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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?意味やメリットについて簡単に解説

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?意味やメリットについて簡単に解説

脱プラスチック、カーボンニュートラル、GX、ESGなど、ここ数年で環境保全や地球温暖化対策に関するさまざまな用語や指標が登場している。その中でも今回注目するのは、ライフサイクルアセスメント(以降、LCA)だ。LCAとは、製品やサービスの製造・生産から消費、廃棄、リサイクルに至るまでの過程でどれだけ環境負荷がかかっているかを見える化する手法のことだ。

特に、製造業や運輸業にとっては、今後避けては通れない話題といっても過言ではない。本記事では、LCAの概要やメリット、具体的な分析手法について解説する。

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 LCAの意味と歴史をわかりやすく解説

ライフサイクルアセスメントとは、製品やサービスにおける原料調達から、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通しての環境負荷を定量的に評価する手法のことを指す。LCAで評価された結果をもって、製造や生産体制の改善や、原材料や輸送方法の見直し、廃棄・リサイクル方法の見直しなどを行い、環境負荷の低減を目的とする。

LCAの起源は、1969年にコカ・コーラ社がミッドウェスト研究所に委託して実施した、リターナブル瓶とペットボトル容器の飲料容器を対象とした環境影響比較評価にまで遡る。その後、1970年代に入り、アメリカを中心にさまざまな分野で、ライフサイクルインベントリ分析が用いられるようになる。1990年代には、分析プロセスの透明性確保や信頼性向上が求められ、国際標準に基づき体系化された。この当時はライフサイクルアセスメントという呼称は定着しておらず、「エコバランス」と呼ばれていた。

ISO(国際標準化機構)は、1993年に環境管理に関する規格化を開始。1997年にはISO14040が発行され、標準化に至った日本でも、同年に日本工業規格(JIS-Q-14040)として制定されている。その後、1998年に旧通産省がLCA国家プロジェクトを開始し、さまざまな日本の会社が分析手法として用いるようになった。

 LCAが注目されている背景

なぜ、LCAという指標に注目が集まっているのだろうか。それは、環境問題への意識の高まり、国際社会共通の目標であるSDGs(カーボンニュートラルを含む)の実現などによるものが大きい。個人であれば、ゴミの分別や、節電・節水、エコバッグの使用など、明確なアクションを想起しやすい。しかし、こと企業活動となると、活動範囲も多岐にわたる上に、ステークホルダーも多く、仮にCO2の排出量削減という目標を打ち立てても、その効果検証は非常に変数が多く、難しいのが実情である。また、環境保全活動がどの程度、成果につながっているのか不明瞭になってしまうことも少なくないだろう。
LCAでは、製品やサービスの製造・生産から消費、廃棄、リサイクルなどのプロセスに細分化し、個々に環境影響評価を実施することが可能だ。そのため、明確に原因を特定でき、環境負荷低減のために有効な取り組みを実施できるようになる。

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 LCAを実施するメリット

LCAを実施することで、企業活動にどのようなメリットをもたらすのだろうか。まず1つは、先にも述べたように、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出源を特定し、それに対する有効な施策を打てることだ

2022年には、プラスチック製品の設計から廃棄物処理に関わるメーカーや製造元に、プラスチックの使用量削減や代替素材の活用などを求める内容となっている「プラスチック資源循環促進法」が施行された罰則規定はなく、あくまで努力義務ではあるものの、今後ますます特に環境面における事業者が果たすべき社会的責任は広がっていくものと思われる。
もう1つが、ライフサイクルアセスメントによって算定した結果を、カーボンフットプリント(以下、CFP。詳細は次の章で解説)や環境フットプリントとして製品やサービスに表示し、消費者へ環境配慮のアピールができることだ。どれだけ地球温暖化の低減に貢献したかを数値で見える化することで、製品やサービスのブランド価値そのものが高まり、資金調達や業績の向上などにつなげることができるのだ。

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 LCAと混同されやすい用語

LCAには、隣接する概念や指標がいくつかあるため混同しがちだ。ここでは、CFPとScope3との違いについて解説する。

 LCAとCFPの違い

どちらも環境負荷を評価する手法だが、少し意味合いが異なるため注意が必要だ。

CFPは、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算し、商品やサービスにわかりやすく表示する仕組みを言う。それに対し、ライフサイクルアセスメントは温室効果ガスの排出量のみならず、資源枯渇や酸性化も対象範囲に含まれる。

