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アグリテック(Agritech)とは?市場規模や企業事例について

アグリテック(Agritech)とは?市場規模や企業事例について

農水省調べによると、自営農業を主業とする人口は2023年時点で約116万人となっている。2019年からの5年間で20万人以上減っており、このペースでは100万人を割る未来もそう遠くはない。

そこで近年注目が集まっているのが、ロボットやICTを活用した新時代の農業「アグリテック」だ。今回はアグリテックの利点や導入事例、今後の普及に向けた課題などを解説していく。

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 アグリテック(Agritech)の意味とは?

アグリテックは、アグリカルチャー(農業)とテクノロジー(技術)をかけ合わせた造語で、ICTやロボット技術を用いて農作物を生産する農業のあり方を指す。具体的には、AIやドローン、ロボット、近年は通信衛星などを活用する動きもみられる。

農林水産省の2022年度の発表によれば、日本の食料自給率はカロリーベースで38%と世界でみても決して高くない。さらに、日本の高齢化率は世界トップクラスだ。農業も他の産業と同様に高齢化が進んでおり、ICT技術による省人化、ノウハウや知見のデータベース化は早急に対処をしなければならない状況にある。

 アグリテック(Agritech)とスマート農業の違い

スマート農業とは、ロボットや情報通信技術の活用により、作業を省力化しつつ生産量の増加を目指す取り組みを指す。現時点では、アグリテックとほぼ同じような意味合いで使われていることが多い。

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 アグリテック(Agritech)が注目されている理由

アグリテックが注目される背景には、農地の後継者不足や輸入頼りの食料需給といった問題がある。また、近年は地球温暖化による異常気象が頻発しているため、世界規模でみても農業の省人化・自動化が急務となっている。

 後継者が不足している

冒頭で述べた通り、日本国内における農業従事者の数は2015年には約176万人だったのに対し、2020年は約136万人、2022年には約123万人まで減少している。さらに問題なのが、農業従事者に占める高齢者(65歳以上)の割合が2020年時点で約70%に達している点だ。それに対し、2022年度の新規就農者約4.6万人のうち、49歳以下の割合は約1.7万人にすぎない。

農業は長年の経験則や勘などの暗黙知によって成り立っている部分も大きい。高齢の農業従事者がノウハウを承継せずに引退してしまうと、新規就農者はゼロから知見を獲得する必要がある。中長期的にみれば、農業全体の生産性を下げることにもつながりかねない。
これらを回避するために、アグリテックの取り組みは急務といえよう。

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 日本の食料自給率が低下している

2022年度時点で、日本の食料自給率はカロリーベースで38%となっており、統計を開始した1965年の73%からほぼ半減している。農林水産省は、生産者と消費者の交流活動推進、食品産業と連携した国産品の普及などさまざまな対策を講じているが、それでも減少を食い止めるので精一杯なのが実情だ。現在、政府が掲げている「2030年までに食料自給率(カロリーベース)45%」という目標を達成するには、アグリテックによる生産体制の強化が欠かせない。

また、アグリテックにはデータ分析によって育成プロセスを最適化し、より高品質な農作物を生産できるというメリットもある。国産ブランドを安定した価格で市場に供給し続けられれば、食糧需給を輸入に頼る現状は着実に改善されていくことだろう。

 異常気象が頻発している

近年、地球温暖化による異常気象が農作物や畜産物にさまざまな被害を及ぼしている。例えば、新潟では2023年夏の記録的猛暑によって米の等級低下が相次ぎ、その年の被害額は135億円と試算された。

また、山形では同年の猛暑によって鶏6,899羽が死亡したという報告もある。こうした気候変動による作物への被害を最小限に抑えるためにも、気象予測や病変検知といったアグリテックの技術は速やかに普及されるべきだろう。

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 アグリテック(Agritech)の市場規模や将来性

アグリテックに関する研究開発は、日本を問わずさまざまな国々で実践されている。今後の市場規模は、日本国内だけでも600億円以上、世界では220億ドル以上に拡大するとみられており、今後の動向から目が離せない。

 世界におけるアグリテックの市場規模

世界におけるアグリテックの市場規模は、2022年時点で243億ドルを記録している。
元々、2019年から2025年の間に最大220億ドルまで上昇するといわれていたが、この予測すらも早々に上回ってしまった。これを受け、現在の市場予測は「2030年に774億ドルまで成長」と大幅に上方修正された。なお、国別にアグリテック系企業の数を見ると、2022年時点でアメリカが約3,500社と世界一であり、そこにイギリスとカナダが600社程度で続いている。

 日本におけるアグリテックの市場規模

アグリテック市場は日本国内でも拡大を続けており、2023年度は前年度比6.7%増の約323億円になると推計された。その背景には、2025年までにほぼ全ての農業従事者がスマート農業を実践することを目標に発足した「スマート農業実証プロジェクト」の存在がある。

