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製造業
製品ライフサイクルが短期化している中、研究開発部門において期待される役割が変化していることが指摘されている。その結果、製品化や事業化を意識した研究開発活動がますます重要となり、基礎研究による技術力の強化だけでは新たな価値は生み出せず、企業の存続が危ぶまれる状況になっている。
これらの課題を克服するため、製品化や事業化に繋がる研究テーマの策定が必要となっており、その策定のためには情報収集が必須であるといえる。今回はその重要性について、改めて背景を含めて詳しく解説していく。現状に対する理解を深め、方向性を誤ることなく、研究開発テーマを策定する一助としていただきたい。
革新的な製品や事業につながる研究開発テーマの設定方法とは?
具体的なテーマ創出方法を3ステップで解説!
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目次
まず、製造業と研究開発部門における従来からの環境変化について解説する。近年は脱炭素社会の実現に向けた炭素排出量の削減やデジタル化の進展など、多様な社会環境の変化が起こっており、そのスピードは発展が進むにつれて加速している。そのような背景の中、研究開発部門が関係する変化については必ず押さえておきたい知識である。
現代の製造業において、製品のコモディティ化やモジュール化は避けて通れない傾向にある。デジタルテクノロジーの発達とグローバル企業の存在が背景にあり、コモディティ化・モジュール化が進むことにより製品ライフサイクルが短期化し、技術による製品の差別化が困難になっている。
また、ビッグデータやIoT、AIなどといったデジタル技術を活用し、既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊するディスラプラーと呼ばれる企業も存在しており、市場に革新を与えている。新たな企業が次々と生まれ、これまでの市場や業界の定義が当てはまらなくなり、従来とは異なる競争軸も生まれている。
今までと同様の価値提供では成長が見込めず、新たな顧客価値の創出が求められているのだ。
革新的な製品や事業につながる研究開発テーマの設定方法とは?
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もうひとつの外的環境の変化として、①で説明した社会環境の変化によって、研究開発部門の役割が変化したことも挙げられる。社会環境の大きな変化によって研究開発部門はより明確な事業貢献を求められ、技術起点の価値創造を期待されるようになった。
加えて、スマートファクトリーやマテリアルズ・インフォマティクスなどのデジタル技術による製造工程における革新が起きており、技術開発と製品開発の距離が時間においても工程においても短くなりつつあることが理由に挙げられるだろう。
その中で、多くの企業では基礎研究や中央研究所の廃止と応用研究・開発研究の強化、すなわち新たな製品や事業の創出への注力が明確に打ち出されており、既に求められる貢献への転換が行われたと言っても過言ではない。
基礎研究の重要性は言うまでもないが、一方で激化する競争環境に打ち克つためには、新たな価値創出の実現が不可欠であり、自社のコア技術をいかに応用・発展させて、最終到達地点である製品において、他製品との差異化要素を見出すことが重要視されているのだ。
応用研究や開発研究によって事業に貢献しつつ、基礎研究によって次なるコア技術を生み出していくという良い循環サイクルを回していかなければ、これまでの強い技術力を持った日本のものづくりは弱体化してしまう。
現代の研究開発ニーズを満たすためにも、先手を打った技術開発、顧客価値を意識した製品・事業開発が今やマストであるといえる。
技術起点の研究開発型の製品開発や新規事業については少なくとも3年から5年ほどの時間がかかると言われている。まずは研究開発テーマを策定し、設定したテーマに沿って研究開発を進めていく。研究開発を実施する中で、製品や事業の寄与する差異化要素とそこから生み出される新価値を創造していく必要がある。
より現在の求められる役割に即した研究テーマを設定するためには、3つの視点から研究テーマを検討する必要がある。それは「技術」「市場」「顧客」だ。この内のどれかが欠けても研究テーマとしては強度が弱いものとなるだろう。検討する際には、技術→市場→顧客の順に考えつつ、それぞれのステップを相互に行き来しながらアイデアを固めていく。
市場で生き残る製品や事業を創るためには、他社製品との技術的差異化要素を有することが有効である。差異化要素がなければ、スペックの改善や価格競争に陥り、最終的に消耗してしまう恐れがあるからだ。差異化要素を生み出すためには、自社が保有する技術の棚卸を行うことで、可能性のあるコア技術や開発用途を増やす期待が持てる技術を特定することが必要だ。
技術を活かせる市場について検討するために、MFTフレームワークをという思考法を取り入れることがおすすめだ。MFTフレームワークとは、技術と市場を考える際に「機能」という概念に着目することで、技術が活かせる市場についてより広い視野を持って検討することができるとされている手法だ。
研究テーマの設定には技術についての視点以外に、市場に対する検討が必須である。言い換えると参入すべき事業領域の検討だ。これらは自社の事業領域や注力領域などの現在の事業環境から検討することもあれば、盛り上がっている社会課題から検討することもある。
特に、一定の時間を要する研究開発型の製品開発や事業開発においては社会課題を意識することは重要だ。社会課題は中長期的に解決を目指すものが多く、大きなニーズやペインが存在するため市場規模が大きいものが多い。今後の技術開発のトレンドになり得るものも含まれており着目すべきだ。
事業領域の検討の際にはバックキャスティング思考が有効だ。バックキャスティング思考は現代の問題や課題のみを検討するのではなく、理想的な将来像を描いてから現在へと遡って思考する考え方だ。現在の延長から将来を想像するフォアキャスティングと対比されるが、フォアキャスティング型の思考だと過去のデータや経験から課題解決を考えるため、現在地から手の届く範囲での改善に留まることが多い。バックキャスティングで発想を飛躍させることで新たな価値を生み出すことができるのだ。
最後に、顧客について検討する必要がある。なぜなら、最終的に製品を選ぶのは顧客だからだ。顧客についても、「課題」「解決策」「ニーズ」の3つに分けて考える必要がある。
・課題:誰の何の課題を解決できるのか
・解決策:何の技術/手段で解決するのか?
