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次世代太陽電池とは?現状の市場規模と課題【カーボンニュートラル実現の切り札となるか?】

次世代太陽電池とは?現状の市場規模と課題【カーボンニュートラル実現の切り札となるか?】

再生可能エネルギーの主力電源として、政府も積極的に普及を推し進めてきた太陽光発電。
事実、日本国内の再生可能エネルギーにおける発電量で9.2%と太陽光発電が最も多い結果となっている。しかしながら、他の再エネと比較するとエネルギー変換効率が悪い、廃棄コストがかかるなどの理由から、頭打ちになってしまっているのが現状だ。

そこで現在注目されているのが次世代太陽電池のひとつ「ペロブスカイト太陽電池」だ。塗布技術や印刷技術で作製が可能で、より安価に量産でき、実験段階では変換効率も21.6%と従来型のシリコン系太陽電池に近づきつつある。本記事では「ペロブスカイト太陽電池」を含む次世代太陽電池に焦点をあてて解説していきたい。

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 次世代太陽電池とは?

次世代太陽電池とは、折り曲げられるしなやかさや軽量化などの実現によって耐荷重の小さい工場の屋根やビルの曲線状の壁面などに設置可能な柔軟性の高い太陽電池の総称を指す。日本発の技術ということで、現在は主に「ペロブスカイト太陽電池」が注目されているが、そのほかにもさまざまな技術を応用した次世代太陽電池が登場している。

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 次世代太陽電池の市場規模

富士経済の調査によれば、2035年までに次世代太陽電池の世界市場規模は8,300億円になると発表。なかでも、やはり市場成長が期待されているのはペロブスカイト太陽電池(PSC)だ。従来の単結晶・多結晶シリコン型太陽電池(C-Si)の代替手段としてニーズが高まるとの見立てがされている。2022年以降、中国やアメリカ、ヨーロッパを中心に本格的な量産化が進み、2035年の市場規模は2021年と比べて48倍の7,200億円と予測。

特に、近年は中国の追い上げが凄まじい。2024年1月には仁爍光能(Renshine Solar)がペロブスカイト太陽電池の量産工場を完成させ、生産を開始。仁爍光能は、シリーズAで日本円にして数十億円超の資金調達を成功させており、ペロブスカイト太陽電池における変換効率の世界記録を何度も塗り替えている。

 次世代太陽電池における日本の動向

2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らチームがペロブスカイト太陽電池を発表したことが大きな転換点となり、第2世代太陽電池と呼ばれる「薄膜シリコン」や「化合物系」、第3世代太陽電池と呼ばれる「有機系」や「量子ドット系」など、次世代太陽電池の開発が盛んになった。

また、2021年12月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はグリーンイノベーション基金事業の一環として、太陽光発電の普及を後押しする「次世代型太陽電池の開発」の6プロジェクトを採択。実施期間は2021年度〜2025年度(予定)で、予算規模は200億円とされる。

なお、次世代太陽光として期待の高いペロブスカイト太陽電池の主原料はヨウ素だ。実は日本はチリに次いで世界第2位の生産国で約3割を占める。さらに、推定埋蔵量を合わせると日本のシェアは世界1位と推測されている。今後、日本がペロブスカイト太陽電池でシェアを伸ばしていくうえでは大きなアドバンテージになることは間違いない。

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 次世代太陽電池の種類

次世代太陽電池や新型太陽電池と呼ばれるものは、大きく以下の5つが挙げられる。

 ペロブスカイト太陽電池(PSC)

2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授らグループが世界に先駆けて発案された。当初、エネルギー変換効率はわずか3%であったため実用化には乏しかった。その後、英国オックスフォード大学のヘンリー・スネイス教授や産総研太陽光発電工学研究センター村上 拓郎氏や、パナソニック先端研究本部の松井太佑主任技師ら共同研究グループなどが研究を重ね、現在、エネルギー変換効率は20%台にまで到達している。

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 有機薄膜太陽電池(OPV)

p型とn型の異なる有機半導体を混合して電荷分離による発電を起こす太陽電池のことを指す。従来の太陽電池の厚さはおよそ30mmほどで、折り曲げることは難しい。しかしながら、有機薄膜太陽電池は0.003mと極薄で曲げたり折ったりして利用ができる。当初は、エネルギー変換効率は一桁台であったが、現在は15%前後まで改善されてきており、ペロブスカイト太陽電池に次ぐ太陽電池として期待が集まっている。

 色素増感太陽電池(DSC・DSSC)

