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製品開発に効く仮想カタログとは?ポイントと作り方を解説

製品開発に効く仮想カタログとは?ポイントと作り方を解説

製造業において新製品の市場導入までには、アイデア発想からテストマーケティングを経て約5年が必要だと言われている。この過程で様々な役割を持つ人が関わる中、コンセプトの一貫性を保つのは想像以上に難しい。この一貫性を確保するための手法として有効なのが仮想カタログだ。本記事では、仮想カタログのメリットと作成方法について説明する。

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 仮想カタログとは?

仮想カタログは、開発する技術、また当該技術を使って作り出す製品や対象となる顧客を記載するもので、研究開発のテーマを決定する際に作成する。

「カタログ」という言葉からは一般的な商品カタログを想像するが、仮想カタログはいわば開発予定図だ。開発に着手する前に仮想カタログを作ることで、開発や製品化にあたって発生しそうな課題の抽出や、関係者間での認識のズレを是正することが可能となる。そのため製品の説明や使われる技術・スペックだけではなく、商品企画の目的や目標も明示することが重要である。

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 仮想カタログを作るメリット

仮想カタログを作るメリットについて、下記にて説明する。

 技術の事業化・事業化確度を高められる

多くのものづくり企業が研究開発部門に対して事業化や製品化につながる開発を求めるようになっていることに、もはや否定の余地はないだろう。しかし、多くの組織では従来の考え方から脱却するのが難しく、新しい技術を活用して事業や製品を展開する方向性を見失っている場合がある。

仮想カタログの導入は、この問題の解決策として注目されている。仮想カタログを作成することで、目指す市場や解決を目指す顧客の課題、そして製品化の具体的なイメージが明確になる。これにより、事業化を実現するための研究方針が確立される。さらに、仮想カタログの作成過程で、顧客の実際の課題に深く取り組むこととなり、開発すべき技術の方向性や重要性が明確になると言うメリットもある。

 製品開発に関わる関係者の認識を合わせられる

前述したように、製品開発の過程は時間がかかり、多くの関係者が関与する。このような状況では、当初のコンセプトがブレるリスクが高まり、意図しないところで時間と共に構想がいつのまにか変わってしまうことがある。しかし、仮想カタログを通して関係者がプロジェクト全体を理解することで、一貫したゴールの認識と判断基準を持ち、開発の方向性を保つことが可能となるだろう。

 市場からのニーズを確認しながら開発を進められる

仮想カタログのメリットは、単に社内向けだけに留まらない。特に社外、顧客ヒアリングの場面で、この手法は大きな効果を示す。開発の初期段階で顧客とのヒアリングを行う企業は多い。しかし、「顧客の要望や困りごとを聞く」という単純なアプローチでは、得られる情報は表面的な要望や、すでに知られているニーズに制限されることが一般的である。一方、仮想カタログに仮説を組み込んでヒアリングを進めると、顧客側も話すべきシーンやポイントがクリアになる。これにより、顧客のニーズとのギャップを正確に捉えることができ、深いコミュニケーションが可能となるのだ。結果として、顧客がまだ自覚していない潜在的なニーズも明らかになる可能性が高まるだろう。

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 仮想カタログを作成する上でのポイント

 プロジェクト早期のタイミングで作成、共有する

仮想カタログは、研究開発テーマを決定する初期段階で作成し、社内関係者と共有するのがおすすめだ。通常、この時点では技術者が中心となり、製品化の検討段階で新規事業開発部門や営業部門などの他部門が参加することが多い。しかし、この段階で全体の議論を始めると、結論によってはプロジェクトの方向性が変わり、再度の開発が必要になるリスクがある。このような非効率を避けるため、プロジェクトの初期段階で営業、企画、開発、生産などの各部門が一体となり、仮想カタログを中心に議論を進め、開発の方向性を確立することが重要である。

