2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
AI(人工知能)は日常生活や産業界に革命をもたらし、効率化や新たな価値創出に貢献している。2024年7月に総務省から発行された「情報通信白書」では、AI技術の目覚ましい進歩とその影響が詳細に取り上げられている。
本記事では、その「2024年版情報通信白書」の中から、第Ⅰ部 特集②の第3章〜5章をまとめた。
2024年版情報通信白書(情報通信白書令和6年版)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r06.html
製造業での生成AI活用に関する実態を234社にアンケート調査!
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目次
AIは70年以上にわたる開発の歴史を持ち、人間の知的活動をコンピュータで再現する技術として進化を続けてきた。最近では、企業活動や国民生活への浸透が進み、特に2022年頃から急速に普及した生成AIがその進化の飛躍的な例として注目されている。生成AIは、画像生成や文章作成など多岐にわたる応用が期待されており、今後もさらなる発展が見込まれている。
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AIの歴史は1950年代に始まり、幾度かのブームと冬の時代を経て進化してきた。
第1次AIブームは探索と推論に焦点を当て、基礎的なアルゴリズムの開発が進められた。第2次ブームでは音声認識などの技術が発展しAIの応用範囲が広がった。さらに、第3次ブームではディープラーニング(深層学習)をはじめとする革新的な技術が登場し、AIが企業活動や日常生活に広く浸透するようになった。そして、2022年頃からの生成AIの急速な普及により、現在は第4次AIブームに入ったと言われている。
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「生成AI」とは、テキスト、画像、音声などを自律的に生成できるAI技術の総称である。生成AIは、ユーザーが特別な調整や高度なスキルを持たなくても、自然な言語で指示を出すだけで容易に活用できる点が特徴である。
2022年にはOpenAIによる対話型AI「ChatGPT」が発表され、生成AI分野は特に注目を浴びるようになった。ChatGPTはわずか5日で100万ユーザーを獲得し、さらに公開から2か月後にはユーザー数が1億人を突破するという驚異的なスピードで成長している。
これまでのオンラインサービスと比較しても、生成AIの普及速度は圧倒的であり、その実用性と可能性が広く認知されている。生成AIは今後も多くの分野で革新をもたらし、日常生活やビジネスに大きな影響を与えると期待されている。
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生成AIが進化した背景には、いくつかの重要なポイントがある。
まず、「ディープラーニング」と呼ばれる技術や、「トランスフォーマーモデル」という新しい方法が開発されたことだ。これにより、文章を理解したり、画像を作り出したりするAIの能力が大幅に向上した。
次に、非常に多くのデータを使ってトレーニングされた「基盤モデル」や「大規模言語モデル」といった新しいAIが登場。これにより、AIはさまざまなタスクに対応できる知識を持つようになった。
さらに、クラウドコンピューティングやGPUといった計算技術が進化し計算資源が増えたこと、AIのソースコードが公開されるようになったことで、一般の開発者や企業も簡単にAIを使った開発ができるようになり、さまざまな分野で活用されるようになった。
生成AIの登場によって知的活動は大きく変わった。コンテンツ制作、カスタマーサポート、建設など、これまでAIの適用が難しかった分野を含め、多岐にわたる業務に革新をもたらした。調査によると、労働者の80%が自身のタスクの少なくとも10%において大規模言語モデルの影響を受け、そのうち19%の労働者はタスクの50%に影響が及んでいるとの結果が示されている。
これにより、生成AIはビジネスにおいても大きな可能性を秘めていることが明らかになった。市場予測によれば、生成AIの市場規模は2027年までに1,200億ドルに達するとされており、その経済効果は非常に大きいと見込まれている。生成AIは、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出を通じて、経済全体に広範な影響を与えることが期待されている。
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AIが持つ機能には、音声認識や画像認識などの「識別」、数値やニーズなどを予測する「予測精度」、表現の生成や作業の自動化などの「実行」の3つが挙げられる。これらの機能は、実際のサービスにおいてAIが果たす主要な役割を構成している。
特に第3次AIブームにおけるディープラーニング(深層学習)の発展は、他のテクノロジーにも大きな影響を与えている。
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AIの進化は、仮想空間であるメタバースやデジタルツインの分野にも大きな影響を与えている。メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間で、人々がアバターを通じて交流し、活動できる新しいプラットフォームである。デジタルツインは、物理的なオブジェクトやシステムのデジタル複製であり、リアルタイムでのモニタリングやシミュレーションが可能となる。
生成AIは、2D画像や3Dモデルの自動生成、プログラム作成支援など、メタバース上の創作活動を簡略化する役割を果たしている。これにより、技術的および知識的なハードルが下がり、多くの人々がメタバースでの創作活動に参加できるようになることが期待されている。生成AIの力を借りて、クリエイターはより迅速かつ効率的にコンテンツを制作できるため、メタバースの利用者が増加し、多様なコンテンツが生まれることが予想される。
ロボティクスは、AIを活用した知能化された機械システムの発展により、新たな展望を開いている。ロボットはセンサ(感知/識別)、知能・制御系(判断)、駆動系(行動)の3つの要素技術を統合し、AIのディープラーニングと強化学習を活用することで、その能力が飛躍的に向上している。
