2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
カーボンニュートラルは世界各国に注目される取り組みであり、さまざまな産業に影響を及ぼすものである。それは製造業も例外ではない。この記事では、カーボンニュートラルの基礎知識や製造業における重要性などについて解説していく。製造業でできる取り組み方法も紹介するため、ぜひカーボンニュートラルへの足がかりとしていただきたい。
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目次
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることだ。温室効果ガスの代表的なものは二酸化炭素で、おもに石炭や石油などの化石燃料を燃焼させると発生する。実質ゼロとは、温室効果ガスの排出量を完全になくすことが難しいことから、排出される量から吸収される量を差し引いて、できる限りゼロを目指すという意味だ。カーボンニュートラル達成のためには、排出量の削減と合わせて、植林や森林管理などの吸収量の強化にも取り組む必要があり、この目標達成のためにさまざまな国や企業で取り組みが行われている。
人の活動から排出された温室効果ガスは、地球の温室効果を高め気候変動を起こしている。その影響は自然災害だけでなく、農林水産業や水資源、生態系、健康、経済活動などの広範囲に及ぶとされ、カーボンニュートラルの実現は、国や企業だけの問題ではなく、誰もが主体的に取り組む必要がある課題と言える。
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今後人類が安全に暮らしていくためには、気候の上昇を1.5℃程度に抑える必要があるとされる。そのために2050年までにカーボンニュートラルを実現するということが国際目標として認識されるようになった。日本も、2020年10月に当時の菅首相が、2050年に脱炭素社会の実現を目指す「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を宣言した。
2021年6月、経済産業省は関係省庁と連携して、研究開発方針や経営方針の転換といった企業の動きの流れを加速させるため「グリーン成長戦略」を更に具体化させた。「2050年のカーボンニュートラル実現」という高い目標を達成するには、抜本的な産業構造の改革が必要だ。その実現に向けて企業の取り組みを促すため、国が具体的な見通しや目標を示し、イノベーションを起こそうとする企業の挑戦を後押しする資金供給や税制支援を含めたさまざまな政策を盛り込んでいる。
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カーボンニュートラルへの取り組みは、製造業においても重要なことである。その理由は、日本におけるCO2排出量の中でも製造業が占める割合が高いためだ。事実、環境省による「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」では、年々減少してはいるものの、他の部門と比べて産業部門のCO2排出量が多いという結果が出ている。そのことからわかるように、製造業におけるカーボンニュートラルの取り組みは重要かつ急務であるといえよう。
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脱炭素化が国際的に注目される取り組みとなることで、その市場は今後ますます拡大することが予測される。また、この分野への企業の積極的な投資が経済成長につながると見込まれている。そうした中、環境を意識した持続可能なビジネスに取り組むことで、環境意識の高い消費者だけではなく、投資家へのアピールにもなり資金調達の面でも優位に働く可能性がある。また、脱炭素化のためには、省エネや創エネに関する技術革新が重要となり、新しい技術や製品を生み出すことができれば、その技術力によってビジネスチャンスとなる可能性もある。
カーボンニュートラルの取り組みは、これまでコスト面が難点となる傾向にあったが、世界全体で脱炭素化へ動く中、消費者の意識が変わることで、ブランドイメージの向上などのメリットも得られるようになる。さらに、社会貢献や新たなビジネススキームにつながり、結果として企業の競争力や体力を高めることになる重要な役割を持つ取り組みとなりつつある。
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製造業でのカーボンニュートラルに対する具体的な取り組みとして、以下の4つのやり方がある。
・省エネルギー化
・再生可能エネルギーの利用
・利用エネルギーの転換
・スマートファクトリーの実施
それぞれどのようなものなのか1つずつ紹介する。これから取り組むのであれば、ぜひ参考にしていただきたい。
1つ目は、省エネルギー化だ。温室効果ガスを削減するためには、可能な限りエネルギーの消費量を減らす省エネルギーを進める必要がある。蛍光灯からLEDへの変更や空調の調整などエネルギーの無駄を洗い出し、エネルギー効率の改善を目指す。省エネ化の有効な方法の1つとして、どこにどれだけのエネルギーが使われているのか、どこに余剰や無駄があるのかなどの「エネルギーの見える化」を行い、実施すべき対策の絞り込みを行うことがおすすめだ。
省エネの事例として先進的な取り組みを行っているのがトヨタ自動車株式会社だ。徹底的な省エネの取り組みとして革新技術の開発と日常の改善により、2001年と比べ2020年は、新工場において約半分のエネルギー量の削減を達成している。
2つ目は、低炭素化として再生可能エネルギーへ切り替えることだ。再エネとは、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどのことで、これらは発電時に温室効果ガスを発生させない特徴がある。
また、化石燃料などの資源に乏しい日本は、これらを得るには輸入に頼らざるを得ない。そのため、社会情勢や為替相場の影響を受け供給が不安定になる可能性もある。一方、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーは国内で生産できるため、エネルギー自給率の向上にもつながる。
