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破壊的イノベーションとは?持続的イノベーションとの違い

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AIやドローン、IoTといった先端技術の登場によって、さまざまな業界構造そのものが変化しつつある。既存事業の成長に注力した戦略だけでは後発企業が起こすイノベーションによってたやすく競争ポジションを奪われかねず、会社の存続や成長のためには、市場を創造するような新しい製品の開発もあわせて行うことが肝要だ。

本記事では、事業戦略や研究開発領域でも注目されている、破壊的イノベーションについて解説する。

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 破壊的イノベーションの意味とは?

破壊的イノベーションとは、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の教授で、「イノベーションのジレンマ」の著者、クレイトン・クリステンセン氏が提唱した理論である。革新的なアイデアや新しい価値基準によって、根本から既存の市場構造を覆し、変化させるイノベーションを指す。従来の常識を壊すような製品を市場に投入することで起こり得ると考えられている。

わかりやすい例が格安航空だ。従来の飛行機は、機内食や手厚いキャビンアテンダントによるおもてなし、広々とした機内などの体験価値を重視していた。一方格安航空は、飛行機本来の「移動」という目的に立ち返り、最低限のサービスを安価で提供したことによって、瞬く間に世界中で利用が広がった。

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 破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違い

持続的イノベーションとは、既存市場においてユーザーに求められている商品やサービスの価値をさらに向上させることでイノベーションを起こすことを指す。元来、​日本の企業が得意としてきた「改善」や「改良」の領域である。

身近な例だと、ゲームボーイが挙げられるだろう。初代ゲームボーイはサイズが大きく、かつディスプレイは白黒だったが、顧客のニーズに応える形で、小型化、ディスプレイのカラー化と、少しずつ改良が行われた。

一方で破壊的イノベーションは、既存市場にとらわれず、全く異なる着想で新しい商品やサービスを創り出すプロセスだ。こちらは、持続的イノベーションと異なり、マーケットの構造や競合の市場占有率を大きく変化させることもある。

また、破壊的イノベーションは同業種や同業界に限らず、異業種によって行われるケースも少なくない。Amazonが出版・書店業界を席巻したように、ひとたび破壊的イノベーションが成功すると、競合他社から顧客を独占するゲームチェンジャーとなり得るのだ。

 破壊的イノベーションと破壊的技術(テクノロジー)の関係性

破壊的技術と破壊的イノベーションは、非常に似たような概念だが少し異なる。

破壊的技術は、既存市場の価値基準で受け入れられるような性能ではないが、異なる顧客の新しい価値基準では、優位性を示せるような特徴を持つ商品を生み出す技術のことを指す。多くは既存技術の応用で、低価格化、小型化、単純化といったようなもので、高度な技術である必要はない。これにより、新しいマーケットや産業が生まれることはあるものの、必ずしも既存のビジネスモデルの変革には結びつかない。

しかし、破壊的技術が新しい小規模市場に受け入れられ、改良を繰り返すことで徐々に既存の主流市場の顧客のニーズを満たすような性能を持つようになると、優位性のある新しい特徴と既存市場の要求水準を満たす破壊的技術が従来技術と入れ替わるようになり、既存商品やビジネルモデルを変革するような破壊的イノベーションが生じる。

 イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマは、既存事業の成長を優先するあまり、新しい技術や製品の開発が後回しとなり、後発企業に後れを取ってしまう事象を指す。

とりわけ、規模の大きな会社であるほど、既存顧客や株主など、さまざまなステークホルダーが存在するのが常だ。そのため、市場環境を変革させるような製品やサービスの開発には多くの労力とコストが必要となり、順調に既存事業を成長させることに重きをおかざるを得なくなってしまう。

また、既存製品の品質や性能を高めるには、相応の投資が必要となるため、ドラスティックな方向転換も難しいうえに、成功している既存事業を根底から覆すような開発にリスクを感じ、合理的な経営判断をしたために後手に回ってしまうなどの理由から大企業が衰退した例は少なくない。

クレイトン・クリステンセン氏によれば、持続的イノベーションの過程では「オーバーシューティング(過剰解決)」が起こるとしている。オーバーシューティングとは、既存顧客のニーズに応えるあまり、要求以上の高品質で高性能な高額商品やサービスを開発するようになり、顧客ニーズとの乖離が起こるようになる。そのような状況下で破壊的イノベーションが起こると、新たなイノベーターに対抗するすべなく大差を付けられてしまう状況に陥りやすくなるのだ。

 破壊的イノベーションが必要な理由

破壊的イノベーションが、多くの企業で求められるようになったのは、グローバリゼーションやIT技術の進展によって、めまぐるしくビジネス環境が変化していることにある。話題を集める先端技術は、数年、数十年しないうちに、コモディティ化している。

このように、製品や事業のライフサイクルが短縮化している昨今においては、持続的イノベーションのみならず、破壊的イノベーションを行う、つまり、知の深化と知の探索を両立させる「両利きの経営」の考え方が重要となる。

