2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
製品のコモディティ化が進み、ますます市場での競争が激化するなか、自社の技術を活かした差別化・差異化を見出し、新しい価値を創出する重要性が高まっている。今回の記事で紹介するオープンクローズ戦略とは、自社の技術を部分的に公開し市場活性化を狙うことと、技術を独占することで独自性を保ち利益の拡大を狙うことの両極端な方法をバランスよく行う戦略である。この記事では、オープンクローズ戦略の基礎知識や導入方法、実際の事例についてご紹介する。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
目次
まずはオープンクローズ戦略の前提として、「オープン戦略」と「クローズ戦略」について解説する。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
「オープン戦略」とは、自社技術を標準化、規格化し、他社に自社技術の使用を積極的に許容する戦略のことを言う。その目的は「普及」にある。
オープン戦略で例として挙げられるのは、半導体素子メーカーであるインテルのパソコンの設計情報の提供だ。この設計情報の公開により、製造のハードルが下がり多くの製造メーカーが参入し価格競争が起こったことによりパソコンの価格が下がり、世間に広く普及することになった。
技術が広まることにより市場の拡大を早めることができる点、自社製品の使用を主流規格とするデファクトスタンダード化が図れるという点などが挙げられる。また、自社技術を他社に有償許諾することでライセンス料を得ることもできる。自社が行うビジネスだけでなく、他社のビジネスを通して、利益を得られる可能性がある点は大きなメリットとなるだろう。
市場拡大に伴って市場内の競争も加速するため、事業の利益率が低くなる可能性が高まることが挙げられる。これは多くの企業が製品の製造に参入し、製品が大量に市場に投入されることにより価格が下落するためである。また、標準化された分野については、直接的な差別化が困難となるため、コア技術について標準化するのは避けるべきである。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
「クローズ戦略」とは、自社の持つ独自の技術などの強みを秘匿化し、競争優位性を確立する戦略のことを言う。これは、経営資源を「保護」することを目的とした、独占する戦略である。
たとえば、飲食店での「秘伝のタレ」や、有名どころで挙げればケンタッキーのスパイスの配分、コカ・コーラのレシピがある。これらの情報は機密情報として取り扱われ、社内においても限られた人間しかその情報を持ち得ない。これらの情報を秘匿することにより、製品・商品のオリジナリティを失わず、顧客の囲い込みを長期的に可能にするという戦略である。
前述の通り、顧客の長期的囲い込みが可能になる点、そして商品開発時点で得た他社との差異を持ち続けることができ、市場におけるシェア率の低下を防止することができる。
情報漏洩や権利侵害について対策をしっかり行う必要があり対策費用がかかる。たとえば、特許申請をする手間や人員、外部受注のコストであったり、実際に権利侵害された際の訴訟費用などがある。また、事前の情報収集だけでなく、継続的に情報を集め、同業他社などにおいて権利侵害がないかどうかなどをチェックする必要もある。他には、技術と市場の独占によって技術進化の鈍化や、市場規模が拡大しないためにシェアは最大だが市場の総売り上げが最小になる点などがデメリットとして挙げられる。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
正反対の性質を持つ「オープン戦略」と「クローズ戦略」を掛け合わせて、それぞれのメリットを最大化する戦略が「オープンクローズ戦略」である。オープンクローズ戦略は自社技術について公開する領域と秘匿する領域を使い分けることで、双方のメリットを享受しつつ、デメリットである利益率の減少を抑えることができる。市場拡大と市場における競争優位性の維持を両立できることが、この戦略の最大の魅力と言えるだろう。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
ここでは、オープンクローズを行うための手順について説明する。
コア技術とは、市場において競争優位性を有する事業の中核となる自社技術のことを指す。独自技術について、その範囲や境界線を明確にすることは、自社の強みを理解することに繋がり、コア技術を活用した戦略を練ることができるようになる。
