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戦略構想に立ちはだかる3つの壁ー乗り越えるための4つのアプローチ

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Google約8年、Facebook約5年、Uber約3年。これは、各社の時価総額が10億を超えるまでにかかった期間である。一方で、一般的なフォーチュン500の企業は、この額に到達するまでに20年かかっている※1。企業間の競争に勝つために、あるいは企業が存続していくために、これまでになく速いスピードで新しい価値を生み出し企業価値を上げていかなければいけないことが、はっきり示されている数字である。では製造業の場合、価値の創出につながる新製品開発や新事業構想において、どのような課題があるのだろうか。また、その課題はいかにして乗り越えることができるのだろうか。

本記事では、製造業を取り巻く事業環境の現状の再確認と、事業開発において直面する3つの課題、それら課題に対するアプローチ方法と解決策について解説する。

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 揺れ動く事業環境と製造業の現状と課題

 (1)激変するビジネス環境

ビジネス環境が大きく転換しており、特にデジタル企業の新規参入が増えるなかで、ものづくり産業においてもデジタルを活用して新しい付加価値を生み出していくことが一つの重要なポイントだろう。

一口に付加価値といっても、価値がどのように生まれるのかは2000年代ごろから大きく変わっている。かつては技術や製品そのものが価値を持っていたが、現在は、エンドユーザーがその技術や製品をどう感じるかで価値が決められる。ある技術と顧客のニーズを掛け合わせた先で、最終的に顧客側にどういう体験を提供できるかが重要になってきているのだ。また、製品やサービスがリニューアルされるまでの期間も、以前は5年から10年だったところが、2年あるいは1年と短期化している。

 (2)製造業の研究開発に求められること

企業の研究開発費は増加傾向にあるが、製品化・事業化の段階に課題があり、うまく事業貢献に結びついていないのが現状だ。一方で、市場にはデジタル企業が次々と新規参入しており、既存の価値観のままでは企業の存続は難しい。技術開発を進めていくことが期待されるなかで、デジタル技術を活用し、高付加価値製品やサービスの早期の製品化・事業化を目指さなければならなくなっている。また、ビジネスモデルの変革に向けたデジタル投資の進展にともない、個人一人ひとりにもデジタルを活用した企画・立案を推進していくスキルが求められるようになってきている。さらに、従来のような顧客要望を軸にした技術開発ではなく、エンドユーザーやマーケットが求めていることから逆算して、「先手を打った技術開発」をアジャイルに進めていく必要がある。先端技術を追求するだけでなく、マーケットや技術の活用シーンを想定した技術開発が求められているのだ。

しかし以上をふまえて事業開発を進めていくと、大きな“3つの壁”が立ちはだかることになる。

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 製造業が直面する事業開発における3つの壁――壁は戦略構想段階にあり

事業創出や新製品開発にあたって、多くの企業では「戦略構想」、「製品企画・生産体制」、「市場への投入」のプロセスが踏まれている。これを、およそ3年から5年のタイムスパンで繰り返しているのではないだろうか。

このプロセスのなかで、戦略の不透明性や新規事業の優先度が低い、リソース不足などを理由とした組織全体としての課題や、インスピレーションがない、アイデアが非現実的である、オリジナリティがないなどのアイデア創出に関わる課題、社内で支持が得られない、自社には合わないだろうとう先入観など合意形成に関わる課題がある。またほかにも、市場に出してみたもののニーズと合致していない、収益を上げられるようなビジネスモデルを描ききれないなどの多くの課題が挙げられる。特にアイデア創出や合意形成に関しては多くの方が課題感を持っている。事業開発プロセスにおける「戦略構想」にあたる入り口部分がネックとなっていることが多いのだ。

1つの製品やイノベーションを成功させるためには、3,000のアイデア素案が必要だと言われている。構想部分にかける時間を大幅に短縮し時代の変化に対応するためには、ボトルネックとなっている「戦略構想」の部分をスピーディーに回して、アイデアの質と量の両面を向上させる必要があるのだ。その戦略構想において壁となって立ちはだかるのが、「環境分析」「テーマ創出/企画」「定点観測/社内合意」の3つの壁である。

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 壁を乗り越えるための戦略構想の4つの型――ミッションに沿った異なるアプローチ方法

先述した「環境分析」「テーマ創出/企画」「定点観測/社内合意」の3つの壁を突破するための進め方として、以下の7つのプロセスがあると考えられる。
①アイデア検討
②最注力の見極め
③チェックフィット
④顧客課題の発見
⑤技術検討
⑥MVP(顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)の検証
⑦新ビジネスモデルの作成

