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フロントローディングの意味とは?メリットや実践方法をわかりやすく解説

フロントローディングの意味とは?メリットや実践方法をわかりやすく解説

ものづくりの製造現場において、想定している予算や納期の超過は、売上や利益を圧迫することになるため極力避けたいところだ。しかしながら、ステークホルダーが多くなるほど、製造ラインのトラブルや試験結果に応じた設計の見直しなど、さまざまな要因で計画が後ろ倒しになってしまうことも少なくない。このような事態を回避するのに有効な手立てが「フロントローディング」だ。

本記事では、フロントローディングの概要やメリット、実際に導入するうえで重要なポイントについて解説していく。

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 フロントローディングとはどんな開発手法?

フロントローディングとは、Front(前)にLoading(積載)するという言葉どおり、前倒し可能な作業を製造プロセスの初期段階に詰め込む開発手法である。不具合の予測や製造の効率化を行う「デザインレビュー」、複数のプロセスを各部門が同時並行で進める「コンカレントエンジニアリング」などが代表例だ。

フロントローディングを導入すれば、各プロセス間での手戻りが減り、大幅に工数を削減できる。複数のステークホルダーが存在し、かつ部品単位で分業化されている製造業や建設業などにおいては有用な開発手法といえるだろう。

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 なぜフロントローディングが設計や開発に必要なのか

一旦、ここでフロントローディングの必要性について振り返ってみる。本来、製造プロセスの後半に行う作業を前倒ししただけで、トータルの作業量はさして変わっていないと思われるだろう。しかし、設計段階と量産段階を比較すれば、問題発生時に作業負荷が大きくなるのは明らかに後者だ。なぜなら、量産段階で不備や不具合が生じると、生産ラインを全てストップする必要があるからだ。当然、製造できない期間の損失額は膨大なものになる。その点、設計段階で未然にトラブルの芽を摘んでおけば、生産ライン完成後、スムーズに製品を世に送り出せる。つまりフロントローディングは、業務効率の向上にとどまらず、中長期的に会社の売上や業績を左右する開発手法ということだ。

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 フロントローディングを強化する方法

本項では、フロントローディングを実施する手助けとなる方法について紹介する。

 デザインレビュー(DR)

デザインレビューとは、設計段階で各部門の担当者を集め、不具合の予測や製造の効率化について議論する取り組みだ。製造担当や試験担当など、さまざまな部門の視点から意見を出し合うことで問題を早期発見できる。一般的には、各プロセスの合間に審査を挟む形で、4回から5回の複数回のデザインレビューを行う。効率的にデザインレビューを実施するには、まず議論自体をスムーズに行える体制を整えるべきだろう。デザインレビューのポイントは下記の記事を参考にしていただきたい。

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 検図

検図とは、製品の図面が完成したのちに品質やコストなどさまざまな仕様を確認する作業だ。JIS規格に沿った図面となっているか、数値の誤記や記入漏れがないかといった基本的な項目だけでは図面の正確性は担保されない。まずは図面と今ある製造ラインを照らし合わせ、想定の範囲内に作業にかかるコストや期間が収まるかを確認する必要がある。また、自社製品の競合優位性を高めるには、図面の中に特許を取得できる要素が含まれているか確認することも重要だ。

 コンカレントエンジニアリング

コンカレントエンジニアリングとは、設計・製造・品質管理といった複数プロセスを、各部門が連携しつつ同時並行で進める考え方だ。1つの部門が作業を終えたら次の部門にバトンを渡すという従来の開発手法と比べて、不具合への対処をはじめとした余計な工数を大幅に削減できる。また、部門間で密に情報共有を行えるため、問題点が浮上した際の改善スピードも速い。ただし、データを全員で共有するという前提を満たすためには、開発プロセスに属する社員がそのデータを理解できるよう、啓蒙・教育などを行うことが求められる。

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 フロントローディングのメリット

フロントローディングを取り入れると、どのようなメリットが得られるのだろうか。メリットとしては、大きく以下の3つに集約される。

 品質が向上する

フロントローディングの目的は、製造過程のイレギュラーを未然に防ぐことだ。イレギュラーが減れば、製造プロセスを短縮でき、より品質の高い製品を生み出せるようになる。

また、他部門からの知見をもとに当初の設計をブラッシュアップすれば、さらなる品質の向上を目指せるだろう。

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 お互いの情報を共有できる

フロントローディングにおいては、デザインレビューやコンカレントエンジニアリングなどをとおして設計部門と製造現場の交流が密に行われる。そこでお互いの情報や見解を共有し、認識を統一しながら開発を進めていけるのだ。こうした取り組みの成果は、現状の計画をスムーズに実現するだけに留まらない。このように部門を超えた情報共有のカルチャーが定着すれば、中長期的に企業全体の生産能力が底上げされる。

