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ポリカーボネート(PC)とはどんな樹脂?特徴や用途について解説

ポリカーボネート(PC)とはどんな樹脂?特徴や用途について解説

ポリカーボネートは、優れた透明性と高い強度を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックだ。耐衝撃性に優れ、ガラスの代替材料として建築、自動車、電子機器など幅広い分野で利用されている。さらには耐熱性や難燃性も備えており、安全性が求められるシーンにも適している。本記事では、ポリカーボネートの概要や特徴、メリット・デメリット、さらには具体的な使用用途について詳しく解説したい。

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 ポリカーボネート(PC)とは?

ポリカーボネートは、熱可塑性樹脂の一種だ。略して「ポリカ」と呼ばれることがあり、材料記号としては「PC」と表記される。ポリカーボネートは、1898年にミュンヘン大学の科学者であるアルフレッド・アインホルン氏によって発見された。その後、しばらく商用利用されなかったが、1956年にバイエル社がフィルムを販売。日本では、1960年に帝人化成株式会社がはじめて商業生産を開始した。

耐衝撃性、透明性、耐熱性などの優れた特性をもつことから、建築資材や医療機器、光ディスク、飲料ボトルなど、さまざまな分野で利用されている。

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 ポリカーボネートとアクリルの違い

どちらも透明性の高いプラスチック素材として広く知られているが、その特性には明確な違いがある。まず、ポリカーボネートはアクリルの約50倍、ガラスの約200倍の強度をもつ。ただ、透明度に関してはアクリルは全光線透過率が約93%でガラスと同等の透明度をもち、ポリカーボネートの約86%を大きく上回る。

 ポリカーボネート樹脂とABS樹脂の違い

アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の3つのモノマーを組み合わせた共重合体で、その頭文字を取って「ABS」と呼ばれている。ABS樹脂はポリカーボネートと比べると、射出成形や押出成形などの加工が容易で、複雑な形状の製品を高い精度で製造できることが特徴だ。また、製造コストも低く材料自体も安価である。ただし、ABS樹脂の耐衝撃性の強度はポリカーボネートよりも低く、不透明で光を透過しない。

 ポリカーボネートとプラダンの違い

ポリカーボネートとプラダンは、いずれもプラスチック素材を用いた製品だが構造や用途は明確に異なる。プラダンはプラスチックダンボールの略で、ポリプロピレン(PP)を原料とした中空構造のシートで、段ボールのような形状をしている。軽量で加工が容易なため、梱包材や仕切り材、看板などに利用されることが多い。ただし、長期間の使用や過酷な環境下での利用には不向きだ。

ポリカーボネートと他素材の比較表

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 ポリカーボネート(PC)の種類

ポリカーボネートには大きく3つの種類が存在する。

 平板ポリカーボネート

アクリル板のような一枚板の形をしたポリカーボネートだ。無色透明から色付き、すりガラス調など多彩なバリエーションが存在し、汎用性が高いのが特徴。耐衝撃性や採光性が高く、屋内外問わず使用されている。

 波板ポリカーボネート

波板状に形成したポリカーボネート。この独特な形状によって強度と排水性が増しており、カーポートやテラスなどさまざまな屋外構造物の屋根材として使用されている。

 中空ポリカーボネート板

内部に空気層をもつ多層構造の板材で、段ボールのような形状をしているのが特徴。同じサイズで比較すると平板の約1/5、ガラスの約1/10ほどの軽さしかない。断熱性と保湿性に優れており、屋根材や保温室、ドアの採光部などに用いられる。

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 ポリカーボネート(PC)の特徴・メリット

ポリカーボネートは、優れた物性をもつ高機能プラスチックのひとつとして多くの産業分野で重宝されている。ここでは、ポリカーボネートの主な特徴やメリットについて詳しく解説したい。

 断熱性・耐熱性に優れている

樹脂素材では、熱伝導率によって製品の性能や耐久性に影響を与えるが、ポリカーボネートの熱伝導率は0.235W/(m·K)であり、ガラスのおよそ1/5の値だ。それだけ熱を遮断する能力が高いということで、断熱材や保温容器に適している。

また、使用可能温度帯は-40℃から120℃と広範囲であり、寒冷地から高温多湿な地域まで幅広く適応可能だ。これらの特性からポリカーボネートは省エネルギーが求められる建材や窓材として幅広く使用されている。

