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自社技術を活用した新規事業成功の4ステップとは?成功事例を交えご紹介!

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自社技術から新規事業の展開を掲げる傍ら、「売れる新製品」や「社会課題を解決する新規事業」が生み出せないと悩む企業は少なくない。1つの新製品や新規事業の創出には3,000のアイデアが必要だという研究結果もあるほど、新たな取り組みにおいてはアイデアの数と質が重要になる。※1

一方で、技術のアイデアばかりで事業構想に紐づかない、新製品や新規事業を立ち上げたがすぐにレッドオーシャン化してしまう、既存の製品改善に終始してしまう。このような課題を抱え、市場性を考慮したアイデアを生み出し続けることができないという悩みをよくお伺いする。今回の記事では、自社技術を事業化するアイデア創出に不可欠な4つのステップを順に追って解説するとともに成功事例をご紹介する。

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 自社技術から新規事業アイデアを生み出す4つのステップ

まずは、アイデアの考え方として以下4つのステップをご紹介する。
Step1「技術を考える」
Step2「事業領域を考える」
Step3「顧客課題を考える」
Step4「提供価値を考える」

 Step1「技術を考える」

新規事業のアイデアを検討する際、市場や顧客課題から検討することは多いだろう。一方で製造業、特に自社技術からアイデアを生み出すためには、まずは技術から考えることをおすすめしたい。自身の専門分野の知見を活かすことができ、取り掛かりやすいからだ。

ここでは自社の技術の中から、競争優位性を有する各事業の中核を担う技術、すなわちコア技術を特定し、その技術がどのように顧客価値へ転換することができるのか。基本的な考え方を解説する。

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 「技術の棚卸」からコア技術を特定する

まずは、自社が持つ技術を洗い出す「技術の棚卸」を行って欲しい。技術の棚卸と聞くと、技術の一覧表やデータベースの作成に目がいきがちになる。しかし、本当に重要なことは技術を評価してコア技術を特定することにある。

技術を評価する方法には、技術の成熟度と自社の技術水準で評価を行う方法もあれば、ビジョンとの合致度合いや模倣困難性、有効活用するための組織能力の有無などで評価を行う方法もある。自社に合った技術評価を行うことで、強みとなりうるコア技術に目星をつけることができる。

 技術が持つ可能性を言語化して考える

自社のコア技術を特定したとしても、その技術がどのように顧客価値に寄与するのかを考えるのは至難の業だ。この時に有効な施策は「技術の機能化」だ。例えば、センシング技術について考える時、どのような性質があるかを細分化していく。制御技術や測定技術、感知技術が挙げられるだろう。その上で、この特性から「どんな環境でも動く物体であれば検知ができる」といった形で技術が持つ可能性を言語化する。これができると、顧客課題とのマッチングがしやすくなり、技術を展開できる領域を考えやすくなるのだ。

 Step2「事業領域を考える」

技術を機能化することができたら、「どの市場に参入すべきなのか、どの市場が自社にとって魅力的か」を検討する。しかし、闇雲に市場を考えてもうまくいかないことが多い。まずは自社の注力領域や注目されている社会課題に目を向けることで検討領域を絞ることが可能になる。

そこから、いくつかに絞った市場の事業領域を短期・中期・長期という3つの観点で調べていくことで、市場の状況や今後の市場の広がりを推察することができるようになる。

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 短期:現在の市場の状況を理解する

現在の市場の状況を探るには、「現在どのような会社が参入しており、どのような活動を行っているのか」を事例やニュースを起点に見ていくことが有用だ。そういった活動の中で、該当するプレイヤーの動向を把握・整理していくことで、注目している市場でのホワイトスペースになっている領域や自社の技術が展開できそうな観点を探索していく。

また、注目されているキーワードから「何がトレンドなのか」を把握することで、事業領域の中で変化が起きそうなところを理解しておくことも必要だ。注目度が高まっているキーワードの背景には大きな課題や市場性が存在する可能性が高く、市場参入の好機会となり得るためだ。

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 中期:市場予測やロードマップから少し先の未来を理解する

ここでは市場予測や各団体のロードマップなどから少し先の市場の概観を掴むことを重視したい。社会的にも注目をされている領域なら、全体の市場規模などは見つけることができるだろう。一方で、例えば「センシング」のような非常に大きな領域であれば、3Dセンシングやにおいセンシング、非接触型センシングなど、その領域の中でも市場が細分化されていることも多い。全体の規模を捉えることも大事ではあるが、細分化された市場の規模が実際の新規事業の市場規模に近いことの方が多いため、意識して調べることが必要だ。

