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リチウムイオン電池の技術を牽引するメーカーや企業|市場規模や世界シェアについて

リチウムイオン電池の技術を牽引するメーカーや企業|市場規模や世界シェアについて

我々の生活を陰から支えるリチウムイオン電池。今やスマートフォンやパソコンだけでなく、電気自動車(EV)、産業用ロボットなど幅広い分野で重宝されている。

本記事では、リチウムイオン電池の市場規模や、リチウムイオン電池を開発するメーカーや企業について解説する。

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 リチウムイオン電池とは?

リチウムイオン電池とは、正極と負極の間をリチウムイオンが移動し、充放電をする電池のことを指す。LIBとも略される。従来の一次電池と大きく異なるのは、充電をすれば繰り返し利用可能な点だ。鉛蓄電池やニッケル水素電池、NAS電池などとともに「二次電池」と総称される。

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 リチウムイオン電池の用途・使い道

リチウムイオン電池は、我々が日々使用する生活必需品の多くに用いられている。もっともわかりやすい例がスマートフォンやパソコンだろう。また、リチウムイオン電池は繰り返し充電ができるだけでなく、大容量の電力を蓄えることが可能であるため、産業ロボットや発電施設、EVなど、幅広い分野で普及が進んでいる。

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 リチウムイオン電池の歴史

リチウムイオン電池の研究開発が始まったのは1958年。実に60年以上も前になる。アメリカのハリス博士が、リチウム塩を溶解させた有機溶媒からリチウムの電析に成功し学位論文を発表。この論文が注目を集め、アメリカではリチウムイオン電池の実用化に向けた研究開発が盛んとなった。

そこから、20年近くの時を経て1975年にアメリカの化学者であるマイケル・スタンリー・ウィッティンガム氏が正極に二硫化チタン、負極にリチウムを用いたリチウムイオン電池を発明。層状の化合物にイオンが出入りするという電気化学的インターカレーションという現象を発見した。ちょうどこの頃は石油ショックの真っ只中で、石油に依存しないエネルギーの開発が積極的に行われていた。

1980年にはアメリカの物理学者であるジョン・グッドイナフ氏と水島 公一氏が、コバルト酸リチウムを正極材に活用できることを発見した。しかし、ここでも商用化には至らなかった。

 ソニーが、世界初のリチウムイオン電池の量産化に成功

その後、1985年に旭化成の吉野彰氏が、正極にコバルト酸リチウム、負極にカーボン材料を使用し、世界で初めてリチウムイオン電池の基本構造を完成させる偉業を成し遂げた。

基本構造が完成したことで、リチウムイオン電池の商用化への動きは加速することとなる。1991年にはソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化し、リチウムイオン電池の開発、製造、販売を目的とした旭化成と東芝の合弁会社「エイ・ティーバッテリー」が1992年に商用化した。

2019年には、リチウムイオン電池の技術進歩に大きく貢献した吉野彰氏、ジョン・グッドイナフ氏、マイケル・スタンリー・ウィッティンガム氏の3名にノーベル化学賞が与えられた。

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 リチウムイオン電池の市場規模・動向・世界シェア

2024年にIMARC Groupが調査したところによれば、世界のリチウムイオン電池市場は2023年に510億米ドルに到達。また、2024年から2032年にかけての年平均成長率は11.5%となり、2032年には1,396億米ドルに達する見込みと発表している。

また、富士経済によればリチウムイオン電池材料の市場規模は、2024年には10兆円、2025年には12兆2,312億円になると調査で明らかにした。

 リチウムイオン電池の世界シェア首位は中国

なお、リチウムイオン電池の国別シェアは、2023年8月時点で中国が約50%、韓国が約20%、日本が約10%と、アジア諸国だけで90%以上を占めている。

1991年に、世界で初めてリチウムイオン電池の量産化に成功した日本(ソニー)は、車載用リチウムイオン電池の世界シェアで40.2%と首位だった。​​しかし、2015年には中国と韓国に抜かれ、2020年には21.1%まで減少している。リチウムイオン電池のパイオニアであったソニーは、2017年に電池事業を村田製作所に売却し、完全に撤退した。

 車載用リチウムイオン電池の需要が大きく伸長

近年は脱炭素など環境負荷の低減を背景としてEVの普及が進んでおり、車載用リチウムイオン電池の需要が伸びている。

矢野経済研究所が2023年11月に出した調査結果によると、2023年の車載用リチウムイオン電池の世界市場規模は容量ベースで775GWh(ギガワットアワー)の見込みとしている(前年比124.5%)。タイプ別にみると、ハイブリッド車(HEV)が6.7GWh、プラグインハイブリッド車(PHEV)が57.5GWh、EVが710GWhと推計。2035年には全体で2,231GWhになるとの予測だ。

