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PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物の人体への影響は?法規制や対策について

pfas

現代社会において、我々は数え切れないほどの化学物質に囲まれて生活している。そのなかでも、とりわけ問題視されているのがPFASだ。この化合物は極めて分解されにくい性質をもち「永遠の化学物質」として知られている。

PFASは、工業製品や日用品に幅広く利用されてきた一方で、自然界への流出や人体への悪影響が懸念されている。本記事では、PFASの定義や人体への影響、さらにリスクを軽減するための対策について詳しく解説したい。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)の意味や定義とは何か?

PFASは「Per- and PolyFluoroAlkyl Substances」の頭文字をとった略称で、人工化学物質のひとつ「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」の総称を指す。PFASは炭素とフッ素の強固な結合をもち、撥油性・撥水性、耐熱性、耐薬品性に優れているため、さまざまな生活用品や産業製品で利用されている。

しかし、自然環境中で分解されにくく、生体内に蓄積しやすい特性も併せもつことから、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれているのだ。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)の種類

米国環境保護庁(USEPA)が作成した「PFAS Master List of PFAS Substances (RETIRED)」によると、約12,000種類のPFASがあるとされており、それぞれ異なる性質をもつとされている。

そのなかでも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は自然環境や人体に悪影響を及ぼすことから、日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)において「特定PFAS」と定義され、日本国内での製造や使用が禁止されている。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)の問題はいつから?

日本では、2016年に沖縄の米軍基地周辺の河川や浄水場からPFASが検出されたことで、大きく注目された。近年だと、2024年10月に横田基地からPFOSが流出したというニュースが記憶に新しいだろう。実は、PFASは2000年ごろからその危険性を指摘されているものもあり、国内外で規制の流れが進んでいる。

 PFASを規制する法律・動向について【海外】

PFASの起源は75年以上前に遡る。もともと、アメリカのデュポン社が発見・開発したテフロンの性能改善のために開発が進められたといわれている。はじめて産業利用されたのはアメリカの3M社が1947年に開発したPFOAだ。その後、同社は続けて1953年にPFOSを開発。1980年代から環境汚染や人体への影響が確認される事例が増加。しかしながら、デュポン社がPFOAを含む汚泥を廃棄していた土地の近隣の牧場主が訴訟を起こした1999年の事例まで、これらの問題は表面化することはなかった。

2000年には3M社が環境や人々の健康への影響を考慮してPFOSとPFOAの製造を自主的に中止すると発表。その後、2006年に米国環境保護庁(EPA)が「PFOA削減管理プログラム」を立ち上げ、ついに2009年には有害な化学物質を規制する国際条約「ストックホルム条約(POPs条約)」でPFOSが規制対象に、条約加盟国はPFOSの新規製造・使用・輸出入を原則中止することなった。2019年にはPFOAが、2022年にはPFHxSが規制対象となっている。

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 PFASを規制する法律・動向について【日本】

日本は、ストックホルム条約に追随する形でPFASの規制を行っており、具体的には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき運用している。
PFOSは同法によって2010年に「第一種特定化学物質」に指定され、2018年には全ての用途で製造・輸入が原則禁止となった。また、PFOAについては2021年に「第一種特定化学物質」となり、製造・輸入等が原則禁止に。さらに、PFHxSも2024年6月以降は輸入が原則禁止となる予定だ。

 日本におけるPFAS汚染の事例

日本でPFASが注目されるようになったのは、複数の沖縄の基地周辺から相次いでPFOSが検出された2016年の事例だろう。約44万人に水を供給する北谷浄水場からは、1リットルあたり最大80ナノグラムあたりが検出された。

また、2020年には東京37か所の地下水で国が定める基準値を超えていることが判明。さらに、2024年には米軍横田基地からPFOSが流出した可能性があると指摘されている。現在、環境省主導で積極的に水質基準や検査体制を強化していることもあり、全国11都府県44件で国の基準値以上のPFASが検出されている。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)の発生原因

PFASは、その安定性と耐久性から多くの産業製品に利用されているが、さまざまな経路によって自然界に流出してしまう。過去には軍事施設や空港などで泡消火剤を使用し続けたことで周辺の土壌や地下水が汚染されるケースや、製造過程や焼却処理の際に大気中に放出されるケース、PFASを使用した工場や処理施設からの排水が流出してしまうケースなどが確認されている。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)による人体への影響や健康被害は?危険性はあるの?

