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SAF(Sustainable aviation fuel)とは?原料や製造方法について

SAF(Sustainable aviation fuel)とは?原料や製造方法について

脱炭素社会の実現に向け、航空業界でも持続可能なエネルギーへの転換が求められている。そのなかで注目を集めているのがSAF(Sustainable Aviation Fuel/持続可能な航空燃料)だ。航空業界は、世界全体のCO2排出量の約2〜3%を占めるとされており、特に中長距離の移動や国際輸送で化石燃料からの脱却が急務となっている。

SAFは、植物由来の原料や廃食油、動植物性油脂、農業残渣、さらには都市ごみ由来の合成ガスなどを原料として製造される代替航空燃料である。従来のジェット燃料と比較してライフサイクル全体でのCO2排出量を大幅に削減できるといわれている。本記事では、SAFの定義やメリット、課題について解説したい。

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 SAF(持続可能な航空燃料)の定義や意味とは?

SAFとは、Sustainable Aviation Fuelの略で持続可能な方法で生産された航空燃料のことを指す。読み方はサフ。日本語では「持続可能な航空燃料」と呼ぶ。主にバイオマス(植物油、廃食用油、森林残渣、農業廃棄物など)や都市ごみから得られる合成炭化水素などを原料とする。SAFはASTM Internationalが定める国際標準規格「ASTM D7566」に適合するように精製しなければいけない。同規格では、従来燃料との混合率や使用原料などが規定されている。

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 SAF(持続可能な航空燃料)が注目されている理由

SAFが注目されているのは、航空部門のカーボンニュートラル達成において、SAFがなくてはならない存在だからだ。現在、航空業界は全世界のCO2排出量のうち約3%を占めており、日本に限っては航空部門は国内全体CO2排出量のうちおよそ5%を占める。

2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現する方針を表明し、その後、2022年には国際民間航空機関(ICAO)が航空部門の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を採択した。

今後も、航空需要の増加が見込まれるなかで、二酸化炭素の排出量を抑制することは急務といえる。飛行機は石油を精製して作られたジェット燃料や航空ガソリンが使用されており、燃焼時に大量のCO2を排出するためだ。その一方で、SAFは再生可能な資源を原料としており、ライフサイクル全体でのCO2排出量を50〜80%削減できる可能性があるとしている。

従来の航空燃料とSAFの違い

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 SAF(持続可能な航空燃料)の原料の種類について

SAFは、大きくバイオマス由来の原料と合成燃料(e-fuel)の2つに分類できる。

まず、バイオマス由来のSAFとしては、廃食油(UCO)、動物性脂肪、農業残渣・林業残渣、非可食部の植物(サトウキビ・トウモロコシ)、微細藻類、廃ごみなどが挙げられる。特に、廃食油(UCO)や動物性脂肪、廃ごみを原料とする燃料は、既存資源を有効活用するため、環境負荷を低減しながら燃料を生産することが可能だ。

それに対して、合成燃料(e-fuel)とは二酸化炭素と水素を合成して製造される燃料。持続可能な原料供給体制を構築できるものの、現時点では生産コストが高いという課題がある。

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 SAF(持続可能な航空燃料)の製造方法・作り方

SAFの製造方法は、ASTM Internationalによって大きく7つに区分されている。今回は、このなかから実用化が進んでいるHEFA SPK、FT-SPK、ATJ-SPKの3つの手法を解説したい。

 HEFA SPK

植物油や動物性脂肪を水素化処理することで航空燃料として利用可能な炭化水素を生成する技術。HEFA SPKは、現時点で最も主流な製造方法で、既存の石油精製技術との親和性が高い。従来のジェット燃料(Jet A-1)と同等の性能をもち、安定的な供給が可能とされている。

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 FT-SPK(FT合成油)

フィッシャー・トロプシュ法(Fischer-Tropsch、FT)を用いて合成されたパラフィン系炭化水素を航空燃料として利用する技術。バイオマスや化石資源といった原料を利用できるため、化石燃料の使用量削減とCO2排出量の低減に寄与できる。

しかしながら、この手法は高度な技術を要するため、大規模な商業生産を実現するには技術的な成熟度やコスト競争力の向上が求められる。

 ATJ-SPK(アルコール合成パラフィン)

主にエタノールやイソブタノールなどのアルコールを出発原料とし、これらを一連の化学プロセスを経てジェット燃料に適した炭化水素へと変換する製造方法。バイオマス由来のアルコールを原料とするため、再生可能資源の利用が可能である。

その一方で、アルコールの製造にはバイオマスの大量生産と安定供給が必要となるほか、ジェット燃料への転換プロセスは多段階で複雑な化学反応を伴うため、FT-SPKと同じく実用化には技術的な課題が残る。

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 SAF(持続可能な航空燃料)のメリット

SAFを活用するメリットは大きく以下の2つが挙げられる。

 CO2の排出量削減

SAFはバイオマスや廃棄物などの再生可能資源から製造されるため、化石燃料への依存度を低減できる。また、従来の化石燃料と比較して原料調達から輸送、製造、使用、廃棄に至るまでライフサイクル全体でのCO2排出量も低い。Action Renewablesによれば、従来のジェット燃料と比較して最大80%の削減が実現できるとの報告もある。

 新たな産業や雇用の創出

SAFの製造・供給体制の構築は、関連する技術開発、設備投資、原料調達など、多岐にわたる分野での経済活動を活性化させる可能性を大いに秘めている。関連産業が成長することで、製造業にも新たなビジネスチャンスが生まれることが予測される。

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 既存のシステムを活用できる

SAFは従来のジェット燃料と物理的性質・化学的性質が類似しており、現在の空港設備や給油システムに大きな改修をすることなく導入できるのが大きな利点だ。インフラ整備に伴うコストや時間を最小限に抑えつつ、環境負荷の低減を実現することが可能となる。

 SAF(持続可能な航空燃料)のデメリット・課題

一方で、SAFは開発途上の技術であるがゆえに、コスト面や原料供給の面でいくつかの問題がある。

 開発コストが高い

SAFは従来のジェット燃料と比べると、原料調達から製造、設備投資に至るまでの技術が完全に確立されていない。そのため、通常2~5倍のコストがかかるとされている。生産量の増加によって、価格は今後低下していくと見込まれるが、SAFの普及をより促進するためには、官民連携による投資拡大や政策的支援が不可欠といえよう。

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 供給量が不足している

供給量が不足している背景には、大きく2つの要因が考えられる。1つがSAFの製造方法が確立しておらず、大規模な商業生産体制が整っていないこと。そして、もう1つがトウモロコシやサトウキビなどの可食原料をバイオマス燃料で使用することに対し、食料との競合リスクから制限や禁止を設ける国・地域が増えていることだ。これにより、SAFに使える原料が限定され、供給拡大に一定の制約を与えている。

 まとめ

顧客や投資家、そして社会全体が持続可能性を重視する昨今、脱炭素の取り組みは企業経営における不可欠な要素となりつつある。SAFの活用は、その一手として現実的かつ効果的な選択肢となるだろう。

開発コストや供給体制といった課題はあるものの、先行して取り組むことが将来的な競争優位性を築くことができるといっても過言ではない。今こそ、自社の事業活動とサステナビリティを結びつける第一歩として、SAFの可能性に積極的に目を向けるべき時ではないだろうか。

次世代エネルギーの基礎知識