2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
デジタル化・モジュール化・コモディティ化が進み、低コストを売りにした新興国との競争激化が加速する製造業。技術力を軸にした高付加価値製品や新たな顧客価値を伴う製品開発による競争優位の確保が重要な経営課題となっている。
日本の研究開発費は国際的にも上位に位置する一方、WIPO(世界知的所有権機構)が発表した「イノベーションランキング」では13位と振るわず、技術を活かした新たな顧客価値創出と製品開発・新規事業開発に苦戦している状況である。顧客価値を意識した製品や事業を生み出すにはどのような視点が必要なのか。製造業に焦点を当てご紹介する。
顧客価値に沿った製品づくりに必要な3つのポイントをわかりやすく資料化!
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目次
顧客価値とは、「顧客が製品やサービスに対して適正だと感じる価値」のことだ。顧客が製品やサービスに支払う金銭的・時間的・労力的なコストよりも、顧客が得られる価値が大きくなければ購入にはつながらない。つまり、いかに製造・販売側が製品やサービスに自信があったとしても、顧客に認められなければ顧客価値とはならない。
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なぜ顧客価値を意識した製品化や事業化が求められるのか。ここでは2つの要因を挙げる。
これまでの日本の製造メーカーは、機能と品質の向上に注力し、世界にも認められる「ものづくり大国」であった。しかし昨今においては、機能や品質の向上が顧客価値へ転換できなくなりつつある。それは定量化された機能やスペックの向上が、もはや顧客満足を得ることができる一定水準を超えてしまっているためで、これ以上の機能改善を行っても、更なる顧客価値の上積みや差別化に繋がらないことが要因のひとつだ。つまり製品の差別化を図るためには、定量的な機能を高めることだけでなく、製品やサービスを利用することで得られる価値を意識的に高めていくことが求められている。
近年、技術の加速度的な発展とグローバル化の波の中、製品や事業の差異化要素にならない領域に関しては、モジュール化が顕著になっている。一度、市場に投入された製品であれば、製品を分解してそこまで技術力が高くない新興企業でも同程度の製品の製造が可能になっている。
そのため独自性が生み出せず、低コストで生産が可能な新興国の企業との価格競争に陥ったり、自社で工場を保有しないファブレス企業などが成長をしており、独自性のある製品やサービスを生み出すことに力点を置く企業も現れている。
このような背景の中、純粋な「ものづくり」では顧客価値の創出ができず、新たな顧客価値の創出、つまり「価値づくり」が重要になっている。デジタル化の波が押し寄せる中、ソリューション提供型の製品や事業に注目が集まっていることからもわかる。
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製造業は、研究開発、製造、販売、アフターサービスというように価値創出のプロセスが長いことが特徴であり、そのため顧客価値の創造という本来の目的から乖離しやすい。また、従来の研究開発アイデアの創出方法では、技術を起点に発想する「シーズアウト型」や、事業領域から発想する「マーケットイン型」のどちらかに偏ってしまう傾向がある。市場性のある研究開発アイデアを見つけるためには、アイデア創出の段階から、シーズアウトやマーケットインの両面に加え、「顧客価値」の視点を織り交ぜて検討する必要があるのだ。
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顧客価値創出の重要性の高まりとともに、製造業における価値の在り方も変化しつつある。ここでは、コア技術を製品や新規事業に繋げるために知っておくべき考え方をご紹介する。
先にも述べたとおり、従来は「品質や機能の良いものは売れる」という製品中心主義の考え方が基本的であったが、現在は製品・サービスは価値を実現するための手段であり、「製品・サービスの使用を通じて得られる価値」が重要だとするサービス・ドミナント・ロジックと呼ばれる考え方にシフトしている。
この考え方における特筆すべき点は、価値が一方的に提供されるのではなく、顧客がその製品を使用した際の体験価値を重要視している点である。例えば自動車であれば、自動車という製品をデザインするのではなく、「移動体験」や「運転体験」などの体験を軸にして考えるというところに大きな違いがある。
そして、その価値そのものは顧客自身の知識を駆使して使用した結果、顧客自体が価値を主体的に判断し、生み出される価値自体もそれぞれの顧客によって異なる、価値を企業と顧客が共創するものとされている。
製品開発において、この視点は非常に重要だ。製造メーカーは、製品で実現できることを軸に検討を行うことが多いが、その製品を通じて行われる体験やその先にある顧客が実現したいことを踏まえた検討を行うことで、新たな価値創出に繋げることができるようになるのだ。
顧客を起点に考える「デザイン思考」も重要な思考法である。詳しくは以下の記事を参考にしていただきたい。
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それでは顧客を中心とした価値の創出を実現するためには、どうすればよいのだろうか。ここでは、顧客価値視点でアイデアの可能性を引き出すための3つのポイントについてご紹介する。
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アイデア創出をより広い視野で取り組むためには、顧客が求める価値について理解を深めることが重要である。ユーザーインタビューなどで顧客の要望を聞くこともあると思われるが、そこで挙げられた要望を満たすだけでは既存事業の領域を抜け出すことは難しい。表面化しているニーズから、「本当に実現したいこと(=潜在ニーズ)」を明確にする必要がある。
