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バイオプラスチックとは?メリットや問題点・デメリットについて

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1950年から2015年までに生産されたプラスチックは、世界でおよそ83億トン。そのうち63億トン以上がプラスチックごみとして埋立もしくは海洋投棄されている。これが焼却処理による有害物質やCO2の発生や、海洋汚染の原因になるとして問題視されている。一人当たりのプラスチックごみ廃棄量で世界2位になったこともある日本。そこに住む私たちは、プラスチックのごみ問題を率先して解決しなければいけない立場だ。

こうした背景から、本記事では、再生利用または生分解が可能なプラスチックとして注目される「バイオプラスチック」の、メリットや具体的な用途について解説していく。

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 バイオプラスチックの定義とは?

バイオプラスチックとは、再生利用または生分解によって、循環型社会の実現に寄与する新たなプラスチック素材だ。

植物など再生可能な天然資源から作られた「バイオマスプラスチック」と、植物や化学資源を問わず最終的に水とCO2にまで分解できる「生分解性プラスチック」に大別される。前者はCO2排出量の削減、後者は海洋ごみの削減のためと目的が異なっており、地球環境の速やかな回復のためには同時並行で開発・普及を進めていくのが望ましい。

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 バイオプラスチックの市場規模・動向

矢野経済研究所の調査によれば、日本国内におけるバイオプラスチックの市場規模(出荷量ベース)は、2021年に約8.9万トンを記録している。

2019年には約4.8万トンだったが、2020年のレジ袋有料化、およびそれに伴うバイオプラスチックの需要増加などが急上昇した要因であろう。2021年に複数の省庁が合同で、「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定・公表したことも、各企業の参入を後押しした。

続いてバイオプラスチックの世界市場規模(生産量ベース)は、2021年に241万7,000トンを記録している。アメリカがバイオマス製品の認証制度(バイオプリファードプログラム)を古くから運用しているのに加え、2020年にはEUがバイオプラスチックの政策枠組みを含めた新循環経済行動計画を発表しており、今後しばらく世界市場は右肩上がりで成長を続けるだろう。

 バイオプラスチックの種類と原料

バイオプラスチックは、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の2つに大別される。それぞれの構造や製法について掘り下げていきたい。

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 バイオマスプラスチック

植物などの再生可能な有機資源を原料とするプラスチックのことを指す。バイオプラスチックの製法はさまざまな方法があるが、ここでは2つを紹介する。

1つ目は、バイオポリエチレンの作り方だ。植物由来の原料を発酵させて作ったバイオエタノールに濃硫酸を混ぜ、160〜170℃で加熱させる。するとプラスチック原料のエチレンが生成される。次に、このエチレンを重合器内で循環させつつ、そこにチタン・アルミニウム系統の「有機金属触媒」を投入していく。そうして生成されるのが、プラスチック素材として最もポピュラーなポリエチレンだ。

2つ目は、バイオマスナフサから製造する方法だ。この製法は石油由来のナフサを使用するプロセスと非常に似ている。異なる点は、原料が植物資源や廃棄物から得られる再生可能な資源から得られるということだ。バイオマスナフサを分解装置で分解し、プラスチック原料のベンゼンやプロピレンなどの基礎化学品を作り出す。バイオマスナフサからつくられたポリマーは、石油由来のナフサと比べて、製造工程に置けるCO2排出量が少ないという特徴がある。

 使用される原料

バイオマスプラスチックに用いられる原料としては、サトウキビの糖蜜やトウモロコシのデンプンなどが有名だ。

しかし、これらは食料としての需要も大きいため、将来、食糧不足が起こった場合、食料用が優先されるという懸念もある。そこで近年は、ミドリムシが作り出す多糖類や油脂成分、木材を細かくほぐして繊維をバラバラにして作るナノセルロースといった非可食バイオマスの研究が進められている。

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 生分解性プラスチック

微生物の働きで水とCO2に分解され、自然へ還る性質を有するプラスチックのことだ。

植物原料を用いる場合もあれば、化石燃料を用いる場合もあり、バイオマスプラスチックに比べるとバラエティに富んでいる。

たとえば、サトウキビなどから取り出した糖を乳酸菌で発酵させて得られた乳酸を、化学的な方法で長くつなげると、抗菌性に優れたポリ乳酸が生成される。

化石資源を用いたものに関しては、石油から生成した3種の成分を共重合して作るPBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)が、安価で加工性も高いことから盛んに用いられている。

 使用される原料

サトウキビやトウモロコシなどの糖に加え、菜種油や大豆油といった天然油脂などが主な原料になる。化石資源で作る場合は石油が主だが、一定の条件下で土に埋めれば数年で堆肥化するため、焼却処分による温室効果ガスなどの心配はない。

アフリカや中南米で新たな油田が続々開発されていることもあり、石油の可採年数は50年前後のまま維持されると見込まれる。当面は植物原料と化石資源が併用されていくことだろう。

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 バイオプラスチックの主な用途

すでにさまざまな製品に広く利用されている。

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 ペットボトル

最も身近なのがペットボトルだ。例えば、飲料メーカーのサントリーでは2013年から「サントリー天然水」シリーズの容器に、植物原料30%で製造されたバイオプラスチック素材を導入している。2021年には、米国ベンチャー企業のアネロテック社と共同で植物原料100%ペットボトルの開発試作に成功しており、今後の実用化が待たれる。

