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【前編】起業家2人から学ぶ-アイディアを事業に昇華させる実践論

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経済や社会環境の不確実性が高まる中、新たな顧客体験や新規事業の創出への機運が高まりつつあり、新規事業部門への期待が大きくなっている。一方で、新規事業の基ととなるアイディアの創出やそのブラッシュアップに悩みを抱える新規事業担当者も多い。

株式会社ビザスクでは「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションに掲げ、ナレッジプラットフォームを提供している。個人の知見を企業の様々なニーズにつなぐことで、実際に経験したことで得られた知識や意見の価値を最大化し、世界のイノベーションに貢献している。

今回は株式会社リクルートの元Ring事務局長の岩本氏をファシリテーターに迎え、株式会社ビザスクの代表取締役CEOの端羽氏とストックマーク株式会社の代表取締役CEOの林との対談の中で、自らの起業経験からアイディアをいかに事業に昇華させたのか、大企業の新規事業部門向けにサービスを提供する立場から垣間見える課題や推進のポイントについて伺った。

前編となる本記事では、「事業アイディアの見つけ方」や「アイディアが事業に昇華する瞬間」「新規事業を推進するポイント」についてお伝えします。

※当記事は2021年2月9日に開催したオンラインセミナーの内容をもとに作成しています。

原体験から生まれる事業アイディアの見つけ方

――岩本:お二人のビジネスの起点となったアイディアと、そのアイディアを事業に昇華させたステップを教えてください

端羽:創業以来変わらない想いとしては、「個人が活躍できるもの」を作りたかったという点ですね。当時は2011年頃で、アメリカでAirbnbやUberが流行していることを知って、個人が売り手になれる時代が来ていると思いました。そこで当初は「10年金融業界で働いた自分が選ぶ電卓」のような、人が経験から物をお薦めするキュレーションECサービスを作ろうとしていました。

しかしその構想をECサイトに詳しい方に話したところ「全然ECの立ち上げが分かってない」とこてんぱんにやられたんです(笑)。だけど、すごく勉強になったと思ったんですよね。私が緻密に作ったビジネスプランに駄目出しを受けて「この時間にお金を払いたい」と思ったのが最初のきっかけです。

調べてみると既にアメリカでは同様のビジネスモデルが成功していて、「日本ならではのサービスを作ったら凄いチャンスなんじゃないか」と思い、色々な専門領域を持った方に相談しながらビザスクを作りました。

林:私の場合は最初に創業のアイディアがあったというより、まず「自分で事業をやる」と思いがあってストックマークを立ち上げました。起業することは決めたが何をやろうかと言うことで、共同創業者の有馬とビジネスプラン100本ノックをやりました。そこで出てきた案は「タピオカドリンクを売ろう」とか「爆買いのインバウンド需要に向けたビジネス展開をしよう」とか、今展開しているAIとは全く異なる領域です。

だけど今振り返って自分にとって重要だったのは『ビジネスプランを100本出すこと』ではなく『ビジネスプランを出すためにニュースキュレーションサービスを使い倒して情報収集を行ったこと』でした。その経験を通して「あれ、これって本当に自分がほしい情報が出てこないな」と気付いたんですね。これは果たして世の中を良くしていると言えるのだろうか、と。

それが原体験となって情報感度の高い人達が情報をスムーズに管理できるアプリを作ろうと決め、ストックマークという会社名にもなっている個人のブックマーク管理アプリをリリースしたのが最初のプロダクトでした。

アイディアが事業に昇華される瞬間とは

――岩本:アイディアから事業に変わったと感じた瞬間はどこにありましたか。

林:当時展開していた個人向けブックマークアプリをある大企業の方が知り、今のAnewsに繋がるアイディアを持って「一緒にやらないか」と誘ってくれた時がそうですね。

その方は自動車部品メーカーの広報部長だったのですが「自動運転やセンシングなど自動車の市場構造が変わる中で、社内の人たちはまだガソリン車の部品のことを考えている」と危機感を感じ、全社を変革していかなければいけないと考えている方でした。

そこで、グローバルの最先端の事例を全社にニュースとして流し、マネジメントがコメントを付ける事によって全社員に危機感を持たせたいのだと仰っていました。

彼の考えにものすごく共感して「分かりました。2週間でプロトタイプつくってくるんで買ってくださいね。」と言いました。当時約10万DLされていた個人向けアプリも全て捨てて開発を進め2週間後に完成したシステムを持っていったら「面白い、買う」と言って実際に購入してくれたんです。

それが今のAnewsに繋がっています。自分の心に素直に従いながら、自分が心から共感できる方向に進み、その領域で能力を高めると、他の人からも共感を得られるようになる。それが1人2人という単位から10人、20人に広がっていき、「これがビジネスになるということなんだろうな」と感じました。なので緻密にビジネスモデルを構築したというよりは、かなり発見的にビジネスを作ってきた、という感じですね。

端羽:私は、最初は中小企業、個人向けのサービスを展開していました。まさに自分たちのような中小企業の人たちが使えるサービスとして始めようとしたんですね。だけど、中小企業やベンチャー企業が、信頼関係のない個人にお金を払ってアドバイスをもらいに行くかと言うと、なかなかそんなことはなくて。

なのでまずは私自身10年働いてよく分かっている金融業界向けのサービスにしようと思いました。そういう風にきちんとお客様を絞ってみると、「信頼できる人にはお金を払って話を聞きたい」という方が増え、徐々に金融業界以外にも領域を広げ、今のビザスクの形になっていきました。