そのために、顧客ニーズを達成ニーズとも呼ばれる「Be」ニーズ、実際のアクションニーズである「Do」ニーズ、そして製品やサービスに対する「Have」ニーズの3つに分類することがおすすめだ。顧客が欲しいものや、顧客の将来目標から逆算して、「本当は何を実現したいのか?」「そのために何が必要なのか?」を明らかにし、潜在ニーズを見つけ出すのだ。顧客が実現したいことを明確化することで、提供すべき製品やサービスを把握することができ、アイデアを深めることができる。顧客価値に沿ったアイデアを創出するためには、顧客の求めるニーズの抽出は必須だといえる。
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顧客に選ばれる製品やサービスのアイデアを創出するためには、製品やサービスが有する機能が「どのような価値を提供できるのか」を正しく理解している必要がある。機能を起点に提供価値を整理することで、顧客が得られる価値を検討しやすくし、より市場性の高いアイデアへと高めることができる。
顧客への提供価値を整理する際は、製品やサービスを構成する要素として、「中核機能」「機能の特性」「付随要素」の3層に分類することがポイントだ。「中核機能」とは、製品やサービスを構成する中心となる機能のことであり、価値の本質にあたる。「機能の特性」は製品やサービスを構成するそのもので、製品のパッケージや品質、性能などの要素を指す。「付随要素」は、アフターサービスなどの製品価値を高める要素のことだ。
ここでは、まずは中核機能を考え、それを実現するために機能の特性、付随要素へと繋げて考えていくこと、また、分類したそれぞれの要素をできるだけわかりやすい言葉に置き換えることがポイントである。さらに言語化した構成要素を、提供価値へと結びつけていく。「中核機能」は顧客が根本的に求める価値と結びつけ、「機能の特性」は根本的な価値の中でも顧客が重要とする価値とつながるように、「付随要素」は価値を間接的に高めるように、顧客の求めることとつながるような広げ方や落とし込みを行うことで、顧客価値を反映した製品やサービスづくりとなる。
最後のポイントは、製品やサービスの機能から洗い出した「提供できる価値」と、顧客ニーズから抽出した「顧客が求める価値」の両方を、製品開発・新規事業アイデアと照合し、アイデアをブラッシュアップさせていくことだ。提供側と顧客側の両面の価値と照らし合わせることにより、アイデアの市場性を高めることが可能だ。
それぞれの価値との照合作業には、競合や他業界の企業の動向や社会のトレンドなどを知るためのニュース情報や、調査データなど膨大な情報をもとに検証する必要がある。手間と時間のかかる作業ではあるが、丁寧に検証できているかどうかが新規事業アイデアの良し悪しに大きく関わるため、新規事業の成功への鍵を握ることは間違いない。
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最後に、顧客価値を意識した製品開発や新規事業の国内外の企業における取り組みの身近な例をご紹介する。
ブリヂストンではトラックやバスなどのタイヤを販売するのではなく、メンテナンス業務を中心としたタイヤに関する業務を行う、「トータル・パッケージ・プラン」を提供している。タイヤを遠隔モニタリングすることで状態を把握し、必要であれば新品タイヤやリトレッドタイヤの提案を行う。
リトレッドタイヤは、使用により寿命を迎えたタイヤのトレッドゴムと呼ばれる部分の表面を削り、新しいゴムを貼り付けて再利用したタイヤのことだ。顧客にとっては新製品を購入するよりも費用を抑えられ、ブリヂストンにとっては縮小傾向にある市場において他社との差別化と顧客との継続的な関係性を維持することができる。
また、良質なリトレッドタイヤの製造にはタイヤの土台となる台タイヤと呼ばれる部分に耐久性が必要であり、ブリヂストンのタイヤにはこの耐久性に定評があった。自社の強みになるコア技術と顧客価値の接合点から販売だけでなく、ソリューション提供型の事業に転換している。
ライオンでは、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」というパーパスを掲げている。新たな事業を検討する際、パーパスに貢献できているのかが、事業アイデアを評価するものさしになっている。
その中で新しく生まれてきたのは「ご近所シェフとも」という夕食のテイクアウトサービスだ。大きな特徴は、近所の飲食店が栄養バランスが考慮された家庭で普段食べるような料理を提供してくれる点である。利用者は料理を店で受け取るだけで、家庭の食卓を準備するためのあらゆる手間から解放されるのだ。
一見、これまでのライオンという企業からは想像できない新たな事業ではあるが、パーパスを再定義したことで、このような事業を生み出すことができたという。これも事業ドメインの設定の仕方として参考になる一例である。
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製造業の製品開発や新規事業開発においては、コア技術が差別化の重要な起点となる。一方で、これまで日本企業が得意としていた「ものづくり」だけでは新たな顧客価値の創出が困難になりつつあることも事実である。
強みである「ものづくり」を活かしつつ、顧客に目を向けた「価値づくり」に繋がる研究開発を実現していくため、顧客の体験価値に目を向けながら、どのようにコア技術を顧客価値に転換できるのか。これまでと視点を変え、製品の機能・スペックだけでなく、その製品の利用を通じて、顧客がどうなりたいと考えているのか。より深く顧客に関して思考し、仮説を立ててみてはいかがだろうか──。
参考文献:
「ソリューション提供型ビジネスを目指す事業構想」
「価値づくり経営の論理」
「技術マーケティング戦略」
「技術の事業化: 新商品・新事業のための技術活用テクニック」
「サービスドミナントロジックとは?グッズドミナントロジックとの違いや身近な事例」
「顧客価値の変化が製造業の「価値を生み出すプロセス」に与える影響の考察―商品企画のあり方についてー」