2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
今や技術戦略には必要不可欠なプロセス「技術の棚卸」。「技術の棚卸」を、技術の一覧化・データベース化の作業と認識し、蔑ろにしてはいないだろうか。技術の棚卸そのものは目的ではなく、あくまで事業の方向性を指し示すための、技術資産について共通認識を持つための手段の1つである。
今回は、自社技術の棚卸に焦点を当てて、あらためてその重要性や目的、具体的な方法などについて解説する。
技術の棚卸だけで終わらせない!
技術的な強みと市場ニーズをつなげる方法とは?
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目次
技術の棚卸とは、属人化してしまっている技術、不明瞭になっている技術を可視化するプロセスを指す。適切に技術の棚卸がされていないと、開発した技術が有効活用されていない、技術が整理されていないために、商品化へ至らないなど、技術マネジメントの機能不全を引き起こしてしまう。
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では、なぜ今技術の棚卸の重要性が増しているのだろうか?それは、製造業を取り巻く環境が大きく変化を遂げているためだ。グローバリゼーション、IT技術の進展、COVID-19の感染拡大といった複合的な要因によって、市場や顧客のニーズは絶えず変化し続けている。
これから、より一層事業を成長させていくためには、兆しを先んじてつかみ取り、市場に求められる製品開発を行わなければならない。事業戦略を考える上で、長く活用されている「アンゾフの成長マトリクス」を見てもわかるように、起点となるのが自社のコア技術であり、既存のコア技術と次世代のコア技術を把握するためにも棚卸のプロセスが欠かせない。
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技術の棚卸というと、技術の一覧表やデータベースを作成することに終始しがちである。しかし、本当に大切なのはその技術を分析し、今後の事業にどう活用するかだ。分類方法は、枝葉末節の話に過ぎない。
では、技術の棚卸には、どのような目的が存在するのか。目的には、以下のようなものがある。
・技術戦略の策定
コア技術や次世代のコア技術を明確にし、目指すべき方向性を決める目的。
・テーマ選定や評価
自社技術のアセットを正確に把握し、テーマの選定や評価を適切に行う目的。
・次世代のコア技術の発見
複数の技術の掛け合わせによる高度な技術の構築や、新たなニーズに対する技術を見つける目的。
・他企業との協業の検討
自社で不足する技術面を他企業や大学などとの協業を検討する目的。
棚卸を始める前に、このような目的のうち何を達成するために行うのかを明確にしてから取り組むことで、手段が目的化することを防ぐことができる。棚卸の際には、自社の技術を適切な粒度で把握・認識するだけでなく、トレンド分析や、競合調査、独自の強みを活かすためのマーケティング視点も必要となる。この視点が抜け落ちていると、結局何のために棚卸を行ったのかわからないような、ただ技術が羅列された一覧となってしまう可能性がある。
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では、具体的にどのような方法で技術を棚卸ししていけば良いのだろうか。ここでは、技術の棚卸の手順やプロセスについて解説する。
コア技術を起点としたイノベーションを起こすためには、まず自社でどのような技術を保有しているのかを正確に把握し、異なる部門間でも認識を共有できることが大切だ。そのための第一歩として、すべての保有する技術をくまなく洗い出すことが必要である。
洗い出しでポイントとなるのが抽出する技術の粒度である。抽出レベルが大きすぎると複数の技術が含まれたままとなり、技術に対する適切な優位性の評価が行えなくなる恐れがある。一方で抽出レベルが小さすぎると抽出作業に膨大な時間をかけることとなり、その先の掛け合わせを考えることに時間をかけられなくなってしまう。
では、製品を構成する要素技術を適切なレベルで網羅的にダブりなく抽出するには、一体どのような方法をとれば良いのだろうか?抽出方法はさまざまなやり方があるが、担当がそれぞれ異なる方法を用いてしまうと、知識の深さや技術に対する思い入れの度合いによって、抽出レベルに差が出てしまう。どのように技術を洗い出すのか、担当者全員の抽出方法を統一させることが重要だ。また、異なる視点から技術を洗い出せるように、2つ以上の手法を組み合わせて抽出することも抜け漏れを防止する対策としておすすめだ。
次に抽出方法の一例として「機能分解法」をご紹介する。
機能分解法とは、製品を原料、部材、部品、モジュール、製品など段階ごとに分解し、各段階で使用している技術を全て抽出する方法だ。
