2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
ここ数年で格段に進化を遂げているAI技術。医療、マーケティング、製薬、さまざまな領域で活用が進んでいる。製造業では、どの程度AIの導入が進んでいるのだろうか。活用の意欲はあるものの、AIを活用できる人材がいない、AIの導入方法がわからず、活用が進んでいない企業も多いだろう。本記事では、製造業におけるAI活用のメリットや導入のポイントについて解説する。
製造業の根幹から競争力を底上げするリサーチDXとは?
研究開発プロセスへのAI導入のメリットを解説!
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目次
2021年の日本国内におけるAIシステム市場は、IDCの調査によるとエンドユーザー支出額ベースで市場規模が2,771億9,000万円となり、前年成長比率で26.3%だったという※1。2026年までの年間平均成長率も24.0%で推移するとみられており、今後も引き続き成長を続けると予測されている。
また、Google Cloudが公開した2020年に日本を含めた7カ国の製造業を対象とした調査によると、日本では日常業務でAIを活用している割合は50%で、全体平均の64%を下回る結果となっている※2。新型コロナ感染症の影響により製造業のAI導入が加速したと言われるが、活用していると言える効果が得られるまでには至っていないのが現状だろう。
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日本は、1950年代後半から「ものづくり」の力で高度経済成長を果たした。長らくGDP世界2位という地位にも君臨し続けた。しかし、労働力不足、サプライチェーン問題、国際競争力の低下などの要因によって、製造業を筆頭に、日本の経済は苦境に立たされている。
製造業に限った話ではないが、現在、日本は慢性的な労働力不足に陥っている。総務省の統計をみると、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は、2020年時点で7,341万人となっており、2030年には6,773万人、2060年には4,418万人まで減少すると推測されている※3。
東日本大震災、新型コロナウイルスの感染拡大、国家間紛争などによって、部品調達の不足・到着遅延・価格高騰といった問題が発生している。従来では、さほどサプライチェーンのリスクは問題視されていなかったが、グローバリゼーションによって顕在化したのだ。このような状況下では、代替先の確保、生産工場の分散化など、リスクが起こることを前提としたサプライチェーンマネジメントが重要となるだろう。
人件費の安い新興国の台頭、ライフサイクルの短期化、収益につながらない研究開発、進まないデジタル化などによって、日本の国際競争力は低下し続けている。IMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界競争力ランキング2022」によれば、日本は34位と昨年よりも下降する結果となった※4。過去30年間でみると1989年は1位、1995年が4位、1999年は24位と下落を続けている。
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では、製造業にAIを導入すると、具体的にどのようなメリットを享受できるのだろうか。
AIを活用すると、機械や設備の故障予知や異常検知を行うことができる。いわゆる予知保全システムなどが該当する。これは、AIに機械の稼働データを学習させることで、音や動作、映像などで異常を検知するものだ。
製造業において不良品の検出は目視作業で行われてきた。しかし、目視作業には作業員の採用と育成が必要となり、相応のコストがかかる。また、目視での確認は不良品の確認漏れや見逃しが発生することもあり、課題となっている。AIで不良品の検出を行う場合は、画像解析技術が応用されることが多い。従来のAIでは、不良品の画像データを都度読み込ませて学習させる必要があったが、近年は技術の進歩によって、良品の画像データの学習だけで外観不良検知アルゴリズムを構築できるようになったため、多くの製造業で導入が進んでいる。
従来、熟練の技術を持った人材が担っていた高難度で複雑な手順を要する作業も、AIに置き換えることで蓄積されたデータから最適な業務プロセスを計算し、効率化することができる。今まで、作業員のスキルに依存していたものを、品質が均一化し、スキルの継承という面でも手間がかからなくなる。
先で説明した、不良品の検出や業務プロセスの予測などが実現することにより、全工程の業務が自動化・効率化し、結果的に品質の向上や安定化につながる。また、AIがインプットするデータが増えるほど、学習効率は上がり、より高い精度の予測や動きを作ることができる。
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AIと人を比較すると、大きく以下のような違いがある。
人は、言葉の裏にある意図を読む、空気を察するといった高度なコミュニケーション能力をもつ。現在のAI技術でも、複雑なコミュニケーションを要する業務や仕事は代替できないと言われている。しかし、AIは体調や環境による品質のムラが発生せず、24時間働き続けることができる。また、技術の獲得には数年を要することもあるが、AIの場合、要件定義を行えば、機械学習によって365日24時間安定的な稼働ができる。