光触媒としてよく用いられる物質「酸化チタン」に色素を吸着させることで発電する太陽電池を指す。光合成型太陽電池とも呼ばれる。元々、酸化チタンは紫外線のみを吸収する性質があるが、色素を帯びることで可視光にも反応するようになり、発電が可能となる。

カラーバリエーションが豊富で材料が安価、かつ電極そのものを印刷で作製できるため、製造設備も小さくてすむなどの利点をもつ。エネルギー変換効率は研究段階で12〜13%と、他のものと比べるとやや低い。

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 量子ドット太陽電池

人工的なナノ粒子である量子ドットが周期的に並ぶ三次元的に囲まれた構造をしていて、既存の太陽電池では吸収できない光も無駄なく吸収できる太陽電池のこと。量子ドット型太陽電池の理論上の変換効率は60%以上、実測では約30%の変換効率と他の次世代太陽電池と比べても非常に高い潜在性をもつ。ただし、材料に希少性の高いインジウムを使用していることと、微小構造であるためことから、製造に大きなコストがかかってしまう点が課題とされている。

 ガリウムヒ素(GaAs)太陽電池

ガリウム(Ga)とヒ素(As)の2種類の元素で構成された化合物半導体で発電する太陽電池のこと。太陽電池のなかでも発電効率に優れていることから、多接合太陽電池のトップセルやミドルセルとしての利用が期待されている。しかし、ガリウムはレアメタルで高価格、さらにヒ素は毒性物質で脆く加工が難しいため、主に砂漠・乾燥地で用いられる集光型太陽光発電システムや人工衛星に使用されてきた。しかし、変換効率は研究レベルで30%弱と他の太陽電池に比べると高く、面積あたりの出力が大きい、耐熱性があり安定性が高いこともあり、今後は自動車や無人航空機での市場拡大が期待されている。

次世代太陽光の種類

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 次世代太陽電池の課題

研究開発段階のものが多く、シリコン太陽電池を代替するまでには至っていないのが現状だ。例えば、ペロブスカイト太陽電池や量子ドット太陽電池は変換効率が高くても、製造コストが高い、大型運用が難しいなどの問題があり、量産化に向けた研究がまだまだ必要である。また、種類によってはヒ素、カドミウム、セレン、鉛などの有害物質が含まれているものもあり、利用普及だけでなく廃棄まで見据えた運用・実用化が急務といえるだろう。ただ、安全性を高めるための研究も進んでおり、じきに解消されるものと予測される。

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 次世代太陽電池を開発・導入するメーカー・企業

国内ではスタートアップや大手問わず各社が次世代太陽電池の研究開発を行っている。ここでは、代表的な例をいくつか紹介したい。

 東芝

2021年9月に、フィルム型ペロブスカイト太陽電池で、エネルギー変換効率15.1%を達成。「CEATEC AWARD 2021」において、経済産業大臣賞およびカーボンニュートラル部門のグランプリを受賞した。2025年度の事業化を目指しており、2023年2月には、東芝エネルギーシステムズ、桐蔭学園、東急、東急電鉄、横浜市が共同で、直射日光が当たらない東急電鉄青葉台駅の改札前通路で、東芝が開発したペロブスカイト太陽電池の発電推移を調査・分析する実証実験を行った。

 リコー

2020年2月、リコーは世界初の固体型色素増感太陽電池の販売を開始した。この太陽電池の特徴は、室内の微弱な光でも発電性能を発揮できる点にある。さらに、従来の液体型の太陽電池で起こりうる電解液漏れや腐食などの安全性リスクの解消と耐久性向上を達成。

 PXP

株式会社PXPは、2020年7月に創業したスタートアップだ。トップセル材料にペロブスカイト、ボトムセル材料にカルコパイライトを使用した「多接合(タンデム)太陽電池」を開発し、2024年4月にエネルギー変換効率26.5%を達成。まだ、ペロブスカイトとカルコパイライトを組み合わせた多接合(タンデム)太陽電池の研究開発・量産を行っている企業は少なく、同社は実績を積み上げていき、実用化を目指したいとしている。

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 まとめ

次世代太陽電池は、本格的な実用化・量産化に至ってはいないが、太陽光発電を牽引するキーテクノロジーであることは間違いないだろう。

ペロブスカイト太陽電池は、世界に先駆けて日本が開発した技術だが、今では中国や欧州など多くの企業が研究開発・量産化に乗り出している。各国の動向や各社の取り組み、新しい技術の活用状況といった情報を逐一収集し、自社ビジネスの発展に活かすことが肝要だ。