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LNG(液化天然ガス)は何に使う?LPGとの違い

LNG(液化天然ガス)は何に使う?LPGとの違い

エネルギー資源の安定供給と環境負荷の低減が世界的な課題となるなか、注目を集めているのがLNG(液化天然ガス)だ。燃焼時のCO₂排出量が比較的少なく、火力発電や都市ガスの原料として広く利用されている。本記事では、LNGの用途や市場動向、メリットなどについて解説していく。

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 LNG(液化天然ガス)とは?

LNGとは、天然ガスをおよそ-162℃まで冷却して液体化したもので、主に火力発電や都市ガスの原料として利用されている。体積は気体時の約1/600に縮小するため、効率的な輸送・貯蔵が可能だ。LNGは主にメタンを主成分とし、石炭や石油に比べて燃焼時にCO₂や窒素酸化物(NOx)の排出量が少ないため、クリーンなエネルギー源としても注目されている。

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 LNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)の違い

まず、LNGの主成分はメタンであり、液化によって体積が約1/600に縮小され、効率的な輸送が可能だ。その一方、LPGはプロパンやブタンなどを主成分とし、石油精製の過程や天然ガスの随伴ガスから得られる。また、LPGは空気より重く漏洩時には低所に滞留する傾向がある。なお、熱量の観点ではLNGよりもLPGの方が高いエネルギー密度をもち、同じ体積あたりの発熱量が大きいとされている。

 LNG(液化天然ガス)とCNG(圧縮天然ガス)の違い

LNGとCNGはいずれも主成分がメタンの天然ガスだ。CNGは天然ガスを高圧(約20~25メガパスカル)で圧縮し、体積を約1/250に縮小したもの。液化のための極低温冷却が不要であるため、設備投資やエネルギーコストを比較的低く抑えられる。LNGは液体であるため、同じ容積で比較するとCNGよりも多くのエネルギーを蓄えられることから、長距離輸送を行う大型トラックや船舶などに用いられる。

 LNG(液化天然ガス)とシェールガスの違い

シェールガスは、地下2,000〜3,000メートルの深部にある頁岩(シェール)と呼ばれる細粒の堆積岩の中に閉じ込められた天然ガスの一種だ。非在来型天然ガスとも。従来のガス田とは異なり、岩石の微細な隙間に存在するため、採取には水圧破砕法(フラッキング)と水平掘削技術が必要。あくまで採掘方法の違いであり、そのためシェールガス由来のLNGも存在する。

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 LNG(液化天然ガス)とは何に使う?用途について

LNGの主な用途としては、火力発電所の燃料や都市ガスの原料などが挙げられる。

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 火力発電所の燃料

石炭や石油を使用する発電方式に比べてCO₂や窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、また硫黄酸化物(SOx)やばい塵の排出も大幅に低減することが可能だ。そのため、LNGはクリーンなエネルギー源として多くの国で採用されている。ちなみに、日本ではLNGが火力発電で占める割合は35.6%と石油や石炭を上回っており、主力燃料の1つになっている。

 都市ガスの原料

都市ガスとは、主に家庭や商業施設での調理、給湯、暖房などに使用されるエネルギー源のことだ。LNGは海外から専用のタンカー船で輸入され、受入基地で気化されてから都市ガスとして供給されている。なお、日本はオーストラリア、マレーシア、カタールなど複数の国から輸入しており、特定の地域に依存しない供給体制を構築している。ただし、LNGは国際情勢や物流の影響を受けやすいため、安定供給のためには継続的なリスク分散が求められる。

LNGの用途マップ

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 LNG(液化天然ガス)の市況について

Straits Researchの調査によると、世界のLNG市場規模は2023年に約1,012億米ドルに到達。2032年には8,583.3億米ドルまで拡大し、年平均成長率(予測期間の2024~2032年)26.8%で成長すると予測されている。

脱炭素社会に向けて、各国が石炭や石油からLNGに移行を進めたことが、需要の拡大を後押ししている。実際、2023年の世界のLNG輸出量は約4億1,244万トンに達し、前年比で約3%増加した。なかでもアメリカは前年比13%増の8,615万トンを輸出し、世界最大のLNG輸出国となっている。

しかしながら、米中貿易摩擦やロシア・ウクライナの紛争、イエメンのフーシ派による船舶の攻撃といった昨今の国際情勢によって市場は不安定化している。

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 日本のLNG(液化天然ガス)輸入量はどのくらい?

先に述べたとおり、日本はオーストラリア、マレーシア、カタール、アメリカなどの国からの輸入に頼っているのが現状だ。国内のLNG消費量の増加に伴い、輸入量は2009年から2019年の10年間で約1.2倍に増加している。

イギリスの国際的なエネルギー関連団体「Energy Institute (EI) 」が2023年6月に公表した「Statistical Review of World Energy」の公開値によれば、2023年の日本のLNG(液化天然ガス)輸入量は中国に次いで第2位だ。

 LNG(液化天然ガス)の主要産出国はどこ?