PFASで気になるのが、やはり人体への影響だろう。まだ、完全に解明されていないことも多いが、代表的な影響やリスクとしては以下のようなものが挙げられる。

 発がん性がある

さまざまな研究によって、PFASで発がん性があることが明らかになっている。特に、腎臓がん、精巣がん、乳がんとの関連性が高いという結果が示されている。また、2023年には国際がん研究機関(IARC)がPFOAの発がん性を「可能性がある」から2段階引き上げ、「ある」に認定した。

 免疫機能の低下

PFASは免疫系に影響を及ぼし、感染症に対する抵抗力の低下やワクチン効果の減弱、自己免疫疾患のリスク増加などが報告されている。

 不妊のリスク

人体の生殖機能に影響を及ぼし、不妊のリスクを高める可能性が指摘されている。また、出生児の体重低下や発育遅延、妊娠高血圧症候群のリスクを高める要因にもなりうる。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)は何に含まれる?使用製品について

PFASは、普段我々が何気なく使っている製品に含まれている。ここでは、代表的なものをいくつか紹介したい。

 フライパン

化学的に安定し、熱に強く、水や油をはじく特性をもつことから、フライパンなど調理器具のコーティングに長年利用されてきた。フライパンが焦げ付かないようにする「テフロン加工」にもPFASが使用されているが、「特定PFAS」に含まれないPTFEであり、毒性は低いといえる。

 食品包装紙

優れた耐油性と耐水性、非粘着性から食品包装紙の素材として世界中で広く活用されてきた。油分の多いドーナツやフライドポテト、ハンバーガーなどを保護する包み紙や紙箱が挙げられる。

 防水スプレー

PFASは水をはじく特性をもつことから、衣類や靴、アウトドア用品などを雨や泥水から保護する防水スプレーの素材として活用されていた。しかし、現在は段階的にPFASの使用を廃止し、代替物質の開発や使用を進めている。

 化粧品

日焼け止め、ファンデーション、マスカラなど多くの化粧品に添加されていた。口や鼻から体内に侵入しないものの、肌に直接触れることから微量のPFASが体に蓄積する可能性が指摘されている。

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 PFAS(ピーファス・有機フッ素化合物)を除去する方法と対策

PFASを回避するには、どのような方法が有効になるのだろうか。具体的な対策としては以下のようなものが挙げられる。

 企業側の取り組み

 使用製品の見直しと代替品の実装

PFASを含む原材料や製品を調査し、その情報を基に代替品への切り替えを検討することが重要である。また、サプライヤーと連携してサプライチェーンの透明性を確保することも必要だ。たとえばDICはPFASを使用せずに、フッ素系と同等の性能を持つ界面活性剤を開発している。

 排出管理と処理の改善

PFASを除去するために、逆浸透膜や活性炭などの高度な水処理技術の採用が推奨される。生産過程におけるPFASの排出を最小限に抑えるために、新しいプロセスの開発や改良を行うことが必要である。

清水建設は、PFAS(有機フッ素化合物)に対する対策として、米国市場での実績を活かし、PFAS汚染の除去に特化した技術として「分級・泡沫分離処理技術」を国内で展開することを進めている。

 法令遠征とリスク管理

各国で強化されているPFASに関する規制を注視し、最新の法令を添って遠征することが重要である。また、リスク評価を実施し、問題に対応する計画を作成する必要がある。

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 個人でできる取り組み

 浄水器(活性炭フィルター付き)を設置する

活性炭はPFASを吸着する能力があり、水道水中のPFAS濃度を低減するのに有効とされる。市販の浄水器には活性炭フィルターを搭載したものが多く、手軽に導入することが可能だ。ちなみに、家庭の水道水を煮沸消毒することでPFASを除去できると考えがちだが、むしろ濃度を高めてしまうため注意が必要だ。

 ウォーターサーバーを利用する

ウォーターサーバーは、高品質な水を供給しPFASの摂取を避ける有効な手段のひとつだ。ただし、各製品が扱う水質や、水道水浄水型ウォーターサーバーの場合はPFASの除去能力に左右されるため、事前に確認することをおすすめする。

 ミネラルウォーターを使う

水道水中のPFASを避けるために、市販のミネラルウォーターを利用することも有効な対策のひとつである。ただし、ミネラルウォーターからPFASが検出された事例もあるため、水源や販売メーカーの検査体制などもあわせて確認することが重要だ。

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 まとめ

PFASは、多くの産業で長らく重宝されてきた化合物であるが、その環境への長期的影響や人体への健康リスクは深刻な問題だ。しかしながら、私たちの生活から化学物質を完全に排除することは極めて難しい課題といえる。今後、どのようにして自然環境や人体に悪影響を及ぼさない代替物質を開発していくかがカギとなるだろう。