特に生成AIを行動生成AIとして応用し、言語や画像などのさまざまな情報を解釈できるようにする試みが行われている。これにより、ロボットはカメラ映像から周囲の状況を理解し、ユーザーの指示に応じて物理的な動作を行う能力が向上している。将来的には、生成AIが人間との対話を通じて自らプログラミングを行うことで、ロボットの制御を容易にし、より柔軟で即座の対応が可能なロボティクスの実現が期待されている。
自動運転技術も、AIの進化によって大きく進展している。この技術では、AIが認知、判断、操作のプロセスを自律的に行い、安全な走行の実現を可能にする。車両に搭載されたカメラやセンサから収集した情報をAIが認識処理し、通行人や障害物を避けながらルートを最適化する能力が強化されている。
生成AIの学習機能により、さらに高度なルート最適化が可能となり、音声認識技術も活用され、運転者の声で自動車に指示を出すことができる。これにより、自動運転技術は安全性と利便性を両立させ、将来的には交通の効率化や事故の削減に大きく寄与すると期待されている。
このように、AIの進化は単なる技術革新にとどまらず、多様な産業分野において新たな可能性を開き、サービスの質を向上させる重要な要素となっている。
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日本において、生成AIの活用方針に関する調査結果では、約42.7%の回答者が「活用する方針を定めている」と回答している。この割合は、米国、ドイツ、中国などの調査結果と比較すると、約半数の水準にとどまっている。
生成AIの活用が想定される業務についての調査のうち、「事業や商品の企画におけるアイデア出し、シュミレーション」における活用状況に焦点を当てて見てみる。
この調査によれば、アイデア出しやシュミレーションにおける日本企業の活用状況は、「業務で使用中」と回答した割合は38.6%であり、米国、ドイツ、中国の企業の半数以上が生成AIの積極的な活用が進んでいることと比べ、日本の利用率が低い傾向にあることがわかる。
生成AIの活用による効果・影響についての調査結果によれば、約75%の企業が「業務効率化や人員不足の解消につながると考えている」と回答している(「そう考えている」と「どちらかというとそう考えている」の合計)。一方で、約7割の企業が「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが拡大すると考えている」と「著作権等の権利を侵害する可能性があると考えている」と回答しており、生成AIの導入に対する懸念も示されている。
これにより、生成AIの利用は多くの企業にとって業務効率化の手段として期待されているが、同時にセキュリティや法的リスクに対する適切な対策が必要であることが明確になった。
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進化してきたAIは便利さをもたらす一方で、活用に当たっては留意すべきリスクや課題も存在している。
2024年4月に総務省・経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」では、従来からのAIによるリスクに加えて、生成AI特有のリスクが議論されている。
生成AIは、事実に基づかない情報をリアルに生成するハルシネーション(幻覚。生成AIがユーザーの質問に対して、事実とは異なる回答をすること)を起こす可能性がある。この課題に対しては、技術的な制御方法が検討されているものの、完全に抑制できるものではないため、生成AIを使用する際には、ユーザーが出力された情報の正確性を確認する必要がある。さらに、生成AIの利用によって個人情報や機密情報が漏洩するリスクも存在する。
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国産LLM(大規模言語モデル)の重要性は、生成AIの基盤としての戦略的価値を持っている。現在、米国のビッグテック企業が先行する中で、日本以外のクローズな研究開発では、LLM構築のプロセスが不透明になるリスクがある。この点で、日本語に特化した国産LLMの利用は、透明性が高く、利用者の権利やデータの安全性を保護する上で重要である。日本国内で明確なプロセスとデータの使用が保証されたLLMの開発が進められることで、国内外の企業や研究機関が安心してこれを活用でき、生成AI技術の発展に寄与することが期待される。
ストックマークは、2024年5月にハルシネーションを大幅抑止し、厳密さが要求されるビジネスシーンでも信頼可能な1,000億パラメータ規模の大規模言語モデル(Large Language Model、以下:LLM)「Stockmark-LLM-100b」の開発に成功した。当該基盤モデルの開発は、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究の一環で、フルスクラッチで開発された国内最大級の基盤モデルとなる。
また、2024年7月にはパナソニック ホールディングスとの開発協業を発表。「Stockmark-LLM-100b」モデルに、パナソニックグループが保有する幅広いドメイン知識で構成される独自データを追加学習させ、国内の企業特化LLM開発の進展を目指す。
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AIを活用した多様なデジタルサービスは我々の生活に深く浸透しつつあり、日本が抱えるさまざまな社会的・経済的課題解決に貢献すると期待される。AIを活用することで生産性の向上、産業競争力の強化や、新たな市場を生み出し、AIが経済成長の原動力となると見込まれており、研究開発の面でも、AIを活用して自律駆動による研究プロセスの革新につなげようとする研究領域が生まれている。
しかし、多くの企業で利用されている汎用型モデルには課題がある。利用量に応じて課金されるため、使えば使うほど利用コストが肥大化する。また、汎用型モデルはビジネス領域における知識が不足しており、そのまま業務に使うとハルシネーションが生じやすく、ビジネスリスクに直結する可能性がある。
このため、部分的な内製化に着手し、自社の技術蓄積に繋げるアプローチが重要である。自社のデータをオープンソースモデルに追加事前学習させ、自社独自の知識・ノウハウをLLMに統合することで、言語モデルの高性能化やフルカスタマイゼーションに関する技術の社内蓄積が期待できる。このように、中長期的な技術優位性の確保やリスクへの対応という観点でAIを競争力に変えるためには、業務特化や自社特化などのAI活用の検討が求められている。