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製造業
昨今、大企業においても新規事業開発が活発化している。しかし、スタートアップや中小企業に比べ、資金や人員が潤沢なはずの大企業でも新規事業は失敗する確率が高い。この記事では、大企業の新規事業に焦点を当て、大企業だからこそ起こりやすい問題点や、解決方法について解説する。
新規事業創出にはアイデアが必要不可欠!
筋の良いアイデアを生み出すための3ステップをご紹介
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目次
既に成功している既存事業がある大企業においても、新規事業開発が積極的に取り組まれている。多くの企業が新規事業に挑戦する理由には、国内市場の成熟化や、短期化する製品ライフサイクルが背景にある。どのような商品やサービスであってもごく一部の定番商品を除き必ず衰退期が訪れる。特に顧客や市場ニーズの変化の速まりや、技術革新のスピードの加速による技術の陳腐化などの要因により製品ライフサイクルの短縮化が起こっているのだ。
また、事業にもライフサイクルがあり、いずれ既存事業も衰退期に入る。収益が下がり身動きが取れなくなる前に異なる収益の柱が必要となるのだ。また、収益の柱が一本だけでは、そのターゲット市場に予期せぬ変化が起こった場合、その変化にうまく対応できなければ大きなリスクを負うことになる。国内人口の減少などで市場縮小の懸念もある中、収益を上げられる事業が複数あれば外部環境に変化が起こったとしても他の事業でカバーできるようになる。
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大企業は既に多くの優秀な社員や研究員を抱え、中小企業やベンチャー企業での新規事業開発よりも予算にゆとりがあるため優位性があるように感じられるだろう。しかし、大企業だからこそ陥りやすい問題もある。ここでは5つの問題点を取り上げて解説する。
ありがちな問題点として、そもそも新規事業を何のために行うかについて、目的が定まっていない、把握できていない点が挙げられる。たとえば、新規事業担当者がなぜこの新規事業を自社で行う必要があるのかを説明できなかったり、社内アイデアコンテストで本来の目的を忘れ、コンテスト通過を目標としたアイデアに寄ってしまったり、役員審査を意識するあまり、役員の好みを重視した事業となってしまうなどだ。新規事業開発のビジョンやミッションが不明確で、自社が新規事業を通して何を実現したいのかが曖昧なままであれば、事業開発を進める意義を見出せずに部門全体で迷走してしまうだろう。その事業をなぜ自社でやるのか腹落ちしていなければ、最終的な事業性の判断を下す経営幹部に事業のストーリーを伝えることは不可能であるし、共感も得られないはずだ。新規事業開発によって、既存事業にどのようなポジティブな影響があるのか、新規事業を通してどのようなインパクトを起こそうとしているのかなど、方向性を明確にし、把握することはとても重要なことである。
既存事業は既に収益モデルが構築されており、自社の強みが活かされている事業だといえる。また、既に経験や知識の積み重ねがあり、事業計画や市場分析でも詳細かつ精度の高いものを作ることができる。一方新規事業は、収益モデルが定まっておらず、未知の部分が多い。売上高や利益率といった既存事業と同じ業績評価で運営してしまうと、事業や新規事業担当者をうまく評価することができず、予算が取れないまま事業が縮小することや、社員のモチベーションが下がり、効率性や質の低下につながる可能性がある。また、評価を通して無意識に既存事業での考え方や常識が反映され、新規性が失われる場合すらある。
新規事業とは既存事業の中に答えがないから新規事業となり得るのである。思考と行動が既存事業に縛られないように、評価も切り離す必要があるのだ。新規事業の評価を決めるには、新規事業で何を達成したいのか、どれくらいの期間でどれくらいの規模を目指すのかなどを含めて検討し、独自の評価軸を作る必要がある。
製造業にありがちなのが、技術寄りのアイデアに寄ってしまうという問題だろう。大企業には長い年月をかけ培ってきた現在の主要事業を支えるコア技術があり、これまで収益を挙げ成長と発展を実現してきたという歴史がある。そのため、自社の強みである技術を活かしたい、これまでの成功体験を踏襲したいという思いから、技術に偏ったアイデアになる傾向があるのだ。しかし、技術ばかりに目を向けアイデアを考えてしまうと、市場や顧客ニーズとかけ離れたアイデアとなる可能性がある。競合他社との差別化や差異化を狙うために、強みである技術を活用することはとても重要なことである。一方で、市場にある顧客課題を解決するような、顧客ニーズと結びつきのある事業を開発しなければ、成功することはまずないといえるだろう。つまり、技術とニーズの両面のバランスが取れた事業アイデアを創出することが大切なのだ。
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大企業の新規事業担当者の中には、新規事業開発を他人事で捉えてしまっている人もいる。「意識の高い人」や「やる気のある人」がいつか実現してくれるだろうという意識がどこかにあるのだ。また、コンサルティング会社に伴走してもらったり、画期的なフレームワークを活用すれば、新規事業ができるような錯覚に陥ってしまうこともある。
担当者が他人事になってしまうもうひとつの要因に、担当者が持つ権限が限られていることも挙げられる。「担当者」という枠組みに収まってしまい、どうにかして成功させようと前向きに推進していくことや、経営者視点を持って事業を考えていくことが難しくなってしまうのだ。