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 リチウムイオン電池を開発するメーカー・企業

最後に、リチウムイオン電池を開発するメーカーを紹介したい。近年は、特にEV用の車載電池の需要が高まっており、各社ともに開発・量産化を急ピッチで進めている。

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 1.CATL

CATLはリチウムイオン電池の世界シェアでトップの会社だ。元々は香港のアンプレックステクノロジー(ATL)の車載部門だったが、2011年にスピンアウト。そのわずか6年後の2017年にはパナソニックを抜いてEV用車載電池の出荷量で世界トップに躍進した。

また、2023年8月には急速充電が可能なリン酸鉄系リチウムイオン電池「神行超充電池」を発表。10分の充電時間で400kmを走行できるとしている。

2023年末に中国国内で量産をスタートさせ、2024年1〜3月期には「神行超充電池」を搭載したEVを発売する予定だ。

 2.パナソニックホールディングス

2010年代ごろまでは、三洋電機の技術を活かして車載用バッテリー市場で世界首位だった。2015年にCATLやLGエナジーソリューション、BYDなどを筆頭とする中国や韓国企業にシェアを奪われてしまったものの、車載事業ではこれまでにEV用の円筒形リチウムイオン電池を累計100億セル以上、EV換算で約170万台分供給しており、北米シェアでは首位と未だに存在感は大きい。

パナソニックはグローバルでの巻き返しを目指すべく、マツダと車載用バッテリー供給に関する中長期的パートナーシップに向けた協議開始を発表。また、トヨタと合弁で2019年にプライム プラネット エナジー&ソリューションズを設立し、車載用の角形リチウムイオン電池を生産している。

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 3.TDK

1935年に東京で設立された老舗電子部品メーカーだ。2005年に香港にあるリチウムイオン電池メーカー、ATL(Amperex Technology Ltd.)を買収したことで、スマートフォン向け小型リチウムイオン電池で世界シェアトップに君臨している。2021年4月には、ATLがCATLと双方の特許権を相互利用するクロスライセンスや合弁会社の設立などの業務提携を発表。2022年4月には、車載用のリチウムイオン電池のセル開発を行う合弁会社「Xiamen Ampcore Technology Limited」を設立している。

 4.トヨタ

トヨタは豊田自動織機と共同で、バイポーラ型リン酸鉄リチウムイオン電池の開発を進めている。従来のリチウムイオン電池では、正極や負極はそれぞれ独立しているが、バイポーラ型では正極と負極を併せ持った構造になっており、小型化を実現しながらも出力を高めることが可能となる。現在、貞宝工場で実用化に向けた製品開発や量産工法の開発に取り組んでおり、実用化の目処は2026〜2027年ごろとされる。

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 5.BYD

BYDはCATLに次ぐリチウムイオン電池のメーカー。1995年2月に中国・深センに設立された会社で、急速にシェアを伸ばして近年トップ5にランクインしている。特に注目されているのが新設計の「ブレードバッテリー」だ。リン酸鉄リチウムイオン電池を採用しているが、リン酸鉄系の課題であるエネルギー密度の低さを克服した。2022年には、アメリカのテスラへ車載電池を供給することが発表されている。

 6.村田製作所

2017年にソニーから電池事業を引き継ぎ、電動工具向けのリチウムイオン電池や、スマートフォン向けリチウムイオン電池の開発を行っている。2020年9月には、正極材にオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムを使用した「FORTELION」を販売。一般的なリチウムイオン電池よりも寿命が長く、安全性が高いという特徴がある。

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 7.LGエナジーソリューション

LGエナジーソリューションは、2020年12月にLG化学から分社化した新興企業で、主にEV用リチウムイオン電池の開発・量産に力を注いでいる。2023年3月には、本田技研工業との合弁会社「L-H Battery Company」を設立。2024年末までに、アメリカのオハイオ州ジェファーソンビルに工場を建設することを発表した。また、2025年中には北米で生産・販売されるEV用の電池の量産を開始し、北米にある本田技研工業の生産工場へ供給する予定だ。

2023年10月にはToyota Motor North Americaと、アメリカで生産するEVに搭載するリチウムイオン電池の供給契約を締結したと発表している。この契約によって、LGエナジーソリューションはミシガン工場に約30億ドルを投資し、2025年にトヨタ専用の電池セルとモジュールの生産ラインを新設・稼働開始し、年間20GWhを供給予定だ。

 まとめ

全固体電池や全樹脂電池など新たな次世代電池が登場しているが、リチウムイオン電池の需要は引き続き堅調であると予測される。先に触れたように、家電やパソコン、スマートフォン、産業機器、EVなど、リチウムイオン電池の汎用性は高い。

この流れは、研究開発を行うメーカーだけでなく、多くの企業にも関連するトピックとなるかもしれない。トレンドを見逃さないように、市場の動向や各社の取り組み状況を逐一把握しておくことが重要であるといえるだろう。