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アメリカ(米国)における半導体産業の歴史と今後の動向について

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アメリカにおいて半導体産業は、イノベーションと経済成長をけん引する原動力としての役割をはたしてきた。かつては、世界市場で圧倒的なシェアを誇り「シリコンバレー」という言葉がその象徴となった。

しかし、近年では新興国の急成長や地政学的リスクの高まりを受け、産業の構造や国際競争力に変化が生じている。特に、半導体供給網の脆弱性が浮き彫りとなるなかで、中国や韓国、台湾といった諸国が急速に台頭し、アメリカは技術覇権を巡る新たな局面に突入している。本記事では、アメリカの半導体産業の歴史と成り立ち、そして現在と今後の動きについて解説していく。

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 アメリカ(米国)における半導体産業の歴史

アメリカの半導体産業は、半導体の発見や発明の流れとほぼ重なる形で成長した。

 アメリカ(米国)における半導体産業の歴史と進化

アメリカは、最初期から半導体産業に関与しており、1939年にはベル研究所によってダイオードが、1947年には同研究所によって点接触型トランジスタが発明される。今ではシリコンバレーは新進気鋭の技術系スタートアップが創業する場所としてのイメージが根強いが、起源は名称が示すとおり半導体(シリコン)だ。

その原点ともいえるのが1948年にベル研究所で接合型トランジスタを開発したウィリアム・ショックレー氏だ。ウィリアム・ショックレー氏は同研究所を辞めたのち、故郷であるシリコンバレーのマウンテンビューにショックレー半導体研究所を設立。これを機にシリコンバレーには多くの半導体関連の企業が創業されることとなる。

なお、ショックレー半導体研究所にはインテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏とロバート・ノイス氏、テレダインの創業者であるジャン・ヘルニ氏、ジェイ・ラスト氏とシェルドン・ロバーツ氏など、錚々たるメンバーが名を連ねていた。

その後、1959年にはフェアチャイルドセミコンダクター社とインテル社の共同創業者であるロバート・ノイス氏と、テキサス・インスツルメンツ(TI)社のジャック・キルビー氏がそれぞれ集積回路(IC)を発明。

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 アメリカ(米国)が占める半導体業界の世界シェアは?

日本が台頭する1970年代までは、半導体産業のTOP10にはアメリカの企業が半数近くを占めていた。その後、1980年代半ばから日本や台湾、韓国などアジア諸国が台頭し、シェアが減少。大きな契機となったのは1993年に設立された半導体ファブレスメーカーNVIDIAだろう。同社が開発するデータセンター向けGPUが売上を伸ばし、アメリカの半導体産業を牽引する立役者となった。

2022年時点で、世界の半導体製造能力に占めるアメリカの割合は10%、2032年には14%へと増加する見込みだ。アメリカのシェアは縮小傾向にあったが、国内の半導体産業を強化するためのCHIPS法の制定によって大きく拡大したものとみられている。

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 アメリカ(米国)が掲げる半導体関連の政策や規制について

ここでは、アメリカが現在推し進めている半導体関連の政策や規制について触れていきたい。

技術保護を目的に、先端半導体の輸出規制を強化

2024年12月、米国商務省産業安全保障局(BIS)は中国に対する半導体の輸出管理強化を発表した。具体的な内容としては、特定の半導体製造装置(SME)の輸出規制と140社のエンティティー・リスト(貿易上の取引制限リスト)への追加が挙げられる。その後中国は、半導体製造に用いられるガリウム、ゲルマニウム、アンチモンといった材料の輸出制限をアメリカに課す対抗措置を発表した。

さらに、2025年1月にバイデン政権がAI向けの先端半導体の輸出に関する新たな規制案を発表。日本を含む同盟国には無制限のアクセスを許認する一方で、輸出規制の対象となっている中国、ロシア、イラン、北朝鮮などについては高度なAI技術の新規移転も制限する措置を盛り込んだ。

ただ、バイデン氏からトランプ氏へ政権から移行したことから、今後状況は大きく変わる可能性がある。就任タイミングの20日には多くの大統領令を発令し、早速変化の兆しがみられた。自国ファーストを掲げている手前、今後更なる対中デカップリングが起こることも想定される。

