2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
私たちの健康と生活の質を劇的に変える技術として注目されている「バイオテクノロジー」。医療、農業、環境保全、さらにはエネルギー生成に至るまで、多岐にわたる分野の技術牽引や課題解決を促進するものとして、多くの企業や研究機関が実証実験や取り組みを行っている。そこで、本記事ではバイオテクノロジーの概要とメリット、活用事例を解説していく。
「バイオテクノロジー」とはどのような技術?
メリットや活用の具体例を資料にまとめました!
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目次
バイオテクノロジーとは「Biology(生物学)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、生物そのものまたは遺伝子、タンパク質、細胞などを用いて技術や製品を開発する科学技術の総称を指す。漬物や日本酒、味噌などに代表される日本の発酵食品も乳酸菌や酵母菌といった細菌を活性化させることで作られており、実は古くから生活に根ざした技術といえる。近年は、先端テクノロジーの登場によって、食品だけでなく再生医療やゲノム編集、バイオ燃料の生産など、幅広い領域で利用されている。
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品種改良は、異なる特徴をもった植物や動物を交配させることで、病害に強い品種や高収量品種など、望ましい特性をもった新しい品種を生み出す手法を指す。それに対し、バイオテクノロジーは分子レベルで生物の遺伝子を直接操作する技術だ。また、品種改良と比べて精密かつ迅速に行えるのに加えて、自然に存在しない組み合わせでの遺伝子配合も可能で選択肢の幅も広がる。
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バイオテクノロジーの歴史は非常に長い。チーズや醤油、お酒などの発酵食品を作る技術は「オールドバイオテクノロジー」として区別されている。紀元前5000年ごろには、すでに現在のヨーグルトの原型となるものが存在していた。
人類が狩猟や漁労、採集を基本とする生活から稲作農耕を中心とした社会へ移行したことで、穀物を収穫しやすくするために品種改良(優れた個体の選抜)が行われるようになる。ちなみに、接ぎ木や挿し木も伝統的な品種改良の方法の1つであり、「月詣和歌集」の記録では600年ごろには存在していたといわれている。
1928年にはアレクサンダー・フレミング氏がペニシリンを、1953年にはジェームズ・ワトソン氏とフランシス・クリック氏がDNAの二重らせん構造を発見。バイオテクノロジーの進歩に大きな影響を及ぼした。
その後、1970年代にバイオテクノロジーは遺伝子改変技術、遺伝子工学技術が発明されたことによって急速に発展。これによって、新薬の開発、再生医療、遺伝子組み換え作物などの分野でも応用されるようになった。
さらに、アメリカのエマニュエル・シャルパンティエ氏とジェニファー・ダウドナ氏が開発したゲノム編集ツール「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」を筆頭に、DNAやタンパク質などの生体分子を研究する技術が発展したことに加え、ロボティクスやAIなどの先端テクノロジーの登場によって、バイオテクノロジーは加速度的に進歩を遂げている。
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バイオテクノロジーは、これから人類が直面する社会課題を解決する方法として期待されている。メリットとしては、大きく以下の3つが挙げられる。
ゲノム編集治療を用いることで、鎌状赤血球症といった遺伝性疾患の治療や予防ができる。特に、アメリカや中国で「CRISPR-Cas9」を用いたゲノム編集の治験が多く行われている。また、幹細胞治療などの再生医療技術を用いて損傷した組織や臓器を修復、または再生することも可能となる。
バイオテクノロジーを活用すれば、病害や環境ストレスに強い作物を開発できるため、結果的により栄養価の高い農作物の収穫量を増やすことが可能となる。また、遺伝子組み換え技術を用いて病害虫抵抗性などの特性を付与することで、化学農薬に依存することなく、環境負荷の低減につなげることができる。
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先に述べたように、遺伝子組み換え技術によって人工的に農作物の増産や、培養肉の生成ができるため、畜産や農業で大量に必要となる水や肥料などの消費量を減らせる。さらに、微生物や酵素を用いたバイオレメディエーション技術によって土壌汚染や水質汚濁といった問題の解消も可能になるだろう。