お客様の声を聞きながら、お客様が本当に信頼できる方をスピーディーにマッチングするという実績を積み上げてきた結果、事業としてきちんと運営出来るようになりました。また、海外の同様の事業では比較的容易に集まるアドバイザーの方が日本では集まりづらいという課題もありました。それは1時間単位でスポットコンサルを実施できるビザスクliteをリリースして障壁を下げることによって解決することが出来ました。

――岩本:目指した世界観は変わらないけれど、事業の形は変わっている。そこについては抵抗やもどかしさは無かったのでしょうか。

端羽:ないですね。順番が変わっただけで、やりたいことは変わってなくて、ビジネス領域で個人が活躍できるようにする、という思いは変わっていません。順番が変わっただけという感じですね。

2人の失敗から学ぶ、事業を創り・育てるための勘所

――岩本:今振り返って、過去の自分にアドバイスはありますか。

林:BtoCのサービスから始めましたが、最初からBtoBに行くべきだったと思っています。そもそも当社のメンバーは大企業出身者が多く、私も商社出身でITもやったこともない、その中でBtoCの移り気なユーザーさんの行動を分析しても全く分からなくて。

おそらく当時の個人向けのアプリとしては最も進んだAIが実装されていたプロダクトだったのですが、ユーザーにとってはそんなことは関係ないじゃないですか。最先端の技術はありつつも、個人向けの顧客体験を作るところは非常に弱かったので、最初から自分の土地勘のあるBtoBでやった方が良かったと思っています。

端羽:結構林さんのお話とも似ているのですが、「最初はお客様のことをちゃんと知らなかった」という反省があります。私は外資系企業出身なのですが、外資系企業は社員にクレジットカードが支給されているんですよ。その感覚でいたので、サービスの決済方法も最初はクレジットカードしか用意していなかったんです。しかし、請求書発行が必要な企業も多いことを知って、本当に顧客のことを知らず、甘かったと思います。

もっとお客様のことを知って事業を設計していれば作らなくても良かった不要な機能もたくさんありました。やっぱり顧客に寄り添うことの大切さや、顧客を理解することから生まれるビジネスチャンスがあると感じています。

実際の事例を一つご紹介させて頂くと、ビザスクではアドバイザーによってお支払いいただく料金が異なるのですが、いちいち稟議を通すのは本当に大変だと、お客様からご意見を頂いたことがありました。

そのご意見を頂いて、インタビュー発生都度料金をお支払いいただく形から、事前に大体100万円分ほどのチケットをご購入頂き、インタビューが発生した際に事前購入したチケットを「この人は9枚、この人は8枚」というように消化するように変更しました。

それにより私たちの立場からも需要が読みやすく、キャッシュフロー的には非常に良いし、お客様にとっても稟議を通しやすく気軽に使いやすい状態を作ることが出来ている。こういうものこそが本当にお客様の声から生まれたビジネスの工夫ですよね。

大企業で新規事業を推進するためのポイントとは

――岩本:お二人とも元々は大企業に所属されていましたよね。今現在新規事業推進を支援するサービスを提供し、そして外に出たからこそ分かる大企業の新規事業推進が難しいと感じられているポイントを教えて下さい。

端羽:私たちのようなベンチャー企業だとVCの方にOKと言ってもらえたらお金を投資いただけるので選択肢がたくさんあります。しかし大企業だと決裁者は決まっていて、その人に納得してもらわなきゃ事業を進めることが出来ない。そこはすごく難しいと思いますね。

林:そうですね。その難しさを払拭するために、私は組織文化を変えていくべきだと思っています。

1つ目は意識です。一人ひとりが新しい物事に対する受容を高めていく。

2つ目は制度。勤怠管理一つ取っても、フレックスにするのか、固定制にするのかで人々の考え方が変わってくる。一つひとつの業務を高度化していく、意思決定を変えていく、人材の評価を変えていく、そういう一個一個の行動を変えていくことで人の思考が変わると思っています。

人間の思考は行動から変わっていくので、例えば当社のサービスでニュースを読んで、それをどう考えるかのトレーニングを1日1回するだけでも1年にすると365回思考実験ができます。そういう日々の行動から変えていくべきかなと思っています。

――岩本:一方で、大企業だからこそできることもすごくあるのではないかと思っていて、もっと大企業のこの部分を社内で活用していけばいいのにみたいなアドバイスはありますか。

端羽:私たちは大企業の方の新規事業プランコンテストの審査委員をさせていただいたり、運営をお手伝いしたりすることがあります。時々すごく驚くのは、アイディアが出てきたときに、「既に●●部がやってます」という声が出てくるんです。大企業の社内情報共有の難しさを感じますよね。

また「そのアイディアは10年前チャレンジして失敗しているからもう駄目だ」という議論もあります。10年前と今では世界が大きく異なるため今チャレンジしてみたら成功する可能性だってあるはずなのに、そんな理由で企画が通らないんです。

そういう意味でも散らばっている知見を集めつなぎ、さらにアップデートしていくのも大事だと感じています。

林:端羽さんの仰る通り、大企業だからこそ多様な経験をした人の繋がりがあると思っています。当社のAnewsは社内の弱い繋がりを作ることで仲間を見つけていくというサービスなので、Anewsを通じて共感しあえる仲間を作ってほしいんです。1人だと難しいかもしれないけど、3人、10人、同じ発想を持ってるんだと思ったら、勇気付けられるし、同じプロジェクトを進めようという思いになると確信しています。

後編では人材にフォーカスし、「新規事業を進める上で持つべきスタンス」「ビジネスサイドの人材のテクノロジーとの向き合い方」や「明日から出来る行動」についてお伝えします。