 コストが削減できる

生産が開始してから修正が必要になると、生産ラインを停止させたり仕様変更をしたりするなど、変更にかかるコストも大きい。しかし、フロントローディングで技術的な問題や工期の調整を行うことで、後工程の手戻りや修正が減り、結果的に材料費や人件費を抑えることができる。

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 フロントローディングのデメリット

フロントローディングをうまく活用すると、品質の向上やコスト削減などにつなげることができるが、その一方でデメリットや課題もある。

 設計部門の負担が増える

フロントローディングを実施すると、開発プロセスの初期段階である設計・開発部門の負担が増える。入念な見直しや検討が発生するため、最適な人員配置や業務量の調整などが必要になるだろう。

 稼働までに時間がかかる

フロントローディングにおいては、設計案について全ての部門から承認を得られないと、製造工程へ移行できない。トレンドに沿った製品を開発する場合、あまり議論に時間をかけすぎると商機を逃してしまう恐れがある。スムーズな議論を進行するには、担当者同士が協力し合える環境整備が欠かせない。

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 フロントローディングを効果的に進める方法

効果的にフロントローディングを進めるには、十分な資金投入と最適な人員配置が欠かせない。また、浮上した改善案を全て実行するのではなく、その改善案がプロジェクトの目的達成に寄与するのか十分に検討することも大切だ。

 構想中の製品に相当な金額を費やす

フロントローディングの成果を高めるには、企画・設計段階でいかに人員やコストといったリソースを割けるかがカギとなる。フロントローディングのメリットにコストの削減を挙げたが、これはあくまでも「不要に発生するコストを抑えられる」いう意味にすぎない。要は、初期段階にコストの比重を増やすことである。

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 適切な人員を配置する

支障なくフロントローディングを進めるには、企画・設計段階に必要十分な人材を配置することが肝心だ。人員数はもちろん、複数分野の知識・スキルが備わった人材、いわゆる「T型人材」を配備することも重要となる。

 十分な検討を行う

製品開発の本質的なゴールは顧客のニーズを満たすこと、および競合他社と差別化を図ることにある。限りある資源や予算をムダにしないためにも、自社にとって重要な課題解決につながる施策かどうか十分に検討する必要があるだろう。

 各種ツールを駆使する

フロントローディングにおいては、CAD・CAM・CAEといった検図ツールが欠かせない。具体的には、CADで作成した図面をもとにCAMで製造シミュレーションを行い、最後にCAEで完成品のスペックを試算するという流れだ。また、建築工事においては立体モデルを通じて建築物を解析するBIMも導入されている。

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 フロントローディングの失敗「フロントヘビー」とは何か?

フロントローディングを成功させるには、部門間の連携を高め、プロジェクトの理念やゴールなどを共有しなければならない。そうでなければ、ただ設計部門の負担が増える「フロントヘビー」と呼ばれる状態に陥ってしまう。チームワークの向上には、フロントローディングに関する明確なロードマップ、および特定の部門に負担が偏らないような人員配置、責任範囲や役割の明確化が求められる。

 フロントローディングの事例

フロントローディングは、すでにさまざまな企業で実践されている開発手法であり、有名なメーカーでの成功例もいくつか存在する。例えば、イーロン・マスクが経営するテスラ社はフロントローディングの末にリチウムイオン電池式の電気自動車「ロードスター」を開発したことで、世界的な自動車メーカーとなった。またアップル社のiPhoneも、各部門から技術やノウハウを結集することで圧倒的な多機能性を実現し、今日まで多くの人々に親しまれている。

 まとめ

製造業界におけるフロントローディングは、単なる開発手法を超えた、未来を見据えた戦略的な取り組みだ。このアプローチは、製品の設計段階から品質の向上、コスト削減、そして市場への迅速な投入を可能にする。しかし、その真髄を理解し、効果的に活用するためには、ただ前倒しで作業を行う以上の深い洞察が必要である。

フロントローディングを成功させるには、部門間の壁を越えたコラボレーション、豊富な知識と経験を持つT型人材の配置、そして革新的なツールの活用が欠かせない。これらの要素が組み合わさることで、製品開発のプロセスは、単なる作業の集まりから、企業の将来を左右する戦略的な取り組みへと昇華される。