お役立ち資料一覧へ お問い合わせ
MENU CLOSE
  1. Stockmark
  2. coevo
  3. 技術/テクノロジー
  4. AI半導体とは?市場規模や今後の動向について

AI半導体とは?市場規模や今後の動向について

AI半導体とは?市場規模や今後の動向について

AIの進化とともに、その計算処理を支える半導体の技術も飛躍的な進歩を遂げている。AI半導体とは、機械学習やディープラーニングなどの処理に最適化された半導体のことだ。従来の汎用CPUとは異なり、並列処理能力や演算密度に優れ、高速なデータ処理と効率的な電力消費を実現する設計が施されている。本記事では、AI半導体の概要や市場規模、今後の動向などについて詳しく触れていきたい。

AI半導体を支える主要メーカー4社を徹底解説!
設計から製造・材料技術まで、リーダー企業の動向を一気に把握
『半導体メーカーの最新動向レポート【2025年4月版】』を無料で読む

 AI半導体とは?

AI半導体とは、AIの処理を効率化するために特化して設計された半導体のことを指す。従来の汎用的なCPUだけでは、大量のデータ処理や複雑な計算が必要なAIタスクへの対応に限界が生じつつある。AI半導体の代表格としては、エヌビディアが開発するGPUが挙げられる。これらは高い並列処理性能を活かし、ディープラーニングなどの用途で広く利用されている。また近年は、モバイル・エッジコンピューティングの普及に伴い、エッジAI向けの半導体の開発も進められている。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 AI半導体の種類

AI半導体は大きく4つの種類が存在する。それぞれの特徴や用途について解説したい。

 CPU

「Central Processing Unit」の略で、コンピューターシステムの中核を担い、さまざまなタスクを処理する汎用プロセッサのことをいう。中央処理装置とも。制御ユニット、演算論理ユニット(ALU)、およびレジスタなどで構成され、これらが協調してデータの処理やプログラムの実行を担う。しかし、並列処理能力が限定的で、GPUやASICなどの専用ハードウェアと比較すると、ディープラーニングのトレーニングや推論能力はやや劣る。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 GPU

「Graphics Processing Unit」の略で、コンピューターにおける画像や映像の描画処理を専門に担当するプロセッサだ。GPUの最大の特徴はその優れた並列処理能力にある。​数千もの小さな演算ユニットを持ち、多数の計算を同時に行うことで大量のデータを迅速に処理することが可能だ。その高い並列処理能力により、近年では機械学習やAIの分野でも活用が進んでいる。

 FPGA

「Field-Programmable Gate Array」の略で、製造後でもユーザーが自由に回路構成をプログラムできる半導体。プログラム可能な論理ブロックが格子状に配置され、その間を縦横に走る配線で接続する「アイランドスタイル」と呼ばれる構造が一般的だ。この柔軟性によって、特定の用途や要件に合わせた最適な回路設計が可能となる。

FPGAはハードウェアレベルでの処理を行うため、ソフトウェアベースの処理と比較して遅延が少なく処理効率に優れている。ただし、FPGAのプログラミングには専門的な知見が伴うため開発難易度が高い。また、高度なAIタスクに対応するためには高性能なFPGAが必要となり、コスト面での課題も存在する。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 ASIC

「Application Specific Integrated Circuit」の略称で、特定の機能や用途に特化して設計・製造される集積回路(IC)の一種。特定用途向け集積回路、AI処理専用チップとも。特定のアプリケーションに最適化されているため、汎用プロセッサと比較して高速な処理効率を実現できる。ただし、製造後の回路変更が困難であり、設計段階から用途に合わせた詳細な計画が求められる。

AI半導体の主な種類と特徴

 AI半導体の市場規模や需要動向について

2024年にアメリカのGartner社が行った調査によれば、2024年のAI半導体市場の総売上は約713億ドルに達し、前年から33%の成長が見込まれている。そのうち、コンピューターエレクトロニクス分野のAI半導体が全体の47%にあたる334億米ドルを占める、他に自動車エレクトロニクス分野が71億ドル、コンシューマーエレクトロニクス分野が18億ドルと予測されている。

また、イギリスの市場調査会社であるOMDIAによれば、AIデータセンター向けチップ市場は2022年の約100億ドル弱から2024年には780億ドルに成長。2029年には1510億ドルにまで到達すると推測している。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 AI半導体を巡る各国の動き

