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企業変革最前線。価値創造のための企業文化変革と人材マネジメント

企業変革最前線。価値創造のための企業文化変革と人材マネジメント

日揮ホールディングス株式会社(以下、日揮ホールディングス)は、「私たちは、世界を舞台に、技術と知見を結集して、人と地球の豊かな未来を創ります。」を経営理念として掲げたエンジニアリング会社である。日本国内にとどまらず、世界各地で石油精製プラント、石油化学プラント、LNGプラント等、大型プロジェクトを遂行してきた実績を持つ。

今回は、日揮ホールディングスのCDO(デジタル管掌・人財組織開発管掌)花田 琢也氏をお招きし、デジタル戦略と人財・組織開発をテーマとした「価値創造のための企業文化変革と人材マネジメント」について考えを伺った。

※当記事は2021年3月9日に開催したオンラインセミナーの内容をもとに作成しています。

2030年に絶滅しないためのデジタライゼーション

日揮ホールディングスのDX(デジタルトランスフォーメーション)は2017年から始まった。当時、日揮ホールディングスの経営トップがオイル&ガスのメッカであるヒューストンを訪問した際、石油メジャー最大手エクソンモービル社から「2030年には工数は3分の1、スピードは2倍でないと日揮ホールディングスは恐竜の様に絶滅する」「キーワードはデジタル。デジタライゼーション、デジタルジャーニー」との助言を受けたとのことだ。

従来型のプラント建設は約4,000名超の人が建設に携わり、約4年ほどの年月をかけて行うものであり、これら助言は非常に挑戦的なアドバイスであり強烈なメッセージだった。
この助言がきっかけとなり日揮ホールディングスの経営トップが行った事は2つ。
1つ目が花田氏のCDO就任、2つ目がITグランドプランの作成である。

ITの進化は日進月歩であり、その変遷を追いかけるだけでも非常に困難である。毎年のアクションプランでは全く意味がなく、長期的な視点でのグランドプランが必要だ。
そのため、ITグランドプランは「2030年にありたい姿」をバックキャストで構想するところからスタートした。

自社若手・中堅メンバーで作り上げた「ITグランドプラン」

通常、このようなグランドプランはコンサルタントに依頼し作成することが多い。だが、日揮ホールディングスではこれを社内メンバーで作成した。また、作成にあたって「2030年の段階で日揮にいない人間が知恵を絞ったところでピントの外れたものになってくる」との考えから、若手・中堅メンバーを選出した。それらメンバーが中心となり知恵を出し合った結果作成されたのが約100枚にわたるグランドプランである。

こういった取り組みが推進できたのには、いくつか理由がある。まずは花田氏をCDOに就任させグランドプランの作成を決定した経営トップのコミットメントだ。次に、CDOとなった花田氏が当時人事部長であったため、本来であれば困難と言われる「人事部長への説明」が不要であったことも大きな理由である。

更に、グランドプラン推進メンバーを集める際、指示・命令で選出したのではなく、現場メンバーから手が挙がり、優秀な人材が集まったことも理由のひとつだ。また、先を見る目を持つ優秀な人材が花田氏の右腕として存在していたことも大きな理由である。

この様な取り組みで作成されたITグランドプランは、「AI設計」「デジタルツイン」「3Dプリンタ・建設自動化」「標準化・Module化」「スマートコミュニティ」という5つのイノベーションと、直近の課題から将来的な狙いを「キャパシティーアップ」「品質向上・リスク軽減」「新しいデザイン・価値の提案」と並べたロードマップで構成されている。

プロジェクト推進において重要な個人やチームの考え方

人事部長も勤められている花田氏ならではの個人やチームの考え方も伺うことができた。
個人の分類については、感情開放度と思考開放度の2つを軸として人を理論派、現実派、友好派、社交派の4つの枠にわけるSocial Style分析。ここで大事なのは、どういった人材タイプが多い少ないではなく、自身や自身の部門にどういうタイプの人間が多いのかを、しっかり把握することだ。

チームの診断については、構成するメンバーを、まとめ型リーダー、引っ張り型リーダー、アイデアマン、点検確認型、人脈・情報提供型、まとめあげ型、協調型、実務管理型に分けるプレイスタイル分析を行った。ここではプロジェクトメンバー全員の回答からチームを分析した。その際重要なのは、どの型が少ないという点を正確に分析し、それを課題としてチーム全体で認識することだ。

これら分析を社内の1,000人以上にアンケートを行った。この分析の結果が、各部門にはどういうタイプの人間が多くどういうタイプの人間が少ないのか、どこと強化しなければいけないのか、どこをサポートし合えば良いのかという認識に繋がっている。