再エネの取り組みの1つとして、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを目標にする企業が加入する「RE100」という国際的なイニシアチブがある。2021年12月時点で、グローバルでは300社を超える加入となっており、日本は米国に次ぐ世界2位の63社が加入している。
参照:環境省「RE100概要資料」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_gaiyou_20220111.pdf
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3つ目は、利用エネルギーの転換だ。特に自動車産業のガソリン車から電気自動車への転換は注目度の高い取り組みの1つである。
そもそも世界各国で脱ガソリン車への動きが加速しており、日本では2035年までに新車販売で電動車100%を実現することを表明した。しかし、脱炭素対策としてすべてを電気自動車とする方法は慎重になるべきである。実際に「電動車」という言葉にはハイブリッド車も含まれることや、必ずしも脱炭素で高い効果を得られるとは限らないとされており、トヨタ自動車株式会社の豊田章男社長も、脱炭素の手段として電気自動車以外の選択肢も用意したほうが良いと発言している。
つまり、自動車メーカーのみならず製造業全体として、製造工程におけるCO2の排出の削減が急務となる。製造工程では高熱の熱が必要とされることや、工業炉やボイラーなどの大型の燃焼機器があることにより、化石燃料を源とした多くのエネルギーが消費されている。そのため熱源の脱炭素脱炭素化は容易ではないが、ヒートポンプや電気加熱、水素エネルギーへの転換など新しい技術に期待が寄せられている。
4つ目は、スマートファクトリーの実施だ。スマートファクトリーとは、IoTやAIなどの先端技術を活用し、工場内にあるさまざまな機器や設備をネットでつないで稼働状況を管理する工場のこと。スマートファクトリーにすることで、これまでの生産性を改善できるだけではなく、省エネやCO2排出の削減につなげられる。
その上、スマートファクトリーでは人的な作業ミスを減らせる魅力もある。人が起こす作業ミスや、規格外品の製造、産業廃棄物などを減らすことで、結果としてCO2の排出削減にもつながるのだ。
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カーボンニュートラルへの取り組みは重要なものであり、ブランドイメージの向上、資金調達における優位性など取り組むことによるメリットもさまざまだ。実際に多くの企業で全社方針に脱炭素化を組み込む意欲を見せているが、一般社団法人日本能率協会による「生産部門におけるカーボンニュートラル対応に関するアンケート調査」にて、いくつかの課題が明らかなものとなった。
その1つに「見える化」で取得したデータを十分に活用できていないことがある。アンケートでは、「工場・事業所単位の見える化」に対して約50%が実施、実施検討まで含めると70%以上という良い結果が出ている。一方、取得したデータの活用は低調で、「取得データをもとに現場の省エネ活動への展開」という項目で「実施している」と回答した割合が、全体の13%しかなかった。収集したデータを今後どのように活用するかが課題となる。
またデータ活用の課題と並ぶ重要なポイントとして、「動向を迅速に捉えること」と「全社一丸となった取り組み」について以下に解説する。
カーボンニュートラルの取り組みとして、Appleなどのグローバル大企業がサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現を目指しており、今後は日本の企業もこうした動きの対応に迫られるだろう。多くのグローバル企業は達成期限を2030年に置いており、これらに対応できなければ時流に乗れていないという印象は否めない。
この大きな社会環境の変化に適応しビジネスチャンスを掴むためには、網羅的な情報収集が何よりも重要なカギとなる。情報のアンテナを広く張り、社会情勢だけではなくさまざまな企業の動向に目を向けることが必要だ。複雑で先行き不透明な現代において、自業界に囚われない広い視野は、情勢を多角的に捉え自社の進むべき道の指針となるのだ。
社会環境の変化をも迅速に捉え製品の開発へと繋げなければならない研究開発部門。
より事業貢献を求められるミッションへの変化とともに、養わなければならないビジネス視点と、情報活用術についてはこちらの記事をご参考にしていただきたい。
カーボンニュートラルは、利用エネルギーの転換などの大きな取り組みから、省エネなどの個人でも行える小さな取り組みに至るまで、取り組みの規模はさまざまだ。しかし、取り組みの大小にかかわらず、高い目標である脱炭素化を実現するためには全社総出で行うことが必須である。そのためには、トップがカーボンニュートラルへの決意を示し主導するだけではなく、役職や部門を超え連携する体制の確立が求められる。
縦横に囚われない連携の体制を作るためには、さまざまな人が情報を持ち寄り、それらについて意見を交わし議論できる場が必要だ。取り組みの進捗や新しいアイデア、得られた情報を共有することで、お互いに影響を与え、カーボンニュートラルの取り組みを主体的に行うことができるのだ。簡単には達成できない目標だからこそ、社員一人ひとりの目線を合わせ、目標達成を目指すべきである。
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カーボンニュートラルは、今や国や企業で取り組むべき国際的な目標である。特にCO2排出量が多い製造業の取り組みの動向に注目が集まっている。世界各国やグローバル企業の取り組みはサプライチェーン全体に影響を及ぼし始め、今後の競争優位性に大きくかかわることだろう。社会情勢に対する各国の対応や企業の動向など幅広い情報を積極的に収集し、個人やチーム、部門、会社として何ができるか、何を行っていくべきなのかを考えることが、カーボンニュートラル実現への第一歩となるのだ。