・ニーズ:お金を払うペインポイントはどこか
この3つを明確にした上で、本当に自社の技術を活用すれば他社と差別化した製品や事業の創出ができるのかを問い続ける必要があるのだ。
一方で、「技術」「市場」「顧客」の3つを他業務もある中、限られた時間で調査・検討を進めることは非常に難しいのが現状ではないだろうか。また、社会環境の変化も激しい中、一度調査を実施しても、すぐに状況は変わってしまうため、継続的な情報収集が必要であるのも実態だろう。
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理想的な状態は定量情報と定性情報の両方を掛け合わせて意思決定を行うことだ。定性情報とはニュースなどの定量化ができない情報のことだ。企業のIR情報や調査会社が公表している市場規模などの定量情報も重要ではあるが、意思決定のタイミングでは最新の情報ではない可能性もあり、即時性という意味では弱みもある。
変化の激しい不確実性が高い時代において、タイムリーな情報収集と即断即決の意思決定が重要となるが、以下の4つの性質や課題において、定性情報を活用することは困難である。
現代のデジタル社会において、情報は様々なところに散財している。これまではマスメディアに集約されていた情報も、専門メディアやnoteなどの投稿サイトなどにも有益な情報が存在するようになっており、情報量は過去に比べて激増している。これらを網羅的に収集することは困難だ。
かねてより予見されいた情報オーバーロードという、膨大な情報の海に飲まれ、
・必要な情報に即座に辿り着けない
・課題の特定が困難になる
・意思決定の精度とスピードが落ちる
という課題も顕在化するようになっているのだ。
収集した定性情報を一つの場所に蓄積・共有ができなければ情報を活用することは難しい。アイデアを創出する際には、蓄積した情報からアイデアのヒントを探しながら議論を重ね、企画策定の際は、蓄積した情報から根拠となる必要な情報を抽出し、企画を進める際には他部門との共創に向けて背景情報を伝えて、納得感を持って業務を進められるように差配する必要がある。
これらの一連の流れは研究開発型の事業開発には必須だ。情報収集ができたとしても、いつでも誰もが活用できるように集合知化できるよう「蓄積・共有」ができなければ、結果としては再活用もできないのだが、この情報の蓄積・共有がきちんとできているという企業はまだ少ないのではないだろうか。
情報を意思決定に活用するには、構造化・整理を行うことも必要だ。特定の事業領域において、領域を決めた上で情報を構造化・整理を行い、傾向を整理することで意思決定に繋げることができる。しかし、ビジネス環境は常に変化し、関わりのある業界は複雑に絡み合い、これまでの市場や業界区分を跨って変化が起きている。つまり複雑性が高まっているのだ。
このような状況の中、特定の事業領域の概要を把握することさえも困難であり、人力で膨大な情報を整理し、要点を纏めるためには膨大な時間が必要とされる。他業務もある中で、精度高く構造化を行い、意思決定に繋げることは困難であると言わざるおえない。
情報収集は個人に属人化しやすい。これは個人にはどうしても興味分野や嗜好、視座に違いがあるためであり、情報収集するサイトや着目する情報に個人の特徴が出ることが想定され、結果として収集する情報が偏る恐れがある。
このような状況を解消するためには、情報収集をチームで行うことが有用だろう。情報収集を個人ではなくチームや部門で行うことで、情報の偏りを防ぎ、お互いに背景情報を共有することが可能だ。加えて、他者が見ている情報から学びを得て、全体の情報感度を向上することもできるようになる。
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これらの課題を克服するにはAIの活用が有用だ。人間の情報収集能力の限界を超えるためには必須ともいえるだろう。AIの活用の具体例としては、収集したテキストデータの構造化や、企業名抽出によるニュース記事検索などが挙げられる。
テキストデータの構造化とは、テキストデータから固有名詞やキーワードの抽出、記事の分類を行なって、コンピュータ内での取り扱いがしやすいように情報の処理を行うことである。このテクノロジーを利用することで、情報処理のスピード向上が望めることは言うまでもない。
膨大な情報の中から、より重要な基礎的情報をピックアップし、様々な観点から知識を得られ、情報収集にかかる時間は大幅に短縮されるだろう。あらゆる製品開発プロセスがデジタル技術によって変革されていく中、研究テーマの策定などの企画に係る情報収集は未だアナログのままである。
テクノロジーの活用によって情報収集を高度化することで、顧客価値を意識した研究テーマの策定を行うことが、先手を打った技術開発に繋がるといえる。
AIを活用したリサーチDXを実現することで、情報収集スピードと質の向上、取り扱う情報の増加が可能になるだろう。効率良く情報を集めることによって、社会環境の変化を把握し、新たな価値創出に向けた活動に時間を費やすことができるようになる。
また、情報を「蓄積・共有」「構造化」ができるため、いつでも誰でも情報を活用した意思決定を行うことができ、背景情報の共有がシームレスになることで意思決定プロセスを簡略化したり、納得感を醸成することもできる。
そして、最も重要なのは研究開発を進める上で重要な研究開発テーマの策定に膨大な情報から得られた知見を活用できることにあり、成功確度を少しでも上げ、製品や事業に繋がる顧客価値を意識したテーマ策定に近づくことだ。刻一刻と変化する社会環境の中においては、情報の質と量、その即時性が肝となる。
製品開発のため、質の良い情報を数多く得ることができるデジタルテクノロジーは積極的に利用していくべきなのではないだろうか。