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空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)は車じゃない?実用化はいつ頃になる?

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都市部での短距離移動や長距離輸送を効率的に実現する次世代の移動手段として空飛ぶクルマに注目が集まっている。「空飛ぶクルマ」とは、道路を走る車がそのまま空を飛ぶものではなく、航空機と車の特性を併せ持つ新しい移動手段である。その多くは電動垂直離着陸機(eVTOL)と呼ばれるもので、ヘリコプターと比べて静粛性や低コスト運用が可能である特徴を活かして、都市部の渋滞回避や短距離移動の効率化を目的としている。
現在、複数の企業やスタートアップが開発を進め、試作機の飛行テストが相次いで成功を収めている。本記事では空飛ぶクルマの定義や実用性について解説していく。

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)の定義とは?

ここでは、空飛ぶクルマの仕組みや類似する移動手段であるヘリコプターとの違いについて解説する。

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 空飛ぶクルマの仕組みについて

空飛ぶクルマとは、地上を走る従来の自動車と航空機の特性を融合させた次世代の移動手段である。その多くは電動垂直離着陸機(eVTOL)と呼ばれるもので、電力を動力源とし垂直離着陸が可能であることが特徴だ。

空飛ぶクルマの構造は主に、「マルチコプター」と「固定翼」の2つに分類される。マルチコプタータイプは複数のプロペラを用いることで垂直離着陸を得意としており、短距離移動に適している。構造が簡素で、機体が小さめであるが、プロペラを回すために燃料を多く消費することになる。

一方固定翼タイプは、飛行機のような翼を利用して効率的に長距離を移動することが可能である。固定翼を備えるためには機体サイズが大きくなりがちだ。

このように、空飛ぶクルマは用途に応じた設計がなされ、近未来のモビリティとして注目を集めている。

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 空飛ぶクルマとヘリコプターの違い

空飛ぶクルマは、従来のヘリコプターと比較して軽量でエネルギー効率が高いことが特徴だ。また、電力を動力源とすることで、運用コストの削減や環境負荷の低減を実現している。離着陸時の騒音値は65dBとヘリコプターと比べ1000分の1以下程度で、静粛性が大幅に向上しており、都市部での運用において騒音問題を最小限に抑えられることも大きな利点といえよう。

比較表
項目 空飛ぶクルマ ヘリコプター
推進
方式
電動モーター+プロペラ
(eVTOLが主流)
ガスタービンエンジン+ローター
離着陸
方式
垂直離着陸(VTOL) 垂直離着陸(VTOL)
動力源 主に電動(バッテリー、ハイブリッド) 主に燃料
(ジェット燃料、ガソリン)
騒音
レベル
比較的静か(電動モーター) 大きい(エンジン+ローターの音)
操縦
方式
自動操縦・遠隔操作が可能な機体もある パイロットによる手動操縦
航続
距離
短距離(数十km〜数百km) 中距離(数百km〜1000km以上)
定員 1〜4人が主流 数人〜十数人
運用
コスト
低め(電動化による低コスト化) 高額(燃料+メンテナンス費用)

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)の市場規模と開発状況

空飛ぶクルマは、各国の企業や研究機関が開発に取り組み、技術革新が進むことで実用化に向けた期待が高まりつつある。日本国内では政府の支援や規制緩和の動きが活発化しており、また海外でもさまざまな企業が市場をリードする技術を発表している。ここでは、日本と海外における空飛ぶクルマの開発状況をそれぞれ解説したい。

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 空飛ぶクルマの開発状況<日本>

国土交通省の資料によれば、2040年までに空飛ぶクルマ市場は急速に拡大し、全世界で約160兆円規模に達すると予測されている。日本でも、この成長市場を見据えて、都市部や離島・山間部での新たな移動手段としての活用が検討されている。

 大阪・関西万博での空飛ぶクルマの商用運行は見送り

2025年に開催される「EXPO 2025 大阪・関西万博」で注目を集めていた「空飛ぶクルマ」の商用運行計画が見送られることとなった。その主な理由は、機体の安全性審査に時間がかかり、必要な許認可が万博開催までに間に合わないことが判明したためである。今後は、規制整備や技術開発を進めることで、空飛ぶクルマの本格的な社会実装が期待されている。

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 空飛ぶクルマの開発状況<海外>

世界各国で空飛ぶクルマの開発競争が激化しているなか、実用化目前に迫る事例が増えてきている。中欧スロバキアのクレインビジョン社(Klein Vision)は、自社開発した空飛ぶクルマ「エアカー(AirCar)」で、世界で初めて都市間有人飛行を成功させた。同社は、2021年6月28日にスロバキアのニトラから首都ブラチスラバまで約70キロを35分で飛行し、安全に着陸。この成功によって、空飛ぶクルマが実用化の一歩手前まで来ていることが明らかとなった。

一方、アメリカではフロリダ州を拠点にしているアーバンリンクエアモビリティー社が先進的なエアモビリティーサービスの開発を推進中だ。同社は2025年第4四半期に米国連邦航空局(FAA)と米国運輸省(DOT)の認証プロセスを開始し、2026年夏までに商業運転を開始する計画を発表。都市間輸送を含む次世代エアモビリティーの実現に向けた取り組みが進行している。

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)はなぜ必要?メリットについて

空飛ぶクルマは、渋滞や輸送の効率化、緊急時の迅速な対応、さらには新たな観光体験の提供など得られるメリットは多岐にわたる。

 都市の渋滞の緩和

空飛ぶクルマは、都市部の深刻な渋滞問題を緩和する新たな移動手段として期待されている。その最大の特徴は、道路に依存せずに空間を利用した柔軟な交通システムを実現できる点だ。これによって、従来の地上交通の枠組みを超えた移動ができ、通勤時間の短縮や交通事故の軽減につながる。特に、交通量の多い都市部では空飛ぶクルマを活用することで道路の負担を減らし、全体的な交通流の改善を図ることができるだろう。

