2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
地球環境への負荷を減らすべく、世界中の国々が化石燃料からの脱却を目指し、再生可能エネルギーへの転換を図っている。
現段階で、決定的に安定供給できる再エネは確立しておらず、風力発電、太陽光発電、地熱発電などさまざまな方法で研究が進められている。
そのうちのひとつで注目されているのがバイオマス発電だ。バイオマスとは、家畜による排泄物や食品廃棄物などバイオ燃料を原料とする発電方法を指す。本記事では、このバイオ燃料に焦点をあてて解説する。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
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目次
バイオ燃料とは、食品廃棄物や農業廃棄物、家畜の排泄物、製材廃材などを原料とする燃料のことをいう。バイオマス燃料とも呼ばれ、化石燃料の代替エネルギーとして注目されている。バイオ燃料の歴史は意外にも古く、1997年に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」では、バイオ燃料の活用について言及されている。
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バイオ燃料が生物資源を原料とする燃料なのに対し、合成燃料は二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成して製造される燃料のことを指す。二酸化炭素も水素も、発電所・工場の排気ガスや大気中などから生成するため、バイオ燃料と同じく再生可能エネルギーに分類される。
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バイオ燃料の種類は、大きく「バイオエタノール」「バイオディーゼル」「バイオガス」「バイオジェット」の4つに分類される。
トウモロコシやサトウキビなどの植物を蒸留させて精製されるバイオ燃料。ガソリンの代替品となるためガソリンと混合して、飛行機や自動車などの燃料に用いられている。なお、バイオエタノールは混合率に応じて、E5、E10、E20など世界共通で表記統一されている。
パーム油、ひまわり油、使用済みの天ぷら油などを原料に精製されるバイオ燃料。軽油の代替燃料になるため、発電機やトラック、自動車、重機などの燃料として活用できる。
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家畜の排泄物(ふん尿)や、生ごみなどの有機性廃棄物を原料とする気体状のバイオ燃料。メタン発酵させて精製される。主に発電燃料やボイラーなどの発電や熱供給に利用されることが多い。
バイオジェットは、木材チップ、ユーグレナやミカヅキモといった微細藻類(びさいそうるい)、木材などを原料としたバイオ燃料。その名のとおり、航空燃料に活用される。2027年から、ICAO(国際民間航空機関)によって航空分野のCO2排出量の削減義務化が実施されることから、国際的にバイオジェット燃料導入の機運が高まると予測される。
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2021年のOECD-FAO Agricultural Outlookによれば、世界全体でバイオエタノールは約60%がトウモロコシ、25%がサトウキビと、80%以上を2つの原料で占めている。また、バイオディーゼルについては約75%が植物油、20%が廃食油だ。
引き続き、バイオ燃料の多くはサトウキビやトウモロコシといった農作物から生産されると見込まれている。食糧と競合しないことで期待されるセルロース系エタノールは、当面、大幅な生産増加は見込めない状況とされている。
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バイオ燃料の市場規模の予測や各国の生産量における動向を紹介する。
Stratistics Market Research Consultingの調査によれば、世界のバイオ燃料市場は2023年に1,444億5,000万米ドルに達し、年平均成長率7%で成長。2030年には2,319億5,000万米ドルに達するとの予測を出している。
株式会社富士経済が2022年に行った調査によると、2030年以降はバイオジェット、合成燃料、合成メタノールの市場が本格化するとみられる。2050年にはバイオディーゼルなどのバイオ燃料とあわせて合成燃料など水素由来燃料の需要が増え、市場規模は80兆347億円と大幅に拡大すると予測している。
バイオエタノールについては、アメリカとブラジルの2ヵ国で世界の生産量の約75%を占めている。次いで8.3%で中国、4.8%でEUと続くが、圧倒的な差が存在している。
一方、バイオディーゼルの生産量では、EUが32.3%で首位。18.1%のアメリカ、15%のインドネシア、12.2%のブラジルがそれに続く。
バイオ燃料の主な生産国はアメリカ、ブラジル、EUだが、2021年から2026年でアジアの生産量は、ヨーロッパの生産量を上回るとみられ、世界全体の1/3近くを占めると予想されている。
なかでも、インドネシアとマレーシアにおけるバイオディーゼル混合率目標、インドにおけるエタノール政策がこの成長を支えるとみられる。
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バイオ燃料にはいくつかメリットがある。まず1つが安定的な供給ができる点だ。風力や太陽光、地熱はそれぞれ天候や環境などの要因に左右されてしまう。その点、バイオマス発電は季節や時間帯を問わず安定供給が実現できる。
もう1つが液体や固体、気体など柔軟に状態変化ができ、保存がきく点。そのため、幅広い領域で活用できるほか、必要なタイミングで必要な量を利用できる。
また、化石燃料の代替となること、従来の供給インフラをほぼそのまま活用できることなども大きなメリットといえよう。
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再生エネルギーの一翼を担う存在として期待されているバイオ燃料だが、まだ多くの課題が残っている。まず大きな障壁のひとつが製造コストだ。バイオ燃料は化石燃料よりも製造プロセスが多く、さらにバイオ燃料の素材を収集・運搬するコストも発生する。結果的に燃料コストが高くなってしまうのだ。
もうひとつが食料との競合である。先に述べたように、現時点でバイオ燃料の多くはサトウキビやトウモロコシといった農作物から生産されているため、穀物高騰や食料不足といった問題を加速させる恐れがある。
最後の課題が地球環境への影響だ。原料である植物を燃焼した際に発生する二酸化炭素は、植物の光合成によって相殺される、つまりバイオ燃料はカーボンニュートラルであるという認識をもたれることが多い。
しかしながら、栽培や加工、輸送などライフサイクル全体で考えると、必ずしもそうとは言い切れない。また、燃料のために森林を伐採すると回復までに長い歳月がかかるうえに、生態系の破壊や土砂災害のリスクを高めることにもつながってしまう。
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最後に、バイオ燃料の研究開発を行っている企業事例を紹介する。
「サステオ」と呼ばれるバイオ燃料を開発・販売する国内屈指のバイオベンチャー。2016年には藻類エネルギーの研究を行っており、2020年に次世代バイオディーゼル燃料を、2021年にはバイオジェット燃料の供給を開始。政府専用機、航空自衛隊戦闘機のほか、JR東海、商船三井グループなど、官民問わず積極的に導入されている。
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トヨタ自動車は、バイオエタノールを燃料に走行する小型のハイブリッド車の生産を目的として、ブラジルのサンパウロ州に新工場建設を決定。投資額はおよそ450億円。2024年に販売を開始し、22ヵ国に輸出する予定だ。
農業機械、建設機械、小型船舶などの製造・販売を行うヤンマー。1980年代からバイオディーゼルやバイオガスの研究を行っている。2000年代に入り、バイオ燃料の研究開発を本格化。2011年からはグループ会社であるヤンマーエネルギーシステムが植物油燃料を使ったバイオマス発電機「バイオディーゼルコージェネレーションシステム」をリリース。廃食油が大量に出る食品工場などで導入されている。
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バイオ燃料は、地球環境にやさしい再生可能エネルギーとして注目されている。しかしながら、先に述べたように、ライフサイクル全体で考えるとそうとは言い切れない。カーボンニュートラルを実現するには、コスト面、地球環境への影響、さらには食料との競合といった課題を乗り越えなければいけない。
ただ、産官学連携でバイオ燃料の実証実験や研究開発を行う事例も増えてきており、これらの課題も近い将来、解消に向かうものと思われる。