2024年以降の半導体市場の見通しは?需要や各国の動向について
製造業
ビジネスにおけるアイデア創出は、競争力の維持と向上、問題解決、新たな機会の発見、イノベーションの推進など、多くの場面で重要だ。しかし、何もないところから独創的なアイデアを思いつくことは簡単ではない。アイデア創出では、創造性や多様性を持たせることの難しさだけでなく、考え出したアイデアの内どれを選んで進めるべきかというアイデア評価にも困難さがある。そこでおすすめしたいのが、新たなアイデアを効率的に考えるための発案法「オズボーンのチェックリスト」だ。
この記事では、オズボーンのチェックリストの9つの項目についての解説や、製造業での考え方の例をご紹介する。
アイデアの発想には考え方のポイントがある!
筋の良いアイデアを生み出すための3ステップをご紹介
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目次
オズボーンのチェックリストとは、ブレインストーミング(集団発想法)の生みの親であるアレックス・F・オズボーンが提唱した発想法だ。
生まれつき創造性の豊かな、いわゆる天才と呼ばれるような人が無意識で行っている思考プロセスを形式化し、一般の人でも創造的思考を行いやすくするために生み出された。アイデアのパターンを9つの視点に分け、それぞれをチェックリスト化することでアイデアの多様性を促進し、困難な問題に対する新しい視点を提供する手段として有用な手法である。
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オズボーンのチェックリストは、以下の9つの視点からアイデア出しを行う。
項目 | 考え方の例 |
転用 | ・新たな使い道を提案できないか? ・少し変えたら別の使い道が生まれるのではないか? ・製造ラインを別の商品に使えるのではないか? |
応用 | ・類似商品のアイデアを利用できないか? ・過去に似たようなものはないか? ・真似できることはないか? |
変更 | ・色や音、動作といった、商品の物理的性質を変更できないか? ・別の製造ラインの方が良くなるのではないか? ・表示を変えたらわかりやすくなるのではないか? |
拡大 | ・商品を大きくしたり、個数を増やしたりして、お得感を演出できないか? ・回数を増やしたらどうなるだろうか? ・時間を長くしたらどうだろうか? ・強度をあげたらどうだろうか? |
縮小 | ・商品を小さくしたり、個数を減らしたりして、製造ラインを省力化できないか? ・工数を減らしたらどうなるだろうか? ・軽量化したらどうか? ・高さを低くしたらどうなるだろうか? |
代用 | ・部品や素材を変更したらどうなるだろうか? ・発注先を変更できないか? ・別の工程に変更したらどうなるだろうか? ・別の動力源を使ってみたらどうか? |
再配置 | ・納品スケジュールや製造ラインのレイアウトを変更できないか? ・要素を変えたらどうなるか? ・原因と結果を入れ替えたらどうなるか? |
逆転 | ・ターゲット層を真逆にしたらどう変わるか? ・デメリットをメリットに変えたりできないか? ・裏表や上下左右を変えたらどうなるか? ・順番を逆にしたらどう変わるか? |
結合 | ・複数の商品やアイデアを組み合わせられないか? ・作業を合わせられないか? ・材料を組み合わせたらどうなるか? |
各視点の詳細や具体的な例については後述する。
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オズボーンのチェックリストを活用することのメリットと課題点をそれぞれどのようなものがあるだろうか。
オズボーンのチェックリストは、構造化されたアプローチを行うことで、異なる視点やクリエイティブな思考を促進する。ゼロから考えるよりも、問題解決とアイデア創出のプロセスが効率的になり、迅速な意思決定と実行が行いやすくなるだろう。
また、ブレインストーミングで活用すれば、異なるメンバーからの視点やアイデアを統合しやすくなり、議論の円滑化にもつながるメリットがある。
オズボーンのチェックリストは、全ての項目をしらみつぶしにチェックすればいいというものではない。課題に無関係な項目までチェックしていると、かえって発想の効率が下がってしまう。一方で、課題と直結する項目だけに絞ってしまうと視野の狭小化につながる可能性がある。
そもそも9つの視点の中に、必ずしもベストな解決策があるわけではない。そのため、オズボーンのチェックリストは、SWOTやデザイン思考など、他の発想法や考え方と組み合わせて使うことをおすすめする。
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ここからはオズボーンのチェックリストの活用を製造業に焦点を当てて解説する。
「転用」とは、既存の技術や製造プロセス、知識などを別製品の開発に活かしたり、同じ製品で別の使い道を提案したりする考え方だ。
たとえば、高品質な自動車ブレーキパッドの製造技術を航空機ブレーキパッドに応用するなどだ。もともと刻み海苔用ハサミとして売っていたものを、シュレッダー用と銘打っただけで大ヒットしたという事例もある。
考え方のポイントは、製品・技術の用途を加熱や切断といった抽象的な言葉に置き換え、そこから考えうる使い道を列挙することだ。その中に市場のニーズを満たすと思われるものがあれば、それが転用のアイデアとなる。
