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GX(グリーントランスフォーメーション)とは|環境保全と事業経営を両立する戦略

GX(グリーントランスフォーメーション)とは|環境保全と事業経営を両立する戦略

カーボンニュートラルの実現に向けて、社会システムそのものを変革する取り組み「GX(グリーントランスフォーメーション)」をご存知だろうか。DXに次ぐ企業の成長戦略として、欧米を中心に広がりを見せている。

本記事では、GXの概要や必要な背景、今後企業や研究開発部門として何をすべきかについても、合わせて解説する。

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 GXの意味とは

GXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略称で、政府が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて、社会システムそのものを変革する取り組みだ。

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味する。排出量ゼロが理想だが、経済活動をするうえで排出量をいきなりゼロにすることは現実的ではない。そこで、排出する必要がある部分は、植林による吸収量を増やすことで相殺を目指す。

2015年の気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」において、産業革命以降の温度上昇を1.5度以内に抑えるという努力目標が掲げられた。この目標を達成するためには、2030年までに2010年を水準とした約45%、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしなければならない。このような背景から、2021年4月現在、日本を含む124ヵ国と1地域が2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言している。

 GXが必要な背景・注目される理由

あらためて、なぜGXが必要とされているのだろうか。その背景には、大きく以下の3つの要因が考えられる。

 急激な気候変動

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(2021)によれば、工業化(1750年頃)前と比較して2011〜2020年で1.09℃上昇していると報告されている※1。対策を講じずに、気温が上昇し続ければ、干ばつ、森林火災、熱波、洪水、大型台風などの異常気象が頻発する可能性が高まるだろう。その結果、経済活動は停滞し、場合によっては供給網の混乱が生じ、価格上昇にもつながりかねない。

 産業競争力を低下させるリスク

カーボンニュートラルの達成は、今や世界的目標の1つとなっている。Apple、Amazon、マイクロソフトなど、世界の名だたる企業もカーボンニュートラルに関する取り組みを積極的に推進しており、日本企業も今後ますますGX戦略に取り組む必要性が高まるだろう。GXやカーボンニュートラルを軽視した事業戦略を行えば、産業競争力を低下させるだけでなく、グローバル・サプライチェーンから除外されるリスクも孕むことになる。

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 ESG投資の市場拡大

世界持続的投資連合(GSIA)によれば、2020年の世界のESG投資の運用金額は35.3兆米ドル(約3900兆円)で、全運用資産のうち35.9%となっている※2。ESG投資の規制を強化するために、市場規模の伸長は減速する見込みだが、長期的に見れば今後も増えることが想定される。カーボンニュートラルやSDGsなどを軽視した企業活動を行えば、やがて株価の維持、資金調達が困難になるだろう。

 GXリーグとは?

先に述べたような背景から経済社会全体の変革であるGXに期待が高まるなか、産学官民が連携して、それぞれの役割に沿った行動を起こし、ともにGX市場を形成することを目的としたのが、経済産業省が発表した「GXリーグ」である。GXリーグは、企業の意識と行動変容によって生み出された価値が、新たな市場を作り上げることを通して生活者の意識と行動変容を起こし、さらにまた企業の変容につながる「循環構造」を作ることを目指すのだ。

経済産業省「GX リーグ基本構想」より
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gxleague_concept.pdf

 GXに参画する企業に求められる3つの取り組み

GXリーグに参画する企業には、大きく以下の3つの取り組みが求められる。

経済産業省「GX リーグ基本構想」より
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gxleague_concept.pdf

 1.自らの排出削減の取り組み

2050年のカーボンニュートラルに向けた2030年時点での排出削減量の目標を掲げ、それに向けたロードマップを設計する。また、進捗状況を毎年公表し、実現に向けた努力を継続する。万が一、削減目標に到達しない場合は、カーボン・クレジットや、企業間での自主的な超過削減分の取引を実施したかについて明らかにする必要がある。

※)カーボン・クレジットとは…
温室効果ガス削減が難しい航空業界などが、自社の排出量を相殺するために他事業者から削減量を購入できるようにした制度。

 2.サプライチェーンでの炭素中立に向けた取り組み

サプライチェーンの事業者に対して、カーボンニュートラルに向けた排出量削減における取り組みの支援を行う。また、生活者に対しても、製品・サービスの製造過程で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算し、商品・サービスに表示する「カーボンフットプリント(CFP)」の取り組みなどを通じて、価値の向上における啓蒙・意識醸成を行う。

 3.製品・サービスを通じた市場での取り組み

カーボンニュートラルや環境保護などの取り組みについて生活者や教育機関、NGOと対話を実施し、そこで得た気付きを経営に生かしていく。また、企業自らイノベーションの創出に取り組み、プレイヤーとともに新たな製品・サービスを通じた削減貢献に向けた協働や、クレジット等によるカーボン・オフセット製品の市場投入を通して、グリーン市場の拡大を推進する。

