がシェアを独占している状態だ。最先端ロジック向けウェーハに絞れば、世界シェア50%超を維持している。
味の素といえば、食品メーカーというイメージが色濃いが、子会社である味の素ファインテクノは独自にABFと呼ばれる絶縁フィルムを開発した。これは、CPU(中央演算処理装置)の層間絶縁材に用いられており、現在では全世界のおよそ100%に近いパソコンに導入されている。
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半導体を製造するメーカーと半導体を必要とする自動車・電子機器メーカーをつなぐ役割を果たす企業群を指す。仕入れ、販売、納品だけではなく、なかには独自で開発サポートや製品開発の企画を行う企業も存在する。
1935年に設立され、アメリカ・コロラド州に本社を構える会社だ。半導体商社では世界最大手であり、拠点は世界85か国、売上高は2023年の売上高は331億米ドル(約5兆円)にのぼる。
1972年、横浜市で創業した日本の会社。2020年には富士エレクトロニクスを吸収合併し、国内最大手の半導体商社だ。また、海外製品の仕入れや販売に強みがあることも特色として挙げられる。現在、26か国・92拠点とグローバルに展開しており、海外の売上比率は55%となっている。
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半導体そのものを製造する企業群のことを指す。NVIDIAやTSMCなど半導体業界のなかでも知名度が高い会社が多い。半導体製造メーカーは「IDM(垂直統合型)」「ファウンドリ」「ファブレス」「OSAT」の4つ事業形態に分類される。近年は、専業特化が進んでいる背景があることから、IDM(垂直統合型)の比率は下がっている。
1993年に、アメリカ・カリフォルニア州で設立されたファブレス企業だ。もともとは、ゲーム用半導体メーカーだったが、自社が保有していたGPU(画像処理半導体)の技術を生成AIへ転用。その結果、2024年6月にはマイクロソフト社を抜き、時価総額3兆3400億ドル(約527兆円)で世界1位に。今や、多くの会社が動向を見守るメーカーの1つといえる。
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世界最大手の半導体製造メーカー。近年はパソコンなどハードウェア事業も展開。特に、PC向けのCPUにおいては60%を超えるシェアを誇る。元々はIDM(垂直統合型)であったが、近年はファウンドリ事業も始めており、従来の方針からの脱却を図って新興勢力であるNVIDIAやTSMCなどに追いつきたい構えだ。
1987年に台湾で設立されたファウンドリ企業だ。半導体ファウンドリ(受託生産)では世界最大とされ、取引先にはApple、クアルコム、NVIDIAなど錚々たる大企業が名を連ねる。近年は、台湾以外での工場建設の動きも進んでおり、日本では熊本県・菊陽町にできた工場開所が記憶に新しいが、さらに今後はアメリカ・アリゾナ州、ドイツ・ドレスデンなどにも工場を建設予定だ。
国内唯一のIDM(垂直統合型)の半導体製造メーカーだ。1958年、京都で前身の東洋電具製作所を設立したのが始まり。近年は、SiCウェーハ製造技術をもとにSiCパワー半導体に力を入れており、2025年までに世界シェア30%獲得を目指している。
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150年もの歴史をもつ半導体。多くの先人の知恵が時代を超えて連綿と受け継がれた結果、今日、我々は豊かな生活を送れているといっても過言ではない。さらなる技術の高まりによって、半導体の微細化と高集積化が進んでいる。現在では、大きく4つの企業群にカテゴライズされているが、今後はAIや電気自動車に合わせて、さらにニーズは細分化されていくことが考えられる。テクノロジーの発展に欠かせない存在として、今後も半導体業界から目が離せない。