 LCAとScope3の違い

Scope3とは、温室効果ガスの排出量を示す指標である。ライフサイクルアセスメントはISO14040〜ISO14044などを根拠としているのに対し、Scope3はGHG SCOPE standardを根拠規格としている。また、ライフサイクルアセスメントは、「ゆりかごから墓場まで」と表現されるように、製品やサービスの原料調達から、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を評価対象にしているが、Scope3は自社を除いたサプライヤーからの温室効果ガスの排出量を評価対象としている点で違いがある

 LCAの分析手法

ライフサイクルアセスメントの分析・実施は、国際規格の枠組みに基づいて行う。以下にその手順を解説する。

 目的と調査範囲の設定

何のためにLCAを実施するのか、そしてどこまで調査範囲とするかを設定する。実はこの最初のステップが最も重要である。なぜなら、見当違いな目的を定めてしまうと、意図するアウトプットを得られないからだ。ここでは、具体的に下記のような項目を決めておくと良いだろう。

・調査の目的
・調査の対象製品やサービス
・評価する環境問題
・評価結果の用途

 インベントリ分析

設定した調査範囲における各プロセスで、素材や部品、エネルギー、生物系資源(非生物系資源)などのインプットデータと、固形廃棄物、再生資源、大気排出物、水質汚濁物質などのアウトプットデータを収集し、検証分析を行う。これにより、定量的にどのプロセスでどれだけ資源が消費され、どのくらい環境負荷に影響を及ぼしているかを見える化できる。

 影響評価(インパクトアセスメント)

影響評価とは、インベントリ分析の結果をもとに、枯渇資源の消費や地球温暖化などの環境問題に対して、どれほどの影響を及ぼしているのかを、定量的に評価するプロセスだ。このプロセスについては、確立されたフレームワークや方法論がまだ存在しない。恣意的な要素が入る恐れもあるため、専門家も交え、透明性を保ちながら評価することが肝要だろう。

また、環境省は「再生可能エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン」を策定している。LCAの観点から自らの事業を評価する際には、こちらをぜひ参考にして欲しい。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/lca/index.html

 結果の解釈

以上の3ステップで得た結果をもとに、今後の改善策について結論をまとめる。影響評価と同じく、結果の解釈も専門的な知見がなければ、誤った解釈になる恐れもある。専門家を交えながら、客観的に検証をしてもらうことが大切だ。

 LCAの問題点・課題

LCAは、自社の事業活動における環境負荷を定量的に算定する有用な手法だが、原料調達から、廃棄・リサイクルに至るまでの調査・分析に相応のコストがかかることが課題となる。また、主力製品の製造過程において、温室効果ガスの排出源が発見された場合、それをどのタイミングでどこまで解決すべきか、事業戦略や会社の利益と天秤にかけて判断する必要も出てくるだろう。また、LCAは工場などの設備は測定範囲外となる。必ずしも万能な分析手法ではないため、注意が必要だ。

 LCAの事例

最後に、LCAを実践する企業の事例について紹介する。

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 日立製作所

日立は、多くの企業に先駆けて2003年からSI-LCA(System Integration-Life Cycle Assessment)とよばれる独自の手法を開発している。日立が開発したこの手法は、製造業や運輸業のみならず、介護施設や宿泊業などさまざまな業界に活用されている。

 トヨタ自動車

トヨタは、1997年以降から、すべての乗用車とその部品に対してLCAを実施し、注力している企業の1つだ。製品のライフサイクル全体でのCO2排出量を削減するための技術開発や、バリューチェーンを連携させた取り組みを継続的に行っている。

 キヤノン

キヤノンでは、自社工場だけでなく、ライフサイクル全体を通して国際規格に準拠したLCAの実施とLCA評価の見える化に取り組んでいる。グループ全体で取り組めるよう、一貫体制で管理できる「LCA開発マネジメントシステム」を構築し、開発・設計段階からCO2排出量の算定を行っている。

 終わりに

地球環境問題は、20数年前から欧米を中心に世界的に議論されてきた話題だ。そして、それは「京都議定書」「パリ協定」と、枠組みをアップデートし、脈々と現在まで受け継がれている。

2021年には、欧州委員会が2030年の温室効果ガス削減目標を、1990年比で少なくとも55%削減するための包括法案を提出したことを発表した。これにより、CO2排出と切っても切り離せない製造業や運輸業にとっては、ますます脱炭素やカーボンニュートラル化への規制が強まることは間違いないだろう。

ライフサイクルアセスメントは、複雑かつ難解な分析手法で後回しになりがちだが、早くから着手しなければ、資金調達や競争力という面で、今後不利に働く可能性は否めないだろう。

ただし、コストのかかる分析手法でもあり、かつ現在の事業成長を停滞させるリスクもある。事業成長や研究開発とのバランスを鑑みながら、導入していくことが必要不可欠だ。

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