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製造業
近年、PFAS(有機フッ素化合物)に対する規制が、欧米を中心に世界各国で強化されつつある。PFASの耐熱性・耐薬品性を活かし、かつては食品包装や半導体の製造・加工、消火剤など幅広い用途で利用されてきた。一方で、特定のPFAS(PFOAやPFOSなど)は、その残留性の高さから「永遠の化学物質」とも呼ばれており、人体や生態系への影響が懸念されている。本記事では、日本国内のPFAS規制の現状と課題に加え、国際的な規制動向について解説していく。
世界中で進むPFAS規制。その背景にある市場動向を的確に捉えるには?
規制や技術動向、代替素材の市場状況など目的を持って調査するためのポイント!
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目次
PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称である。環境省によると1万種類以上存在するといわれており、とりわけPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が広く知られている。耐熱性、耐水性、耐油性、非粘着性といった特性をもつため、フライパンのフッ素加工や食品包装紙、防水・防汚スプレー、消火剤、半導体の表面処理剤など、さまざまな製品に利用されてきた。現在も、用途や種類によってはPFASの使用が継続されており、特に半導体や医療機器分野などでは代替が困難なケースも多い。
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PFASは非常に利便性の高い素材だが、自然環境や人体内で分解されにくく蓄積しやすい。そのため、環境汚染や健康への影響が懸念されており、世界各国で規制やリスク管理の取り組みが進められている。
PFAS規制は2000年代初頭から国際的に議論が進められており、特にPFOSについては2009年、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において国際的な規制対象となった。日本国内でも、ここ数年において水道水や地下水からPFASが検出される事例が多数報告された。積極的に水質基準や検査体制を強化したことが大きな要因とはいえ、喫緊の対応が求められる。
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日本国内では、「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、PFASのうちPFOS、PFOA、PFHxSの製造・輸入・使用が原則禁止されている。なお、PTFE(テフロン)および、PFBS、PFA、PFNAは今現在日本では法規制の対象外だ。ただし、PFNAは国際的に規制が進んでおり、日本でも今後の規制対象となる可能性があるため、取り扱いには十分留意すべきである。
現在、PFAS規制において世界各国はどのような取り組みを行っているのか。日本を含む主要先進国の事例を挙げて解説する。
日本国内は、主に化審法に準ずる形でPFASが規制されている。2025年3月時点で規制対象となっているのは、PFOS、PFOA、PFHxSの3物質だ。2024年6月にはPFHxSが第一種特定化学物質の指定に係る審議がなされ、2025年以降に正式に施行される予定である。さらに、2025年1月にはPFOAの関連物質が同様に指定され、輸入禁止製品等の対象となった。
水質に関する対応として、厚生労働省は2020年4月にPFOSおよびPFOAを「水質管理目標設定項目」に指定し、暫定目標値を合計で50ng/L以下としている。また、2021年4月にはPFHxSを水道水の要検討項目に追加した。
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アメリカでは、食品医薬品局(FDA)が2024年2月にPFASを使用した食品包装容器の販売を中止した。また、州レベルでは、2025年1月よりカリフォルニア州とニューヨーク州がそれぞれPFASを使用した衣料品の販売が禁止されている。さらに、コロラド州でも2026年からPFASを含むさまざまな日用品の販売が禁止される予定だ。
飲料水における規制については、2016年に米国環境保護局(EPA)がPFOSとPFOAに関して70ng/Lを生涯健康勧告値として設定。その後、2024年4月にはPFOSとPFOAでそれぞれ最大汚染物質レベル(MCL)を4.0ng/Lとする最終規則として公表された。
2023年5月にカナダ環境気候変動庁(ECCC)とカナダ保健省が「PFASに関する現状の報告書(草案)」を公表。同報告書で4,700種を超えるPFAS関連物質が人の健康または生態へのリスクが懸念される基準を満たしていると結論づけた。
2024年7月にCEPA 第71条に基づく特定のPFASに関する通知の規則を公表。特定の製造・輸入者・使用者が312種類のPFASをカナダで製造、輸入または製品を使用する場合、2023年中に当該情報を提出することと、2025年1月29日までに報告することが義務付けられている。
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EU加盟国のうち、ドイツ、ノルウェー、デンマーク、オランダ、スウェーデンは2023年2月にREACH規則附属書XVIIの制限提案としてPFAS規制案を公表。同規制案に関連するPFASは「ユニバーサルPFAS」とも呼ばれ、包括的で広範な物質が対象物質となることから注目度が高い。
この提案に対しては、産業界や市民から5,000件以上のパブリックコメントが寄せられ、加盟国の反応にもばらつきが生じている。たとえば、デンマークは、計画されているEUの禁止措置での異なる値の代わりに、全ての製品に対して1kgあたり50mgのフッ素(F/kg)の限界値を設定することを提案。禁止措置は2025年7月1日に正式に施行される予定だ。
また、フランスは独自の規制として、「PFASに関するリスクから国民を保護することを目的とする法律」を2025年2月に公布。2026年1月1日からPFASを含む特定の製品の製造、輸出入、市場投入を禁止する予定である。禁止対象製品は化粧品、衣類・履物とその防水剤などで、2030年1月1日以降は原則全ての繊維製品に拡大する計画だ。
世界中で進むPFAS規制。その背景にある市場動向を的確に捉えるには?
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PFAS規制が世界各国で進んでいるが、代替品の開発が追いついていなかったり、規制の統一がなされていなかったりと、課題も多く存在する。
PFASの代替技術や除去手法を検討するにはどのように情報収集すべき?
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PFASは、耐熱性、耐薬品性、撥水性などの優れた特性を持ち、さまざまな製品に使用されてきたが、PFASの規制強化に伴い、同等の性能をもつ代替技術の開発が重要な課題となっている。しかしながら、PFASはその独特な化学構造によって他の物質では再現が難しい特性をもっており、代替品の開発には技術的な課題が伴う。特に、半導体産業などでは、PFASの代替が難しいとされている。
各国で規制基準が異なっているため、輸出入や貿易など複数の国を跨ぐプロセスにおいて手続きや処理が煩雑になってしまう。PFASは1万種類以上の化学物質を含む広範なグループであり、包括的な規制が難しいのが現状だ。
現在、PFASの除去技術として主に活性炭を用いた吸着法が実用化されているが、処理コストが高い。PFASによる汚染は広範囲に及んでおり、効果的かつ経済的な処理方法の確立が急務となっている。
PFASの代替技術や除去手法を検討するにはどのように情報収集すべき?
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PFAS規制は、日本国内のみならず世界各国で重要な環境問題として認識されており、対応が加速している。しかし、規制の厳格化が進む一方で、代替技術の開発や処理方法の確立、規制の統一化といった課題の解消も並行して行わなければならない。
今後、より効果的な規制を実施するには、国際的な協調や技術革新が必要不可欠だ。持続可能な社会の実現に向けて、産学官で連携しながらPFASの管理と環境保全のバランスを模索することが求められる。