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アート思考とは?活用するためのフレームワークや企業事例をご紹介

アート思考とは?活用するためのフレームワークや企業事例をご紹介

本来、アート思考とはアートを創造する際の思考法のことだが、ビジネスにおけるイノベーションの創造にも有用である。昨今の激しさを増す競争社会の中で、イノベーションを生み出すことは生存可能性を高める有効な手段であり、企業が成長していく上で必要不可欠だ。今回は、ビジネスにおけるアート思考について解説する。

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 アート思考とは?

アート思考とは、これまでにある既存概念にとらわれず、個人の価値観や感情といった内面から発想をめぐらせ、独自性のある自由な発想を生み出す方法だ。

明治大学サービス創新研究所アート思考研究会によれば、アート思考は「アーティストがアートを生み出す過程で用いる特有の認知的活動」であるとして、アーティストの創造性に焦点を当てている。彼らはこの創造性が生まれつきの資質ではなく、日常の習慣から発展するものであると述べている。アート思考のプロセスも、まず「自分の感情を深く掘り下げる」というステップから始まる。そのため、個人の感情や思考によって独創性が高まりやすく、イノベーションの創出との親和性が高いといえる。

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 研究開発におけるアート思考の重要性

現代の市場は国際化が進み、世界情勢の影響を受けやすく不確実性が増している。また、人々のニーズや価値観も絶えず変化し多様化の傾向が顕著だ。こうした状況の下で、アート思考が持つ重要性は以下のように捉えられる。

 独自性のあるアイデアや価値の創出

製造業の研究開発には、新規性や独創性のある発想が不可欠だ。現代の競争が激化している状況下で生き残るためには、企業固有の価値を創出し磨く必要があるためだ。

また、AIが代替できる業務がますます増えるなか、独創的な思考や発想が人間の強みとなる。アート思考は、独創的なアイデアを醸成し、発展させるための有効な手段となり得るのだ。

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 既成概念にとらわれない考え方

アート思考は、既成概念や常識にとらわれず、新しい視点で物事を捉える能力を育むことにも貢献する。これまでにある社会やシステムを見直すことで、新たな課題やビジネスの機会を見つけることができるかもしれない。新しい価値を生み出し、ビジネスの成果を最大化するためにも、アート思考の重要度は高いといえるだろう。

 目標達成への原動力

新規事業の成功率が低いなか、持続的な事業展開には強力な原動力が必要だ。アート思考は、個人の感情やイメージを基にした発想を促し、自身の価値観に沿って考えを具体化していくプロセスだ。自身の価値観に基づいて取り組むことで腹落ちしやすく、目標達成への意欲を高めることができるだろう。

また、アート思考はアイデアを生み出す前に、自身が叶えたいイメージを創造する過程を含む。そのため目標や信念が一貫したものとなり、進むべき方向を明確にする。この点でも、アート思考は、事業の進展においても力強い支援となるだろう。

 ほかの思考法との違い

アート思考は従来の改善を重ねていくタイプの思考法とは異なる。特に比較される、デザイン思考とロジカルシンキングとの違いについて解説する。

 デザイン思考との違い

デザイン思考は、デザイナーにならって、開発を行う際に自己や企業の視点ではなく、実際にサービスや製品を利用するユーザーの視点に立脚し思考する方法だ。ユーザーや社会の視点から考えることで、本当に必要なものや本質的な課題が見えやすくなる。デザイン思考は、他者を起点にしてイノベーションを創出する思考法といえる。これに対してアート思考は、主観的視点から発想を導き出すため、大きく異なるアプローチである。

関連記事:デザイン思考が新規事業創出に有効なのはなぜ?特徴やプロセスを解説!

 ロジカルシンキングとの違い

ロジカルシンキングは論理的思考法ともいい、問題や事象に対して根拠をもとに筋道を立て論理的に結論を導き出す方法である。矛盾なく問題から解決に導くことができる思考法だ。原因の特定や対策案の立案、計画の策定に役立つ。また、ほかのメンバーに物事や計画を説明する際にも、ロジカルシンキングを活用して分かりやすく伝えることができる。ロジカルシンキングは既存の問題に対する思考法であり、アート思考のように無から有を生み出す考え方とは異なる。

 アート思考のメリットと注意点

アート思考はイノベーション創出に寄与し、自身の原動力にもなる思考法であると同時に注意が必要な点もある。以下に、アート思考のメリットと注意点について説明する。

 アート思考のメリット

アート思考は、個人の価値観や感情を起点として発想を促すため、従来の枠にとらわれない斬新なアイデアを生み出しやすい。新たな視点からのアプローチは、革新的なサービスや製品の開発につながるだろう。

また、アート思考で導き出されたアイデアの独自性を発展させていけば、競合他社との差別化を図る手助けとなる。これにより、新たな顧客層の獲得や、新規市場の開拓など、企業の成長の促進にも寄与するだろう。

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 アート思考の注意点

アート思考は独創性のある発想が生まれやすい一方で、ほかのメンバーなどの共感が得にくくなる場合がある。また、主観的な発想を重視することから、自身の考えに偏りが生じたり、独りよがりな思考に陥ってしまったりする可能性もある。このことから客観的な評価や市場受容性との不一致を引き起こす場合がある。

これらを念頭において、ほかのメンバーと積極的なコミュニケーションを取り、認識合わせを意識的に行うことが重要である。また、アート思考を発想の起点とする場合であっても、論理の補強や構築に、そのほかの思考法も活用することをおすすめする。