 顧客の視点に立った項目設計

仮想カタログでは、顧客の視点に立って項目を設計することが肝要だ。社内の企画書作成では自社の目線、つまり「どれだけ自社の技術を活かすことが出来るか」「利益を生みだすことが出来るか」といった点が中心となるが、新事業や新製品の成功には、顧客が得られる価値を伝えなければならない。仮想カタログでは、この顧客視点に重点を置き、顧客にとっての価値や魅力を明確に伝えるアプローチが求められる。

 仮想カタログに含めるべき内容

仮想カタログのイメージ

次に、仮想カタログに盛り込みたい内容を記載する。重ねてにはなるが、仮想カタログは研究開発テーマ策定時に作るための開発予定図であり、自社・顧客双方に展開し、意見をもらう必要がある。

そのため掲載する内容も、いわゆる商品カタログとは違うことに注意したい。

市場
・対象市場
・想定顧客
・市場規模及び今後の成長性

製品・技術
・顧客への提供価値
・製品コンセプト
・製品概要
・活用する技術
・顧客へのセールスポイント(他社との違い、差別化のポイント)

 仮想カタログの作り方

 対象となる市場と顧客を整理する

まずは対象となる市場の選定が必要だ。製造業の新規事業や製品開発は技術起点で作られることが多い一方、その技術を最大限に活かせる適切な市場を見つけるのは容易ではない。この課題を解決する鍵は、技術を顧客価値に転換することにある。例として、センシング技術を「どんな環境でも動く物体であれば検知ができる」という価値に変え、どの市場がこの価値に魅かれるのか、どの顧客がこの技術での解決策を求めているのかを考えていく。

この思考の手助けとなるのがMFTフレームワークだ。MFTフレームワークのMFTとは、Market(市場)、Function(機能)、Technology(技術)の3つの単語の頭文字を取っている。MFTフレームワークとは、技術と市場を考える際に機能という概念に着目することで、技術が活かせる市場についてより広い視野を持って検討することができる手法である。

MFTフレームワークに関する詳しい記事はこちらをご覧いただきたい。

この整理によって選定した市場や顧客を、「対象市場」「想定顧客」「市場規模及び今後の成長性」に落とし込んでいくのが最初のステップとなる。

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 提供する製品の価値と概要をまとめる

次に明確にするべき項目は「顧客への提供価値」「製品コンセプト」「製品概要」である。前述の市場や顧客分析を基に、具体的な製品の方向性を定める。ここでのポイントは、提案する製品が顧客の課題とマッチしていることだ。そのため前項にてまとめた市場・顧客と製品の方向性の整合性がとれているか、提供しようとしている製品は本当に顧客課題の解決につながるか、といった点に特に注意しながら製品について検討したい。

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 活用する技術と競合との差別化ポイントを明文化する

最後に焦点を当てるのが「技術」だ。
ただし前提として、前述の「市場と顧客」「提供する製品」の整理は、元々存在するコア技術を前提に検討されるべきものだ。だが、顧客や製品の方向性に応じて、特定の機能を強化・調整する必要が出てくる。コア技術を「顧客価値」という視点で見直し、特に開発が要求される技術の方向性を明らかにする。

さらに、顧客の課題を解決する製品を考える際、他社がすでに同様の製品を提供している場合、その差別化ポイントを明確にすることが欠かせない。この段階で、技術的な視点を中心に、他社製品との違いや独自性を具体的に示すことが重要である。

 まとめ

「仮想カタログ」は、製品開発の一貫性を確保するための有効な手法として注目されている。製造業の新製品開発は時間と多くの関係者の協力を要するが、仮想カタログを用いることで、開発の方向性や関係者間の認識のズレを是正し、効率的な開発を進めることが可能となる。

一方で、開発初期から顧客の視点を取り入れ、技術の方向性や市場のニーズをしっかりと捉えるには、広い視野での情報収集が不可欠だ。ぜひ多様な面から有益な情報を収集し、仮想カタログに落とし込むことで、成功への道を築いていただきたい。

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