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ケミカルリサイクルの意味は?メリットや問題点、事例を具体的に解説

リサイクル

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックをリサイクルするための有効な方法だ。リサイクル後の再生材が飲料や食品の容器包装に用いることができるといった特徴もあり、有用性の高さからも注目度が高い。
今回はケミカルリサイクルについて詳しく解説する。

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 ケミカルリサイクルとは?

日本においてプラスチックのリサイクルは、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルの3種類に分けられる。そのうち、日本国内でのケミカルリサイクルの割合は3〜4%※1であるが、そのほかのリサイクル方法と比較して、その品質やリサイクル工程で発生するCO2排出量の少なさなど優位な点があるため、今後ケミカルリサイクルの割合が増えていくことが予測されている。

 ケミカルリサイクルの意味

ケミカルリサイクルは別名「化学的再生法」といい、廃プラスチックに対して化学的な処理を施すことで、プラスチックの原料、または中間原料に転換して、新たなプラ樹脂へ生まれ変わらせて再利用する。

具体的な手法にはいくつかの種類がある。たとえば、廃プラスチックを再度素材に戻してプラスチック製品として再利用する「原料・モノマー化」、石油などの燃料に戻す「油化」、水素や二酸化炭素などの気体に変換する「ガス化」、化学工業原料とする「コークス炉化学原料化」などがある。また、畜産の糞尿を微生物によって分解してメタンガスを発生させる「バイオガス化」もケミカルリサイクルの一手法だ。このように廃棄物を化学の力を使って再利用できる形にすることがケミカルリサイクルである。

 ケミカルリサイクルの例

日本は世界的に見てもケミカルリサイクルを先駆けて商業化した国であり、廃プラスチックの再利用化に長けているといえる。その取り組みのひとつとして、ペットボトルの

リサイクルがある。ペットボトルは15年以上前からリサイクルの取り組みがされていたが、微細な異物が残ってしまうため使用済みのペットボトルから新しいペットボトルへのリサイクルは困難であった。しかし、廃棄物を科学的に分解して原料物質に戻し、精製するケミカルリサイクルの技術を活用することで、原油から作るペットボトルと同等の品質のリサイクル製品が作れるようになった。

ケミカルリサイクルによるペットボトルの再生は、原料から作る場合よりも使用するエネルギーとCO2排出量が大幅に削減できるメリットがある。

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 マテリアルリサイクルとは

マテリアルリサイクルは、廃棄物を粉砕するなどして、廃材を原材料として再利用する方法である。廃プラスチックの場合はフレークやペレットといった状態にしてから溶かし、再形成を行うことで再利用が可能だ。樹脂材料としての品質劣化を防ぐために異物や汚染を除去する必要があるが、ケミカルリサイクルに比べ完全な除去は難しく、衛生面や匂いなどの問題から飲料用のペットボトルなどには使われないことがほとんどである。

しかし、2011年からは、高洗浄によってフレークから不純物を除去して再利用するメカニカルリサイクルの手法によるボトルtoボトル事業が行われており、飲料用ペットボトルへの再利用も始まっている。廃プラスチックといった廃棄物を原料として繰り返し利用できるメリットを活かし、今後も資源を循環させる重要なリサイクル手法のひとつであることは間違いないだろう。

 サーマルリサイクルとは

サーマルリサイクルは日本においてはリサイクルの一種として分類されているが、EUの規定ではリサイクルに分類されず、エネルギーリカバリーと呼ばれている。サーマルリサイクルでは、回収した廃棄物をゴミ焼却炉で燃やして、発生した熱エネルギーを回収して利用する。回収された熱エネルギーは温水プールや火力発電などに用いられており、日本ではサーマルリサイクルがリサイクル率のうち60%を占めるほどだ。廃棄物を燃料として再利用でき、石油資源といった有限の資源を守れる点はメリットだが、焼却で有毒ガスであるダイオキシンやそのほかの有害物質の発生といった課題も存在する。

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 ケミカルリサイクルが注目される理由

ケミカルリサイクルは、日本国内では2000年代から商業化が進んでいたが、近年になって欧州でも取り組みが始まるなど、国際的な関心が高まっている。その理由には、「廃プラスチック問題」「マテリアルリサイクルの限界」といったものが挙げられる。

 廃プラスチック問題

欧州では廃プラスチックの処理として埋め立て処理が多い。また、米国でもリサイクル比率は2016年で10%程度であり、残りの廃プラスチックは埋立か焼却で処理が行われている。埋め立て処理だとプラスチックが微生物に分解されず残り続けるという問題や、SDGsへの関心の高まりという背景から、欧州でも廃プラスチックの処理方法としてケミカルリサイクルが注目されるようになったのだ。主として燃料や化学材料に変換する熱分解法やガス化法の開発が進められており、現在大型プラントも建設中であるなど、今後欧州において大きな進展があることは間違いないだろう。

