2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
CASEは、自動車業界の新たな4つの領域を合わせて表した造語である。自動車業界は、環境保全や安全面の改善や技術の進歩、そして世界的なデジタル化の波を受け、100年に一度と言われるような大きな変革の時を迎えている。今回は、自動車業界の未来を象徴するCASEについて解説する。
自動運転や電気自動車の技術を支える「半導体」の2024年の動向をさくっと確認!
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目次
「CASE(ケース)」とは、自動車業界の変革の象徴となる4つの領域「Connected:コネクティッド」「Autonomous:自動運転」「Shared & Service:シェアリング・サービス」「Electric:電動化」の頭文字を取って造られた言葉だ。2016年パリ開催のモーターショーにて、ドイツの自動車メーカーであるダイムラーの取締役会会長、最高経営責任者を務めたことで有名なディーター・ツェッチェ氏の発言が元となっている。
CASEを構成するそれぞれの語句については以下の通りである。
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「Connected:コネクティッド」は、自動車のハード面の変化を指し、自動車そのものに通信機器やセンサーといった電子機器が搭載され、IoT化してデータの共有、活用がされることをいう。自動車に搭載されたセンサーによって、車や道路などの周辺の状況を、インターネット通信を介して提供しているサービスに接続する。通信分野のハードの進化によって、渋滞や事故情報といった交通情報だけでなく、駐車場の空き情報や、自動車のメンテナンス時期の通知、また万が一の盗難時に車両の追跡ができるようになるなど、さまざまな便利なサービスの提供が可能になる。
「Autonomous:自動運転」も、Connected(コネクティッド)と同様に、ハード面の変化を指している。
自動運転は、自動運転の運転主体、技術到達度、走行できるエリアなどで、レベル0〜レベル5の6つのレベルで区別されている。主流とされるレベル分けの基準は、米国の自動車技術会のものである。
現在、レベル1〜2の技術は多くのメーカーでADAS(先進運転支援システム)として導入されている。また、一定の条件下で自動運転が可能となるレベル3の技術も、2020年に道路交通法の改正で搭載可能になり、ホンダがレベル3の技術を搭載した新型車を2020年に発表、2021年に発売している。最高レベルである完全自動化のレベル5は条件なしの自動運転となり、多くの社会制度を整える必要があるため、各メーカーの開発状況で公にされている情報は多くない。しかし、レベル5の開発が達成されれば、業界全体の大きな変革となるだろう。
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「Shared & Services:シェアリング・サービス」は、カーシェアリングやライドシェアリングのことである。前者は、企業または個人が自動車そのものを貸出することで、後者はドライバーと同じ目的地の人をマッチングし、相乗りをするサービスのことだ。カーシェアリングは2021年の調査で、すでに車両ステーション数が約2万箇所に上るなど、日本でも広く普及しつつある。
一方、ライドシェアリングでは、相乗りした人とガソリン代を折半することで交通費の節約が見込めるメリットがあるが、日本では道路交通法によって原則禁止されており、現状では普及していない。しかし、欧米では安価な移動手段として広く利用されている。シェアリングの広がりから、自動車は所有するものから移動ツールとして共有できるものという概念に変化し始めていることが伺える。
「Electric:電動化」は、自動車の動力源をガソリンなどから電力へ移行させることをいう。温室効果ガスである二酸化炭素などを排出する化石燃料ではなく、電気を動力源にすることで地球環境を害さないメリットがある。
電動化の分野では欧州と中国が先行しており、ベンツなどではいち早く完全電動化の目標を掲げている。しかし2023年3月に欧州委員会が、2035年以降も合成燃料の使用を前提にして内燃機関の使用を認めると、これまでの内燃機関の新車販売禁止からの方針を転換し、完全電動化は緩やかな歩みとなっており、しばらくはエンジン車との併存が予想される。
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CASEが注目される背景として、温室効果ガスによる地球温暖化や、少子高齢化に伴い高齢ドライバーが引き起こす事故数の増加、自動車業界の競争激化などが挙げられる。
