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宇宙ビジネスにはどんな事業がある?今後の展望や課題も解説

宇宙ビジネスにはどんな事業がある?今後の展望や課題も解説

有人ロケットや人工衛星など、宇宙開発に関するニュースを見聞きする機会が多くなった。H3ロケットが話題になったのも記憶に新しいだろう。こうしたニュースから宇宙ビジネスの領域に興味を持たれる方も多いのではないだろうか。

そこで本記事では、さまざまな国や企業が取り組みを進め、急成長している「宇宙ビジネス」の事業領域や市場規模について紹介していく。

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 宇宙ビジネスとは

宇宙ビジネスとは、宇宙空間を対象とした商用事業の総称だ。ロケットや人工衛星といった飛翔体の打ち上げに加え、部品の製造や衛星データの活用など、さまざまな関連事業が宇宙ビジネスに含まれる。

宇宙ビジネスというと、惑星探査や宇宙旅行といった壮大な事業を想像するかもしれないが、宇宙開発がもたらす恩恵は決して現在の暮らしと縁遠いものではない。たとえば、天気予報は人工衛星で成り立っており、海上や災害現場では衛星通信が大活躍する。ほかにも、地球の広範囲を観測できることを利用して、環境問題の解決に向けた温室効果ガスなどのデータ収集も行われている。

このように、宇宙ビジネスは地球上の生活を豊かにするために欠かせないものとなっている。

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 宇宙ビジネスが注目されている背景

米ソ冷戦時代の宇宙開発競争に代表されるように、宇宙ビジネスとは元来、国家主導で行われるものだった。変化が訪れたのは、アメリカのNASAが2011年にこれまで開発したスペースシャトルの打ち上げを終了し、後継となる有人宇宙船は、民間企業が商業的に運営するという方針に転換したことがきっかけだ。

その後、Space XやBoeingを皮切りにさまざまな企業が宇宙ビジネスに参画し、2020年には9年ぶりの有人宇宙飛行およびISS(国際宇宙ステーション)への到着に成功した。今では世界中で宇宙開発の規制が緩和されており、日本でも宇宙ベンチャー企業が続々と上場しており、2023年にはispace、Ridge-i、QPS研究所の3社が上場を果たしている。

また、業界ではとりわけ小型衛星の開発競争が活発となりコスト低減につながっている。それにより企業や大学単体での開発や製造を行えるようになり、宇宙ビジネスを発展させる要因となっている。

経済産業省「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」よりhttps://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/space_industry/pdf/001_05_00.pdf

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 宇宙ビジネスにおける事業の領域

宇宙ビジネスには明確な事業領域の定義がないため、本記事では大きく「機器製造・運用」と「利活用」に分けて解説する。

まずは「機器製造・インフラ」の領域について詳しく見ていこう。

 宇宙関連機器の製造

宇宙ビジネスの製造分野では、ロケットや人工衛星といった飛翔体、および衛星データを取得するための基地局が日々開発されている。たとえば、三菱重工が手掛けるH-2Aロケットの打ち上げは、100万点に上る部品の製造などに、約1,000社ものサプライチェーンが関わっている巨大事業だ。

また、衛星部品の製造に関しては、三菱電機が2022年、3Dプリンターによる宇宙空間内でのアンテナ製造技術を開発。さらに、数千機の低軌道衛星と接続する高速通信アンテナ「Starlink Business」をSpace Xが開発し、極地でも高速な通信を可能にするなど、衛星通信の改良が日々重ねられている。

 管理・運用

人工衛星をインフラとして長く運用するには、定期的な機体のメンテナンスや、宇宙ゴミの回収といった安全保護活動が必要だ。たとえば燃料補給に関しては、Orbit Fabが「軌道上ガソリンスタンド」をすでに実用化している。また、宇宙ゴミの領域では、川崎重工や東京海上、三井物産が協業し、宇宙ゴミを除去するための事業化を目指している。

このように人工衛星や宇宙環境を宇宙空間内で整備する体制が整っていけば、運用周りだけでも多くの事業・雇用が創出されることだろう。

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 今後期待できる宇宙の活用例

ではもうひとつの事業領域である「利活用」には何があるだろうか。人工衛星や宇宙空間の利用によってどのようなことに活かすことができるのか紹介していく。

 人工衛星データの活用

人工衛星から取得される地球の観測データは、ありとあらゆる事業に利用される。中でも人々にとって身近なのは、GPSをはじめとした位置情報サービスであり、スマホやカーナビなどに広く活用されている。

また、人工衛星は通信データの送受信にも非常に便利であり、ここ数年で多くの企業が衛星基地局の開発に乗り出した。海上や山間部にWiFi環境を提供したり、災害等で地上基地局が停止した地域をフォローしたりと、衛星基地局は通信技術の向上に欠かせない。