「Energy Institute (EI)  」の同報告書によると、LNGの輸出量の首位はアメリカ、次いでカタール、オーストラリア、オマーン、UAEと続く。2000年代後半にアメリカがシェール革命を起こしたことでTOP3圏外だったアメリカが首位に躍り出た。

なお、天然ガスのパイプライン経由の輸出量は世界で前年比8.3%の減少となった。この背景には、ロシア・ウクライナ紛争が大きく関わっている。ロシアの主要貿易相手国である欧州に向けたパイプライン経由での輸出は急減しており、また、ロシアが経済制裁を受けたことで北極圏で進めていたLNGプロジェクト「アークティックLNG2」も再開の見込みがない。しかしながら、今後もLNGに対する世界的需要は増加傾向にあり、今後はアメリカやカタールなどを筆頭にしたタンカー船による輸送が市場を牽引すると想定される。

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 LNG(液化天然ガス)のメリット

LNGは、CO2排出量が低い、輸送がしやすいなどの観点から、世界での需要は増加傾向にある。ここでは、LNGがもつメリットについて詳しく解説したい。

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 体積が約1/600に縮小、輸送効率が高い

LNGは、天然ガスの温度を約-162℃まで冷却することで液化する。この液化によって体積は気体の約1/600にまで縮小され、同じ容量でより多くのエネルギーを運搬することが可能となる。これにより、専用のタンカー船による大量輸送が現実的となり、長距離の海上輸送においても高い効率を実現できるのが特徴だ。また、液体であることから貯蔵性にも優れており、エネルギー供給の柔軟性を高める要因ともなっている。

 CO2排出量が低い

LNGは、石炭と比較して約45%、石油と比較して約25%のCO₂排出量削減が可能であるとされている。さらに、LNGは燃焼時に硫黄酸化物(SOx)や、ばい塵をほとんど排出しないため、大気汚染の原因となる物質の発生も抑制できる。

 供給が安定している

供給が安定している点としては大きく2つ挙げられる。1つが日本の供給体制だ。日本はオーストラリア、マレーシア、アメリカなど複数の国からLNGを輸入しており、供給源の多様化により地政学的リスクを分散している。

もう1つが輸送方法が多様な点だ。LNGは液体であるため、パイプラインだけでなく専用のタンカーを用いた海上輸送も可能となる。これにより、地理的な制約を受けずに柔軟な輸送が実現されている。

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 LNG(液化天然ガス)のデメリット

従来の化石燃料と比較するとCO₂排出量が低いLNGだが、一方で管理コストがかかるなどのデメリットも存在する。

 管理コストがかかる

LNGの超低温状態を維持するためには高度な冷却設備の導入や維持が必要で、多額の投資が求められる。また、液化されたLNGを安全に貯蔵・輸送するには、専用のタンクやLNGタンカーが必要であり、これらの設備や船舶の運用・保守にも高いコストがかかってしまう。さらに、LNGは超低温で取り扱う必要があるため、作業員の安全確保や事故防止のために厳格な安全管理体制が求められる。​

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 地震の発生リスクを上げる

LNGの原料である天然ガスの採掘時に使用される水圧破砕法(フラッキング)という技術が地震の発生リスクを高めるという指摘がされている。​地中に高圧の水を注入することで岩盤を割ってガスを採取するため、注入される水の量が増えると、断層の間隙水圧が上昇して断層面が滑りやすくなり、地震の発生リスクが高まると考えられているからだ。LNGの採掘が活発に行われている地域では、過去に地震が発生した事例も報告されている。

 輸入率が高い

日本は天然資源に乏しく、国内でのLNG生産がほとんど行われていないため、エネルギー供給の大部分を海外からの輸入に依存している。地政学的な影響を受けないように複数国から輸入しているものの、やはり国際的なエネルギー市場の価格変動に大きく影響を受けてしまうのは事実だ。日本政府は、再生可能エネルギーの導入拡大やエネルギー効率の向上、国内資源の開発などを目下取り組んでいるものの、現時点でLNGの輸入依存から完全に脱却することは難しい。

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 LNG(液化天然ガス)の今後の見通し

LNGは、環境への配慮とエネルギー供給の安定性を両立させる存在として、今後も国内外での需要拡大が見込まれている。一方で、インフラ整備や供給体制、さらには国際情勢に左右されるリスクも抱えていることから、持続可能なエネルギー政策の中でバランスの取れた運用が極めて肝要だ。LNGは、再生可能エネルギーへの移行を支える橋渡しとしての役割を果たしながら、次世代のエネルギー戦略の中核としての可能性を秘めているといえるだろう。

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