2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
顧客価値を意識した製品開発の重要性が叫ばれており、研究開発においてもその波が押し寄せてきています。技術シーズを顧客ニーズに転換することで、新たな市場への製品投入や用途展開を目標とすることも増えつつあるだろう。これらの活動は次なる事業の柱を創るためには重要だが、一筋縄ではいかない困難なものでもある。
今回は技術を軸にして顧客価値創出を実現する「技術マーケティング」に焦点を当て、自社技術をマーケティング視点で捉え、どのように新たな市場を探索し、顧客価値へと繋げるための考え方について解説する。
「マーケティング視点」を踏まえた研究開発のステップをわかりやすく解説!
くわしい解説と各ステップのポイントをチェック!
▶️解説資料のダウンロードはこちらから
目次
技術マーケティングとは、競争優位の源泉をコア技術に置き、技術を「顧客価値」に転換する活動のことである。製品を提供した際の市場性や顧客体験、ビジネスモデルを技術を軸に検討することで製品を差別化し、顧客課題を解決する革新的な製品を創り出すための手法である。
技術マーケティングの重要な点は、技術に精通した研究開発部門や開発部門が製品企画に携わることにある。従来型の事業における研究開発や技術開発では、競合他社が追随できない差異化要素を持った強い技術を生み出すことが、研究開発部門や開発部門の最も重要な役割であり、技術が生み出された後に製品企画や事業開発を進めるということが多いだろう。しかし、この方法ではビジネス上の収益に繋がりづらいという側面がある。
そのため、技術に精通した研究開発部門や開発部門が、製品コンセプトの策定から製造過程での問題、過去製品やプロトタイプを利用した顧客の声を聞きながら、迅速な開発体制と方針の見直しを行い、マーケティング観点を持つことで、顧客を満足させる製品開発と差別化を実現することが可能になるのだ。そして、技術者が顧客価値を意識する第一歩でもある。
日本のものづくりが「メイドインジャパン」「Japan as No1」と賞賛されていた頃は、作れば売れる時代であり、高度経済成長期の後押しの中、十分に国際的な競争力を維持することができていた。今でも「ものづくり技術」、つまり要素技術の開発やプロセス開発、製造技術などの製品を完成させる過程において活用されている技術力は世界でもトップクラスに高いだろう。しかし、モジュール化やコモディティ化が進む中、技術の深化だけでは顧客価値の向上に繋がりづらくなっているのが現状だ。
これからのものづくりは技術を深化させるだけではなく、技術を軸にして事業を構成する「技術」「顧客体験」「ビジネスモデル」などの価値を届けるために必要なものを高度に組み合わせること、つまり価値を構成する要素を統合的にデザインする事業構想力が製品開発において重要となっているのだ。日本の強みであるものづくりを活かし、イノベーションを生み出すためには、技術マーケティングに取り組み、事業構想力を高めることで価値づくりを体現することが必要不可欠である。
では、技術マーケティングを進めるにはどのような順序で進めていけば良いのか。ここでは4つのステップに分けて解説する。
「マーケティング視点」を踏まえた研究開発のステップをわかりやすく解説!
くわしい解説と各ステップのポイントをチェック!
▶️解説資料のダウンロードはこちらから
技術を軸に新たな顧客価値を創出するためには、次世代のコア技術を特定することが必要だ。自社が保有する技術領域において、差異化要素になり得る「希少性」や「模倣困難性」のある技術はどのような技術なのか。10年後や20年後の技術がどのようになっているのか、どのように進歩させていきたいのか。部門を超えて自社の保有する技術を可視化することで、有望な技術領域を特定する必要がある。
次にやるべきは、技術を転用する用途展開領域の選定だ。ここでは市場性と技術特性の観点が重要だ。優良な技術を保有していたとしても、成長性のある市場に対して、技術を展開しなければ、次なる事業の柱を創出することはできない。一方で、自社の技術で解決できない領域への展開も顧客価値の創出には至らない結果となる。
また、1つの技術をとっても、耐熱性や靭性、乳化性などの様々な特性を保有し、研究開発によって向上できる特性も変わってくる。研究している技術の特性の抽象化と具体化を繰り返し、どの特性がどのような領域へ展開可能なのか。そして展開可能な領域は今後伸びる可能性があるのか。この2つの側面から検討を行うことが重要だ。
技術を転用する領域を定めたら、ビジネスモデルの構築を行う。顧客理解を深めるために、既存顧客へのヒアリングやユーザーインタビュー、実際の利用シーンの観察やWeb上での情報など、様々な方法で情報収集を行うことで顧客理解を深め、顧客を明確化した上で製品コンセプトの策定を行うことが重要だ。擬似的な製品カタログの作成なども有用な手段である。
その上で、顧客価値創出において自社内で担保できないアセットに関しては、オープンイノベーションやアライアンス、産学連携の共同研究などの外部リソース活用を含めて検討を行う必要がある。
共感されるブランドや商品を作るコンセプトの考え方のポイント!