※)クレジットを付けたカーボン・オフセット製品…
企業が購入した排出量のクレジットを、取り扱う商品やサービスに付けて販売することで、購入者の日常生活における排出量を埋め合わせるという方法。

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 経済社会のなかの一企業として

先に挙げられた3つの目標は何もGXリーグに参加する企業に限った話ではない。2050年までにカーボンニュートラルを実現するには、あらゆる企業に温室効果ガス排出量の測定と削減の努力が課される。

実際に、国際的組織や日本政府機関から測定結果と削減施策の情報開示要請が働きかけが進められている。また、CDPは2022年には、日本企業における調査対象を500社からプライム市場の上場企業全体を含む1,841社まで拡大すると発表している※3

GXに向けた動きは、短期的には組織にとって大きな負担となる。しかし、いずれカーボンニュートラルへの切り替えに迫られることは間違いない。また、GXが実現された社会で取り残されないためにも、変革のチャンスと捉え、投資家やサプライチェーンなどのステークホルダーと連携しながら積極的に取り組むべきであろう。

 GXにおいて、研究開発部門に求められることとは?

企業にとってGXがより身近な問題となるなかで、研究開発部門でも求められるスキルや能力が変わりつつある。

上記にあるような、研究開発や技術にとどまらない、新規事業の企画・開発におけるスキルがより一層重視され始めている。GXや新規事業を推進するためには、先進的な他企業の事例や新技術、新たな取り組みを含めたさまざまな方面の動向に対する情報感度を高めることがベースとして必要になるのだ。つまり、これまで行ってきた特定技術を深化するための研究開発だけでなく、新規事業を意識した探索型の研究も比重が大きくなりつつある。

また、従来の「技術への知見」と合わせて、さまざまな分野への広い知見、さらには他部署や社外との連携が欠かせないことからコミュニケーション力などの対人スキルも求められるようになるだろう。身につけるべきスキルは増えるばかりだが、技術の知見を生かして世の中に反映させることができる大きなチャンスでもある。

 GXの先進事例

ここでは、GXを積極的に推進している事例をいくつか紹介する。具体的な事例をみてイメージをつかんでみよう。

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 バイオマスプラスチック※4

株式会社ユーグレナとセイコーエプソン株式会社、日本電気株式会社が2021年3月に共同で「パラレジンジャパンコンソーシアム」を立ち上げた。主に、バイオマスプラスチックの一種「パラレジン」の技術開発と安定供給の実現を担う。

バイオマスプラスチックは、「海洋マイクロプラスチック問題」などの海洋汚染問題を解決するだけでなく、植物など再生可能な資源を原料としており、かつ焼却しても発生するCO2が植物によって吸収されるため、CO2の総排出量を抑えられるものとして注目されている。

 グリーンケミカル※5

株式会社日本触媒は、「共創の場支援プログラム(COI-NEXT)」に参画し、サトウキビを原料とした食料増産とグリーンケミカル製造を図る農工融合型のGX技術の開発に取り組むと発表した。

COI-NEXTにおいて、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)による新品種のサトウキビの開発、東京大学による先端発酵技術、日本触媒の触媒技術を融合させ、グリーンケミカル製造技術の開発に取り組むという。

持続的な食料増産と、化石燃料消費の減少などの諸課題に対して、産業全体で解決にあたるという試みのひとつである。

 まとめ

本論でも述べたように、GXはあらゆる企業にとって重要な取り組みの1つである。しかし、環境保全につながる取り組みであるため、なかなか身近にイメージしがたく目先の事業活動を優先してしまうかもしれない。しかし、GXは間違いなく国を横断した投資テーマの1つになり得るため、早くから着手しなければ、資金調達や競争力という面で不利に働く可能性は否めないだろう。

GX戦略を成功させるためには、世の中の動向や潮流をキャッチアップし、戦略に落とし込む必要がある。また、ありがちな失敗に陥ってしまわないよう、先人が実践した事例に目を通し、業界に囚われない網羅的な情報収集を行うことが欠かせない。

参考記事

※1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(2021)
https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210809001/20210809001-2.pdf
※2)GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020
http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2021/08/GSIR-20201.pdf
※3)CDPからの情報提供
http://www.env.go.jp/earth/zeb/news/pdf/20220303_cdp.pdf
※4)循環型経済の実現に向けたバイオマスプラスチックの技術開発を行うパラレジンジャパンコンソーシアムを設立
https://www.euglena.jp/news/20210329-2/
※5)日本触媒が共同プログラム参画 農工融合型GX技術開発へ
https://www.gomutimes.co.jp/?p=173191