 災害時の活用

空飛ぶクルマは、災害時の物資輸送手段として大きな可能性を秘めている。空飛ぶクルマは地上交通に依存せずに移動できるため、救急車やトラックでは到達できないアクセスが困難な被災地へ迅速な支援が可能となるのだ。また、コンパクトな設計と垂直離着陸能力をもつため、狭いスペースでも運用が可能であり、救援活動を効率化する。

 観光体験としての可能性

観光分野においても新たな可能性を生み出す存在として注目されている。その大きな魅力は、上空から観光を楽しむという従来にはない体験を提供できる点だ。自然豊かな地域では、空中から山々や湖の絶景を堪能できるツアー、都市部ではエアタクシーとして街並みやランドマークを巡るサービスなどが想定される。

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)の実用化における課題

実用化の期待が高まる一方で、解決すべき課題も多い。特に技術的側面では安全性や運用効率の向上が求められ、社会的側面においては法整備やインフラの構築が急務といえよう。

 技術的課題

空飛ぶクルマを実用化させるには、いくつかの技術的課題を乗り越えなければならない。とりわけ、バッテリー性能の向上や軽量化、安全性の強化は最優先事項とされている。

 法整備と規制(免許の新設)

法整備と規制の確立も必要不可欠だ。特に、空域の管理や安全基準の設定には国際的な協力が求められるため、各国における共通ルールの整備が課題となっている。都市部での運用を想定すると、日本国内の航空法や道路交通法を改正し、新たな規制を設ける必要がある。また、操縦者のライセンス制度の新設や自動運航技術の規制なども検討すべき重要なポイントといえよう。

 インフラの整備

インフラの整備においては、特に離発着場の新設・拡充が重要な課題として挙げられる。また、効率的な運用には充電ネットワークの構築や、整備拠点の確保も必要だ。これらのインフラを実現するためには、自治体と民間企業の連携がキーポイントとなる。さらに、交通管理システムのデジタル化やインフラの標準化を進めることで、空飛ぶクルマの普及がよりスムーズに進むだろう。

 社会的受容性

空飛ぶクルマの普及には、新技術に対する社会的受容性を高めることが大切だ。多くの人々にとって、空飛ぶクルマは未知の存在であり、安全性や騒音、環境への影響についての懸念が残っている。これらの不安を解消するには、教育や啓発活動を通じて空飛ぶクルマの利点や安全対策における正しい理解を広めていく必要があるだろう。

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)を開発しているメーカー・会社

空飛ぶクルマの開発には、国内外の多くの企業が参入し、激しい競争が繰り広げられている。
日本においても、この新たなモビリティ分野への期待は高く、大手メーカーが技術開発や実証実験を行っている。特にスカイドライブ、トヨタ、ホンダといった企業は、それぞれ独自の技術とビジョンを掲げ、空飛ぶクルマの実現に向けた革新を進めている。

 スカイドライブ(SkyDrive)

スカイドライブは、2018年7月に設立された日本の企業だ。空飛ぶクルマの開発において、2025年までの実用化を目指しており、さまざまな企業と提携している。

たとえば、九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)との連携では、スカイドライブ社が開発する空飛ぶクルマを活用し、九州エリアにおける地域活性化や観光誘客の促進を行う計画だ。今後、両社はさらに具体的な事業スキームや運航ルート、導入エリアの検討を進め、JR九州の鉄道駅や商業施設を活用した運航ルートの実現を目指すとしている。

 トヨタ自動車

トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、空のモビリティ実用化を目指し、米国のスタートアップJoby Aviation(以下、Joby)とのパートナーシップを強化。トヨタの代表取締役会長である豊田章男氏とJobyの創業者兼CEOであるジョーベン・ビバート氏は「環境負荷の低減」「渋滞の解消」「移動の自由」の実現を共通の目標に掲げ、2019年より協業関係を継続してきた。

その成果として、2024年11月2日Jobyの電動垂直離着陸機(eVTOL)は日本で初の試験飛行を行った。トヨタは、自動車生産で培った技術と経験を活かしながら、空飛ぶクルマの量産化や社会実装に向けた取り組みを進めており、移動の未来を切り開く挑戦を続けている。

 ホンダ

ホンダは、地上、空、さらには海に至るまで幅広いモビリティを提供してきた経験を活かし、新たな移動手段として電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進めている。ホンダが目指すのは、飛行機よりも地上に近い空の新しい移動レイヤーを実現させ、地上と空をシームレスにつなぐエコシステムの構築だ。これにより、移動時間の大幅な短縮と、より快適な移動体験の提供を目指している。

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 空飛ぶクルマ(空飛ぶ車・Flying car)の今後と未来

空飛ぶクルマは、都市の渋滞緩和や災害対応、新しい観光体験など、私たちの生活に多大な恩恵をもたらす可能性を秘めている。電動垂直離着陸機(eVTOL)をはじめとする技術革新が進むなかで、空飛ぶクルマの実用化のカギは技術面や法整備、インフラ構築、そして社会的受容性の課題を克服することにある。

現時点において、各国では2025年から2030年代の商業運航を目標としており、空飛ぶクルマの実現は遠い未来の話ではなく、すぐに訪れるほんの少し先の未来となるだろう。実用化に向けて動く空飛ぶクルマの動向から目が離せない。

参考記事
・国土交通省 「国土交通白書 2020」

https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1213000.html