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なぜDXは失敗するのか?先行事例から学ぶ

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競争上の優位性を確立するために、どの業界や企業であっても避けて通れないDX(デジタルトランスフォーメーション)。一方で多くの企業がDXに未着手、あるいは失敗しており、上手くいっていると言える企業はまだ少数であるのが現状だ。DXは企業によってさまざまなアプローチ方法があり、置かれている環境や企業の持つ強みに左右されるため、必ず成功できる方法があるわけではない。しかし、失敗する原因や理由を学び、あらかじめ対策を講じることで成功率を高めることができるのは間違いない。

この記事では、多くの企業が陥ってしまったDXの失敗要因の紹介と、成功に近づけるポイントについて解説する。

 DXの多くは失敗している。その理由は?

多くの企業がDXに取り組む中、2020年に行われたアビームコンサルティング株式会社の「日本企業のDX取り組み実態調査」によると、DXが成功に至ったのはわずか7%であるという。それほどDXへの道のりは厳しいのだ。ではいったい、どのような理由によって失敗してしまうのだろうか。ここではDXにありがちな失敗要因のうち3つを紹介する。

 ①明確なゴール設定がされていない

明確なゴールや目標の設定なしでDXを行うというのは、なんの料理を作るのか決まっていないのに材料集めに右往左往するようなものだ。DXの成果を得るためには、時間とコストや人材などのリソースの投入が必須である。必要な資源を適切なタイミングで投入できなければ、成功する施策であっても上手くいかなくなってしまう。反対に、不要なシステムや施策に資源を使い続けることがないよう、縮小や止めるという判断も必要である。

適切な判断を行うためには、DXによって何を成したいのかなどの具体的なゴールや、その過程と進捗を追うための指標の設定が必要不可欠である。設定したゴールや指標を全社で共有し共通の認識とすることで、戦略的なDXに取り組むことができる。誰が、何を、どのように行うべきか、どこにどれだけの資源を投入するべきなのかなどの戦略を立てる上での指針となる。

 ②「攻めのDX」に踏み込めていない

10人にDXとは何かと聞いて、全員同じ回答が返ってくることはないだろう。なぜならDXが指す意味が非常に多様で、正確に理解されにくいというところにひとつの要因がある。また、DXに取り組む段階として「守りのDX」と「攻めのDX」があり、本来取り組むべき「攻めのDX」までに至っていないケースが多い。

守りのDXとは、ペーパーレス化やアナログからデジタルデータへの切り替え、リモートワーク設備の導入などのDX初期段階の取り組みである。一方、攻めのDXとは、既存製品やサービスへの高付加価値化や、新しい製品やサービスの創出などのことで、ビジネスモデルの変革を視野に入れた取り組みだ。攻めのDXの取り組みが企業の競争力向上に繋がるため、攻めのDXは今後の企業成長における重要なカギとなる。

しかし、株式会社帝国データバンクの2021年12月の「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する企業の動向アンケート」によると、DXに取り組む大企業のうち、守りのDXなどの取り組みが平均で65.6%であるのに対して、本格的な攻めのDXに取り組む企業はわずか10.2%だ。つまり、攻めのDXが企業生存のカギであるにも関わらず、そこまで着手できていないというのが現状だ。

 ③DXへの理解の浅さ

しばしば先入観や判断基準、無意識の思い込みは変革の障壁となりやすい。特にデジタルやDXなどの多義的で漠然としたものの場合、必要以上の不安や苦手意識を生みやすい。たとえば、大企業だから変革は無理だとか、デジタルはよくわからず扱いが難しそうだから今のままの方がいいといった思いがDXの推進をはばんでいる。それぞれがDXへの正しい理解と、DXが必要なことであると納得できていなければならない。

 経営層の場合

経営層は、変わることへの恐怖に打ち勝つ必要がある。これまでの慣習や体制を変えるには、多くのリソースや強い意思とリーダーシップがなければ成し遂げられない。安易な気持ちで手を出してしまうと、コストがかかりすぎることや、成果がでるまでの時間ばかりが気にかかり、重要な場面での意思決定ができず中途半端に終わってしまうだろう。DXの必要性をしっかり理解し、率先して進めていく覚悟が必要だ。

 現場の実行メンバーの場合

現場のメンバーの中には、今まで上手く回っていたやり方を変えたくない、または、ITやDX推進部署の行っているよくわからないことをこちらの部に押し付けないでほしい、などのネガティブなイメージを持っている人もいるだろう。上からの指示だけでは、どうしてもやらされ仕事という意識ができるため、積極的な行動には繋がらない。各自が考え、主体的な行動が取れるよう、最終的には全社員の意識の変革が必要なのだ。

