お役立ち資料一覧へ お問い合わせ
MENU CLOSE
  1. Stockmark
  2. coevo
  3. 技術/テクノロジー
  4. LiDAR(Light Detection And Ranging)とは?自動車運転に活用される技術

LiDAR(Light Detection And Ranging)とは?自動車運転に活用される技術

LiDAR(Light Detection And Ranging)とは?自動車運転に活用される技術

LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、レーザー光を用いて周囲の物体や地形を高精度に計測するセンサー技術である。この技術は、光を対象物に照射し、その反射光がセンサーに戻る時間を計測することで物体までの距離や形状を三次元的に捉えることができる。この記事では、LiDARの基本原理、自動運転分野やドローンなどでの活用事例、そしてLiDAR技術の今後について詳しく解説したい。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの意味とは?

LiDARとは、Light Detection And Rangingの略称で、近赤外光や可視光、紫外線を対象物に照射し、その反射光をセンサで捉えることで距離を測定するリモートセンシング技術を指す。読み方はライダー。LiDARは自動運転をはじめ、ドローンによる地形測量や建築物の3Dモデリングなど、幅広い分野で利用されている。特に、自動運転分野ではカメラやレーダーと組み合わせることで安全性を向上させ、周囲の状況を正確に把握するための重要なセンサ技術を担っている。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARとRadarの違い

LiDAR(Light Detection And Ranging)とRadar(Radio Detection And Ranging)は、物体の位置や距離を測定する技術であるが、使用する波の種類や特性に大きな違いがある。

LiDARは近赤外線や可視光などを使って、数センチメートル以下の精度で物体の形状を高解像度で細部まで検知できる。短波長を利用するため、精密な距離測定ができるが、霧や雨といった状況では性能が低下しやすい。

一方、Radarはマイクロ波やミリ波などの電波を使用し、安定的に広範囲の測定が可能で、悪天候下でも性能が維持される点に強みがある。

 LiDARとSLAMの関係について

LiDAR(Light Detection and Ranging)とSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)は密接に関連している技術だ。LiDARは物体までの距離を高精度に測定し、3D環境データを生成するセンサー技術であるのに対し、SLAMはそのデータを用いて自己位置を推定しながら同時に環境マップを構築するアルゴリズムである。そのため、未知の環境で自律移動ロボット(AMR)や自動運転車を用いる場合などで性能が発揮される。

LiDARを活用したSLAMは、地図作成や自律移動において非常に高い精度を発揮するが、LiDARの運用・導入にかかるコストや障害物が少ない環境での使用に課題が残る。一方、カメラを用いるVisual SLAMや深度センサーを用いるDepth SLAMと併用することで、それぞれの弱点を補完しつつ多様な用途で活用が進んでいる。これらの技術は自動運転車や産業ロボット、ドローンによる配送などで広く利用されている。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの仕組み・原理・構造

LiDAR(Light Detection and Ranging)の仕組みは、レーザー光を用いて対象物との距離や形状を測定する技術に基づいている。レーダーが電波を利用して測定するのに対し、LiDARは波長の短いレーザー光を用いることで、より高精度な3次元データを取得できる点が特長だ。この技術の基本は、光を対象物に照射し、その反射光を受信して処理することで、距離や位置を高精度に算出する点にある。

LiDARの仕組み

そして戻ってきた反射光をもとに生成されるのが「点群データ」だ。
点群データは、三次元空間内の位置情報をもつ点の集合であり、対象物の形状や配置を詳細に可視化するのに用いられる。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの種類

LiDARは用途や構造に応じていくつかの種類に分類され、実用化されている代表的なものに「回転ミラー式」「ポリゴンミラー式」「MEMSミラー式」がある。光の送受信方法やスキャン機構の違いによってそれぞれ特徴が異なり、使用する環境や目的に応じた選択が求められる。

