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AI半導体の新星「NVIDIA(エヌビディア)」とは?歴史や強みについて

AI半導体の新星「NVIDIA(エヌビディア)」とは?歴史や強みについて

NVIDIAが2024年6月に時価総額世界No.1になったというニュースを目にした方も多いだろう。もともと3Dゲームに必要な高性能なGPUを開発していた会社だったが、生成AIに転用したところ、GPUの販売が急速に伸びた。本記事では、NVIDIAの概要や、成功した戦略や強みなどについて解説したい。

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 NVIDIA(エヌビディア)とはどんな会社か?

NVIDIAは、1993年に設立されたアメリカ・カリフォルニア州サンタクララに本拠地をおく半導体ファブレスメーカーである。創業当初はゲームPC向けのGPU開発に特化し高いシェアを誇っていた。しかし、2006年ごろからデータセンター向けGPUの開発にも乗り出し、年々売上を伸ばし、2024年第2四半期では前年同期比で154%成長で過去最高の売上高を達成するほどの事業となっている。

現在は、コア技術であったGPUを起点に、データセンターやプロフェッショナルビジュアライゼーション、自動運転と幅広い領域へと事業の多角化を進めている。

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 GPUとは何か?CPUとの違い

CPU(Central Processing Unit)は、少数のコアをもち、高速で順次的な処理を得意とし、複雑なタスクの管理や多様なプログラムの実行に向いている。一方、GPU(Graphics Processing Unit)は、画像処理や動画再生、3Dレンダリングなど、同時に大量のデータを並列処理するために設計されたプロセッサだ。多数のコアをもち、特に同時に多くの演算を必要とするタスクに優れており、近年ではAIやディープラーニング、科学技術計算などの用途でも重要な役割を担っている。

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 NVIDIA(エヌビディア)の創業の歴史・歩み

NVIDIAは、1993年4月にジェンスン・フアン氏、クリス・マラコウスキー氏、カーティス・プリエム氏らによってアメリカのシリコンバレーで設立された。1995年には最初の製品となるビデオチップ(グラフィックアクセラレータ)「NV1」を発売。当時では、画期的な技術が組み込まれた製品であったが、Microsoft社が同年に「DirectX」をリリースしたことで、思うような売り上げを作ることはできなかった。

その後、1999年8月31日に世界初のGPUとされる「GeForce 256」を発表。リアルタイムの3Dグラフィックス処理を大幅に進化させた。

その後、NVIDIAはAIやデータセンター向けの高性能計算技術へと事業を拡大。2006年には並列コンピューティングプラットフォーム「CUDA」を発表。これにより、3Dグラフィックスだけでなく、AIや機械学習、データセンターなどさまざまな領域へと拡大した。

さらに、2016年にはディープラーニングとAI向けのGPU「Tesla P100」をリリースし、クラウドコンピューティングやディープラーニングに特化した高性能計算技術の提供を加速させた。この時期からデータセンター事業が急成長し、同社はAI分野で頭角を現し始めた。

ChatGPTやClaude 3など生成AIブームが後押しとなり、2023年にはNVIDIAの売上高は急激に伸長した。現在では拠点数50カ所以上、従業員数27,000名以上と着実に企業規模を成長させている。

NVIDIAの主な出来事

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 NVIDIA(エヌビディア)の特徴・強み

ここでは、NVIDIAの特徴や強みについて、さらに深堀りして解説していく。

 GPU技術の革新とパフォーマンス

1999年に世界初のGPU「GeForce 256」を発売したように、GPUにおいては今なお不動の地位を築いている。ゲーム向けの「GeForce」、業務用に特化した「Quadro」、データセンター用である「Tesla」などのラインナップがある。また、リアルタイムレイトレーシングやゲームのフレームレート(fps)をAIの活用によって向上させるDLSS(Deep Learning Super Sampling)などの最新技術でグラフィックス処理における技術革新をリードしている。

 AIおよびディープラーニング技術のリーダーシップ

NVIDIAは、AIとディープラーニングの分野で圧倒的な地位を築いている。特に「CUDA」とデータセンター向けAIチップの主力製品である「H100」「Jetsonシリーズ」は、世界中の研究機関や企業でAIモデルのトレーニング効率化・高速化に活用されている。