 マテリアルリサイクルの限界

循環型社会への要請からマテリアルリサイクルの開発が進められてきたが、技術の進展とともにマテリアルリサイクルの限界が顕在化したことも、ケミカルリサイクルが注目される理由のひとつとして挙げられる。先にも述べたとおり、マテリアルリサイクルには汚染が酷い廃プラスチックはマテリアルリサイクルが難しく、また、衛生面や匂いなどの理由で食品や飲料用のプラスチックへは使用できない場合があるといった制限がある。また、飲料メーカーが自主的に設定した再生材含有率は高く、この目標を達成するためには、マテリアルリサイクルだけでは数量的に難しい。これらの課題を解決するために、ケミカルリサイクルへの期待が高まっているのだ。

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 ケミカルリサイクルのメリット

ケミカルリサイクルの手法のメリットについて、前段でも触れてきたが改めてまとめたい。

 異物が含まれていてもリサイクルできる

ケミカルリサイクルの大きなメリットとして、リサイクルする廃プラスチックなどの廃棄物に異物が含まれていたり汚染があったりしても、リサイクルできる点が挙げられる。ケミカルリサイクルでは高熱での熱分解、もしくは化学的な分解を行うため、異なる種類のプラスチックが混在しているいわゆる混在廃プラであってもリサイクルが可能だ。

 CO2排出量を減らすことが可能

財団法人日本容器包装リサイクル協会が行ったプラスチック製容器包装再商品化手法に関する報告書※2によれば、ケミカルリサイクルは二酸化炭素削減の効果という観点で見れば、マテリアルリサイクルよりも総合的に優れている場合が多いとされており、環境配慮の点からもケミカルリサイクルはメリットがあるといえる。ケミカルリサイクルの手法の違いによって、効果の度合いにばらつきはあるが、削減効果が確認されている。ケミカルリサイクルの手法を選択することで、焼却処理やマテリアルリサイクルなどと比較して、地球温暖化や大気汚染といった解決すべき環境問題に対して効果的な手が打てるだろう。

 天然資源を有効利用できる

ケミカルリサイクルでは、廃プラスチックといった廃材を水素やメタノール、アンモニア、酢酸といった化学工業に利用することができる素材へ変換することが可能であり、これまでに使われていた天然資源を節約することができる点も大きなメリットだ。そのほか、具体的な活用方法として、製鉄所で使用する還元剤や可燃性ガス、油などの用途がある。有限である天然資源や原材料を節約することで、資源の有効活用が図れるのだ。

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 ケミカルリサイクルの課題や問題点

ケミカルリサイクルは地球環境やこれまでのリサイクル手法に対してメリットや補完点の多いリサイクル手法であるが、課題や問題点もある。

 コストの問題

ケミカルリサイクルの第一の問題にはコストが挙げられる。ケミカルリサイクルでは廃プラスチック分子に分解する工程があり、大規模な設備投資が必要だ。また、廃プラスチックを転換する材料によってケミカルリサイクルの手法は異なるが、特に油化の手法では設備投資額が大きくなりやすい。

さらに、廃プラスチックといったリサイクル素材をリサイクル設備まで運ぶための輸送コストも問題だ。ケミカルリサイクルを行う施設は大掛かりな設備であり、リサイクルされた素材などを利用する製鉄所などと隣接して局地的に建設されることがほとんどだ。そのため、廃プラスチックなどの廃棄物が多く出る都市からは離れた場所にある場合が多い。

コストが高くなるほどリサイクルを継続させることは難しくなる。問題改善のためには新品と再生品のコストの差をカバーするような技術の開発といった工夫が必要だといえるだろう。

 プラスチック添加物の処理技術の問題

プラスチックには、燃えにくくする難燃剤や、紫外線による劣化を防ぐ化学物質などが添加されている。プラスチックの耐久性や物性などの特性を向上させるためにはこれらの添加剤が欠かせないのだが、難燃剤が添加されたプラスチックを焼却した場合、ダイオキシンなどの有害ガスが発生してしまうため、適切な処理が求められる。このことから、一定以上の処理技術や設備が必要であり、プラスチック添加物の処理は環境に対する配慮だけでなくコストの問題にも関わってくる。

また、プラスチックに添加された化学物質は、モノマーに硬く結合するために、リサイクル処理後も残存してしまう。このためマテリアルリサイクルには限界があり、材料の特性を失った粗悪材料を再生産することになってしまう恐れがある。そしてケミカルリサイクルにおいても、特性を保った上でリサイクルするという点は技術的に高度、かつ多くのエネルギーを消費する必要があり、収率を低下させる一因となるのだ※3