 実際のDX失敗例の紹介

ここでは「三越伊勢丹」と「P&G」の2つの事例を紹介する。

 検証不足と指標設定を誤った事例

百貨店を運営する三越伊勢丹は、百貨店ビジネスが不調な中でデジタル新規事業を手がけ成功を収めている。特に化粧品ECサイト「meeco(ミーコ)」や食品定期宅配サービス「ISETANDOOR(イセタンドア)」はデジタル新規事業の中でも好調に伸長している。それらの成功には多くの失敗からの学びが活かされているのだ。

失敗の一例に米国発のソーシャルコマースサービスである「FANCY(ファンシー)」への出店がある。これは端的に言えばデジタルによる海外市場への進出であったのだが、結果としてコストに見合わない成果しか出なかった。

失敗要因は2つある。ひとつは検証が不十分であったこと。新しいやり方にすぐ飛びつくのではなく、いくつかの検証を繰り返し、小さな成功を積み重ねて拡大する方が成功に繋がりやすいのだ。ふたつ目は、成果の指標が売り上げや利益であったことだ。これらの指標は短期間で成果を得るのが難しく、結果がでるまで粘ることができないためだ。

このことからわかるように、新しい試みに挑戦するときは、検証を繰り返し徐々に大きくしていくことと、成果を測るための適切な指標の設定が重要であるということだ。

 事業部間の連携が不足していた事例

アメリカの大手自動車メーカーであるFord社は、輸送サービスに参入するため2014年に大規模な事業戦略を打ち出した。2016年に高度な技術でデジタル自動車を開発することを目標とし、戦略をリードする子会社をシリコンバレーに設立したのだ。しかし同子会社は、Ford社の自動車製造部門と完全に切り離され、事業部間の連携なしで開発を行ったため、サービスの品質問題などが要因となり、翌年に損失を計上することとなった。さらにFord社の株価が40%も下落したことから、DX戦略に失敗した大手企業の例となっている。

失敗の原因は、子会社として切り離して立ち上げ、各事業部間の連携の調整ができていなかったことだ。DXは組織全体で一丸となって目標達成のために取り組まなければ実現は難しい。縦だけではなく横のコミュニケーションによる繋がりを強化していく必要があるのだ。

 自社のDXを成功させるために必要な事とは?

失敗しやすい要因を踏まえたうえで、DXを成功に導くためにやるべきことについて解説する。

 従来に「囚われすぎない」術を身につける

DXを進めていく中で、これまでの常識や経験が通用せず、考え方を改めなければならないことが多々起こるだろう。また確実な正解と言える方法がないために、最良の方法を選択するには判断基準や見る目を養っていくしかない。他社の事例は貴重な先人の経験であり、DX推進の糧となる。

成功事例は、新しい考え方や今までと違った切り口の視点を持っていることが多い。これまでの定石で当たり前と思って疑問すら持っていなかったやり方が、今は通用しないということもある。これまでの考えに囚われているときは、なかなかそのことに気がつけないことが多いため、失敗事例も含め多くの事例を集め、柔軟に考えるクセをつけると良い。

成功事例を取り入れるためには、一度噛み砕いて消化する必要がある。成功例をそのままなぞっても自社が成功するとは限らないからだ。事例の優れている視点や上手くいっている要因を分析し、それらが自社で通用するかどうかを精査することが重要だ。

 自分ごととして捉えるための情報収集

日本人は保守的で、従来の体験や既存のシステムを変えることを苦手とする傾向がある。また、DXの必要性が感じられないまま、上の指示だからとDXを行ったとしても、企業を変革していく原動力や推進力は生まれない。DXを成功させるためには、経営層もリーダー陣も現場の担当者も、全員がDXに理解を示し必要なことだと認識し、「自分ごと」として捉えていることが何よりも大事なことだ。

それぞれが自分ごと化し主体的に動くためには、情報感度を高める必要がある。自社が置かれている状況や、社会情勢、市場、競合の動向などさまざまな情報に触れ、客観的に問題を捉える視点を養うことで、何をすべきなのかが明確になりやすい。組織一人ひとりの見る目線が揃うことで、建設的な議論や協働が行いやすくなりDXの推進に繋がるのだ。幅広い情報を得ることは、組織で一丸となってDXに取り組むための第一歩である。

 まとめ

DXには絶対成功するという法則がない。しかし、失敗しやすい要因として「明確なゴール設定がされていない」、「攻めのDXに踏み込めていない」、「DXへの理解が足りていない」という点には特に注意すべきである。

ありがちな失敗要因にはまってしまわぬよう、他社の事例に目を向け、情報収集を行うことが大切だ。また、さまざまな情報に触れることでそれぞれの情報感度が高まり、円滑なDX推進の原動力となる。外に目を向け情報を集め、仲間と話してみる。そのような小さな行動がDXを成功に導いていくのだ。