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カーボンフットプリント(CFP)とは?算出方法やメリットを簡単に解説

カーボンフットプリント(CFP)とは?算出方法やメリットを簡単に解説

再生可能エネルギー、カーボンニュートラル、ライフサイクルアセスメント(LCA)とともに語られる機会の多い「カーボンフットプリント」。カーボンフットプリントとは、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルのプロセスで排出された温室効果ガスをCO2として換算し、わかりやすく商品やサービスに掲示する仕組みのことだ。本記事では、このカーボンフットプリントの仕組みや歴史、LCAとの違い、メリットなどについて解説していく。

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 カーボンフットプリント(CFP)の意味とは?

カーボンフットプリント(CFP)とは、Carbon Footprint of Productsの略で、直訳すると「炭素の足跡」となる。商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を、CO2として換算し、わかりやすく商品やサービスに表示する仕組みのことを指す。

企業や団体が温室効果ガスの排出量を把握できるだけでなく、消費者にも商品やサービスを選ぶ判断基準の1つとして提示できるとして、注目され始めている。

 そもそも、環境フットプリントとは何か?

カーボンフットプリントを解説するにあたり、外せない概念が環境フットプリントだ。環境フットプリントは、CO2に限らず、経済活動が環境に与えている影響・状態を見える化する方法の総称をいう。カーボンフットプリントも、環境フットプリントの1つに含まれる。環境フットプリントに属する概念としては、他にマテリアルフットプリント、ウォーターフットプリント、エコロジカルフットプリント、大気汚染物質フットプリントなどがある。

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 カーボンフットプリントとLCAの関係性

カーボンフットプリントと類似する概念にLCAがある。LCAとカーボンフットプリントはどちらも環境負荷を評価する手法ではあるものの、LCAの評価対象は、温室効果ガスの排出量だけでなく、資源枯渇やオゾン層破壊や酸性化など多岐にわたるのに対し、カーボンフットプリントはLCAの手法をベースに、主に温室効果ガスの排出量を評価対象とする点において違いがある。

 カーボンフットプリントの歴史と成り立ち

ここで、改めてカーボンフットプリントの成り立ちから今に至るまでの流れや動向について解説したいと思う。

カーボンフットプリントの歴史はまだ日が浅い。2007年に、イギリスがスムージーやシャンプー、ポテトチップスといった商品に、カーボンフットプリントのラベルを表示したのが起源とされている。その後、2008年にイギリスの環境・食糧・農村地域省(Defra)とCarbon Trust社が共同でカーボンフットプリント規格「PAS2050」を創設した。時を同じくして、2008年7月には南アフリカがイギリス政府の支援を受けながら、主要産業であるワインのカーボンフットプリントの算定イニシアチブの立ち上げを実施、さらにアメリカ、フランス、ドイツと各国に取り組みが広がっていった。

その後、2013年には世界的な統一基準を設ける目的で、カーボンフットプリントに関する国際規格「ISO/TS 14067」が発行された。
日本では、2008年に政府が「低炭素社会」「CO2の見える化」政策を重点的に取り上げ、その具体策としてカーボンフットプリントが取り上げられ、2009年〜2011年の2年間では、経済産業省などを主導にカーボンフットプリント制度試行事業が実施された。さらに、その事業を継承する形で、2012年4月からは民間主導でカーボンフットプリントコミュニケーションプログラム(現在は「SuMPO環境ラベルプログラム」と名称変更)がスタートしている。

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 カーボンフットプリントが注目を集める背景

これほどまでに、カーボンフットプリントに注目が集まっているのは、やはり気候変動の要因の1つとされる温室効果ガスの排出削減が大きく関係している。

2021年8月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した「第6次評価報告書」では、世界全体で温室効果ガスの排出量が増加すれば、21世紀内に温暖化が1.5℃を超える可能性が高いことを言及している。

日本でも、「ものづくり白書2023」で、重要な取り組みの一つに「サプライチェーン全体のカーボンフットプリントの把握」を挙げており、その重要性は増している。

関連記事:「【2023年ものづくり白書まとめ】製造業を取り巻く環境はどう変化したか

2023年3月には、経済産業省・環境省から「カーボンフットプリントレポート」「カーボンフットプリントガイドライン」が発表されたように、今後は大手企業だけでなくサプライチェーンである卸売事業者、小売事業者への規制・義務化がより進むものと思われる。