 アート思考のフレームワーク

ここではアート思考をサポートしてくれる有用なフレームワークについてご紹介する。

 アートイノベーションフレームワーク(TM)

「アートイノベーションフレームワーク(TM)」は、京都大学と凸版印刷株式会社の共同研究によって開発されたアート思考をビジネスに応用するための手法である。このフレームワークは、アーティストの思考プロセスを「問題提起型アプローチ」の5段階に分け、使いやすく体系化されている。5段階は以下の通りだ。

1.発見
自分自身の興味関心を見つけ、好奇心を高める。興味は面白さだけでなく、美しさや価値があると感じるものでも良い。

2.調査
発見した対象を調査し、どのような特徴や独自性があるのかを理解する。同時期だけでなく、過去にも類似しているものや考え方がないかを探すこともポイントだ。

3.開発
調査した情報を基に、オリジナリティがある表現方法を考える。自身のアイデアを他と差別化するために、独自の手法やアプローチを構築することが重要だ。

4.創出
開発した独自のアプローチに基づいて、新たなアイデアや製品を具現化する。
自身の創造力を最大限に発揮して、今までにない魅力的で革新的な成果物を生み出す過程だ。

5.意味づけ
創出した成果物について、その誕生の理由や背景を言葉にして他者に伝える。他者からの評価を受け、作成物に意味や価値を付与する。

 ビジョンスケッチ

ビジョンスケッチの手法は、アーティストが作品を創出するときの思考プロセスを模倣し、アート思考を養成するための有用な手段だ。具体的には、「問題提起力」「想像力」「実現力」「対話力」の4つに焦点を当てて、アーティストの思考を自分なりの言葉で表現する力を鍛えていく。思考のステップは以下の通りだ。

1.接点を持つ
多くのアート作品に触れる。また、その際に自分が感じた感情や思考を振り返る時間を持つようにする。他のアーティストの作品からインスパイアを受けることで、自身のアート思考を刺激する。

2.追求
特に心が動いたアート作品を選び、なぜそれが感動を引き起こしたのかを深く探求する。その作品に込められたメッセージや表現方法、技術などについて考え、詳細に分析する。この過程で、アート作品に隠された要素や意図を理解しようとする姿勢が育まれる。

3.言語化
ア―ティストの思考回路を自分のイメージで再構築し、自分なりの言葉で表現していく。アーティストの視点やアプローチを理解し、自分の言葉で解釈することで、アート思考を徐々に形成する。

4.内在化
アート作品のインスピレーションを取り入れ、それを自己の思考に統合することで、自分なりの解釈や気づきが生まれる。この過程で、アート思考が内面化され、自身の創造力や視点が深化する。

アート思考の鍵となる要素は、「内在化」だ。アーティストの思考をトレースすることで、独自のアート思考を培うことができる。アート思考が身につけば、描きたいビジョンを具体化する力となる。

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 アート思考を取り入れた企業事例

ここではアート思考を企業活動に取り入れている事例をいくつかご紹介する。

 NTTデータ

NTTデータは、アート思考によるイノベーション創出を探求するために、東京大学大学院情報学環との共同研究プロジェクトを実施した。このプロジェクトでは、アートの制作過程を分析し、社会課題の解決に革新的な方法を見つけ出すアプローチを探求した。アーティストの制作過程から学んだ創造性やアイデアの発想方法をビジネスに応用することを目指し、プロジェクトの成果をビジネス活動に取り込んだパイオニア的なプロジェクトだ。

 日本マイクロソフト

日本マイクロソフトは、DXの分野をさらに拡大させるために「Art Thinking Workshop」というアート思考のプログラムを導入している。ゼロからイチを創る思考を学ぶためのもので、マイクロソフトの顧客である企業の社員を対象とし、アーティストが講師となってアート思考を学ぶプログラム構成となっている。このワークショップはフランスで始まり、日本でも展開されている。

 Apple

Apple社のiPhoneは、アート思考の要素がその誕生に深く関与している。iPhoneは、当時の携帯電話と一線を画す斬新なデザインと機能性を持っており、世界中で大きな成功を収めた。iPhoneの開発は単に顧客ニーズに従って行われたわけではなく、Apple社の優れたデバイスを生み出すという核となる価値観と、創業者のスティーブ・ジョブズのアート思考によるビジョンに基づいている。Appleは、単に製品を提供するだけでなく、その製品に芸術的な要素や感覚を取り入れ、人々の日常を変えるような体験を提供することを追求した。このアート思考によって、iPhoneは単なる通信手段を超えた存在となり、新たな市場を創出する原動力となった。

 凸版印刷

凸版印刷では、前章で紹介した「アートイノベーションフレームワーク(TM)」を活用したフィールドワークを開催している。このプログラムは、新事業の創出を目的とする人材育成プログラムであり、従来の常識や枠組みにとらわれず、斬新な発想や新たなアプローチを見つけること目的とし、さまざまなアートに触れながら新たなビジネスチャンスを探求する力を養うようなプログラムが組まれている。

 まとめ

アート思考はイノベーションを促進し、企業にとって新しい価値を創出するための強力な思考法だ。競争が激化し、常に変化するビジネス環境において、アート思考は企業の生存と成長において大きな助けとなる。積極的にアート思考を取り入れ、アイデアの魅力を引き出し、ビジネスに転換するスキルを磨くことで、市場での差別化や競争力の向上の実現に近づけるだろう。アート思考は創造性を引き出す鍵であり、未来に向けたビジョンの実現に向けて、大いに活用されるべき価値ある思考法だ。

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