お役立ち資料一覧へ お問い合わせ
MENU CLOSE
  1. Stockmark
  2. coevo
  3. 戦略
  4. サービスドミナントロジックとは?事業開発・サービス改善への落とし込む方法を解説

サービスドミナントロジックとは?事業開発・サービス改善への落とし込む方法を解説

service-dominant-logic-01

サービスドミナントロジックとは、顧客の感じる価値や体験・経験に焦点を置いた考え方である。ビジネスの形がモノからコトへ移り変わりつつある現代において重要な視点となる。本記事では、サービスドミナントロジックとはどのような考え方なのか、従来の考え方とどのように異なるのか、また事業への展開方法について解説する。

「コト」ビジネスで欠かせない顧客視点でのアイデア創出方法とは?
▶︎「顧客価値」視点でアイデアの可能性を引き出すポイント

 サービスドミナントロジックとは?

「サービス・ドミナント・ロジック(Service-Dominant-Logic)」は、「SDL」「S-Dロジック」とも呼ばれ、2004年にアメリカのロバート・F・ラッシュ氏とスティーブン・L・バーゴ氏によって提唱された。

サービスドミナントロジックでは、商品のような形のある有形財(モノ)と、サブスクリプションなどの形のない無形財(コト)を区別することなく、企業が顧客に提供する価値全てを一括りにして「サービス」と定義しており、一般的な無形財を指すサービスとは異なるものである。ロジックと名前が付いてはいるが、理論よりもマインドセットに近いものだと提唱者たちは補足している。

ライフスタイルや価値観の多様化に伴い、これまでのような画一的な価値の提供ではなく、より一層顧客と向き合ったサービスを考えていく必要性が高まっているのだ。

「コト」ビジネスで欠かせない顧客視点でのアイデア創出方法とは?
▶︎「顧客価値」視点でアイデアの可能性を引き出すポイント

 顧客が利用することが価値創出のスタートライン

サービスドミナントロジックの最大の特徴には、商品やサービスなどが顧客の手に渡った後に顧客が得られる体験や経験を重要視する点が挙げられる。顧客が利用しなければ価値は生まれないとする考えで、使用価値・経験価値と呼ばれる。

また、顧客の辿ってきた経験や、現在の状態によってサービスが発揮できる価値が変動するという視点も特徴の1つである。多様な背景を持つ顧客にサービスの価値が委ねられることから、文脈価値と呼ばれる。

 価値は企業と顧客が創り出す

サービスドミナントロジックには価値共創というもう1つの大きな特徴がある。サービスの価値は顧客が受け取ることで初めて価値となるが、企業と顧客の関係性はこの価値を共に創る双方的なものという考え方である。顧客を単なる受け取り手や消費者と捉えるのではなく、企業と共に価値を創り出す主体的な存在だとしている。そのため、どのようなものを売り出したいかなどといった企業側の視点よりも顧客側の視点が重要な鍵となるのだ。

顧客側の視点に重点をおいた「顧客価値」創出の考え方についてはこちら
顧客価値とは?-顧客価値を意識した製品づくりに必要なこと

 サービスドミナントロジックとグッズドミナントロジックとの違い

サービスドミナントロジックと対比する考え方として、グッズドミナントロジック(Goods-Dominant-Logic)があり、「GDL」や「G-Dロジック」とも呼ばれている。有形・無形に関わらず顧客に提供されるあらゆるものをサービスとした考え方であるサービスドミナントロジックとは異なり、グッズドミナントロジックでは有形のモノを前提に、モノ自体に価値が内包されているとする。

モノの価値はあらかじめ企業が決定し、顧客は価値に合意して代価を支払うことで価値の交換を行う、モノを中心とした考え方である。従来型のビジネスでは、グッズドミナントロジックが主流となっている。

グッズドミナントロジックでは、価値創出の主体は企業であること、顧客はあくまでも消費者であり、顧客が商品を手にすることが最終地点であることから、優れた商品を開発することが何よりも重要である。モノが顧客に提供された後は考慮されず、価値に関わる顧客との関係は購入時のみである。顧客との継続的な関係性の重要度が高まる昨今においては、サービスドミナントロジックに潮流が変わりつつある。

 サービスドミナントロジックを事業開発・サービス改善へ落とし込む方法

ここでは新規での事業開発や既にあるサービスを改善するために、サービスドミナントロジックをどのように落とし込めばいいのか手順を解説する。

 顧客を知る

サービスドミナントロジックを事業施策に落とし込むためには顧客を知ることがとても重要だ。サービスドミナントロジックは顧客と価値を共に創るという考え方であり、顧客がサービスに対して価値を見出すことを重要視しているためだ。顧客を知るためには、ニーズそのものを調査するほかに、顧客の生活全体についてのリサーチが必要だ。顧客の一側面だけを断片的に見るのではなく、ミクロとマクロの両面からアプローチを行い包括的に捉え、本質的なサービスの提案を目指したい。

顧客の求める価値の抽出方法はこちらの資料をチェック!
▶︎無料で資料をダウンロードする

 リサーチ情報を整理する

2つ目のステップでは、これまでに得たリサーチ情報を整理する。対象となる商品やサービスについてだけではなく、関連する物事、業界そのものや業界の相関図など、周辺の情報や動向をまとめわかりやすく可視化する。合わせて取り組みたいのが、顧客がサービス購入に至るまでの意思決定プロセスの整理である。これらの整理には、サービスエコロジーマップやカスタマージャーニーマップなどが有用だ。リサーチ情報をまとめる際には、顧客のどのようなニーズや体験の場面において、自社のサービスでアプローチできるかという視点を持って検討を行う。

 フィードバックを得て改善する

情報を整理し事業展開の見込みが立ったら最低限のサービスを形作り顧客に試験的に提供してみる。サービスドミナントロジックでは、価値は企業主体で創出するのではなく、サービスを提供された顧客が利用して初めて生み出される。つまり、顧客の実際の利用を通さなければ、本当の意味でどのような価値があるのかを知ることはできないのだ。企業側だけで企画を考え続けるのではなく、顧客の体験からフィードバックを受け取り、改善を繰り返すことで真の価値創出へとつながるのだ。

顧客の立場からのアイデア創出にはデザイン思考も有効!
詳しくはこちらの記事で↓
デザイン思考が新規事業創出に有効なのはなぜ?特徴やプロセスを解説!