▶️解説資料(無料)を見てみる
前述した3つの活動を踏まえて、最後に事業構想をロードマップとして描くことで、多くの関係部門との意思統一を図っていく。製品企画自体は一つの部門で完結することもあるが、製品を顧客に届ける過程では製造部門や営業部門、マーケティング部門などの多数の部門が関わりながら、顧客へ価値が届くことになる。
顧客価値を軸にした製品コンセプトを基に、技術や市場、マーケティングのロードマップを描き、どのような想いで製品開発を行ったのかを明確にし、全員がロードマップを基に業務を進めていくことが可能になるのだ。
「マーケティング視点」を踏まえた研究開発のステップをわかりやすく解説!
くわしい解説と各ステップのポイントをチェック!
▶️解説資料のダウンロードはこちらから
技術マーケティングを実践し、成功している代表的な企業は「スリーエムジャパン株式会社」だ。ポストイットなどの事務用品が有名な企業だが、売上の大部分はエレクトロニクスやヘルスケアなどのB to B領域が中心である。
コア技術をプラットフォーム化し、独自性のある技術を創出するための取り組みとして、業務時間の15%を自由な技術開発に充てることができる、「15%カルチャー」制度を設け、独自性のある技術開発を促進している。また、技術と顧客価値を繋ぐために世界各地の事業部と連携を可能にするネットワークを構築することで、初期段階の顧客探索の支援を行うことで、技術シーズと顧客ニーズを繋ぐプロセスを仕組み化しているのだ。
技術マーケティングは重要である一方で、成功させることが困難である点も事実だ。ここでは技術マーケティングを成功させるためのポイントを解説する。
「マーケティング視点」を踏まえた研究開発のステップをわかりやすく解説!
くわしい解説と各ステップのポイントをチェック!
▶️解説資料のダウンロードはこちらから
技術の急速な発達と社会環境の変化から市場環境は常に変わり続け、境目は曖昧になっている。そのような状況の中、自社技術の特性を踏まえた上で、競合優位性と市場成長性を両立できる領域への参入が求められる。
また、未開拓の業界への参入が必要な場合には市場開拓を行う必要があり、既存顧客へのヒアリングや自社が保有するネットワークだけでは市場環境を正確に捉え、常にアップデートし続けることはできない場合もあるだろう。
コア技術を深く理解することは勿論のこと、市場を構造化してタイムリーに捉えるために、常に調査を行うことと、顧客への価値提供において競合になり得る企業の出現をいち早く察知することが重要だ。
新たな技術開発を伴う製品開発には少なくとも3年から5年以上の期間を要することが多い。現在の顧客課題から提供価値を構想しても陳腐化してしまい、意味のないものになってしまうことも多いだろう。
そのため、未来のあるべき姿を描き、未来像から現在へと遡って思考する「バックキャスティング思考」によって、未来の顧客課題を想像することが必要だ。社会環境がどのように変わるのかを、様々な角度から情報を集めた上で検討し、顧客課題を理解することが必要だ。
将来年表を活用したバックキャスティングもおすすめだ。
将来年表機能の詳細はこちら
技術マーケティングを駆使して策定した製品コンセプトやロードマップも、関係する部門が共通認識を持って取り組まなければ意味がない。また、環境が大きく変化する中では、製品開発方針をアップデートすることが必要となり、常に共有されることが重要だ。開発過程における課題や製品における重大な問題の共有は製品の欠陥を防ぎ、顧客価値の安定的な要求と信頼性へと繋がる。
製品化に必要な技術開発においても、特定の技術分野において継続的に取り組みを続けた企業には「積み重ね技術」と呼ばれる課題解決能力が備わっているとされる。積み重ね技術は技術者が継続的に学習した経験知や問題解決能力が組織に蓄積されることで生み出される。開発工数の減少することによるリードタイムの短縮や設計品質や商品性の向上にも繋がるものだ。
また、別の分野の研究者同士が連携することで、新しい発見や顧客価値に繋がるアイデアの発見も期待される。オープンで共有する文化を形成することは、製造業において非常に重要であり、技術マーケティングの実現を加速させることになるのだ。
製品開発は顧客価値の根幹となるものである。技術と製品を分けて構想するのではなく、技術を軸に「技術深化」「顧客体験」「ビジネスモデル」を構築し、市場性も踏まえて検討を重ねることで、新たな価値創造を目指してみてはいかがだろうか──。
技術と市場をつなげる結節点を見つけるための技術マーケティングについて、わかりやすくまとめた資料を無料配布中!