持続的イノベーションで、既存事業の改善・改良を進めて収益安定性を担保しながらも、既存事業で培った技術や知見を転用し、新たな事業の開発にチャレンジすることで、オーバーシューティング(過剰解決)に陥ることを回避し、新たな市場の創造や顧客の獲得につなげることができるのだ。

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 破壊的イノベーションの種類

破壊的イノベーションは、大きく「ローエンド型破壊的イノベーション」と「新市場型破壊的イノベーション」の2つに分けられる。

 ローエンド型破壊的イノベーション

ローエンド型とは、高価格で高性能な製品やサービスで飽和したマーケットに、低価格でシンプルな製品を投入するイノベーションモデルを言う。100円ショップや、格安航空などが代表例といえるだろう。必要最低限の機能や性能が担保されていれば、ローエンド層を一気に獲得することが可能となり、その間に機能や性能を高めていけば、ミドルレンジ層やハイエンド層などのターゲットも取り込める。

特段、最先端な技術や、高度な技術が必要ないため、異業種から越境する形で、新規参入することも起こり得る。

 新市場型破壊的イノベーション

既存市場にはなかった全く新しい価値基準を取り入れ、市場そのものを創り出すイノベーションモデルのこと。ローエンド型は、価格面で新規参入するが、新市場型では、新たな価値観を生み出し、ニーズを創り出すことで、シェアを獲得する。

業界の構造自体が変容するため、場合によっては参入障壁が低下し、さらにイノベーションが加速し、製品ライフサイクルの短縮化が進むことも考えられる。

新市場型破壊的イノベーションの例には、iRobotが開発したロボット掃除機「ルンバ」がある。従来、掃除機メーカー各社は、主に「重量」や「吸引力」「耐久性」などの性能やスペックで競い合っていた。そこにきて、ルンバは「自動で掃除する」という新たな着眼点を付加し、イノベーションを起こすことに成功したのだ。

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 破壊的イノベーションで成功した事例

破壊的イノベーションを実施して、成功をおさめた企業は決して少なくない。今回は、アイリスオーヤマ、Apple、IKEA、Amazon、Netflixの5つの成功事例をピックアップして紹介しよう。

 アイリスオーヤマ

アイリスオーヤマは、元々、産業資材メーカーとして立ち上がった会社だ。その後、ガーデン用品やペット用品など事業領域を拡張し、2000年代には家電製品分野に参入。最もヒットしたのがLED電球だ。新しい素材を利用したことで、市場価格の3分の1の価格にまで抑えることに成功。今では、お手頃に、使い勝手の良い家電を開発する一大メーカーとなっている。

 Apple

常に新しい市場を創り出し、GAFAMの一角を担うほどに大きな存在となったApple。Appleがイノベーティブな会社であることは言うまでもない。iPodは、CD/MDプレーヤーの脅威的存在となり、そして、iPhoneは今でもスマートフォンの代表格だ。さらにはウェアラブル端末「Apple Watch」など、次々に革新的な製品を開発し続けている。

 IKEA

IKEAはローエンド型破壊的イノベーションで成功を収めた代表例の1つだ。当初、主にカタログ通信販売を営んでいたが、配送費がかかるうえに、配送途中に家具が破損するなどのリスクもあり、方針転換を模索した。そこで、IKEAが考えたのが「組み立て式の家具」の販売だ。

ユーザーが、家具のパーツを持ち帰り、自宅で組み立てることで、在庫保管コストや配送コストを安く抑えることに成功したのだ。結果として、高品質な家具を低価格で提供することが可能となった。

 Amazon

Amazonはもはや世界の多くの人にとって、必要不可欠なサービスとなっている。Amazonの代表的なサービス「アマゾン通販サイト」は、出版、日用品、雑貨、生鮮食品など、あらゆる業界の構造そのものを変えたといっても過言ではないだろう。商品に新たな技術的特性があるわけではないが、オンラインでの購入というニーズに応え、当たらなビジネスモデルを確立したことは、新市場型の破壊的イノベーションといえるだろう。

 Netflix

Netflixは、1997年にアメリカで創業した会社で、日本市場に参入したのは2015年。元々は、レンタルビデオのデリバリーサービスを営んでいたが、業態を転換しストリーミング動画配信サービスの市場に参入。「低価格」「オンデマンド」「定額見放題」というローエンド型の破壊的イノベーションを起こした。それまで見過ごされていた市場で持続イノベーションを繰り返すうち、主要市場の顧客ニーズを捉えられるようになったのだ。

 まとめ

既存事業の成長や安定と、イノベーションの両立は「言うは易く行うは難し」だが、VUCAと呼ばれる激変の時代においては、生き残る術といえよう。破壊的イノベーションは、常識の外側に存在する。現状の延長線上の視野のままだと、ささいな市場環境の変化に気づけない。

これからは、目の前の研究や事業戦略だけに捉われるのではなく、時代の流れや、社会課題、顧客のニーズに目を向け、未来を創造する視点が必要になるだろう。