環境問題は近年深刻さを増し、異常気象が取り沙汰されるなか、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにしようとするカーボンニュートラルへの取り組みは喫緊の課題である。世界各国において温室効果ガスである二酸化炭素の排出削減が取り組まれており、2016年発効のパリ協定に従う形で、各国が公表している中長期目標に向けて省エネルギー化などが進められている。
自動車業界としても、温室効果ガスを排出する化石燃料から脱却し、早急に電動自動車(EV)などの地球環境に優しい自動車を実現する必要があり、EV技術だけでなく、燃料電池自動車などのさまざまな角度から研究が進められている。CASEを実現させることができれば、燃料のクリーン化だけでなく、渋滞の解消、自動運転による効率的な運転、シェアをすることによる無駄な燃料利用の削減など、さまざまな側面によって地球温暖化への対策となり、自動車業界の持続可能性を高めることにつながると期待されている。
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環境問題以外にも、少子高齢化といった社会背景もCASEが注目される要因のひとつである。高齢ドライバーによる交通事故のニュースは後を絶たないが、自動車がないと生活が成り立たない地方の現状も否定できない。このようなことからも高いレベルの自動運転技術の実現によって事故のリスクを低減させることが望まれている。また、渋滞の回避など交通効率についてもプラスの影響が出ることが予想される。
人々の意識が変化したことも、今日の自動車業界には影響が大きい。都市部では自家用車の所有率、新規購入数は低下しており、自動車の保有、購入意向は低い傾向にある。一方、自動車のシェアリングサービスは広まりを見せ、カーシェアの車両ステーション数は約2万箇所となり、会員数も220万人を越えている状況だ※1。自動車をひとつの交通手段と捉え、利用の最適化がされているといえる。今後はシェアリングの拡大によって、交通渋滞の軽減や駐車の合理化が進んでいくだろう。
自動車業界の競争が激化していることも、CASEが注目される要因のひとつといえる。国内市場だけでなく、海外市場での競争力を高めていく必要もあり、従来の技術や販売方法だけでは、世界的な大手のメーカーであっても、安泰とは言えなくなった。これらの背景から、自動車業界での生き残りのために、イノベーションを起こすCASEが期待されるのだ。
CASEは自動車の製造技術だけでなく、情報通信分野の技術も必要であり、近年発展目覚ましいIT業界との親和性が高い。そのほか、これまで自動車業界と関わりのなかった業界や企業が、自動車開発に関与できる可能性や余地がある点もCASEが社会から注目される理由である。IoTやAIといった最先端の技術によって、モビリティは効率化され、さまざまなカスタマイズが可能になっている。今後も、デジタル技術の活用によって、車両そのものの発展だけでなく、ユーザーの利便性の向上などの面でも有効な、新しいサービスの提供ができるようになっていく期待が高まっている。
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国内市場は鈍化しており、従来型の開発や販売方法だけでは売上を伸ばすことは難しい。ここでは国内自動車メーカーがどのような取り組みを行っているのかをご紹介する。
トヨタでは、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供し、多様なニーズに応えることを目標とした取り組みが行われている。代表的なものとして、トヨタのコネクティッドサービスが挙げられる。2018年よりスタートした「T‐Connect」では、万が一の際にオペレーターによって緊急車両の手配などを行う緊急通報などの「安全・安心」、車に乗り込む前にリモートでエンジンや空調を操作できる「快適」、従来のナビを発展させた目的地検索、お役立ち情報の検索などのサービスを提供する「便利」などのサービスを提供している。
そのほか、自動運転やシェアリング、電動化においてもさまざまな取り組みを行っており、国内のCASEを牽引している。
スズキは、2019年にトヨタと資本提携を行い、さまざまなCASEに関する取り組みを進めている。2021年発表の中期経営計画では、CASEの取り組みが現状では不十分であるとし、主にコンパクトカー領域でのCASEの導入を加速させることを表明している。また、いすゞと日野とトヨタがCASEの社会実装、普及のために立ち上げたCJP(Commercial Japan Partnership:コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ)プロジェクトに、ダイハツと共に参画している。スズキの強みである軽商用車において、CASE技術を取り入れることを目指す。