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AIの導入でよくある失敗事例が、導入が目的化してしまっているケースだ。導入は目的ではなく、課題を解決するための手段の1つでしかない。ここでは導入の手順を紹介する。
労働力不足を解決したいのか、それとも生産性を向上させたいのか、危険な作業をAIに置き換えて安全性を高めたいのか、さまざまな課題があるだろう。どの課題をAIによって解決したいのか明確にすることが肝心だ。AIは必ずしも万能ではなく苦手な作業もある。その課題が本当にAIで解決できるのか精査することが重要だ。
AIの成功の鍵を握るのが学習データだ。この学習データが正確ではなかったり、精度が低かったりすると、期待した成果を得ることはできない。学習データに存在する欠損値やノイズなどをクレンジングし、できる限りデータの質を高めていこう。
PoCは、Proof of Conceptの略で新しいアイデアや理論、コンセプトなどの実現可能性を目的とした検証やデモンストレーションを指す。PoCでは、プロトタイプのAIを構築して試験稼働させ、想定した精度のアクションができているか、オペレーションに問題ないかなどをチェックする。
機械学習・深層学習による結果をもとに、学習データの改善、機械学習の設定を適宜変更していく。
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ここで、製造業でAIを導入して成功した事例をみてみよう。今回は、オムロン、ダイセルの事例をピックアップして紹介する。
多品種少量生産が求められるなかで、オムロンでは熟練者不足という課題を抱えていた。そこで、AIを活用して作業者が五感で察知していた加工条件設定の見える化を実施。その結果、データ活用による制御の自動化に成功。加工時間は40%削減、工具の摩耗量は20%削減し、寿命は2倍伸びた。
自動車工場に限らず、製造現場では出荷前の不良品の見落としや見逃しが発生する。重大な不具合が発覚した場合は、リコールなど大損害につながる事態にまで発展してしまう。そのような事態を回避するためには、正確な監視・解析が欠かせない。
株式会社ダイセルでは、エアバッグの基幹部品を製造する工場において、日立製作所と共同開発した画像解析システムを導入。画像解析システムと製造実行管理システムを連携させることで、ロット単位の「代表点管理」から、製品シリアル単位での「全点管理」への移行に成功。結果として、製品の各工程ごとの良品率が向上した。
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製造や品質に関わる事例を紹介したが、研究開発領域においてもAIの活用の重要性が増している。先述したとおり、製造業が抱える課題として国際競争力の低下がある。製造業における競争力の源泉は研究開発にあり、これまでのような優れた技術や製品を追い求めるだけでなく、より市場を意識した新しい価値を生み出すような研究開発が求められている。そのためには、膨大な情報を集めて分析を行い、筋の良いテーマ設定をすることが欠かせない。人力だけでは探しきれないような膨大な情報の海の中から、アイデア創出のカギとなる情報を集め、適切に分析し構造化するリサーチ業務にもAIが有効といえるだろう。
研究開発者の身に起こり得る情報過多が引き起こす問題点や回避策についてのはこちら
たとえば、リサーチ業務をAIの自然言語処理技術で支援するストックマークが提供するAnews活用で以下のようなことが実現できる。
・膨大なオープン情報から市場動向やトレンド、事例などテーマの創出に必要な情報を収集
・チームで情報を共有できるため自分では気が付かなかった新しいアイデアや有益な情報を蓄積できる
・チームで情報を共有し貯めることで、有意義な議論が生まれ新たなアイデアのきっかけとなる
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製造業が直面するさまざまな課題を解決するにはAIの利活用が急務であり、多くの製造業で導入が進んでいる。特に利益を生み出すもととなる研究開発部門の業務を最適化することは重要課題ではないだろうか。中でもリサーチ業務はしっかり行えば成果が出ることを理解しながらも、かかる時間的なリソースの懸念から本腰を入れて取り組めていないこともあるだろう。進歩し続けるAI技術をうまく活用し、新しいアイデアが生まれ、成長し続けられる体制構築を検討されてみてはいかがだろうか。
参考記事
※1)「国内AIシステム市場予測を発表」
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ49145122
※2)「Google Cloud Industries:Artificial Intelligence acceleration among manufacturers」
https://services.google.com/fh/files/blogs/google_cloud_manufacturing_report_2021.pdf
※3)平成28年版 情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html
※4)World Competitiveness Ranking
https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness/