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新規事業における失敗事例から学ぶ!失敗を回避する方法

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新規事業の成功確率は「千三つ(せんみつ)」と言われるとおり、成功する割合はとても低く、ほとんどが成功しない。しかし、失敗には必ず要因があり、数ある新規事業開発の失敗事例から、成功への道筋を見つけることは可能だ。今回は、新規事業開発においてよくある失敗要因や事例を参考にし、成功に導くためのポイントを解説する。

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 新規事業失敗のよくある要因

よくある失敗要因としては、主に事前準備の不足が挙げられる。新規事業を成功させるためにはあらゆることを想定した事前準備が必要だが、その想定があまく準備が足りていないと後で問題を引き起こすのだ。以下に、代表的な例を挙げる。

 ノウハウ不足

新規事業開発では、これまで開発を進めてきた既存事業とは異なるスキルを要する。そのため、ノウハウ不足で事業が上手く回らず、失敗要因となることがある。新規事業を立ち上げ継続的に利益を上げるには、データ分析力や営業力、加えてスケジューリング力、技術やマーケティング、資金繰りに関する知識など、求められるスキルや知識の幅が広い。新規事業は既存事業とは異なる領域の事業となることもあり、社内にないスキルや知識が必要になる。また、これまで築き上げてきた既存事業の実績や知見があったとしても、新規事業推進のノウハウがなく立ち往生してしまう可能性がある。これまでの事業との違いを明確に理解した上で事業開発を進め、不足するスキルや知識をどう補うかを検討する必要がある。

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 顧客ニーズの見極め不足

開発者がどんなに優れた製品であると思っていたり、斬新で革新的な製品であったりしたとしても、市場の顧客ニーズに合致しなければ購入に繋がらず利益は上がらない。また、製品とブランディングの不一致や、コンセプトのブレなども、顧客ニーズの見極め不足の結果のひとつだ。顧客ニーズの分析や、ターゲット設定が曖昧であれば、事業を継続し発展させることの難易度は一気に高まるのだ。

現代は情報通信網や流通が大幅に発達し、あらゆる業界で競合製品が市場にあふれ、さまざまな製品を容易に入手することができる。熾烈な市場競争の中で顧客に購入してもらうためには、顧客の持つ課題を正確に把握し、その解決策となる価値を提供できるかどうかが新規事業の成功につながるのだ。

 資金不足

新規事業は予算が限定される場合が多い。また、立ち上げた事業そのもので安定的な利益を生み出せるようになるまでには時間がかかるため、次第に資金が不足し事業失敗となる場合がある。さらに、新規事業では市場調査や分析、顧客ニーズに応えるための製品の改良などの想定外の費用が発生することも多く、突発的なことに予算を割かなくてはならないこともある。そのため、思うように活動費用を捻出できず、事業の早期安定が困難となる。資金不足を回避するためには、事前の入念な計画はもちろん、広告費や開発費の調整、リスクに対する備えなど資金をバランスよく采配することが重要だ。また、国や地方自治体の実施している支援金などをうまく活用することもひとつの手である。

 参入タイミングのミス

参入のタイミングが適切でないことも、新規事業開発が失敗する大きな要因となり得る。たとえば、需要が少なすぎる早い時期や、数多くの企業が参入し、競争が激化している時期は避けるべきである。市場の調査、分析を継続的に行い、最良のタイミングを見つけることが重要だ。また、日本の大企業にありがちな、社内稟議などの内部の合意形成に時間を取られ過ぎて、ベストなタイミングを逃してしまうことにも注意が必要だ。参入の好機を意識して全体スケジュールを組み、社内の合意形成ができるだけスムーズに進むような事前準備や根回しも必要である。

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 新規事業開発ではまりがちな落とし穴

良かれと思って取り組んだことでも、いつの間にか落とし穴にはまっていて、失敗してしまう場合がある。ここでは陥りがちな落とし穴について解説する。

 できるという思いが強すぎる

取り組んでいる新規事業について、絶対にうまくいくと過信してしまうと、目の前にある状況や変化に盲目的になってしまうことがある。自分自身や事業にとって都合よく解釈してしまうなど、適切な判断ができなくなる恐れがあるのだ。さらに、過信によって判断が鈍ると、軌道修正の意思決定が遅れ、結果的に市場や顧客ニーズとかけ離れた事業や製品となってしまう可能性もある。新規事業推進には、達成するための強い思いと熱意で高いモチベーションを保ちながら取り組むことが大切ではあるが、事業への過信や強すぎる思い入れは撤退のタイミングを誤ることにもつながりかねない。新規事業への情熱は持ちながらも、市場の状況や顧客ニーズの変化について、客観的に事実を把握する冷静さが必要である。

 新規事業メンバーの過多

新規事業を立ち上げる上で、さまざまなスキルと知識を持ったメンバーがいることが望ましいが、多過ぎてしまうと密なコミュニケーションを阻害する恐れがある。全体の認識の共有にも時間がかかり、意思の疎通や意思決定に支障をきたす可能性があるのだ。また、売り上げが安定しない初期段階の新規事業において、多すぎる人件費は負担になる。事業が安定するまでは必要最低限で人選を行い、できるだけスモールスタートで始められた方がよい。人数が多い場合は、情報の共有やコミュニケーションについて工夫が必要となる。

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 ブルーオーシャンを狙いすぎる

ブルーオーシャンとは、競争がまだ激化していない未開拓市場のことを指し、理想的な新規事業の展開場所であるとされている。しかし、未開拓市場を狙いすぎるあまり、自社の既存事業で得た社内リソースを活かすことができないようなかけ離れた分野を選択してしまうと、事業を成功させる難易度が高まってしまう。世間の流行に流されてドメインを決定した場合も同じことが言える。未開拓市場で競合が少ないことは、確かに新規事業開発する上で注目すべきポイントである。しかし、成功確率を高めるためには、既存事業のノウハウやリソースが活用できる領域から、徐々に染み出すように少しずつ軸をずらして事業拡大させていく方法がおすすめである。自社技術や知識と親和性がありつつも新しい価値を生み出せる分野を検討すべきだ。

 失敗事例から要因を考える

新規事業は成功確率がとても低く、それは大手企業であっても例外ではない。ここでは失敗事例から、その要因を考えてみる。

 ファーストリテイリング(アパレル製造小売業)

取り組みの経緯

2002年に生鮮野菜の生産・販売事業「SKIP」を開始。開始から1年半で30億円の赤字を出す。2004年2月末までに全店舗閉店の決定。事業撤退に追い込まれる。

考えられる失敗の要因

生産と流通の無駄を省き、良い品質のものを低価格販売するユニクロのノウハウをもとにすれば、生鮮野菜の事業も広く浸透し成功する。SKIPの事業開始当時はこのように予測されていたのだが、結果としては大きな赤字を出してからの撤退となった。失敗要因についてファーストリテイリングは、顧客ニーズの把握不足と農産物業界の情報、ノウハウ不足に言及している。顧客が求める商品の安定供給の難しさから、欲しいものが手に入らず顧客離れが進んだのだ。ユニクロの成功モデルがあれば他業界でもうまくいくはずという自信が、事業拡大への極端な注力に偏向し、欲しい食材が買えないということが顧客からどのような評価となるのかをイメージできなかった。この顧客視点の欠如が最大の失敗要因であろう。

 セブンイレブン(コンビニ業界)

取り組みの経緯

2018年7月から、「ちょい生」の名称でコンビニ店舗で生ビールを税込100円(Sサイズ)で提供する予定だった。実施直前に「想定を大幅に上回る反響により」提供中止。

考えられる失敗の要因

大きな話題となった一方で、気軽にお酒が買えるという点から未成年飲酒や飲酒運転のリスクについての指摘も多く見られた。道路交通法の改正で飲酒運転の処分の厳格化が進む社会状況もあり、外部環境についての理解や考慮が足りていなかったと言わざるを得ないだろう。また、需要が大きく高まった際の販売体制や品質保持の難しさを理由に販売中止となっていることから、市場規模を見誤っていたのではないだろうか。

 リモノ(自動車製造業)

取り組みの経緯

2014年リモノ設立、布製の2人乗り超小型EVの開発を進める。2016年、試作品完成。しかし、法整備の壁などにぶつかり、普及の目処が立たず事業は休止となる。

考えられる失敗の要因

布製の2人乗りの超小型EVは、高齢者向けの乗り物として開発がスタートされた。しかし、布製の車体は法整備された車両規格に該当せず、実際に走行するには自治体ごとに走行許可申請が必要となった。製品化にあたって量産化が必須だが、自治体ごとの許可申請などのコストがかかりすぎるため事業継続が難航した。これらの点から、関連法案の確認などの事前のリスク対策が不十分であったことが指摘できる。さらに、高齢の運転者向けとして自動運転技術の開発が話題になり始めていることから、事業開発のタイミング、着眼点のズレがあったと考えられる。