 容器・ゴミ袋

普段何気なく捨てている容器やゴミ袋にも、バイオプラスチックが採用されているケースは珍しくない。たとえば、洗剤メーカーの花王は、「メリット」や「キュキュット」といった主力商品のボトルに、バイオマスプラスチックを30%前後使用している。また、通販サイト・たのめーるでは、植物原料25%で製造された半透明ゴミ袋を数多くラインナップしている。

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 ストロー

生分解プラスチック製ストローの研究開発も進んでおり、たとえば化学メーカーのカネカは、植物原料100%の生分解性ポリマーを原料とするストローを2022年に発売した。このストローは、30℃の海中で6か月以内に構造の90%以上が生分解するという性能で、2017年にはベルギー認定機関「Vincotte」の国際認証を受けている。

 漁業資材

漁網やロープといった漁業資材の多くがプラスチックで製造されており、海洋汚染の一因となっている。漁具メーカーの西日本ニチモウは、植物原料を70%含有しつつ、スパンナイロンと同等の強度を誇るバイオマスロープを開発した。同社は和紙製の網も開発しており、そのまま土に埋めて処分できるメリットがある。漁網のバイオマス化に大きく貢献しているといえるだろう。

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 バイオプラスチックのメリット

バイオプラスチックは、再生可能な有機資源からつくられるため、以下のようなメリットがある。

 枯渇性資源の使用を削減できる

バイオプラスチックに切り替えることで、石油や石炭、天然ガスといった枯渇性資源の消費を大幅に削減できる。しばらく可採年数に変化がみられないとはいえ、油田や炭鉱の新規開拓がいずれ頭打ちになる以上、再生可能資源への移行は速やかに進めていくべきだ。

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 焼却しても大気中のCO2が増加しない

バイオマスプラスチックを焼却した際に出るCO2は、植物原料が成長する過程で吸収した大気中のCO2であるため、焼却処分が地球温暖化に影響することはほぼない。ただし、化学資源を含む生分解性プラスチックの場合、焼却すると生分解性が失われるため、環境維持のためには、より厳密なゴミ分別が求められる。

 廃棄物処理の手間やコストの削減

プラスチックごみを巡る課題は環境問題だけではない。環境省が2020年に実施した調査※では、産業処理事業者の半数以上が「人材不足」を感じており、業務の簡略化や待遇の改善が急務となっている。

こうした課題を解決するうえでも、バイオプラスチックの普及は非常に重要だ。たとえば生ゴミの回収に生分解性プラスチックのゴミ袋を用いると、堆肥化などの処理を袋ごと実行できるため、処理の手間やコストが軽減される。

 自然環境に滞留するごみの削減

生分解性プラスチックが広く普及すれば、ある程度の期間で水とCO2に分解されるため、ゴミの量が減少し、土壌汚染や水質汚濁といった環境問題を減らすことが可能となる。

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 バイオプラスチックの問題点・デメリット

バイオプラスチックの現時点での用途は専ら消耗品であり、長期間使い続ける製品には適していない。そもそも、生分解性プラスチックは時間経過に従い分解されていく構造であるため、化石資源品に比べて耐久性に劣る。また、原料となる植物資源を大量に育てるとなると、食糧生産に割く土地や人員に影響が及ぶため、どこまでバイオプラスチックの原料に活用すべきかは慎重な判断が求められる。

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 バイオプラスチックを開発しているメーカー・企業

最後に、バイオプラスチックの開発を行うメーカーの中で、特に有名な企業を3社紹介する。

 カネカ

カネカは東京・大阪それぞれに本社をおく化学メーカー。医薬品や合成繊維などの化成品を広く扱っている。同社が開発した生分解性バイオポリマー「Green Planet®」は、先述のストローのみならず、緩衝材や食品容器などさまざまな製品に採用されている。

 三菱ケミカル

三菱グループの三菱ケミカルは、主に医薬品や化学素材を取り扱う会社である。同社が開発したバイオマスプラスチック「DURABIO(デュラビオ)」は、摩擦に強く、耐衝撃性といった項目で化学資源品に近い性能を有しており、今後は光学・エネルギー関連の部材や車の内装や外装など幅広い分野への展開が予定されている。

 NEC

大手電機メーカーのNECは、電子機器の外装に使用するバイオプラスチックとして、最高レベルの植物成分率90%の「ケナフ繊維添加ポリ乳酸」を開発。これを元にリリースされた「難燃性ポリ乳酸複合材」には、高度な難燃性を持つだけでなく、高い耐久性や抗菌性などを実現しており、パソコンやプロジェクターなど多くの電子機器に採用されている。

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 まとめ

バイオプラスチックは既に幅広い業界で導入が進んでいる一方で、性能面や資源面でまだまだ多くの課題が残っている。環境問題が世界的に注目されているなか、自社の長期的な発展と持続可能な社会を実現するためにも、バイオプラスチックなどの環境技術には注目が必要だ。