また、規模が大きい企業や研究機関などでは、「XX年にXXをやります。」など事業活動や研究活動を公言していることも多い。こういった情報を企業のリリースやニュースから集めて年表を作ることで、将来起こりうる動きを把握することができる。手間はかかるかもしれないが、自社の参入を検討する上では有益なものになるだろう。

 長期:バックキャスティングで将来像を理解する

長期的な将来像を考える上でよく用いられる手法がバックキャスティングだ。現状の課題や実績から将来を考えると、どうしても現在の延長線上で考えてしまう。10年後、30年後などの長期的な将来はどうあるべきなのか。こういった視点で将来像を考えることで、飛躍したゴールの設定が可能だ。

また、重大な社会課題では既にあるべき姿が描かれている場合もある。例えば、カーボンニュートラルでは、経済産業省の資源エネルギー庁がこれからのグリーン成長戦略を掲げており、2050年における産業イメージや社会環境を構想している。国の成長戦略は長期的な目線で検討されるものも多く、自社の事業領域を検討する上で参考になるだろう。

 Step3「顧客課題を考える」

事業領域が定まったら、次は具体的に「どのような顧客がいるのか」「どのような課題を持っているのか、発生しそうなのか」を考えていく。ここでは、可能な限り多くのパターンを洗い出して、Step1で検討した自社の技術アセットで課題解決ができるのかを結び付けてイメージして取り組んでいく。

顧客課題を考える上では、実際の想定顧客に対するインタビューや既存顧客の声を聞くことも有効ではあるが、そもそも仮説がなければ深い情報は引き出せずに終わってしまうことの方もあるだろう。まずは公開情報から以下の情報を把握することで、具体仮説を構築することが必要だ。

 新製品・新規事業のリリース情報や実証実験の情報から考察する

各社が出している新製品や新規事業のリリース情報や実証実験の取り組みのリリースから、「どのような顧客と課題を想定して生まれた製品なのか」、「従来と比較して、新しくどのような課題解決のために生まれたものなのか」という観点を見ていくことで、顧客課題の分析を行う方法だ。

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 先行研究の発表内容から考察する

近年、企業による技報や大学などの先行研究のリリースの強化が進んでいる。従来だと論文や特許の提出まで入手できなかった情報が、今ではリリースという形で入手することもできるようになっている。こういった先行研究の背景から、「どのような課題を解決する技術なのか」、「どういう製品への適用を想定されているのか」をタイムリーに知ることができ、顧客課題を想起することができる。

一方で、これらとは別に、以下にも目を向けたい。

 バリューチェーンの全体像から類推する

新製品や新規事業が考案されてから、最終消費者の手に届くまでには、いくつもの企業が関わりながらバリューチェーンを形成している。例えば最終消費者から距離がある川中に位置する企業の場合、バリューチェーン全体を俯瞰することで「直接的な取引先企業のニーズは何か」、「そのニーズは最終消費者のどのような変化から来ているのか」というような形で変化が起きている背景を類推することができる。このような思考を常に持つことで、解決すべき顧客課題のズレを減らすことができるのだ。

 Step4「提供価値を考える」

この段階ではすでにコア技術を特定し、新規事業の参入に有力な市場を見つけ、さらに顧客課題にも見当がついているのではないだろうか。最後に「どのような価値を提供して、顧客課題を解決するか」に進んでいきたい。ここで着手すべきは、「顧客課題は何か」、「どのような解決策がマッチするか」、「顧客にもたらす価値は何か」という3点を行き来しながら考えることだ。

例えば、電気ケトルの成功事例を考えてみよう。電気ケトルが開発される前までは、「自宅でお湯を沸かしたい」という顧客課題に対して、電気ポットが提供されていた。この顧客課題だと差別化が難しく、スペック競争による価値の上積みが頻発し、「大量のお湯を一度で沸かせる大容量」、「火傷防止の安全機能」などの機能追加が行われていた。

この時に登場したのが「電気ケトル」だ。電気ケトルは「単身者が忙しい朝の時間にコーヒーを入れるために自宅でお湯を沸かしたい」という顧客課題に対して、「少量のお湯がすぐに沸かせる」、「洗浄が簡単」、「お湯を沸かす機能のみ」という形で製品化し、低価格帯で売り出したことによって大きくシェアを広げたのだ。

