2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
新社長に山北栄二郎氏が就任し、『地球を舞台に「新」交流時代を切り拓く』という新たなビジョンを掲げ、個人向けにはリモートでの旅行やウエディングの相談、法人向けにはオンラインイベントの運営・リモートワークへの変化に伴うHRtechのサービスなどに取り組んでいるJTB。
その背景には、Withコロナ以前から自社の事業ドメインを「交流創造事業」と定義し、旅行業を中心に据えながらも、国際交流のような旅行業に近しい交流が必要とされる領域や、地方創生・HRtechなどの交流に重きを置かれる新領域も含めた事業を推進していることにある。同社の新規事業を推進されている上田泰志氏にその実情を聞いた。
※当記事は2020年9月17日に開催したオンラインセミナーの内容をもとに作成しています。
新型コロナウイルスによって大きな需要の減退が生じた旅行業界。その渦中にいる上田氏は「旅」や「交流」に対する消費者への影響をどのように考えているのだろうか。
上田氏によると、Withコロナの環境下において、「旅行」という行為そのものに対しては、「移動の制限・密を避ける・現地での交流」という3つの側面が変化のポイントだという。
移動が制限されることで、旅行そのものが困難になるのは当然だが、友人・家族など複数人で旅行に行き、想い出をつくることや、感染リスクによる現地での交流の制限があり、旅や交流に対して非常に壁がある状態だと認識しているという。
旅行は性質上、リアルでの体験が重要視される。今回の変化の中で、デジタル化を進められる部分とリアルでの体験が依然として必要なものがある。JTBではこれらをどのように整理し、これからの事業を定義しているのかを伺った。
上田氏によると、これからのJTBのソリューションの在り方としては「ヒューマンならではの価値」を生かすことが重要だという。
これまでのJTBのサービスは個人向けには旅マエと旅ナカ、法人向けにはイベントのような施策の実施を中心にした事業運営を行ってきた。これらは旅行業を中心とした『人財力』を最大の強みとしたヒューマン・タッチビジネスと考えているとのことだ。
一方、旅の準備をするという観点では、オンライントラベルエージェントのようなWebやスマホでのUI・UXやそれを支えるテクノロジーを高めて便利にしていくところにはデジタルの利点や価値がある。
新型コロナウイルスの影響により、オンラインが当たり前になっていく中で、敢えてリアルな温かみや繋がりが求められていると感じている。人の力と言ってしまうと、接客を思い浮かべてしまうが、最新のデジタル基盤の中にヒューマンならではの温かみを生かすことが必要だと考えているそうだ。
その上で、個人のお客様であれば普段の日常から旅に関する情報に触れたい、自分が体験した想い出を共有したいという想いがあり、法人のお客様であれば、施策の実行だけではなく、一緒に課題を発見したり、並走して改善を行っていくといったことがあげられる。個人・法人のお客様へ持続的な豊かさや発展に貢献していく部分に対して、新しいJTBならではのソリューションを生み出していく必要があり、改めてニーズを問い直す必要があるとのことだ。
改めてニーズを問い直すとはどういうことなのか。JTBのグループの経営方針の中には『お客様の「実感価値」を徹底的に追求してソリューションを強化する」というものがある。
上田氏によると、「実感価値」とは正にお客様が感じ、評価するものであるという。新しい事業を考える際に、どういう商品を提供するか、どうやって販売するのか、という視点で考えがちになるが、本当に大事なことはお客様に「価値」と実感していただけるソリューションを提供することである。
JTBではこの方針に則って、Withコロナの状況下でも多種多様な新サービス・新ソリューションを発表しており、その中には現場発のアイディアも多くあり、Withコロナ下においてはむしろ加速しているそうだ。
JTBでは現場発のアイディアから多くの新規事業が生まれているが、上田氏が所属する経営戦略本部ではどのように発想の源泉を発見しているのだろうか。
上田氏によると、お客様の「実感価値」を考えることが第一であるが、今回のWithコロナの状況下においては、変化を的確に捉えるために経営陣や現場に向けて提言レポートを2回に分けて作成し、提出したそうだ。背景として、情報はただ存在しているだけでは意味がなく、整理をして届けることが重要だという考えがあるという。
情報の整理を行うにあたり、
・重点的に取り組むと決めているテーマに合致する情報
・将来のマーケット変容や事業インパクトへの予兆が感じられる情報
の2つに分けて考えており、後者に関してはどのように情報を整理して、事業部へ渡していくのかの難しさは上田氏も痛感しているそうだ。
今回の提言レポートでは、今後JTBが取り組める可能性のある13のテーマを提示しており、直近では特に以下の4つのポイントに着目しているという。
・開疎化(個人化・個室化・個別化)
・近〜中距離化
・オンライン化・ハイブリッド化
・新たな旅の形・つながり方
このツーリズムの変化に合わせて、JTBは新しいサービスをリリースしている。
例えば「JTBダイナミックパッケージ」という、自分で自由に旅行プランを作れるものだ。従来型の旅行パッケージはあらかじめ作られた旅行プランを選ぶものだが、このサービスではどのような旅の目的を達成し、どんな体験をするのかを自分で選べる新しい形のパッケージのサービスとなる。
この他にも「オトナの一人旅」「JTB My Office NAVI」「バーチャル修学旅行360」といった数々のサービスをリリースしている。
数多くの新規事業を形にしているJTBだが、その源はどこにあるのだろうか。特に事業アイディアの中には現場発のものが多く含まれており、社内の新規事業公募制度「JUMP!!!」では500件を越える応募があるそうだ。新しい商品を生み出すためのDNAが根付いており、現場の社員一人ひとりがお客様の「実感価値」を考え、届けていることの証左でもある。
上田氏によると、これには旅行業というJTBの生業が関係しているとのことだ。
旅行業とは、そもそも資格があれば一人の社員が自分で旅行を作り、お客様をお連れし現地に赴くことができるという特徴がある。一人ひとりが自分の目の前のお客様が行きたいと思っている場所、作りたいと願っている想い出に対して、しっかりと向き合って形にすることで、お客様に幸せになってもらいたいという想いが根本にはあると考えている。
これは店頭のスタッフも同様だ。店頭のスタッフはお客様と一緒に現地に赴くことはできないが、これらを実践することで、中には旅行先から帰ってきた後に、お土産を持ってきてくれるお客様もいらっしゃるという。
こういった旅行業の性質がJTBのDNAとなって、新しい商品やサービスを作るアイディアの源泉となっているのだ。
Withコロナの状況下の中で新規事業をどのように創っていくべきか悩んでいる方も多いだろう。
上田氏は本セミナーの中で、
「今までの我々のやり方では同じようにできるわけではなく、コロナは人々の価値観を変えてしまっているし、それをチャンスと捉え、カスタマーハピネスをどう創っていくかを新しくしていかないと、今までと同じようにはできない」ということを繰り返し伝えている。
その中で、JTBの事例から
・自らの事業ドメインそのものの定義や整理の方法
・事業創造の答えはお客様にある
・変化を捉えるための情報の考え方やエッセンスの抽出方法 など示唆に富む内容が多くあっただろう。
いかに変化を捉え、事業創造へ繋げていくのか。今まで以上に顧客の「実感価値」を意識することで、成功への道筋が見えてくるのではないだろうか。