「応用」は、同じ製法や製造ラインを別製品の開発に利用したり、過去の類似製品の製法・機構を模倣したりすることだ。
たとえば、先発医薬品と同じ工場で製造されることの多い「ジェネリック医薬品」が好例だ。類似製品の模倣に関しては、産業財産権や意匠権などの観点から製品そのものにはあまり用いられず、主に「トヨタ生産方式」のような業務システムの模倣が検討されることが多い。
類似製品を洗い出し、その中から既存のラインで製造可能な製品を検討したり、有名な業務システムや競合他社の製造ラインを洗い出し、その中から自社に導入可能なものを検討すると良いだろう。
「変更」とは、文字通り製品の物理的性質を変えることである。とりわけ色や匂いといった五感に訴えかける部分の変更は、機能面に手を加えることなくターゲット層への訴求力をあげられるため、開発予算に余裕がない場合におすすめだ。また、製造ラインの表示や音などを変えてスタッフの作業効率アップを図るのも「変更」の一種といえるだろう。トレンドカラーや認知工学を取り入れ、何通りかのパターンに分けて試してみるのが良いだろう。
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「拡大」は、製品のサイズや強度を上げたり、製造ラインに工程を追加したりといったことだ。製品の質の向上や、増産体制の整備を目指す際に活用できる視点だ。ただし、増産に関する施策は売上が好調でないと選択肢に入れにくい。「拡大」の考え方による事例には、化粧品の有効成分の含有率を日本で一番多くして売り上げアップにつながったというものがある。
「縮小」とは、製品のサイズや消費エネルギーを減らしたり、製造ラインを圧縮したりといった考え方だ。
環境問題への意識が高まるなか、省エネや省スペースはデザインと同じくらい消費者への訴求力が強くなっている。また、人手不足や製品の供給不足を解消するために、製造ラインを圧縮するというのもひとつの手である。
必要不可欠な機構・工程とそうでないものを選り分け、機能性や製造効率に支障をきたさない範囲で省略を検討してみると良いだろう。
「代用」では、素材や部品を他のものに置き換えたり、新しい工程を既存の製造ラインに追加したりといった考え方をする。基本的には「縮小」と同じく、モノや人手不足に対する解決策につながりやすい視点だ。また、新製品を開発する場面においては、発泡酒やソイミートといった「〇〇風」製品のアイデアにも有効である。
不足しているモノや人手の足りない工程に関して類似するものを洗い出し、その中から現実的に導入可能な代用品を絞り込むと考えやすいだろう。
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「再配置」とは、製品設計の材料や配置の改善だけでなく、製造ラインにおいて工程や人の配置を入れ替えたり、販売店のレイアウトや製品の並びを変更したりする考え方だ。生産性や店舗の回転を高めることも業績向上につながるため、製品そのものの改善と合わせて必ず検討しておきたい項目だ。
スタッフの動線が可能な限り短くなるようエリアのレイアウトを設計し、そこに現場の希望も加味して最適の配置を組み上げると良いだろう。
「逆転」の発想では、問題やアイデアを逆の視点から考え、製品の設計や機能、デザイン、素材、製造プロセスにおける通常のアプローチとは異なる視点を見つける。
たとえば、自動車メーカーは自動車をデザインし、それに合わせてエンジンを開発するが、逆転アプローチでは、電動自転車のように車輪と駆動システムから開発を始め、その後車体デザインをするなどだ。このように通常とは異なる方法で考えることで、今までにはないアイデアが生まれやすくなる。
「結合」は、機能や技術、アイデアなどを組み合わせる試みだ。
たとえば、炭素繊維と樹脂を組み合わせて、軽量かつ強靭な複合材料を製造し、自動車部品や航空機部品としたり、インターネット・オブ・シングス(IoT)デバイスのデータと人工知能(AI)を結びつけて、製造ラインの効率向上や予知保守を実現したりなどが挙げられる。既存の要素や技術を組み合わせて、新しい製品やプロセスを生み出す結合のアプローチによって、効率を向上し、新しい競争力を獲得できる可能性が生まれる。
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SCAMPER(スキャンパー)とは、オズボーンのチェックリストを下地に開発された、7つの質問からなるアイデア導出法である。アメリカの創造性開発研究家、ボブ・エバール氏が、1971年に出版した自身の著書「SCAMPER:Games for Imagination Development」の中で提唱された。
各質問の頭文字から命名されたこの発想法は、視点の種類がより汎用性の高いものに絞り込まれており、製造業においてもより効率的な発想を可能とするだろう。
詳細については下記の記事を参照してほしい。
オズボーンのチェックリストは、アイデアの創出や効率的な課題解決に役立つフレームワークであるが、一人で考えていると思考の幅を狭める恐れがある。ご紹介した活用例の考え方を参考に、さまざまな年代や部署のメンバーでチェックリストを共有し、必要な視点を見落とさない体制を整えて取り組むことをおすすめする。