 カーボンフットプリントに取り組む企業側のメリット

では、企業側はカーボンフットプリントに取り組むと、どのようなメリットが得られるのだろうか。1つは、カーボンフットプリントの掲示を通して商品やサービスの製造や廃棄によって排出されたCO2を見える化できること。これによって、まずCO2削減に向けた具体的な施策を洗い出せるだけでなく、さらには会社全体の環境問題に対する意識向上を図れるメリットを得られるのだ。
もう1つはカーボンフットプリントの掲示を通して、特に環境意識の高い消費者の購買意欲を高められることだ。近年は、ただ「性能が良い」「価格が安い」だけでは足りず、「環境に優しいかどうか」という観点も商品やサービスの購入の決め手になっている。

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 カーボンフットプリントの課題

一方で、カーボンフットプリントには課題もある。まず、カーボンフットプリントを行うには、サプライチェーンを含むCO2の排出量を算定する必要がある。つまり、相応の作業やコストがかかるということだ。長期的にみれば重要な施策といえるが、やはり短期的な事業戦略を見据えると、どうしても運用コストにおける費用対効果は低く感じてしまう面は否めない。また、カーボンフットプリントはCO2の排出量を「可視化できるだけ」であり、あくまで動機づけに過ぎない。そこから、省エネや脱炭素につながる施策を考えていく必要がある。

さらに言えば、カーボンフットプリントは温室効果ガスの排出量全てを網羅できるわけではない。例えば、加工肉では、原材料の豚や牛などの飼料は対象に含まれるが、大麦、大豆かす、トウモロコシといった飼料の生産までは対象外となっている。

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 カーボンフットプリントの算出方法

カーボンフットプリントの算出するプロセスは非常に複雑だ。専門的知見がないと、下記のプロセスを実行するのは難しい。専門家立会いのうえで、検証・認定を実施することをおすすめしたい。

 CFP-PCRの選定

CFP-PCRの「PCR」とは、プロダクト・カテゴリ・ルールの略で、商品やサービスごとにCO2を計算するルールブックのことだ。有機米、木製容器包装、羽毛掛けふとんなど、詳細なカテゴリ分けがなされている。万が一、自社の商品やサービスに適合するCFP-PCRがない場合は、新たに申請をしなければいけない。

 温室効果ガスの測定・検証

次に、選定したCFP-PCRに従って温室効果ガスの排出源の特定と排出量を測定する。なお、CFP-PCRをもとに算定したカーボンフットプリントは、必ず第三者機関を通して、正確性や妥当性を確認することが求められる。

 カーボンフットプリントの登録・公開

カーボンフットプリントの検証に合格したら、事務局に公開申請書を送付する。受理されたら、契約の締結を行う。ここでようやく、自社の商品やサービスにCFPマークを掲示することが可能となる。

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 カーボンフットプリントの取り組みをしている企業事例

最後に、カーボンフットプリントを事業にうまく取り入れている企業事例を紹介する。ぜひ参考にしていただきたい。

 旭化成

「中期経営計画 2024 〜Be a Trailblazer〜」で、経営戦略の中核テーマの1つとしてグリーントランスフォーメーションを挙げているように、温室効果ガス削減への意識が非常に高い。

2022年には、NTTデータと共同で自動車や電子部品などの材料として使用される樹脂製品を対象に、温室効果ガスの排出量の算定を実施した。結果として、川上から川下までのサプライチェーン全てにおけるカーボンフットプリントの可視化に成功している。

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 コクヨ

コクヨグループは、2008年とカーボンフットプリントの黎明期から、環境配慮が十分でない商品に「エコバツマーク」を表示する取り組みを実施している。2011年には、エコバツマークゼロを達成。現在は、サプライチェーン全体におけるCO2排出量削減に取り組んでおり、2022年では、コクヨグループ全体のCO2排出量は2013年と比較して21.4%の削減を実現している。

 日本ハム

日本ハムでは、2010年からカーボンフットプリントの取り組みを行っている。現在、「森の薫り®」シリーズのハムやベーコンにおいて、CFPマークを掲示している。また、CO2排出削減における施策として、LED照明への切り替え、家畜の排せつ物の燃料利用、重油からLNGやLPGへ燃料転換、太陽光発電設備の設置など、さまざまな取り組みを行っている。

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 まとめ

カーボンフットプリントは、商品やサービスの製造や廃棄によって排出されたCO2を見える化でき、CO2削減に向けた具体的な施策を洗い出すことが可能となる。ただし、先に述べたように、測定・検証のプロセスは複雑で、多くの手間と費用がかかる上、温室効果ガスの排出量全てを捕捉できるわけではない。場合によっては、研究開発や事業成長の足枷になることも考えられる。

目先の短期的な事業戦略と、中長期的な事業戦略のバランスを勘案しながら、進めていくことが肝心といえるだろう。

参考記事:
環境省 地球環境局「IPCC 第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)の概要」
https://www.env.go.jp/content/000126429.pdf