 サービスドミナントロジックの注意点

ここでは、サービスドミナントロジックを行う上で留意しておきたい注意点について解説する。

 本来の事業からかけ離れないようにする

サービスドミナントロジックは顧客ニーズ、そして顧客価値を第一に考え、それらをもとに提供するサービスを組み立てていく考え方である。一方で、いくら顧客視点で辿り着いた価値あるサービスであっても、そのサービスが自社にとって最適のサービスとは限らない。本来の事業からかけ離れていないかどうか、実際に提供可能なものなのかどうかを冷静に考える必要がある。

「コト」ビジネスで欠かせない顧客視点でのアイデア創出方法とは?
▶︎「顧客価値」視点でアイデアの可能性を引き出すポイント

 データに対して過度な信頼をしない

2つ目の注意点は、得られたデータに対して過度な信頼をしないようにしなければならない点である。前項とも重なる部分もあるが、詳細にリサーチして導き出したデータは事業を進める上で根拠とすべきものではあるが、全幅の信頼を置かないように注意する必要がある。リサーチした前提の情報が日々刻々と変化する可能性があることと、絶対的なリサーチ結果などはないからである。また同時に、一般的かつ普遍性の高い仮説についても同様の扱いをすべきだといえるだろう。根拠は必ず必要であるが、多角的かつ先入観のない視点で、慎重に事業活動を進めていくことが重要だ。

 正解はないと理解する

価値づくりに対する考え方が、サービスドミナントロジックの潮流となりつつあるといえるが、これは対比的なグッズドミナントロジックが劣っているということではない。現在は第4次産業革命の過渡期にあり、価値づくりのあり方の認識が混在している段階である。まだまだグッズドミナントロジックによる既存事業を主流とする企業も多い。今後、市場が急激に変化していくなか、異なるロジックを理解し、どのような考えに基づくビジネスなのかを把握する必要がある。既存事業をいかに強化していくか、新規事業をいかに創出していくかという両方の観点からバランスよく事業を構築していくことが大切だといえるだろう。

 サービスドミナントロジックの事例

サービスドミナントロジックを事業やサービスに取り入れた例をご紹介する。サービスドミナントロジックを事業に落とし込み、どのような実現方法としたのか参考にしてほしい。

「コト」ビジネスで欠かせない顧客視点でのアイデア創出方法とは?
▶︎「顧客価値」視点でアイデアの可能性を引き出すポイント

 LEGO IDEAS

レゴは世界的に有名なプラスチック製の組み立てブロック玩具を製造するデンマークの会社である。「LEGO IDEAS」は、公式サイト上で世界中のレゴユーザーからオリジナルのアイデアを投稿してもらい、他のユーザーから1万票以上の支持が集まったものから商品化するというプラットフォームだ。顧客のスキルやセンスの活用だけでなく、創作意欲を高め、購買数がある程度見込めるアイデアを商品化できる利点がある。企業と顧客の双方向の価値創出の関係性が築けている好事例である。

 KOMTRAX

日本の建設機械・鉱山機械メーカーである株式会社小松製作所のサービスも良い事例である。「KOMTRAX」は、小松製作所が開発した機械情報を遠隔で確認するためのシステムであり、販売する全てのダンプカーやショベルカーなどの重機そのものにGPSとコンピューターを搭載して、機械の稼働情報や警告情報を収集、そして稼働状況の管理やメンテナンス管理をサポートするサービスだ。生産性の管理、燃料費の削減、作業効率の向上などを通して継続的な顧客との価値共創ができている。

 Nike Run Clue

米国発の多国籍企業であり、世界的スポーツブランドのナイキが提供しているアプリ、「Nike Run Clue」もサービスドミナントロジックの良い例だ。「Nike Run Clue」はランニングをサポートする無料アプリであり、ランニング記録を計測し管理することができたり、自身の記録をTwitterやInstagramといったSNSに投稿することができたりする。シューズごとの走行距離や寿命も管理することができるため、購入で顧客との関係が終わる従来のスタイルから脱却し、顧客との密な関係を構築できている。

 Airbnb

「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、米国に拠点があるバケーションレンタルを行う企業である。企業のウェブサイトもしくはアプリを介して、空き部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい人(ゲスト)を繋げるサービスを提供している。「Airbnb」はサイト上で貸し出される部屋をいずれも所有しておらず、空室状況の管理と予約による仲介料を取得するビジネスで、従来の宿泊業サービスとは一線を画しているといえるだろう。空き部屋を有効活用したいホストのニーズ、そしてその土地で部屋を借りたいというゲストのニーズに着眼したサービスだ。

 まとめ

サービスドミナントロジックは、商品やサービスを販売したら終わりという売り切りの関係ではなく、顧客と継続的な関係を築き、顧客維持と拡大を目指す考え方である。そのため、購入までのプロセスではなく、購入したあとの商品やサービスを利用する顧客の姿をいかにリアルに捉えられるかが重要となる。つまり、顧客が日常でごく自然に取っている行動や考え方、感じていることにヒントが隠されており、顧客を深く知り寄り添うことで潜在的なニーズや価値の在処が見えてくるだろう。

顧客価値DLバナー