企業変革に必要な考えとその妨げ

前段でも述べたが、花田氏がDXの実現のために最初に行ったのはビジョンの共有であり、グランドブランの策定である。共通の目標設定を持たない限り、連帯感は生まれず、最終的な着地点も間違えてしまう。花田氏が好きだという言葉「知識は入れるもの、知恵は出すもの」を実践し、2030年にどういった会社にしたいのか、こういった考えを元にメンバーで知恵を出し合った。

また、自身のプロジェクト、言わば自身のテリトリーにだけ熱意を持つのではなく、別のプロジェクトや隣の部署の変革に対しても同様に熱意を持つことが大事だ。つまり、他のテリトリーに対しても自分事としてオーナーシップを持って取り組む。

一方で、企業変革を進める上で妨げとなる存在もある。花田氏はそういった存在を「粘土層」と例えた。デジタルの流れを吸収せずそこで固まってしまい変革の妨げになる層の事だ。これは、過去の成功体験をベストプラクティスとして固執してしまい、ITの進化に合わせて本来残すべきもの、断捨離するものという意識の妨げになる。花田氏は、そういった粘土層にデジタルへの移行を理解している人材やデジタルネイティブを混ぜていく事で浸透率を上げたという。

ニーズの本質、そしてスキーマで物事を捉えない意識

人材・組織についての取り組みから話は変わり、更にその先に必要となる顧客起点の意識についてもお話いただいた。花田氏は十数年前、アルジェリアで日系企業のPRを行っていた際、アルジェリアの企業、パブリックの企業、プライベートの企業に対し「日系の企業に何が出来るのか」を話をしても全く響かなかった。これはレビッドのマーケティング論に当てはまる。

※レビッドのマーケティング論
穴を空けるためにドリルを求めている客に、電気工具屋がドリルの話ばかりしても響かない。客が欲しいのはドリルではなく「空いた穴」、つまり手段にあたるHow toではなく目的にあたるWhyを客に聞く事が必要という論理。

つまり、自分達が「これが出来る」「あれが出来る」といったPRではなく、相手が何を求めているか、ニーズの本質を考えることが重要ということだ。ニーズの本質を捉える上で大事なことの一つとして、スキーマで物事を捉える事への警鐘について、日本から見た世界地図とロンドンを中心とした世界地図では全く異なるというのが例に考えると分かりやすいだろう。

日本を中心とした地図ではロンドンとニューヨークは遠く見えるが、ロンドンを中心とした地図ではロンドンとニューヨークは近い。これが事実である。人によって見え方が異なるという点を理解することが必要であり、自身の既成概念に捕らわれてしまう、つまりスキーマで物事を捉えてしまうと相手のニーズに辿り着けないのだ。この様なスキーマに捕らわれた意識をどう克服していくか、それが1つのキーポイントになる。

プロジェクト担当を専任ではなく兼務で遂行させるポイント

プロジェクトや組織が立ち上がる際に難しい課題と言われるのが、担当者を専任とするか兼務とするかである。クランドプラン策定時のチーム組成方法について解説していただいた。

前述した優秀な右腕となる人間1人を除いて、30人ほどの規模で全員兼務です。エース級を30人、半年という短い期間での勝負だったので兼務で回すことが出来た。それが実現できたのは目指すものも決まってたから。例えば24時間のうちのそれぞれが数時間それに集中するという形。ただ、兼務というのが、ITグランドプラン策定後に苦しむ事にも繋がった。

兼務者というのは優秀が故に様々なことを兼務している。ITグランドプラン策定までは良かったが、いざ実装しようという時に、兼務者では当事者意識を持つことが難しく、それがスケジュール面・切迫感等の意識に繋がらずスピード感が保てなかった。

そういった問題への対応として、実は去年あるタイミングでデジタルの組織を専任という形でEPCを前に推し進めていく部隊に形を変えた。

また、人材を集める際に意識するポイントとして、現状持っているスキルよりも当人の意思を重視した。スキルは必ず変わるものだから、現状のスキルよりも目指してるもの、目標、志向性を重視する。また、もう1つ志向性から見えてくる適性も重視する。適性と志向性を両方見るということが一番だと思います。マネージャーになればなるほどその両方をしっかりと見てやることが必要。

まとめ

今回はDXの実現に向けて、企業文化変革を加速させてるための人材・組織の考え方やこれまでの取り組みについてお伺いした。
グランドプランを策定し、ビジョンを伝え、人を巻き込む。困難でありながら、全社を変革していくためには重要な活動でもある。これまで以上に変化が激しい社会環境になっていく中で、組織全体をトランスフォームしていくことを念頭に、日々の活動に取り組んでいく必要があるのではないだろうか──。