解決すべき顧客課題の設定によって、解決策の構想は大きく変わってくる。解決策が顧客の求める価値に繋がっているのか、最適な解決策であるのかを見極めながら、何度も顧客課題・解決策・顧客価値を行き来して検討することによって、本質的な提供価値を導くことに繋がっていくのである。

参考に、提供価値を検討するためのフレームワークを2つ紹介したい。

【1】プロダクトの三層モデル

これは提供価値を、製品の中核、製品の実態、製品の付随機能に分けて考える仕組みである。「コア機能は何か」、「実際にどのような性能があるのか」、「付随して製品価値を高める要素はあるのか」。これらの価値が他社と比較した際に差異化ができるか、または自社のターゲットにはどの要素が特に求められているのか、それを整理するために有効なフレームとなる。

【2】ニーズの三層構造

これは消費者のニーズを細分化して考え、ニーズの本質の分析を進める手法である。消費者は「どんな製品を求めているのか」、「なぜその製品がほしいのか」、「欲求の根源にある思いは何か」。これらを洗い出すことで、ターゲットや製品コンセプトにピントを合わせ落とし込んでいくことが可能になるのである。

併せて読みたい記事↓

 新規事業でつまずきがちなアンチパターンを知る

ここまでが新規事業で成功を勝ち取るための4つのステップであるが、これらを踏み損ねるとどのような躓きが生じてしまうのか、アンチパターンも知っておいてもらいたい。

 【1】プロダクトアウト

これは、「自社の既存技術を用いて、どのように市場や顧客に価値がもたらされるのか」に重きをおいてしまうパターンである。Setp1から始まり、Step4に思索が飛んでしまい、市場性や顧客のニーズに思いを巡らせることができていない危険な考え方である。

 【2】マーケットイン

これはStep2事業領域を重視するあまり、自社技術による強みやケイパビリティを意識しないパターンである。トレンドに思いを馳せすぎるあまり、技術的な差異化要素を構成できず、参入後も競争力のない製品になってしまう弱点がある。

 【3】御用聞き

これはStep3の顧客課題重視の思考であり、目の前の顧客のニーズだけに特化してしまい、市場性や将来的な広がりへの視野が欠落しているパターンである。Step2の事業領域の検討が軽視されたこの方法では、伸びのない事業に成り下がってしまう可能性があるのだ

 新規事業の成功事例を4つのステップで考える

株式会社デンソーが自動車部品の製造技術を農業に適用して、巨大トマト農場を作っていることをご存じだろうか。農業に工業の考え方をインストールし、「儲からない、大変な農業」から「儲かる、働きやすい農業」への転換を目指し、事業参入をしているのだ。株式会社デンソーの農業進出を4つのステップに当てはめると以下のようになる。

※画像をクリックいただくと拡大表示でご覧いただけます

2022年5月には定款の変更も行い、事業目的に「農業」を追加している。この取り組みにおける期待感と本気度が伺えるともいえるだろう。4つのステップを適切に検討することで大きな新規事業を生み出している成功事例として、ぜひ参考にしていただきたい。

 最後に

今回、ここで提唱した4つのステップを踏むことで、アンチパターンを乗り越え、市場性を担保した事業アイデアの創出は実現できるだろう。着実に検討を進めることで、アイデアの基盤を作り、情報を捉えながら顧客に寄り添うことで、アイデアの量と質は向上していく。そして揺るがない新規事業として展開することができるだろう。

しかしながら、これらの実現には膨大な情報から有益な情報を見つけ、その継続も欠かせない。そのように苦労して吟味したにも関わらず、環境は目まぐるしく変化し、国内外問わず新たなプレイヤーが続々と参入してくる事業環境であることも事実だ。それに対し、特に製造業では製品化や事業化は非常に息の長いプロセスとなる。どんなに短くとも3年、製品によっては10年以上かかることも珍しくない。

だからこそ、新規事業の立ち上げに向けたアイデア創出の質と量が重要であり、継続してアイデアを生み出すための仕組み、加えて情報に出会う仕組みも必要なのではないだろうか。今回の4つのステップを意識しながら、成功事例を基に新製品や新規事業に向けた活動をしていただきたい。

アイデア創出DLバナー

【参考文献】
※1)Greg Stevens and James Burley, “3,000 Raw Ideas = 1 Commercial Success”, Research Technology Management,40 #3, May-June 1997, 16-27.