①から⑤までのプロセスは職種によって有効なアプローチ方法があり、ここでは4つの型をご紹介する。

 (1)経営企画職(テーマ・ドリブン型)

経営企画関係では、この型のアプローチ方法が効果的と考えられる。まず、「テーマ創出/企画」の壁に対して、アイデアの検討から始める。社会課題や社会テーマを起点に考えて、その先でなぜそのテーマに取り組むのか、誰のどのような課題を解決するのかという注力するポイントを深堀りする。そして次に、「定点観測/社内合意形成」の段階で、「アイデアを自社の技術と掛け合わせたときにどのようなことができるか」、「そもそも自社がやる必要があるのか」を見極めていく。そして最後の壁、「環境分析」の段階で、「想定した顧客は実際に市場に存在しているのか」を発見するために、市場調査や顧客インタビューにより、業界規模、競合、ターゲット層などの調査を実施する。次いで、必要となる技術の観点から自社技術や協業先の選定を行うという進め方だ。

 (2)研究開発職(技術ドリブン型)

技術企画や研究開発部門に推奨しているアプローチ方法である。この方法では、まず「環境分析」の壁に対して、自社技術の検討・棚卸しをするところから始める。その後、「テーマ創出/企画」の段階で、「なぜやるのか」、「誰のためにやるのか」、「どんなシーンで役立つ技術か」を整理して注力するポイントを見極めていく。そこから「定点観測/社内合意形成」の段階で、その開発に自社が取り組むべき理由と優先度を確認する。最後に、市場調査や顧客インタビューにより、業界規模、競合、ターゲット層などを調査し、市場トレンドと選定した技術をかけ合わせて、どのような解決策があるのかを検討する。

 (3)新規事業関連職(ビジネス・チャンスドリブン型)

これは新規事業の推進方法になるため、スタートアップの進め方に近いと考えられる。まず「テーマ創出/企画」の壁に対して、「誰の何を解決するのか」、「なぜやるのか」、「これに取り組むことで世の中はどのように変わるのか」を検討するところから始める。次いで、「環境分析」の段階で市場調査や顧客インタビューを行い、「本当に市場に顧客がいるのか、どのような顧客なのか」を検討・定義する。そして、その顧客が抱えている課題を再検討・再定義し、どのように顧客の課題を解決するのかアイデアを出し合う。その方法にそった自社技術や協業先を選定し、最後に「定点観測/社内合意」の段階で、自社が優先して取り組むべき事象かを精査する流れだ。

 (4)事業企画職(カスタマー・イシュー・ドリブン型)

これは既存の顧客をベースに課題発見をしていくアプローチ方法である。まずは、「環境分析」の壁に対して、既存顧客の新たなニーズや課題を調査するところから始める。そして、「テーマ創出/企画」の段階で、自社で取り組むべき意義を改めて定義し、「定点観測/社内合意」の段階で、既存製品やサービスの改良ではなく、新たなものとして開発する意義があるのかを検討する。その後、実際の解決策のアイデアを出し合い、そのアイデアを実現するための自社技術の深化や、協業先の選定を進める。

このようにアイデア創出における3つの課題に対して、自身が持つミッションや役割と照らし合わせ、発想のしやすさや進めやすいアプローチ方法を選択することがおすすめである。

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 リサーチDXで変わる戦略構想と情報収集――激流の時代にやるべきこと

これまで、「市場調査」や「環境分析」といった調査や分析の範囲となるのは自社の業界にとどまっていた。しかし、流動化する現代のビジネス環境においては、調査・分析の範囲をより俯瞰して見ていく必要がある。そうすることで、新たな分析軸や、これまでは視野に入っていなかった競合が見える可能性がある。逆に、市場に対する従来の認識を改めることができなければ、自社の事業構想に有益な情報が広がっていかない。

また、バリューチェーンにおける製造プロセスでDXが進む中、情報収集や戦略構想の段階だけはアナログに取り残されデジタルを活用しきれていない。これまでのように半年や一年をかけて情報収集や分析を行い戦略構想していた期間を、AIやデジタルの活用により3ヶ月や半年に短縮することで急速に変わる世の中に適応しやすくなる。AIやデジタル技術の活用によるリサーチDXは、移ろいゆく市場課題を反映させた戦略構想と将来の利益の構築のために必要不可欠なのだ。

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参考記事

※1)サリム・イスマイル他「シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法」