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 NVIDIA(エヌビディア)の時価総額・世界シェア

2023年に半導体の分析会社であるTechinsightsが行った調査によれば、データセンター向けGPUの総出荷台数は約385万台で、そのうちNVIDIAが約98%とIntelとAMDといった競合企業を大きく引き離す形となった。収益シェアでも98%を占め、前年から3倍以上も成長。また、2024年1月期決算によれば、2024年の通期売上高は609億ドルと前年と比べて126%増加している。

株価も生成AIの登場とともに、まさに破竹の勢いで上がっている。2024年6月5日には時価総額が3兆ドルを突破し、マイクロソフトに続く世界第2位に。時価総額が3兆ドルの大台に乗るのは、アップルとマイクロソフトに次いで史上3社目と言われている。2024年の6月18日には時価総額3.3兆ドルに達し、世界首位に躍り出た。

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 NVIDIA(エヌビディア)が掲げる戦略について

 技術の多角化

NVIDIAのGPUはもともとゲーム用に開発されたものだが、非常に高度な並列処理が可能で、かつ膨大なデータを高速処理できる特徴があった。2011年に、NVIDIAのブライアン・カタンザーロ氏とAI研究者であるスタンフォード大学のアンドリュー・ン氏の研究チームが、NVIDIAのわずか12個のGPUが、2000個のCPUに匹敵するパフォーマンスを出せることを発見。これによって、AIのディープラーニングや高性能計算(HPC)などの分野でも有効であることが示された。

そこから、NVIDIAはAIやディープラーニングに軸足を移し、データセンター、自動運転、医療・ヘルスケアと事業ポートフォリオを多様化し、成長機会を広げている。

 開発者コミュニティの強化

NVIDIAは、2006年に並列コンピューティングプラットフォーム「CUDA」を提供し、500万人以上の開発者と4万社に及ぶエコシステムが形成されている。また、2020年12月から建物の設計やデジタルツイン化などの開発支援を行うプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」のオープンベータの提供を開始。さらに2030年の商用化を予定する6Gに向け、5Gおよび6Gで最先端のAIネイティブの無線インターフェイスを研究・開発するためのプラットフォーム「NVIDIA 6G Research Cloud」を2024年にリリース。システム性能のベンチマーク、AIやMLを使った無線通信アルゴリズム調査などをサポートする。

 戦略的なパートナーシップと事業投資

同社は、戦略的パートナーシップや買収を通じて、技術的能力を拡大して新しい市場でのシェア拡大を目指す。これにより、技術とビジネスの両面で強みを発揮している。また、NVIDIAは日本のメーカーやテック企業との協業も視野に入れている。三井物産はNVIDIAと連携し、製薬会社にスーパーコンピューターを提供し、創薬の研究開発を支援する事業を2024年2月からスタートさせた※1。また、2024年3月には日立製作所とエネルギーやモビリティー、産業などのOT(Operational Technology)領域で協業を発表している※2

M&A戦略においては、2019年にはデータセンター事業強化のために高性能なネットワーキング技術を持つ「Mellanox Technologies(メラノックステクノロジーズ)」を買収。また2021年には自動運転技術「NVIDIA DRIVE」の強化を目的に、自動運転車向け高精度3次元マップを開発するスタートアップの「DeepMap(ディープマップ)」を買収している。

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 まとめ

NVIDIAは、今や世界的に有名なAI半導体メーカーとなった。しかし、トップに君臨するまでには、1995年のビデオチップから試行錯誤の連続だったといえる。

ゲーム向けGPUといった技術を「深化」させ、そのコア技術を新たな領域への展開していく「探索」を行った、まさに両利きの経営の成功事例といえよう。

近年は、技術革新によってビジネス環境は著しく変化を遂げている。自社がおかれている業界にとらわれず、生成AIやディープラーニングといった先端テクノロジーなどにも目を光らせて、そこから得られた知見を自社の新規事業開発や研究開発に活用できることが望ましい。

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