 回転ミラー式

LD(レーザーダイオード)とPD(フォトダイオード)を含むユニットを丸ごと回転させる構造をもつLiDAR方式だ。

円柱状の形状で、車両に搭載する場合にはルーフ部分に取り付けられることが多い。この設置方法では、デザインや搭載位置に制約が生じることがある。また、ユニットのサイズが大きくなるため、車両の外観や空間の利用に影響を与えることもある。

 ポリゴンミラー式

LD(レーザーダイオード)とPD(フォトダイオード)は固定され、回転するポリゴンミラー(多角形の鏡)によってレーザー光の方向を変え、広範囲をスキャンする能力をもつLiDAR方式だ。

回転ミラー方式に比べてサイズは小さくなるものの、やはり車両に搭載する場合はルーフ部分に取り付ける必要があり、デザインやスペースに一定の制約が生じる。

 MEMSミラー式

アクチュエーターで非常に小さなミラーを動かすことで、レーザー光の射出方向を変えるLiDAR方式だ。この方式によって、LiDARの小型化が実現可能となる。しかし、ミラーが極小であるため、広範囲を高精度でスキャンする際には限界がある。​

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARにおける距離の測定方法

LiDARで距離測定を行う場合、大きく「ToF(Time of Flight)」と「FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)」の2つの方式が使用される。

 ToF(Time of Flight)

レーザーを発射してから反射光を受け取るまでの時間差を測定することで距離を算出する方式だ。

ToFには主要な2つのタイプがある。1つ目はdToF(direct Time of Flight)で、パルス波のレーザー光を使用し送信波と受信波の時間差を直接計測する方法である。

2つ目はiToF(indirect Time of Flight)で、振幅変調連続波(AMCW:Amplitude Modulated Continuous Wave)という連続的に強度を変調したレーザー光を使用し、受信した光の位相差を計測する方法だ。

 FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)

連続的にレーザー光の波長(周波数)を変化させ、送信波と受信波の周波数差を測定することで対象物との距離を算出する方式だ。非常に高精度な測定が可能であり、くわえて測定対象物の相対速度も同時に検出できる点が大きな特徴だ。

しかし、精度向上と相対速度の測定に伴う信号処理が複雑になるため、システム全体のコストが高くなるという欠点がある。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの用途

LiDARは自動運転やドローン、iPhoneなど、多くの先端技術に活用されている。

 自動運転システム

ADAS(先進運転支援システム)では、カメラの映像から周囲の状況を捉えるカメラ方式と、悪天候に強いミリ波レーダー方式の組み合わせが主流となっているが、完全な自動運転車の実現には、これらに3Dで高精度に物体を捉えるLiDARを加えた3つの技術の統合が求められている。自動運転技術の進化においては、それぞれのセンサー技術の強みを活かし、短所を補完し合うことが重要だ。高度な自動運転システムを構築するためには、各技術が協調し、最適な結果を提供することが必要不可欠である。

 iPhone

Apple社がiPhoneにLiDARを採用した理由のひとつは、AR(拡張現実)の体験を向上させるためである。LiDARによって、物体の位置関係やサイズ感が正確に測定され、よりリアルなAR体験が可能になる。また、LiDARを搭載したことでカメラ機能の向上にも寄与し、背景ぼかしや夜間撮影時のオートフォーカス精度が向上した。

iPhoneのLiDARは約5メートルの測定範囲をもち、スマートフォン市場における競合との差別化にも貢献している。

 ドローン

LiDARとドローンが組み合わせて使用される理由は、その相乗効果によって産業に新たな可能性をもたらすとされているからだ。LiDAR搭載ドローンでは、迅速に広範囲をカバーし、従来の手法では困難だった複雑な細部を捉えることができる。これによって、詳細なデータの収集・分析を行い、短時間で必要な情報の提供ができる。