また、バイオ燃料の開発によって、化石燃料に依存しないクリーンなエネルギー源を提供し、温室効果ガスの排出削減にも貢献できる。
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一方で、バイオテクノロジーの導入においては、いくつかの課題や問題点が存在する。
特に、遺伝子編集やクローン技術などは生命に大きな影響を及ぼすため、倫理的懸念が示されている。例えば、遺伝子編集技術を用いて人間の胚を改変することは次世代に予想を超えた影響が出る恐れも指摘されており、日本を含む多くの国で禁止されている。バイオテクノロジーの技術の進展にあわせて、このような技術の利用に関する規制やガイドラインの整備が急務といえるだろう。
バイオテクノロジーはその技術の専門性や複雑さから高い技術力が求められる。優秀な人材の確保や研究開発に必要な費用が高額なため、新興国や小規模企業において格差が生まれる恐れがある。また、膨大な研究費をかけて開発された医薬品や治療法は、高価なものとなり、経済的に余裕のある人々にしか手が届かないという医療の格差を生むことが考えられる。
さらに各国政府や国際機関がどのように規制を設けるかによって、こうした技術の利用が一部の企業や国に集中してしまい、公平性や持続可能な開発に対する懸念が高まるだろう。
遺伝子組み換え作物やゲノム編集された本来自然には存在しない生物が自然界に投入された場合、生態系のバランスが崩れるリスクが考えられる。また、食品としての安全性のデータが不十分であることや、動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点からも反対意見が根強い。このため、慎重なリスク評価と長期的なモニタリングが求められる。
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最後に、バイオテクノロジーが実際に用いられている事例について産業別に解説していく。
代表例として挙げられるのが遺伝子組み換え作物だろう。先に述べた病害虫抵抗性に加え、除草剤耐性作物なども注目されている。特定の除草剤に耐性をもつため、雑草だけを効率的に除去しながら、作物自体への影響を抑えることができるのだ。
食品分野では、さまざまな取り組みが進められている。たとえば、低糖質や低カロリー食品の需要に応えるために、モンクフルーツやステビアから得られる天然の甘味成分を微生物で生産する技術が開発されている。また、細胞を培養して肉を人工的に生産する培養肉の研究が進められており、食糧供給の持続可能性を高める手段の1つとして注目されているのだ。
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バイオテクノロジーは、病気の早期発見と精密な診断に大きな変化をもたらしている。たとえば、次世代シーケンシング(NGS)技術では、患者の遺伝子情報を解析して特定の疾患や遺伝的リスクを迅速に診断できる。また、リキッドバイオプシー(液体生検)では血液中のがん細胞やがんのDNAを検出し、生体を傷つけずにがんの早期発見やモニタリングが可能だ。
また、再生医療の分野では、患者の幹細胞を利用して損傷した組織や臓器を修復する幹細胞治療で用いられている。たとえば、心筋梗塞後の心筋再生や、骨や軟骨の再生治療のほか、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて、患者自身の細胞から多種多様な細胞を作り出し、拒絶反応のリスクを最小限に抑えた移植治療の研究が進められている。
代表例としては、バイオリメディエーション技術が挙げられる。この技術は、微生物の力で土壌や水に含まれる汚染物質を分解・浄化するため、灯油や重油を使用する施設や工場、ガソリンスタンドの跡地周辺の環境修復に活用されている。
酵母や乳酸菌などの微生物を使用して、ヒアルロン酸やコエンザイムQ10などの成分を製造するバイオ発酵や、遺伝子工学を活用して植物由来の原料から酵素や微生物を利用して香料化合物を生産する技術も開発されている。これらによって、持続可能な形で希少な天然香料をより安価に生産することができる。
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振り返りや社内共有にぜひご活用ください。
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バイオテクノロジーは、取り扱いを間違えると生態系や地球環境のバランスを壊す恐れもある。しかしながら、先天性疾患や難病の治療や、持続可能な形で農作物や食肉を生産できるため、食糧危機や生命維持に大きく寄与する技術といえよう。日本や世界の法整備の状況含め、今後もバイオテクノロジー全体の動向に注目したい。