自社の独自性や優位性を保つために、コア技術についてはクローズ領域とする。自社の武器となる領域のどの部分を保護していくべきかなど、利益を拡大するための守るべき領域を検討する。
基本的にはコア技術以外の部分についてオープン領域とする。または、元々は自社技術であったとしても、既に市場で普及していたり、同業他社による解析が進んだ結果、中身が把握されてしまっているものなどは公開して差し支えないだろう。市場拡大、発展につながる技術を選択することが重要である。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
オープンクローズ戦略のポイントは以下の3点である。
オープンクローズ戦略には、特許を出願するかしないかの特許の実務的な意味と、保有する技術などの経営資源を他社が自由に使えるようにするか自社のみだけが使えるようにするかという事業戦略上でのオープンクローズというような2つのな意味がある。混同しやすいため、どちらの意味合いで語られているのかを理解することが必要だ。
一度公開した技術はもう二度と秘匿化することができないため、独自技術を守って自社の独自性や優位性を保つためにも、コア技術の特定は最も重要である。コア技術の特定には、自社技術の棚卸を行って、今一度アセットを整理することによってスムーズに行うことができるだろう。自社アセットの棚卸しはイノベーションの契機にもなる。
自社技術の棚卸しについては、以下の記事を参考にしてほしい。
オープン領域とクローズ領域は完全に切り離されたものではなく、オープン領域の技術を活用するためにはクローズ領域の技術を使う必要があるなどつながりを持たせることが重要だ。このお互いの影響力が少ない場合、オープンクローズ戦略で利益を出すことが難しくなるためだ。技術の影響の範囲や、影響力の強さも明確にして選定することがポイントである。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
実際にオープンクローズ戦略を取って成功した事例として、2社の例を挙げよう。
AppleはiPhoneの開発においてiOSの開発をクローズ領域とし、ハードウェア製造を行なっている。Androidを開発したGoogleは、Android OSを搭載した機種の普及促進のためAndroidのOSをオープンソース化している。Googleのそもそもの狙いはサービスの普及、つまり主たる収益を広告やサービス利用で上げることにあったためだ。それとは対照的に、Appleはサービス提供の場に多くの企業を参入させ市場を拡大させることにより、それらのサービスを享受するためのハードウェアの需要を高めている。この戦略の結果、iOS対応のハードウェアの販売数を拡大しつつ製造権を独占して、長期的に大きな利益を上げている。
同社は「事業戦略」、「研究開発戦略」、「知財・標準化戦略」の三位一体経営とし、企業価値の最大化を図っている。特に、コア事業の一つであるFA(ファクトリーオートメーション)システム事業で国内において高いシェアを獲得しており、FAシステムをネットワーク化したCC-Linkは、普及拡大を図るためにオープンクローズ戦略に取り組み唯一無二の立ち位置を形成した。
三菱電機はCC-Link以外にも、積極的な知的財産活動を行なっている。誤って技術流出することを防ぐために、オープン領域とクローズ領域の明確な区分けが必要とし、秘匿する技術内容を文章化し関係者で共有するなどの厳密な管理を行っている。
課題解決につながるような情報の探し方がわからない!
誰も教えてくれない情報収集の基礎
▶「情報収集の教科書」を無料ダウンロード
オープンクローズ戦略では、市場に公開するオープン領域と秘匿し独占するクローズ領域の境界線をどこで引くのかが最も重要である。この境界線の判断を適切にするためには、自社のコア技術についてはっきりとした輪郭を持って把握できていることが必須となる。
また、持っている技術の市場に与える影響力の大きさや、現在の企業や市場を取り巻く状況についてさまざまな情報を集めて分析し、戦略的にオープン領域、クローズ領域の意思決定を行い、事業競争力の強化を図っていくことが重要だ。
参考記事
オープンクローズ戦略について
https://www.chugoku.meti.go.jp/ip/contents/96/index.html
モノづくり企業が知財戦略に取り組む意味とは?
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2005/15/news005_3.html
三菱電機のオープン・クローズ戦略
https://www.inpit.go.jp/content/100639450.pdf