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ホンダでは、世界に先駆けて自動運転レベル3の機能が搭載された車種を発表、法人リース販売限定ではあるが販売をしている。ホンダでは、CASEをベースにして、エネルギーの社会循環を形成、実現させるといった大きな構想のもと、CASE技術の研究、発展が行われている。先進運転支援システムであるADASやIVI(In-Vehicle Infotainment:情報と娯楽の双方を提供するシステム)の領域などについても、情報通信システムの搭載及びアップグレードを重ねることで、ユーザーの車に乗る行為そのものの満足度を向上させる取り組みもされており、さまざまな領域で技術の導入を行っている。ホンダは、自動車だけでなくさまざまなモビリティサービスを向上させ、スマートシティの構築を支えて、社会貢献することを目指している。
日産では、フランスのルノー、三菱自動車とのアライアンスや、IT企業といった社外の資源を最大限に活用しながら、CASEに取り組んでいる。技術開発だけでなく、実際に社会で実践している例として、2021年に福島にて締結された「新しいモビリティを活用したまちづくり連携協定」が挙げられるだろう。日産は、福島の街づくりにおいて、新しい移動手段の提案、再生可能エネルギーの活用といった取り組みを行っている。そのほか、具体的な技術としては、「ProPILOT(プロパイロット) 2.0」が挙げられる。プロパイロットが搭載されている自動車では、ナビと連動したルート走行、同一の車線での車速維持および車線内での走行サポート機能によって、高速道路で同一車線内のハンズオフでの走行が可能となっている。
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CASE実現は自動車業界だけでなく、国家的にも重要な戦略である。経済産業省でも、2020年に「CASE技術戦略プラットフォームまとめ※2」を発表しており、CASE技術への注目度の高さ、そして取り組みを強化しようとする姿勢が分かる。報告書で挙げられているCASE実現に向けて求められる技術から「電動化技術」「AD/ADAS・コネクティッド技術」「基盤技術」を抜粋してご紹介する。
電動化はCASE実現に向けて要となる技術だ。とはいえ、現状はまだまだ発展途上である。現在主流となっているリチウムイオン電池は、エネルギー密度が低いためCASEの実現は難しい。今後より多くのエネルギー供給が可能となる全固体電池や燃料電池などの研究開発が重要な鍵となる。そのほか、パワー半導体の生産性向上なども電動化技術の課題としてプロジェクトの具体化が進められている。
「全固体電池」の特徴を図と表でわかりやすく解説!
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CASE実現のためには、AD(自動運転)やADAS(先進運転支援システム)の発展が欠かせない。ADやADASが発展すればするほど、運転の主体が人からシステムへと移り、走行データなどの収集と活用の可能性が広まる。それに伴い、コネクティッド関連技術の重要性も高まるだろう。また、ADやADAS、コネクティッド技術の進化は、車載ECU(Electronic Control Unit: 電子制御ユニット)が支えている。一般的に、自動車には多い場合で100個を超えるECUが搭載されており、ECUによってさまざまな先進技術の制御が可能となっている。このECUの進化も、より高度に自動車を制御するためには必須といえる。
自動運転技術などの先進的な技術ばかりではなく、エンジンなどの内燃機関や半導体などの基盤技術の改善と進化も必要だ。また、車両に搭載した精密機器から発する電磁波に対応できる、電磁波対応特性を持つ新素材や、さまざまな機器の温度上昇に耐えることができる耐熱性、難燃性の素材の開発も望まれている。素材開発では、さまざまな素材メーカーが研究を進めており、実現化が目指されている。
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CASEは、環境配慮だけでなく変わりゆく社会や顧客ニーズに対応し、企業が生き残っていくために大きな意味を持つ。また、CASE実現のためにはさまざまな技術や素材の開発が必要となり、この変革の潮流は、自動車業界だけでなくさまざまな製造業界に影響を及ぼすだろう。今後もCASEの動向からは目が離せない。各国の動向や各社の取り組み、新しい技術の活用状況など広く情報を収集し、自社の発展に活かしていきたい。
参考記事
※1)公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団「わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移」
https://www.ecomo.or.jp/environment/carshare/carshare_graph2021.3.html#:~:text=
※2)経済産業省「CASE技術戦略プラットフォームまとめ」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/case_platform/pdf/20200910_1.pdf