さらに、新規事業には優秀な人材の投入が望まれるが、実績のあるような優秀な人材は既存事業側も手放したくない人材である。また、新規事業で成果を出すことが難しいため評価が得にくいという懸念から立候補が出にくいという側面もあり、新規事業では何かと人材が不足しがちだ。そのため、招集されたメンバーが既存事業の業務と兼務する場合が散見される。兼務だと従事できる時間が足りないことや意識が分散されることだけでなく、やらされ感が否めなかったり、既存事業にプラスになることを考えて、新規事業の本来の目的から離れてしまったりと、新規事業に注力することが難しくなるのだ。
大企業特有の、企画の承認を得るまで何段階もの審査が必要になる問題は、新規事業の開発において足枷となることがある。机上でどんなに綿密な検討を繰り返したとしても、実際に新規事業が成功するかどうかは誰にもわからない。また、市場ニーズや世の中の変化の速度が、これまでにない速さで移り変わる現代において、意思決定や合意形成に時間をかけ過ぎてしまうことは得策ではない。じっくり検討している間に、競合他社やベンチャー企業、他業界からのディスラプターに先を越されてしまう恐れがあるためだ。何が起こるか先行き不透明だからこそ、最低限の準備を行いスモールスタートし、市場のフィードバックを得ながら迅速な意思決定により改善を繰り返すアジャイルな進め方が求められる。
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大企業で新規事業開発を成功させるにはどのような点に気をつければ良いのだろうか。ここでは新規事業推進のポイントを4つご紹介する。
まず第一のポイントとして、新規事業の目的を明確にすることが重要である。新規事業は圧倒的に失敗する確率の方が高い事業である。失敗を繰り返す中で、その失敗を次に活かすことができるか、熱意を失わずに次に挑戦することができるかどうかは、新規事業を行うことで何を実現したいのかが明確になっていなければできないことだろう。全てが手探りで簡単に答えが手に入らない中、原動力となる圧倒的な熱量を維持するための志(目的)を見失ってはいけないのだ。
第二のポイントは、顧客をイメージすることだ。自社にとって都合の良い事業であったり、技術視点に偏った事業とならないように、アイデア創出の段階から市場や顧客ニーズを意識することが必要だ。顧客がどのような人で、どのようなときに商品やサービスが必要とされるのか、そのニーズを持った顧客がどれくらいいるのかなど、客観的な情報から具体的に顧客像をイメージできなければならない。顧客の課題に寄り添い、その解決策として自社の技術を活かした製品やサービスを開発することが重要なのだ。
技術と市場ニーズを結びつけて考える方法としては、MFTフレームワークの活用がおすすめだ。こちらの記事も参考にしていただきたい。
「MFTフレームワークを活用して技術と市場をつなぎ新たな価値を考える」
第三のポイントは、「気づき」を育てることだ。世の中にあふれるさまざまな情報から、新しい発見、いつもと異なる視点に気づき、自身の糧とすることが重要だ。常に広くアンテナを張り、携わる事業に関係ないことでも、新しいことやワクワクすることなどに目を向け、積極的に情報を取りに行く、試しに行動してみることが習慣化できると良い。得られた情報をさまざまなことと結びつけて、連想してみることも良い練習となる。一見関係のないようなことから「気づき」を得て試しにやってみる。この小さな仮説と検証のプロセスを何度も繰り返すことで、小さな「気づき」が事業の種となるのだ。そうして育てた事業の種であれば、しっかりと腹落ちしており、事業ストーリーを熱意を持って語れるようになっているだろう。
アイデアの考え方のヒントはこちらの記事を参考にしていただきたい。
「筋の良いアイデアの考え方とは?新規事業の手引き」
最後にご紹介するポイントは、周りを巻き込んでコミュニケーションを活性化させることだ。大企業における新規事業開発のネックのひとつは、スピーディーな社内の合意形成の難しさが挙げられる。既存事業部門や経営層、上司、部下などのさまざまな人や部門とうまく連携できるかどうかがスムーズな新規事業の推進につながる。大企業だからこそ部門間にある溝の大きさ、上司の一貫性のないマネジメント、経営層からの反発やモチベーションの低い部下などの問題に直面する機会が多くあるだろう。これらの問題は、なぜこの新規事業が必要なのか、自社で行うべき理由などの背景や前提となる情報、課題に対してどのような理由でどのような対策を行っているのかなどの取り組みや考え方が相手に見えていないことに起因するのではないだろうか。
新規事業を円滑に推進するためには、部門や役職に囚われず組織全体を俯瞰し、新規事業推進の鍵を握る重要人物と事前にコミュニケーションを深めておく根回しが重要となる。事前にキーマンや関係者との情報共有や意見交換などのコミュニケーションが取れていれば、時間が限られている会議での話し合いも、一から事前情報を説明することに時間を取られず、有意義な議論の場とすることができるのだ。また、アイデア創出の段階から、役職や部門を越えたさまざまな知見を持つメンバー間で意見交換などのコミュニケーションが取れれば、よりアイデアの質を高めることができるだろう。
大企業における新規事業開発では、アサインされたメンバーそれぞれが当事者意識を持ち、日頃から小さな気づきを大切にすることが大切である。視野を広げさまざまな情報に触れることで、知識の掛け合わせにより新しい事業のアイデアが見つけやすくなるのだ。さらに、得られた情報を共有し、日頃から意見を取り交わすことで合意形成を迅速化させる。それが好機を逃さない市場投入につながるのだ。つまり、一人ひとりがさまざまな領域にアンテナを張って情報収集を行い、社内でのコミュニケーションを深めることが、新規事業開発を成功させるための大きな鍵となるのである。
新規事業を成功させる「効率的な情報収集」と「情報共有によるコミュニケーションの活性化」をどのように行えばいいのか?ヒントはこちらの資料で!