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 透明性が高い

ポリカーボネートの可視光線透過率は85%から90%であり、これはガラスとほぼ同等の透明度を示す。この高い透明性があることから、水槽やパーテーションなど視認性が重要な製品に使われている。

 強度が高い

アクリル樹脂の約40〜50倍、ABS樹脂の5倍、ポリ塩化ビニルの10倍と強度が高い。さらには、鉄よりも硬度が高いとされるガラスの約200倍と、他の素材をも大きく凌ぐ耐衝撃性をもっている。

 加工がしやすい

射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形など、さまざまな加工が可能で、複雑なデザインや精密な寸法をもつ商品の製造にも適している。さらに、熱成形性にも優れており、加熱することで柔軟性を増し、冷却後に安定した形状を保持する特性も併せもつ。

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 ポリカーボネート(PC)のデメリット

断熱性・耐熱性だけでなく強度にも優れているため、良いことずくめの素材といえるが、一方で紫外線に弱い、耐薬品性が低いといったデメリットもある。

 黄ばみやすい/紫外線に弱く劣化しやすい

ポリカーボネートは、紫外線を受けると黄ばみが表出する傾向にある。これは、ポリカーボネート内部のポリマー鎖が紫外線によって化学変化を起こすことによって生じるものだ。黄ばみは見た目を損なうだけでなく、透明度の低下によって本来の用途や機能を果たさなくなってしまう。しかし、近年ではこの問題に対処するため、表面に紫外線吸収層を設ける技術が開発されている。

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 傷がつきやすい

ポリカーボネートは非常に高い耐衝撃性を誇る素材ではあるものの、表面は引っかき傷がつきやすく摩擦や擦れに弱い傾向にある。特に、日常的に手で触れることが多い製品や砂粒や金属など硬い物質と接触する場面では、この特性が顕著に現れる。

 耐薬品性が高くない

特に、強アルカリ性の化学薬品やアセトンやトルエンなどの有機溶剤に対して脆弱であり、長時間接触すると表面が劣化したりひび割れが生じたりすることがある。ポリカーボネート製品を使用する際には薬品との接触を避けるか、耐薬品性を向上させるコーティング処理を施すことが重要だ。

 高価である

ポリカーボネートの価格はメーカーや販売店によって異なるものの、一般的に汎用プラスチック素材よりも価格が高い傾向にある。これは製造・加工工程が複雑で、かつ原料となるビスフェノールA(BPA)を用いた重合反応には、品質管理や環境対応の面で一定の技術力が求められるためだ。

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 ポリカーボネート(PC)の用途

ポリカーボネートはガラスの代替素材として透明性を活かした製品や、安全性を重視した構造部材などにも採用されている。ここでは、ポリカーボネートの代表的な用途について紹介したい。

 屋根材(カーポート・テラス)

特にカーポートやテラスなどは破損・落下した際のリスクが非常に大きい。最悪の場合、車や人へ甚大な被害が出ることも考えられる。そのため、耐衝撃性・耐熱性・耐寒性に優れたポリカーボネートが採用されるケースが多い。

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 断熱障子

障子は優れた断熱性能をもつ日本の伝統的な建具として知られているが、近年はポリカーボネートなどの樹脂を使用した断熱障子も登場している。光を適度に透過させながらも外気の影響を抑えることが可能で、環境意識の高い住宅やオフィスで採用されることが多い。

 温室ハウスの窓材

温室ハウスでは、植物の成長に欠かせない日光をより多く取り込むことが不可欠だ。透明性や光透過性に優れていることはもちろん、耐衝撃性・耐熱性・耐寒性も高いため、強風や雹害といった過酷な気象条件にも耐えることができる素材として、温室の窓材やカバー材に広く用いられている。

 花瓶

割れにくい素材であるため、安全性が求められる場所や小さな子ども・ペットがいる家庭で特に人気が高い。また、軽量で取り扱いやすく、デザインの自由度も高いため、さまざまな形状や色彩の花瓶が製作可能だ。

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 まとめ

ポリカーボネートは、建築資材や産業用途はもちろんのこと、日用品や電子機器、自動車部品など、私たちの生活のあらゆる場面でその存在をみることができる。耐久性が高く、長期間使用できる一方で、コストや耐薬品性といった点は注意したい。用途に応じた適切な選択とメンテナンスを行うことで、ポリカーボネートのもつ優れた特性を最大限に引き出すことができるだろう。今後も技術の進化とともに、その可能性はさらに広がっていくことが期待される。