mail
MENU CLOSE
  1. Stockmark
  2. coevo
  3. 製造業
  4. コア技術とは?未来の事業を担う技術を育てる戦略の要

コア技術とは?未来の事業を担う技術を育てる戦略の要

球体を持つ手の画像

長い年月をかけ発展してきた大企業は、本業で培い蓄積してきた他社より秀でている何かしらの技術を持っている。しかし、未来を見据えた長期戦略の事業成長の要としてコアとなる技術を明確にし、戦略に組み込めている企業はどれくらいあるだろうか。

また、グローバリゼーション、インターネット技術の発展、顧客ニーズの多様化や社会環境の急速な変化など、さまざまな要因によって将来の予測が困難なVUCA時代となっている。不確実性が高まる世の中においては、ぶれることのない戦略を敷き要であるコア技術を高めることによって、差別化・差異化要素を作り競争優位性を確立することが重要である。

今回は、コア技術について改めて理解を深め、コア技術を活用した戦略の要点について解説する。

 コア技術の意味や定義とは

コア技術とは、競争優位性を有する技術、各事業の中核を担う技術のことを指す。ユーザーの声を製品改善に役立てて、アップグレードしていく過程でコア技術は洗練されていき、競合他社とは一線を画する自社独自の技術となる。

しかし、技術の進歩が格段に早くなっている昨今において、このコア技術の見定めができていない、または強化が行えていない場合、企業の成長が停滞するだけでなく、他社に追い抜かされることも考えられるのだ。

 コア技術と基盤技術の違い

コア技術に似たものに基盤技術がある。コア技術は、各事業固有に必要な技術であるのに対し、基盤技術は各事業を横串で支える会社の「背骨」を担う技術を指す。コア技術は基盤技術を基にしているため、基盤技術、コア技術のどちらかが欠けても競争上の優位性を築くことは難しい。二つがバランス良く共存することで、事業化において生産的な研究開発を行うことができる。

コア技術と基盤技術の違いについて
基盤技術の組み合わせにより、事業の中核を担うコア技術となる

 コア技術の重要性

なぜ近年、コア技術の重要性が増してきているのだろうか。

高度経済成長期は、資源が乏しい日本がものづくりを通して、世界へプレゼンスを示すことができる大きな転換期となった。戦後しばらくは、あらゆるものが不足していたため、「モノを作れば売れる」という時代でもあった。

しかし、その後局面は変わり、ただ生産するだけでは売れなくなり、品質の良いサービスや製品が求められるようになった。しかし、良いサービスや製品が世の中に行き渡ると、多くのニーズは満たされてしまい、良い製品や技術だけではモノが売れなくなったのだ。

近年は、インターネットや技術の進展によって、画期的な新技術を使用した製品であっても、数年経たないうちに競合に模倣されコモディティ化してしまう。コモディティ化が進むことにより、企業は価格競争せざるを得ない状況に追い込まれるのだ。これは、国が発明を保護する特許制度によって特許権を得た製品も例外ではない。権利期間が終了すれば同じことの繰り返しとなる。また、顧客はインターネットによって世界中の情報にアクセスできるようになりニーズはより多様化・複雑化している。

これらの状況は、経済産業省の「2020年度版 ものづくり白書」で企業を対象とした調査からも伺える。

ものづくり企業の経営課題(大企業)
「2020年度版 ものづくり白書」を参考にストックマークにて作図

ものづくり産業の大企業の中で経営課題として、「価格競争の激化」を挙げている企業の割合が一番高い。

事業環境・市場環境の状況認識
「2020年度版 ものづくり白書」を参考にストックマークにて作図

また、事業環境や市場環境の状況認識において、「より顧客のニーズに対応した製品が求められている」と回答した企業の割合が72.9%と最も高いことから、多様化し細分化される顧客のニーズに応えられる製品作りの必要性を感じている企業が多いことがわかる。さらに、「製品の品質をめぐる競争が激しくなっている(64.6%)」、「差別化された・独創的な製品・技術の必要性がより高まった(50.4%)」などからもコア技術の重要性の高まる要因が見て取れる。※)

多くの企業が認識しているとおり、顕在ニーズや潜在ニーズにかかわらず技術で顧客ニーズに応えることが求められる時代となっている。顧客の声に耳を傾け、要望を実現させるためには、洗練された技術がなければ実現は難しいだろう。つまり、製造業が成長し続けるためには、自社技術の中からコア技術を洗い出し磨き続けることが重要なことなのだ。また、急速に変化する社会環境やニーズに適応するためにも、将来の事業を支える根幹となるような次世代のコア技術を生み出し続けることも忘れてはいけない。

※)経済産業省「2020年度版 ものづくり白書」
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529001/20200529001-1.pdf

 コア技術を見定める

コア技術を見定めるには、まず自社の技術の棚卸を行った後、多面的かつ長期的な視点から分析をする必要がある。

 技術の棚卸を行い、現状を分析する

自社のコア技術を見定めるためには、まず技術の棚卸が欠かせない。技術の棚卸を進めていくと、技術を一覧化・データベース化すること自体が目的化してしまうことが往々にして起こる。しかし、技術の棚卸の目的はコア技術を見定め、その技術がどのようにしたら生かせるのかを念頭におかなければならない。