同プロジェクトの足掛かりとして運用が始まった「WAGRI」では、各種先端技術によって気象や収穫量などさまざまなデータの予測が可能となっている。2023年度時点で、プロジェクトの実証エリアは全国217地区にまで広がっており、今後もますます拡大していくことは間違いないだろう。

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 アグリテック(Agritech)の課題

農業従事者にとって、アグリテックをより身近な存在にするためには、解決しなければならない課題が2つある。1つは、やはり導入コストの問題だ。自動走行農機は1,000万円以上になる製品も多く、WAGRIのような農場管理システムも月数万円のランニングコストがかかってしまう。製造・運用コストを可能な限り低減させつつ、さまざまな実証実験によって費用対効果の高さを証明していくことが、今後の普及活動には欠かせない。

もう1つの課題は、アグリテック製品の大半が先端技術の産物であるがゆえ、運用可能な人材が限られている点だ。とりわけ、日本は農業従事者の約70%が65歳以上であり、導入のハードルは高い。今後は、単に製品を普及させるだけでなく、実地指導などによる人材育成の推進も必要となってくるだろう。

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 アグリテック(Agritech)を行っている世界の企業・スタートアップの事例

アグリテックの取り組みは、すでに世界各地で実践されている。中でも紹介したい事例が、以下の4社で行われているプロジェクトだ。

 Agrobot

農業用ロボットを専門とするスペインの会社「Agrobot」は、イチゴを傷つけることなく大量収穫できるロボット「Eシリーズ」を開発した。単に収穫を行うだけでなく、各種センサーや画像処理ユニットにより、十分に熟した果実だけを選定できるのが大きな強みだ。商品化を目指し、現在はアメリカ・カリフォルニア州で研究が進められている。

 BioCarbon Engineering

環境ビジネスを手掛けるイギリスの会社「BioCarbon Engineering」は、ドローンによって1日10万本の植林を行うプロジェクトをミャンマーで実施している。同社の取り組みでは一人のパイロットが最大6台のドローンを同時に操作することで、高速な植林を可能にしている。これに加え、地形や地質の画像解析に基づいた肥料選定も行うため、植林後の生存率も高いとされている。

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 Sundrop Farms

南オーストラリアの砂漠地帯に広がる農場「Sundrop Farms」では、太陽と海水によって年間17,000トンのトマトが育てられている。その仕組みは、温室外部に敷き詰めたソーラーパネルで太陽光発電を行い、そのエネルギーで海水を蒸留・淡水化するというものだ。海水によって夏場でも適温を保ちやすい一方、冬場は電力不足によってガスをある程度使わざるを得ないという課題があり、これを解決すべく研究が進められている。

 Badia農場

アラブ首長国連邦のドバイでは、ペルシア湾岸地域6か国初の商業垂直農場「Badia農場」にて、2017年12月から野菜の栽培が行われている。垂直農場とは、LEDを光源とする水栽培装置を、文字通り垂直に積み重ねた屋内設備だ。虫害の心配が無用なため、農薬などの化学物質は一切使われない。また、同じ水をリサイクルして繰り返し使うことで、水使用量を一般的な農場の10%程度に抑えている。

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 アグリテック(Agritech)を行っている日本の企業・スタートアップの事例

最後に、日本国内におけるアグリテックの事例も紹介したい。

 クボタ

農機メーカーのクボタは、2017年6月から自動運転機能が搭載されたトラクター「アグリロボ」シリーズの取り扱いを開始。アグリロボは自動運転のみならず、障害物の検知や作業ルートの自動生成なども可能となっており、利便性と安全性を両立した作りになっている。

 ヤンマーホールディングス

農機メーカーのヤンマーホールディングスは、2018年10月より自動走行制御技術が搭載されたトラクター「スマートパイロット」の取り扱いを開始した。スマートパイロットの大きな強みは、人工衛星と固定基地局の2か所から電波で位置を求めることで、より高精度な作業を可能としている点だ。

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 オプティム

IT企業のオプティムは、先端技術を活用した農業プロジェクト「スマートアグリフード」を実施している。例えば、ピンポイント農薬散布・施肥技術テクノロジーでは、農薬の使用量を抑えつつ、作物の品質を均一化することに成功した。

 ファームノート

農業IoT企業のファームノートは、クラウド型の牛群管理システム「Farmnote color」を提供している。同サービスは、活動低下や発情兆候といった個体の状況をリアルタイムで検知できるほか、収集したデータを自動で図表化してくれる優れものだ。

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 まとめ

先端技術を活用した新時代農業「アグリテック」について、注目される背景や今後の普及に向けた課題などがお分かりいただけたことだろう。アグリテックに関する企業事例は、本記事で紹介した以外にも数多く存在する。興味のある方は、ぜひこの機会に農業分野のさまざまな最新技術を検索してみてほしい。

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