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 米国内半導体産業の振興を目的に始まった「CHIPS法」

CHIPS法は、アメリカ国内の半導体産業の強化と科学技術分野の研究開発を目的に設立された法案で、半導体製造施設の建設や拡張などを行う企業に対して、最大390億ドルの助成と25%の投資税額控除を行う。

そのCHIPS法を強化、拡充するのがCHIPSプラス法で、この法に基づいた企業への助成がいくつか決定されている。

2024年6月には、大手半導体材料メーカーであるインテグリス社に最大7,500万ドルの助成を行うことを発表。これまでにも、インテル社に対して最大85億ドルの補助金供与、BAEシステムズ・エレクトロニック・システムズ社に最大3,550万ドルの助成、さらに米国IT大手のヒューレットパッカード(HP)社に最大5,300万ドルの助成など、惜しみなく資金を投じている。

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 アメリカ(米国)の大手半導体メーカー・企業・会社

アメリカは半導体産業の中心地であり、世界をリードする会社が数多く存在している。ここでは代表的な半導体の会社・メーカーをいくつか紹介したい。

 インテル

カリフォルニア州サンタクララに本社をおく世界最大級の半導体チップメーカー。1968年にゴードン・ムーア氏とロバート・ノイス氏によって設立された。主にマイクロプロセッサーやフラッシュメモリ、チップセットといった製品の設計・製造・販売を手掛けている。半導体売上高ではTOP10常連であり、2023年の半導体売上高世界ランキングでは首位を獲得した。

Gartner「世界半導体メーカー別売り上げランキング トップ10(速報値)」を基に作成

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 テキサス・インスツルメンツ(TI)

1930年に集積回路(IC)を発明したジャック・キルビー氏らがテキサス州ダラスで創業した会社で、半導体の開発・製造を行う。同社はアナログ半導体分野で20年以上にわたってトップシェアを維持しており、また、車載向け半導体製品の80%を自社工場で製造し、高品質な製品を安定供給している。さらに、組み込みプロセッシング分野でも優れた技術力をもち、多岐にわたる領域で製品を提供している。

 NVIDIA

1993年に設立されたアメリカ・カリフォルニア州サンタクララに本拠地をおく半導体ファブレスメーカー。創業当初はゲームPC向けのGPU開発で高いシェアを誇っていたが、2000年代からデータセンター向けのGPU開発も始める。生成AIブームが後押しとなり、2023年に売上高が急激に伸長、2024年6月5日には時価総額が3兆ドルを突破した。

 クアルコム

1985年にアンドリュー・ビタビ氏とアーウィン・M・ジェイコブス氏によって設立された、移動体通信技術および半導体の設計・開発を行うファブレスメーカー。スマートフォン向けの半導体チップセット「Snapdragon」で高いシェアをもっており、特にモバイルデバイス用プロセッサを強みとする。また、近年は自動車分野にも進出しており、自動運転や先進運転支援システム向けのプラットフォーム「Snapdragon Ride」などを提供。

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 AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)

1969年にジェリー・サンダース氏らによって設立された半導体メーカー。同社は、CPU、GPU、FPGA、SoCなど高性能コンピューティング製品を設計・開発し、ゲーミング、データセンター、AI、組み込みシステムなど多岐にわたる市場に提供している。特にRyzen、Radeon、EPYCなどのブランドで知られ、パソコンやサーバー向けのプロセッサ市場で高い優位性を誇っている。

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 まとめ

アメリカにおける半導体産業は、黎明期から今日に至るまで世界経済を支える重要な役割を担い続けており、とりわけシリコンバレーに代表される企業群は今でも根強い影響力を保持している。

また、アメリカ政府は安全保障や競争力強化の観点から半導体産業を支援する政策を展開しており、緊密に企業と連携しながら産業の発展を促進していることにも注目したい。半導体は5G、AI、自動運転などの先端技術の中核として今後もアメリカの経済成長を加速させるキーテクノロジーになるだろう。

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