 多面的に分析する

コア技術を見定める際は、自社の立場からの評価だけでなく、自社が保有するリソース(人材/研究開発予算/研究設備)、競合優位性、市場将来性、ユーザーの評価など、複合的な観点から判断する必要がある。

自社による評価だけでなく客観的な評価を取り入れる理由は、顧客ニーズや市場が求める技術と大きく隔たりがある場合、投じた研究開発費などのコストを回収できずに頓挫する恐れがあるからだ。

 長期的な視点で見極める

先述したように、ビジネス市場全体が成熟化している昨今では、昨日までの勝者が、明日からの勝者であるとは限らない。GAFAに代表される新興テクノロジー企業の台頭によって、業界編成が根底から覆るといったことが起こり得るのだ。

目先の競合優位性や将来性ではなく、長期的に自社が勝ち続けられる分野・技術は一体どこになるのか、突き詰めて考えなければいけない。

 事業成長につなげるコア技術戦略とは

コア技術を見定めたら、「コア技術の強化」「次世代のコア技術の創造」の2軸での取り組みが重要である。

 コア技術の強化

コア技術の強化とは技術を「深化」させるということだ。顧客の声を集積し、それを製品に反映させるサイクルを回すことで、技術は洗練され競合他社との差異化要素となり得る。また、コア技術に集中的に資源投入や、特許等の出願や権利化といった知財戦略を行うことで、市場の高いシェア率を維持することができる。つまり、コア技術の強化は効率的な事業活動を推進する戦略のひとつと言える。

ここで東レの例をご紹介しよう。東レの炭素繊維事業は、1961年に研究を開始し、商業生産を開始したのは10年後だ。また、多くの化学企業が開発から撤退や縮小するなかで、長期的な目標である空機用途を見据えて、技術を磨きながら粘り強く取り組んだという。景気に左右されることなく投資を続け、将来のニーズに向けた研究開発の成果として、現在ボーイング787型機など多くの航空機に採用されるにまで至っている。また、ひとつのことを深く掘り下げることにより、新たな気づきや発見があるという「深は新なり」の考えのもと、研究者や技術者は日々研究開発を続ける極限探求が東レを支えているのだ。※)

※)東レ株式会社HP CTOメッセージ
https://www.toray.co.jp/technology/cto.html

事業貢献が求められるR&Dに必要なこととは?
・R&D部門が求められている役割の変化
・R&D部門を起点とした事業開発で起きている壁
・事業につながるアイディアが出る環境の作り方
これらがわかる資料はこちらからダウンロード

 次世代のコア技術の創造

グローバル化に伴い社会課題が顕著となり、社会課題の解決に技術が求められる時代となっている。技術の強化・深化だけではなく、社会課題を解決に導ける技術を生み出す必要があるのだ。そのためには、過去の成功や実績にとらわれず、新しいアイデアや視点、組み合わせの発想を用いて、コア技術を周辺領域や別の要素技術と掛け合わせイノベーションを起こすことが肝心だ。つまり、次世代のコア技術の想像とは「探索」型の研究開発ということだ。

例えばキヤノンは、創業当初から基盤要素技術とコア技術を把握・認識し、次々と革新的な事業を展開してきた。代名詞であるカメラやプリンターなども、基盤要素技術とコア技術の組み合わせによって生まれた事業である。近年、立ち上げたネットワークカメラ、メディカルシステム、産業機器などの新規事業も、キヤノンが保有する基盤要素技術と、M&Aによって傘下に加わったグループ会社のコア技術を掛け合わせて生まれた事業だ。※)

他にも世界初のカップ麺となった 「カップヌードル」 の製法である「瞬間油熱乾燥法」は天ぷらをヒントに生まれた。3Mの「ポストイット」も、強力な接着剤の開発中に、たまたまできた失敗作である「よくくっつくけど簡単にはがれる」接着剤をもとにして誕生したものだ。これらのように、画期的な商品のヒントや掛け合わせのアイデアは思わぬところに存在し、それらが将来の事業を担う技術となることもあるのだ。

現在の延長から未来を想像するフォアキャスティング型思考では、手の届く範囲での改善・成長に帰結しがちだ。将来を担えるようなコア技術を創出するためには、未来のあるべき姿を描き、その理想の未来を実現するには今何をすべきかというバックキャスティング型思考も合わせて活用することが重要になるだろう。

※)キヤノンHP キヤノンの研究開発
https://global.canon/ja/technology/introduction.html

 研究者に求められていること

コア技術とは、顧客が望む価値と結びついていなければならない。そこに価値があれば企業は成長できるのだ。一方で、顧客の望む価値は、ビジネス環境や時代の変化によって低下することもあるし、場合によっては消失することもあるだろう。

つまり研究者は、将来、顧客に望まれる価値と結びつくような技術の深化と探索がミッションとなり、常に探究心を持ってイノベーションを起こし続けることが求められている。これからは、目の前の研究だけに囚われるのではなく、時代の流れや、社会課題、顧客の求めることに目を向け、未来を創造する視点が研究者にも必要だろう。