また、LiDARの高精度な距離測定とドローンの機動力を組み合わせることで、センチメートル単位の精度が求められる測量業務などでも活躍が期待されていることに加えて、ドローンの危険な場所にも入り込める機動力と、LiDARの密集した植生を貫通する能力が組み合わさることで、災害後の評価や環境調査にも活かせると考えられている。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの市場規模

LiDARの主な用途は自動車産業、特にADAS(先進運転支援システム)および自動運転に関連する分野である。「ADAS/自動運転用センサー世界市場に関する調査(2023年)」(矢野経済研究所)によれば、2023年における世界のLiDAR市場規模は293億円だ。2024年には456億円、2030年には4,456億円まで大幅に拡大すると見込んでいる。

また、360iResearchによると、2024年の世界市場は18億4,000万米ドルに到達し、年平均成長率15.98%で成長し、2030年には45億7,000万米ドルになると予測されている。

ここまで急成長をしている背景には、自動運転車両でLiDAR技術の重要性が高まっていることが大きな要因として挙げられる。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの課題

LiDAR技術は多くの可能性を秘めているが、いくつか課題も抱えている。

 価格の問題

LiDARは高精度な検知能力をもつ技術であるが、価格が高いことが大きな課題となっている。低価格の製品は数万円程度で購入可能だが、ハイエンドモデルは数百万円と非常に高額だ。LiDAR技術自体はこれまでも地形や気象観測で用いられているが、今後は自動車向けにて小型化や軽量化、低コスト化が進むことが期待されている。

 技術としての課題

LiDARの性能を制限する問題として「コヒーレンス(可干渉距離)」が挙げられる。LiDARは、光を対象物に反射させるという特性上、往復の距離分の干渉を維持しなければならない。この干渉できる距離を伸ばすためには、現段階での解決方法は高価な部品を用いる手段に頼らざるを得ないが、今後は信号処理技術や専用の光学部品の改善など、技術的な解決が求められる。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARを開発するメーカー・企業

多くの企業がLiDARの性能向上とコスト削減に取り組んでおり、日夜激しい開発競争が繰り広げられている。ここでは、LiDAR技術を開発する一部の企業を紹介する。

 デンソー

デンソーは、自動運転技術の開発において重要な役割を担っており、積極的にLiDAR(ライダー)技術の開発にも取り組んでいる企業だ。自動運転車両の周辺認識に欠かせないセンサー技術の一環として、デンソーは高精度なLiDARセンサーを開発しており、2024年12月にも、LiDAR送受信機の特許を出願している。デンソーは、従来のカメラやレーダーとLiDAR技術を組み合わせて精密な認識を実現し、安全安心な自動運転の実現を目指している。

 Ouster

Ousterは、デジタルLiDARセンサーのリーディングカンパニーであり、産業オートメーション、スマートインフラ、ロボティクス、自動車、ドローン、地図作成、セキュリティ分野など幅広い分野に高解像度LiDARセンサーを提供している、アメリカのスタートアップ企業だ。

OusterのLiDARはコスト効率に優れているだけでなく、コンパクトで耐久性があり、高いカスタマイズ性を誇る。特に、同社は「マルチビームフラッシュLiDAR」という技術を採用しており、これによりコストと性能のバランスを取ることができ、業界内で注目を集めている。

LiDAR技術における課題と解決に向けた取り組みとは?
貴重なセミナー内容をレポートにまとめました!
講演録(無料)を見てみる

 LiDARの今後

今後、LiDAR技術の進化はさらに加速するだろう。現在、ソフトウェアによるデジタル処理技術が進展しており、コヒーレント光伝送技術やノイズ除去によって、より高精度な解析が可能となっている。この技術革新によって、LiDARの性能が向上し価格の低減も期待できそうだ。さらに、小型化や軽量化の進展によって家庭用電化製品やロボット工学、スマートホームデバイスなどの分野にも導入されることが予想され、今後も動向を注視したい領域である。

【イベントレポート】 LiDAR技術の現在地 -最新技術と今後の課題-