さらに一部の人工衛星は、位置情報と通信技術を併用する形で、飛行機などの航路管理も実現している。1日約19万便の飛行機が自由に空を飛び変えるのは、最新の気象状況などをもとに臨機応変な経路変更が行われているからだ。

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 宇宙資源の活用

月や小惑星には、地球上ではあまり取れないレアメタルなどの宇宙資源が眠っている可能性がある。利用価値のある資源を探査、採掘して、資源を利用できるようにするのが宇宙資源開発である。一方、惑星を目指すような宇宙探査に関しては、膨大なコストや調査期間を要するだけでなく、技術面での課題も多い。「民間人だけで宇宙を飛ぶ」という宇宙進出の大前提でさえ、Space Xが2021年に世界で初めて成功させた段階であり、ビジネス化にはまだまだ多くの時間がかかるだろう。

 宇宙空間の活用

宇宙空間の微小重力環境は、たんぱく質を結晶化させる際に高品質なものができやすいなどの特有の事象が起こる。そのため宇宙空間での研究は、病気発症のメカニズムの解明や新薬の開発、カーボンニュートラルの実現などに活かすことができる。

たとえば、分子科学研究所の加藤晃一教授らの研究グループが行った実験では、宇宙ステーション「きぼう」でアルツハイマー病に関連するアミロイド線維を作り地上に持ち帰って調査を行った。この実験によって、宇宙環境の中で作られた線維は、地上で作られたものとは違う独特な形をしていることが発見され、今後アルツハイマー病の原因や治療法の研究に役立つと期待されている。

※アミロイド線維とは、タンパク質が規則正しく多数積み重なってできる凝集体。アルツハイマー病や糖尿病などの原因となることが知られている。

また一部の企業が、宇宙ホテルや宇宙スタジオといった商用宇宙ステーションの打ち上げを予定するなど、人類の活動領域を宇宙に拡げる取り組みも着実に進んでいる。宇宙をエンタメスポットとして活用することも決して不可能ではない。

宇宙ビジネスの事業領域

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 宇宙ビジネスの市場規模

宇宙ビジネスの市場規模について世界と日本のそれぞれの現状を見てみよう。

 世界の宇宙ビジネスの市場規模

経済産業省が2024年公表の資料によると、世界における宇宙ビジネスの市場規模は約54兆円で、モルガン・スタンレーは2040年までに140兆円になると予測している。

特にアメリカでは、税制優遇などの宇宙ビジネス誘致が州ごとに行われているほか、開発された技術やサービスを国が継続的に購入する「アンカーテナンシー」などの支援も行われている。「SpaceTech Industry 2021 Landscape Overview」レポートによると、世界に約10,000社ある宇宙関連企業のうち、アメリカの企業がほぼ半数(約5,600社)であることを考えれば、今後もアメリカが宇宙ビジネスを牽引していくことは間違いないだろう。

 日本国内の宇宙ビジネスの市場

日本国内における宇宙ビジネスの市場規模は約4兆円であり、世界市場に比べるとかなり小規模なものになっている。日本特有の保守的なビジネス文化を考えれば、宇宙ビジネスのような、ハイリスクかつ先行きの保証がない事業に投資をためらう傾向にあるのかもしれない。

こうした現状への対策として、政府は宇宙活動法(2018年施行)をもとに打ち上げ失敗時の損害賠償を担保しているほか、「宇宙産業ビジョン2030」をもとに新規参入支援を行っている。

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 日本における宇宙ビジネスの課題

日本の宇宙ビジネスは世界から遅れを取っていると言われているが、その要因として2つの問題点を挙げる。

 政府による研究開発投資に依存している

国内宇宙産業の売上は、JAXAをはじめとした政府機関による研究開発投資、いわゆる官需に依存している部分が大きい。2021年度の売上では、JAXA含む公的機関向けの売り上げが約67%を占めている。

宇宙ビジネスの国内市場を拡大するには、人工衛星や衛星データの民間取引を奨励し、企業間の競争力を高めていくことが求められる。

 研究開発費が少ない

国内宇宙産業の研究開発費は、2021年度時点で約43億円となっており、年度売上に対する割合は2%にも満たない。これは前述の官需依存の影響がある。たとえ膨大なコストを払って研究開発を行ったとしても、商業化できなければ大きな利益を生み出すことができないため、年々研究開発費が減ってしまう結果となっている。この体質が、宇宙開発の分野において日本が損失回避に傾倒してしまっている要員である。

商用宇宙ステーションのような大規模事業が世界各地で始動している今、民間や海外に向けた販売の展開が描けなければ、この先も日本の宇宙ビジネスが発展することはないだろう。

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 まとめ

宇宙空間を利用したサービスは、すでにさまざまな形で活用され始めている。さらに、宇宙と他の産業とのかけ合わせで全く新しいサービスが生まれる可能性もある。世界でも宇宙ビジネスの取り組みが活発となっており注目度が高いだけに、今後も宇宙ビジネスにおける最新の技術から目が離せない。