 廃プラスチックの安定的な確保

そのほかのリサイクル法においても課題となっているが、廃プラスチックの継続的かつ安定的な量の確保が必要な点も大きい。廃プラスチックの回収には、排出点に近い企業や自治体などと協働することが必要不可欠だ。かつては中国といった海外への廃プラスチック輸出で、国内でリサイクル原料となるプラスチックの十分な量の確保が危ぶまれたが、現在は中国の廃棄物輸入規制、プラスチック資源循環法などによって回収スキームの強化がなされている。しかし、回収される廃ペットボトルなどではゴミの混在や汚染の度合いなど、再利用が難しい場合もあり、やはり良質な廃ペットボトルの安定的確保は難しいといえるだろう。状況を克服するためには、効率的な回収及び高度な分別技術、もしくは汚染除去技術が必要になる。

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 ケミカルリサイクルの具体例

実際に行われているケミカルリサイクルの具体例について紹介する。

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 原料・モノマー化

ケミカルリサイクルの代表格といえる原料・モノマー化では、ボトルtoボトル事業が一例として挙げられるだろう。原料・モノマー化は、廃棄されたペットボトルなどのプラスチック製品について、化学的に分解して化学原料やプラスチックを構成するモノマーの段階に戻し、プラスチック製品を再生産する技術である。ボトルtoボトル事業は、株式会社セブン&アイホールディングス※4、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社※5などの複数の企業が取り組みを行っている。

 ガス化

ガス化を行うケミカルリサイクルでは、酸素の供給量を制限して加熱することによって、化学工業の原料として使うことのできる炭素や水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタノール、アンモニアといった素材への分解が行われる。回収された二酸化炭素は炭酸飲料やドライアイスなどの日常に近い素材へ再利用がなされている。中でも日揮グループは長期商業運転実績があり、化学品や化学製品に利用可能な合成ガスへと転換して再利用が図られている※6。この実例では、異物や汚染のあるプラスチックでもバージン品と同等の化学原料にリサイクルされており、ケミカルリサイクルの好例といえるだろう。

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 飼料化

廃棄物を飼料化する取り組みも化学反応を利用していることからケミカルリサイクルに分類することもできる。サスティナブル事業に取り組む株式会社ダスキン(ミスタードーナッツ)※7では飼料化を活用しており、閉店後に売れ残ったドーナツを処理工場へ移送し、成分調整、搾油などを施した後に原料化する取り組みが進められている。原料化後、菓子粉と呼ばれる乾燥飼料に加工して、家畜の餌として再利用がなされている。そのほか、ドーナツを揚げて古くなった油も飼料用原材料や工業用脂肪酸に利用しているのだ。オイルについては、工業用原料などの再資源化のほか、飼料転用、ボイラー燃料としての利用がなされている。

 油化

ケミカルリサイクルにおける油化は、プラスチックを熱分解し、炭化水素油を得る技術である。油化はケミカルリサイクルにおいてもリサイクル効率が高い手法といえる。同時に、製油所や石油化学プラントといった既存の化学工業の設備を有効活用することで初期設備費用の抑えられる手法ともいえるだろう。炭化水素油はボイラー用燃料などに使用される素材であり、現在の技術であっても1㎏あたりのプラスチックから1ℓの軽油を製造することが可能だ。株式会社松屋フーズでは、店舗で発生した廃プラスチックを自社で回収し、油化する取り組みを行っている※8

 バイオガス化

バイオガス化のケミカルリサイクルは、畜産で排出された糞尿や食品廃棄物といった廃材を微生物によって発酵させ、ガスを発生させることで行う手法である。発生したバイオガスにはメタンという燃えやすい気体が含有され、このメタンが発電などの用途で用いられている。通常のケミカルリサイクルにおけるガス化と異なり、元となる素材が廃プラスチックなどではなく、畜産で排出される糞尿などである点に特徴があるといえるだろう。

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 まとめ

ケミカルリサイクルは今後の環境保全を考える上でも有効な手法のひとつである。しかし、設備投資といったコストの問題など、全世界的に浸透するにはもう少し時間がかかるだろう。ケミカルリサイクル先進国の日本として、どのように発展していくべきか、メリットや課題を理解した上で考えていくことが必要不可欠だ。

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参考記事
※1)カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/plastics_01.html
※2)プラスチック製容器包装に関するLCAについて
https://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y0315-13/mat05.pdf
※3)プラスチックを化学的にリサイクルするための、より持続可能な方法を開発――収率約96%で材料特性も保持
https://engineer.fabcross.jp/archeive/210310_recycling-of-plastics.html
※4)お客様が店頭に持参されたペットボトルを100%使用した世界初の「完全循環型ペットボトル」(ボトルtoボトル)を実現
https://www.7andi.com/company/challenge/11828/1.html
※5)コカ・コーラシステム、「ボトルtoボトル」を加速 2021年のサスティナブル素材使用率が40%に
https://www.ccbji.co.jp/news/detail.php?id=1241
※6)廃プラスチックガス化ケミカルリサイクル
https://www.jgc.com/jp/business/resource-recycling/gasfication/
※7)環境への取り組み 食品ロス削減
https://www.misterdonut.jp/torikumi/sdgs/kankyo_01.html
※8)外食産業における 食品リサイクルマニュアル
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_8-28.pdf