AIの計算能力を飛躍的に向上させる半導体は、国家の技術力や経済競争力を左右する重要な要素となりうる。そのため、アメリカや中国、EU、日本などは自国における半導体産業を強化して供給網の確保や技術革新を推進する政策を次々と打ち出している。本章では、AI半導体を巡る各国の最新の動向と戦略について解説したい。

 アメリカ

アメリカは、長年にわたり半導体の多くをアジア諸国から輸入してきた。しかし、地政学的リスクや供給網の脆弱性を背景に、国内での生産体制を再構築する動きがある。2022年に成立した「CHIPSおよび科学法」により、約527億ドルが国内の半導体製造と研究開発に投資されることとなった。​この政策は、AI半導体を含む先端半導体の国内生産体制強化において大きな追い風となった。​

また、2025年1月に発足した第2次トランプ政権は、自国の産業保護を一層重視する姿勢を見せている。同政権は自国の半導体規制を厳格化する案を検討する一方で、主要同盟国にも中国の半導体産業への規制強化を迫っている。現時点では新たな規制の詳細は公表されていないが、バイデン前政権が同年1月に導入したAI半導体の輸出規制「AI Diffusion Rule」をどう扱うかが注目されている。この規制は、中国を含む一部の国への先端AI半導体の輸出を厳しく制限する内容であったが、アマゾン・ドット・コム社とマイクロソフト社、エヌビディア社などの米国主要テック企業は、過剰な規制が同盟国が中国の半導体産業への依存度を高めるきっかけを作ってしまうことを危惧し、見直しをトランプ政権に提言している。

 EU

2025年1月、アメリカは保護政策の一環でEUの17ヵ国に対してAI半導体などAI関連技術の輸出規制を強化した。この措置は、AI技術の拡散を制御し、国家安全保障を強化する目的で実施されたもので、EUの半導体産業に影響を与える可能性がある。

このような背景から、EUは米中に対抗する形で独自の政策を打ち出している。
2025年2月、欧州委員会委員長であるウルズラ・フォンデアライエン氏は、AI分野に総額2000億ユーロ(約31兆4000億円)を投資するプロジェクト「インベストAI」を発表。同プロジェクトの柱といえるのが「AIギガファクトリー」である。新たに200億ユーロの基金を立ち上げ、EU内に現行の4倍となる10万個以上の最新AI半導体を搭載した施設を4カ所建設する予定だ。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 中国

アメリカの半導体関連製品の輸出規制を受けて、AIチップの国産化を目指している。AI半導体分野において新興企業の台頭が著しい。DeepSeek社が開発した「DeepSeek-R1」が記憶に新しいだろう。OpenAI社の「o1」と比べてトレーニングコストを95%削減したことで一躍注目を集めた。

また、中国は2015年に中国国務院が発表した「中国製造2025」、2017年に発表した「新世代人工知能(AI)発展計画」をみても分かるように、世界を牽引するものづくり大国へと発展するビジョンを描いている。

特に、ファーウェイ社が開発を進めている最新モデルのAI半導体「Ascend 910C」は、推論性能でNVIDIAの高性能GPU「H100」の60%を達成したとしている。同製品は2025年3月末までに量産される見込みだ。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 日本

日本政府の後押しを受け、国内各地で半導体工場の建設・竣工が始まっている。その代表例が熊本県菊陽町に建設されたTSMCの工場だ。​政府は、TSMCの第1工場に対して最大4760億円、第2工場には7320億円の補助金を提供し、総額で約1兆2000億円の支援を行っている。

さらに日本政府は、半導体・AI分野の投資を促進するという観点から、10兆円以上の規模の支援を行う「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を策定。この支援には、次世代半導体の研究開発や設備投資への補助、金融支援、法制上の措置が含まれる。

特に注目されるのが、2022年にトヨタ自動車やソニーグループなど8社が出資して設立したラピダスだ。同社は2027年に回路線幅2ナノメートル級の次世代半導体の量産を目指す。

 AI半導体の性能向上で今後期待できること

今後、AI半導体はどのような技術発展や性能向上が期待できるのだろうか。ポイントとしては大きく2つが挙げられる。

 1. 計算能力の向上

トランジスタの微細化技術が進むことで、より多くの演算ユニットをチップに積載することが可能となり、消費電力を抑えながら大規模なAIモデルの学習や推論を高速化できる。さらに、AI専用アクセラレータの進化によって画像認識や自然言語処理タスクで飛躍的な処理能力が発揮される。