抽出する際は、原料から部材、部材から部品など、工程が移るときにどのような変化が起こっているかに着目してみよう。たとえば、鉄鉱石やアルミなどの金属原料を溶解し、鋳塊(ちゅうかい)を作り、それを押しつぶして部品を作る場合、「溶解制御技術」「圧延加工(あつえんかこう)技術」「除去加工技術」などを列挙できる。
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技術の棚卸をしても、その技術を評価する基準がなければならない。評価するための視点としては、以下の4つの視点が有効であると言える。
1.自社のビジョンと整合性があるか
2.有効活用するために必要なリソース(設備、人材、コストなど)が足りるか
3.技術や市場の将来的な拡大が期待できるか
4.同じ市場での競合が技術を保有していないか/簡単な模倣ができない、または代替技術がないかどうか
このなかで最も重要なのは、4つ目の「希少性」と「模倣困難性」だ。誰にも真似できない、追随できない技術だからこそ唯一無二の価値を創造できる。これらを評価するためには、日頃から既存領域だけではなく、幅広い業界や企業、技術に関する情報収集が欠かせない。
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技術の棚卸を行い、ただ技術を一覧化しても市場のニーズと結び付けるのは難しい。たとえば、「深層学習(ディープラーニング)技術」という技術名を列挙するのではなく、「画像のような記号化できないデータのパターン認識が可能」などのように、あらかじめ「棚卸した技術で何ができるか」「どのような顧客価値を実現できるか」という視点で変換しておくことがおすすめだ。
そうすることで「作物の成熟度を予測したり、健康状況を監視したりする監視型カメラが欲しい」という顧客ニーズが出てきた際に、「画像のような記号化できないデータのパターン認識」ができる「深層学習(ディープラーニング)技術」が活かせるのではないかというようにニーズと結び付けやすくなる。
また、企業が持続的な成長を続けるためには、将来の市場ニーズを推測し、自社のコア技術をどう適合させていくか、または別の技術に注力すべきかの判断が必要になる。3年から10年先の未来を予測するためには将来の動向を決定する要因をいち早く捉えることが必要だ。つまり、新技術、自業界、他業界、社会環境、国内外の政策など、多種多様な情報を網羅的に収集・分析することが重要なのだ。
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コア技術の展開の成功事例として、よくあげられるのが富士フイルムだ。主力である写真フィルム事業が衰退するという危機を乗り越えるべく、写真フィルムで培った技術の棚卸を行い、応用可能な分野を探索したという。
従来から持つ医療業界との接点を活かし「新製品開発」戦略として、レーザー内視鏡や医療用画像情報ネットワークシステムなどの新しい技術を提供。「新市場開拓」では、培ってきた高いフィルムやレンズの製造技術により液晶用フィルムや携帯電話用プラスチックレンズとして、新規市場を獲得している。また、フィルムの原料であるコラーゲンや抗酸化技術、安定性を高める技術を応用し、化粧品や医薬品・サプリメントの事業に参入したのが「多角化」戦略である。
参照記事:富士フイルムグループの成長戦略
https://ir.fujifilm.com/ja/investors/individual/briefing/main/01/teaserItems1/01/linkList/0/link/ff_presentation_20190920.pdf
富士フイルムの成功事例のように、自社の強みであるコア技術を応用・展開していくためには、まずコアとなり得る技術にどのようなものがあり、どのような特徴をもっているのかが明確になっていることが必要なのだ。そして、将来的に成長するであろう市場を見極め、注力する技術を戦略的に決定し、実行することが企業成長のカギである。
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技術の棚卸とは、自社に眠っている技術、属人化して暗黙知となっている技術を見える化するプロセスである。そして、それは適切な方法で行われなければ本来の目的を達することはできない。技術を棚卸する目的を明確にした上で、社内で統一された棚卸の手段を用い、適切な評価、ニーズとの適合をすることで、次世代の製品開発や事業戦略につなげることができる。
技術の適正な評価や、シーズとニーズを結合するためには情報収集が必要不可欠である。特に、VUCAと呼ばれる予測困難でかつ急速な変化を伴う時代においては、情報収集と分析を効率的かつ迅速に行うことが求められる。皆様も、今回ご紹介した技術の棚卸を実践して、事業戦略に活かしてみてはいかがだろうか。