日本や世界の半導体メーカー・会社・企業【分野別で紹介】
製造業
ビッグデータや生成AIといった先端技術の登場によって、工業、農業、運輸など、多種多様な領域に大きな恩恵をもたらしている。それはバイオ分野も例外ではない。創薬開発の効率化や、ひいては難病や希少疾患などの研究に一役を買う存在にもなりうるのだ。本記事では、バイオインフォマティクスの概要や活用分野、市場の将来性について解説したい。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
目次
バイオインフォマティクスとは、「生物学」を意味するバイオロジーと「情報学」を意味するインフォマティクスを組み合わせた造語で、ディープラーニングや機械学習などを活用し、ゲノムやDNA、タンパク質、RNAといった生物学的データを効率的に保存、処理、解析する学問分野のことをいう。特に遺伝子解析や疾病の研究、薬剤開発などで重要な役割を果たしている。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
バイオインフォマティクスは、主にDNA、RNA、タンパク質などの生物学的データを扱い、遺伝情報や分子進化の保存・処理・解析などに貢献する分野だ。
それに対し、マテリアルインフォマティクスは材料科学を対象としており、材料の性質や構造を解析して、新しい材料の発見や設計を効率化することを目指す科学領域である。
2024年にDelveInsight社が行った調査によれば、世界におけるバイオインフォマティクスの市場規模は2023年に201億2,000万米ドルに達した。2024年から2030年までに15.14%の年平均成長率で拡大し、2030年には468億8,000万米ドルに達すると見込まれている。核酸とタンパク質のシーケンシングの需要が高まっていることや、AI・機械学習の技術革新などが成長促進の主な要因となっている。
バイオインフォマティクスは具体的にどのような分野や領域で活用されているのだろうか。ここでは事例を3つ紹介する。
タンパク質は、生物の体内で行われる反応に深く関係する。生命現象を理解するためにはタンパク質の構造と機能の解析が欠かせない。バイオインフォマティクスの歴史のなかでも、核磁気共鳴(NMR)、X線結晶構造解析といった手法が用いられて解析が進められている。また「AlphaFold2」を筆頭としたタンパク質予測プログラムを活用することで、複雑なタンパク質構造をアミノ酸の配列から予測する技術が飛躍的に向上し、時間を大幅に短縮できるようになっている。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
遺伝子ネットワークの解明とは、遺伝子同士がどのように相互作用し、生物の機能や行動にどのような影響を与えるかを明らかにする分野だ。
多くの動植物では、個別の遺伝子が相互作用しあって複雑な事象が発生している。バイオインフォマティクスでは、ゲノム情報や塩基配列など膨大なデータの収集・処理・分析し、さらに遺伝子同士の相互作用である「パスウェイ」をデータベースおよびグラフ化することができる。
次世代シーケンシング(NGS)とは、DNAやRNAの配列を高速かつ大量に解析する技術のことを指す。従来では、DNAの塩基配列を決定する場合は1~96のDNAを同時処理するのが限界だったが、次世代シーケンシングでは1回で数億から数十億のリード(配列断片)に及ぶ。さらにバイオインフォマティクスの登場によって、目的に応じて機能別や構造別にファイル形式(FASTQ、SAM/BAM、VCFなど)で出力できるため、これらのデータをより効率的に管理・解析することが可能となる。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
バイオインフォマティクスは、新薬の開発効率化、根治が難しいとされてきた難病の治療法の確立だけでなく、新製品開発などにも活かすことができる。
人体に大きな影響やリスクをもたらすため、新薬の開発では基礎研究、非臨床実験・臨床試験(治験)、承認申請と非常に多くのプロセスが存在している。バイオインフォマティクスでは、特に基礎研究において従来の手法と比較して迅速かつ効率的に進めることが可能になる。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
バイオインフォマティクスでは、ゲノムやプロテオーム(生体に発現するすべてのタンパク質の集まり)、疾患リスクに関する膨大な情報を統合して分析することが可能だ。この技術を使えば、従来では手間や時間がかかっていた指定難病の治療法の発見・確立が期待できる。また、患者の体質や既往歴などに合わせて個別最適な医療の提供も可能となる。
バイオインフォマティクスを活用することで、スマートセルの構築がより効率化される。スマートセルとは、人工的に生物細胞がもつ物質生産能力を最大限まで引き出し、最適化した細胞のことをいう。
また、スマートセルを含むバイオ資源を活用した経済活動のことをスマートセルインダストリーと呼び、バイオインフォマティクスはその有用な手段の1つとして注目が集まっている。スマートセルの汎用性は非常に高く、医薬品に限らず再生可能エネルギー、発酵食品や農作物、化粧品など、その領域は多岐にわたる。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
バイオインフォマティクスは、製薬や医療などを筆頭に大きな変革をもたらす学問分野ではあるものの、まだ一般に広く浸透しているものではない。そのため、専門人材が不足していたり、倫理的・個人情報保護の観点での法整備がなされていなかったりと、課題がいくつか存在する。
バイオインフォマティクスで求められる知識は幅広い。分子生物学や遺伝学だけでなく、統計学、さらにはプログラミングや開発、機械学習など知識も必要になる。これら全ての分野に精通した人材はごく僅かであり、採用が難しいのが現状だ。また、バイオインフォマティクスの人材を社内で育成することも一朝一夕でできるものではないため、当面は人材不足が続くと考えられる。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
バイオインフォマティクスで扱うデータは非常に大規模で、かつ異なる形式やスケールで提供されるため、分析を行うことが非常に複雑かつ困難だ。もし、測定ミスやサンプルの取り扱いによるバイアスが起こって正確性や一貫性が損なわれた場合、誤った研究結果に帰着する恐れがある。
遺伝情報や生物データの取り扱いには、個人情報の保護や倫理的な配慮が求められる。また、国や地域によって法律や規制が異なるため、研究結果で得られたデータの取り扱いには十分な注意が必要だ。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
▶解説資料(無料)を見てみる
遺伝情報やヘルスケアデータなど機密性の高い情報を扱うため、データセキュリティの観点も重要である。個人を特定できないようにデータを加工するマスキング技術や、ブロックチェーン技術を活用してデータの改ざん防止やトレーサビリティ向上などの取り組みが肝要といえるだろう。
バイオインフォマティクスの領域は極めて専門性が高く、適切な人材の確保が必要になる点や、またDNAやゲノムなどを扱うことから倫理的な配慮やデータセキュリティの観点も重要となる。
とはいえ、「生物学」と「情報学」の融合によって、今まで空想の話で終わっていた難病の治療薬の開発や、パーソナライズ治療など、まさに医療・製薬分野に大きな革命をもたらそうとしている。また、スマートセルインダストリーでも有用な手段の1つとされ、どの領域の事業でも注目度が高い。ぜひ、常に最新動向をチェックしてみてほしい。