 Google

取り組みの経緯

グーグルグラスでAR業界への参入を目指した。グーグルグラスはメガネの形のウェアラブル電子端末であったが、事故のリスクの指摘やプライバシー侵害の恐れなど、さまざまな理由による実用性の難しさ、既に普及していたスマートフォンがグーグルグラスの代替可能性を持っていることも合わせ、一般販売を中止した。

考えられる失敗の要因

発表当時は大きく話題になったが、実際の実用の場面となると、グーグルグラスである必要性が乏しいという理由から、顧客ニーズとの不一致が起こったことが要因のひとつとして考えられる。また、既存製品で代替可能な場合は、必要性を見出すことが難しく新規事業の成功は困難だといえる。革新的で技術力の高いものであっても、実際の購入者がいなければ利益を上げることは不可能である。

 セブン・ドリマーズ・ラボラトリーズ(製造業)

取り組みの経緯

2005年、世界初の洗濯物全自動折り畳み機ランドロイドの開発に着手した。2016年、パナソニックや大和ハウスとの合弁会社を設立し、2016年度中の発売を目指すが、度重なる発売延期後、製品化に至らず約22億円の負債とともに2019年に自己破産した。

考えられる失敗の要因

ランドロイドの発売延期の理由としては、ツルツルした材質のものなど、特に滑りやすい衣服について折り畳むことができないなどの欠陥が修正できなかったことが挙げられる。これらのことからも、製品化までのスケジュールの管理の甘さ、技術面への過信からくる全体的な考慮不足、販売戦略における目標設定の曖昧さなどが失敗の要因として考えられるだろう。

 失敗を避け成功に導くために

新規事業における誰にでも当てはまる成功方法はどこにもない。しかし、多くの企業が挑戦し失敗してきた経験から同じ轍を踏まない方法を探ることはできる。ここでは失敗を避けるために行うべきことを解説する。

 既存事業に余力があるタイミングで新規事業に挑む

新規事業で製品化まで漕ぎ着け、なおかつその事業で利益を出せるようになるまでには時間がかかる。新規事業開発に着手してすぐは利益が出ない場合がほとんどである上に、事業開発を進めたとしても成功確率が高いとは言えない。これは、基本的にどのような新規事業をスタートさせる場合にも当てはまることである。このことから、新規事業は既存事業が成熟期にあり、資金に余力があるうちに取り組みを始めるべきなのだ。また、既存事業の事業ライフサイクルを考えても、今後の事業発展について楽観視せずに、早めの段階で第2のコア事業を生み出す試みが必要なのだ。

 情報収集と仮説検証を継続する

失敗事例からもわかるとおり、顧客のニーズが捉えられていないと新たな製品を出しても購入という成果にはつながりにくい。購入してもらうためには、市場の課題やニーズについて把握することが何よりも重要だ。さらに新規参入する市場の場合、市場構造や将来的な発展の可能性、競合他社の持っている技術やこれからの動向についてなど、事前に把握すべきことは多い。また、集めた情報はそのまま保存しておくのではなく、分析し整理しておくことで、市場の状況を的確に捉え、課題やニーズを洗い出すことに活かすことができるようになる。集めた情報をもとにフレームワークを用いることもおすすめだ。さまざまな情報や思考法を用いて、抜け漏れのないビジネスモデルを組み立てることが新規事業開発には必要なのだ。
一方で、取り巻く環境や市場の状況、顧客ニーズは刻一刻と変化するものだ。新規事業開発のどのプロセスであっても、情報収集を継続的に行い、状況を客観的に捉え仮説と検証を繰り返すことが重要だといえる。

新規事業にはチーム力が欠かせない!
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 まとめ

失敗事例でみたとおり、大手企業ですら新規事業開発で失敗する。それほどまでに、新規事業で成功することは難しいのだ。しかし、失敗することが悪いのではなく、失敗を繰り返しながらもその経験をいかに次に活かせるか、諦めずにアイデアを出し続けて実行に移せるかということが重要である。また、そういった失敗を受け止められる企業体力とカルチャーが大切だ。既存事業が好調なときから、新規事業のネタ集めや、集めた情報を元に部署役職にかかわらず議論し合う習慣作りに取り組んでいくことが必要なのだ。失敗を極端に恐れることなく、積極的なアイデア創出と挑戦が、次世代を担う事業の創出につながるのである。

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