 2. 汎用性の向上

大規模言語モデルや画像生成モデルなどの処理には、高いメモリ帯域幅が必要である。HBMなどの高帯域幅メモリ技術の導入により、より複雑で精度の高いモデルをリアルタイムで動かせるようになる。これにより、自動運転や医療診断、金融リスク管理など、多種多様な領域での展開ができるようになるだろう。

半導体業界の全体の動向をチェック!
『2025年、半導体の市場動向』を見てみる

 AI半導体のメーカー・企業

最後に、AI半導体を開発するメーカーや企業について紹介する。

 エヌビディア

2022年にChatGPTがリリースされてから2年が経過し、追随する競合他社が多く登場している。そのなかでも、ひときわ存在感を示し続けているのがエヌビディアだ。特にAIサーバー向けGPU市場においては、2024年時点で約92%のシェアを占めており、競合を大きく引き離している。2025年の後半には新型のAI半導体「BlackwellUltra」を投入することを発表。推論処理におけるTensorコア性能は前世代比で1.5倍の処理性能を誇るとしている。

【2025年4月版】エヌビディアの最新動向はこちらのレポートでチェック!
レポート(無料)を見てみる

 富士通

2024年11月、アメリカのAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)社と2027年までにAI半導体のソフトウェア基盤を開発することを発表。​この提携では、富士通の次世代Armベースプロセッサ「FUJITSU-MONAKA」とAMDのGPU技術を組み合わせ、AIを開発できるようなプラットフォームを提供することを計画しているという。開発中の「FUJITSU-MONAKA」は、エネルギー効率と高性能を両立させる設計となっており、AIやHPC、データセンターなどでの活用を見込んでいる。

 インテル

​インテルは、AI半導体の開発において多角的な戦略を展開している。2024年には「AI Everywhere」を掲げ、AI対応のプロセッサやシステムの提供を強化する方針を示した。​2024年4月に発表された「Gaudi 3」は、AI処理に特化したアクセラレーターで、高度な演算性能と優れたコスト効率を実現。NVIDIA H100と比較すると、最大40%高速な学習処理、最大2倍の推論処理性能を発揮するとしている。

AI半導体を支える主要メーカー4社を徹底解説!
設計から製造・材料技術まで、リーダー企業の動向を一気に把握
『半導体メーカーの最新動向レポート【2025年4月版】』を無料で読む

 Preferred Networks(プリファードネットワークス)

Preferred Networksは2014年に設立された日本のAIスタートアップ企業だ。深層学習に特化したプロセッサー「MN-Core シリーズ」だけでなく、大規模言語モデル「PLaMo(プラモ)」もリリースしており、まさに垂直統合型の開発を行っている。2024年12月には、高効率なAI向けクラウドサービスを提供するために三菱商事、インターネットイニシアティブと合弁会社を設立し、AI向けクラウドサービス「Preferred Computing Platform」の提供を予定している。

 ブロードコム

ブロードコムは、AI半導体市場において急速な成長を遂げているファブレス企業だ。​同社は、Google、メタ、アップル、バイトダンスなど主要ハイテク企業向けに特注型AIチップを提供。2024年12月には、AI関連収益の急増と将来の成長見通しにより、時価総額が初めて1兆ドルに到達した。

また、2025年1月には、次世代半導体の量産を目指すラピダスとの連携が発表し、2ナノメートルプロセスのチップサンプルを2025年6月までに提供する計画である。

主力製品である「Jericho3-AI」は、スーパーコンピューターや大規模データセンター内のAIタスクを最適化に寄与する。特にAI計算タスクの時間短縮とシステム効率向上を実現する製品である。

AI半導体を支える主要メーカー4社を徹底解説!
設計から製造・材料技術まで、リーダー企業の動向を一気に把握
『半導体メーカーの最新動向レポート【2025年4月版】』を無料で読む

 AI半導体の今後と未来

AI半導体は、AI技術の進化とともに間違いなく切っても切り離せない役割となるだろう。これからの数年間でさらなる市場の成長が見込まれる。今後さらに高性能なAIチップが登場すれば、AI技術の実用性と普及速度は加速し、産業の枠を超えて社会そのものに大きな変革をもたらすことが予想される。

目まぐるしく変化し続けるAI市場そして半導体の市場動向に常に目を光らせ、グローバル企業を含めた世界の全体像を捉えていくことが肝要といえるだろう。

2025年 半導体市場の予測まとめ